MTG │ 大会レポート │ 高橋優太【プロツアー・ファイレクシア】

先週末は、アメリカのフィラデルフィアにて開催された「プロツアー・ファイレクシア」に参加しました。

世界中の強いプレイヤーたちと腕を競い合う、待望のプロツアーが帰って来た!
過去の戦績やMTGアリーナ、Magic Onlineのプレミア・イベントで参加資格を得たプレイヤー、殿堂顕彰者ら約220名が賞金総額500,000ドルを懸けて戦う、競技マジックの世界大会です。

初日はブースター・ドラフト3回戦と、パイオニア5回戦を行い、4勝4敗以上の成績で2日目へ進出。
2日目で9勝7敗以上の成績で次回のプロツアーの権利が付与されるため、上位入賞を目指してチームを組んで練習。

井川良彦さん、市川ユウキさん、加茂里樹さん、熊谷陸さん、小泉祐真さん、河野融さん、中村修平さん、村栄龍司さん、森山真秀さん、矢田和樹さんとチームを組んで練習。


今回はAirBNBで一軒家を借りて、皆で合宿かつパイオニアとドラフトの練習を行いました。同じ趣味の友人たちと修学旅行に行くみたいで、大人になっても楽しいです♪

以下その大会レポートです。

※ラッシュメディア記事内紹介のカードは
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■1stドラフト


「ファイレクシア:完全なる統一」のドラフトは、白赤緑の3色が強く、青が極端に弱いという特殊な環境でした。

3-0しやすい色は赤緑油デッキ、赤白装備品で、どちらもコモンだけで完成度の高いデッキが組めて、序盤から攻撃し続けられます。

プロツアーレベルの大会だと、強い色に人気が集中するため混雑しやすく、特に白と赤の低マナクリーチャーや除去がすぐにピックされます。

1パック目初手は《磁器の盲信者》。+1/+1修正だけでも大分攻撃しやすくなり、毒性持ちなら+2/+2なので、ダニ・トークンの価値も上げてくれます。
強アンコモンを迷わずピック。


1パック目2手目はパックがかなり弱めで、《切歯の滑空機》。本来はこんなに早く取るカードではないのですが、他に良い候補が無く、先に2マナ域から取ることでマナカーブを埋めたかったという事情もありました。

この環境のドラフトは2ターン目パスは絶対に避けたくて、2マナ域は5枚以上は欲しいです。


1パック目3手目は《肉剥ぎの猛禽》。白の優秀なコモンで、《磁器の盲信者》のパンプ対象としても強い。


1パック目4手目は《殺戮の歌い手》で、ここで白緑を意識します。

しかしその後は白も緑も良いカードが流れて来ず、来るのは青と黒のカードの山。青をやるのはレアが来たときのみと決めていたので、青を避けましたが、少し不安がよぎります。

2パック目以降で、不安は的中します。

流れてくる青の強いカードの山!《死体傀儡、ヴェンセール2枚、《謎のゴライアス、オヴィカ》や、《血清核のキマイラ3枚が目の前を通過して行きます。どうやら僕と同様に白赤緑の3色でピックしているプレイヤーが多く、弱めのカードしかピック出来ません。

2パック目の2手目で《謎のゴライアス、オヴィカが流れてきた時に青赤へ色替えするかが分岐点でしたが、オヴィカを流して白緑を継続したため、弱いデッキが爆誕!

■パイオニア:アゾリウスコントロール

アゾリウスコントロール
デッキリスト
4:《神聖なる泉/Hallowed Fountain
2:《ストーム・ジャイアントの聖堂/Hall of Storm Giants
4:《灌漑農地/Irrigated Farmland
4:《島/Island
6:《平地/Plains
3:《廃墟の地/Field of Ruin
3:《大草原の川/Prairie Stream
1:《ヴァントレス城/Castle Vantress
27 Lands


0 creatures

3:《検閲/Censor
4:《軍備放棄/Lay Down Arms
2:《かき消し/Make Disappear
3:《記憶の氾濫/Memory Deluge
2:《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto
4:《吸収/Absorb
3:《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria
3:《放浪皇/The Wandering Emperor
2:《サメ台風/Shark Typhoon
3:《至高の評決/Supreme Verdict
1:《運命的不在/Fateful Absence
2:《冥途灯りの行進/March of Otherworldly Light
1:《告別/Farewell
33 other spells


2:《サメ台風/Shark Typhoon
2:《一時的封鎖/Temporary Lockdown
1:《船砕きの怪物/Hullbreaker Horror
2:《安らかなる眠り/Rest in Peace
1:《悪斬の天使/Baneslayer Angel
2:《神秘の論争/Mystical Dispute
2:《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto
1:《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke
1:《黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer
1:《霊気の疾風/Aether Gust
15 sideboard cards

パイオニアは、アゾリウスコントロールを使用しました。

各種打ち消し呪文で序盤を凌ぎながら、《至高の評決で盤面をリセット。

4マナを構えるターンには、《記憶の氾濫》で手札補充or《放浪皇》で盤面干渉、もしくは打ち消し呪文と、相手に合わせた動きが可能で、最終的には《ドミナリアの英雄、テフェリーによるカードアドバンテージ差で勝利します。

最初はドロー呪文の《発見への渇望》を試したりもしましたが、後半フラッシュバックの強さが際立つ《記憶の氾濫を優先しました。

ドミナリアの英雄、テフェリー》《放浪皇》《記憶の氾濫》《至高の評決は4種類ともアゾリウスコントロールの中心となるカードですが、相手のクリーチャーを除去したいか、打ち消しが欲しいか、ドローしたいタイミングかで4種類から必要なカードが変わります

同じカードを2枚引くよりも、1枚ずつを引く方がより良い選択肢を取れることが多いので、それぞれ3枚ずつの枚数配分になっています。

アゾリウスコントロールは打ち消しが強い分後半戦に強いですが、その反面序盤に躓くと、そのまま押し込まれやすいデッキです。

その序盤の弱さを大きく改善してくれたのが《軍備放棄》!1ターン目から《ラノワールのエルフ》を除去しつつ、中盤に3-5マナのクリーチャーも除去出来るので、これのために《平地が中心のマナベースになっています。

比較対象としては同じく1マナ除去の《ポータブル・ホールですが、《軍備放棄の場合は3マナ以上のクリーチャーも対象に取れるのが強みです。緑単信心の《老樹林のトロール》《茨の騎兵》も追放出来て、1マナで《黙示録、シェオルドレッド》や《無謀な嵐探しを追放する時は最高の働きをします。

軍備放棄》型のデメリットとしては、通常のアゾリウスコントロールと比較して後半に強い土地が減ることと、《大草原の川》が弱いことです。《大草原の川は多くの場合タップインするので、《氷河の城砦》や《連門の小道》よりも2色土地として使いにくいです。

それと《軍備放棄》が《平地》を参照する除去なので、白マナを生む土地の《アーデンベイル城》《皇国の地、永岩城を採用しにくく、後半のマナフラッドが起きやすいです。

ただ、それらのデメリットを差し引いても、《軍備放棄の除去としての性能の高さが気に入ったので、この形のアゾリウスコントロールを使用しました。

パイオニアは《ニクスの祭殿、ニクソス》、《演劇の舞台》、各種ミシュラランドと土地が強い環境で、アゾリウスコントロールは相手のミシュラランドを苦手とするため、《廃墟の地》は多めの3枚。
廃墟の地》により《吸収がプレイしにくくなるデメリットもありますが、パイオニアは基本地形が1-2枚のデッキも多く、《廃墟の地を連続で起動したいとも考えたため、3枚で納得しています。

井川さんから「《平地》が多い分、このデッキはマナフラッドしやすい!」というアドバイスを受けて、4枚だった《大草原の川》を1枚《ヴァントレス城》に変更。この変更はよく働き、占術が強いタイミングが多かったですが、アンタップインの《をこれ以上削りたくないので、1枚が限度だと思います。

打ち消し呪文の枚数配分は、最後まで悩みました。

検閲》《かき消し》はどちらも序盤を凌ぐためのカードで、後半は腐りやすいです。相手が《検閲をケアして1マナを残すからこそ《かき消し》が刺さる展開になりやすく、「《検閲》3《かき消し》2」が良いのか、「《検閲》2《かき消し》3」が良いのかは未だに悩んでいます。

検閲》の良さは、後半引いた時にサイクリングで他のカードに代わる所です。後半完全に腐ってしまう《ジュワー島の撹乱》との違いはここで、ジュワー島の撹乱》よりも《検閲》の方が性能は上です。アゾリウスコントロールは長いゲームを想定したデッキなので、後半に1ドロー出来る点を考慮すると、やはり「《検閲》3《かき消し》2」なのかなと思います。

ドビンの拒否権》は、コンボやコントロールに対しては絶大な強さがある打ち消し呪文です。しかし今回のメタゲームでは「グルール機体」「ラクドスミッドレンジ」といったクリーチャー中心のデッキが多いと予想していたので、《ドビンの拒否権》が手札で腐るリスクもあると考えてメイン2枚、サイド2枚に分散しています。

吸収》は最初は予顕できる《襲来の予測と2枚ずつで試したりもしましたが、《吸収》の3点回復が嬉しいタイミングがあまりにも多く、3点回復が無ければ負けた試合も多々ありました。使えば使うほど、襲来の予測》よりも《吸収》の方が優れていると感じます。

デッキ内にクリーチャーが0体なので、《孤児護り、カヒーラを相棒に据えた形のアゾリウスコントロールも存在します。その場合、相棒条件を阻害しないように、猫である《オレスコスの王、ブリマーズ》《威厳あるカラカルをサイドボードに入れている場合が多いです。

孤児護り、カヒーラ》型も試したのですが、メイン戦は相手の除去が手札で腐っているので《孤児護り、カヒーラ》を出したいタイミングが皆無で、サイド後は《威厳あるカラカル》がアグロデッキに対してパワー不足(《領事の旗艦、スカイソブリン》も《エシカの戦車》も止まらないなど)で、《孤児護り、カヒーラ》型であるメリットが少なく感じました。

悪斬の天使》《黎明をもたらす者ライラ》なら、相手の《領事の旗艦、スカイソブリンの3点にも耐えて先制攻撃で討ち取る事が出来、《威厳あるカラカル》よりも1枚で勝てる性能があります。また、アゾリウスコントロール同系対決で強い《船砕きの怪物も採用したかったので、《孤児護り、カヒーラは不要だと考えました。

■2ndドラフト

1パック目初手はこの2択。1stドラフトの経験から、白赤緑の3色は混む事が頭によぎります。

増殖呪文を取れればかなり強いレアなので、《気まぐれな呪文踊り》をピック。青をやるのはレアが来た時のみと決めており、これほど強いレアなら青をやる理由になります。

1パック目2手目はレア抜けで流れてきた、環境最強コモンの《苦痛ある選定》をピック。


自分より上のマナ域にも攻撃していける、優秀な2マナ域である《刃ある大使》。これが3手目に流れてくるということは白が空いている?


4手目に白のトップコモンが来た!ここで白を確定します。最初のパックで《磁器の盲信者》を流しているので、その後下に白をやらせないように、白のコモンを優先してピック。

2パック目初手で、運よく強レアの《黒の太陽の黄昏》をピック!

その後は白黒の流れが良く、低マナ域のクリーチャーも埋まりつつ、《生体解剖の福音者が1周して来ました。
しかしデッキ構築を少し間違えていました。

ダニ・トークンが多く出せる構成なので、後半に装備して攻撃できるように《ミラディンのバルディッシュは2枚目も入れるべきで、《屍蚊》と入れ替えていました。
また、接死破壊不能の《不死性の提供》も入れるべきで、これも《伝染性尋問》と入れ替え。

■大会結果

初日

・1stドラフト
×赤白装備
×白緑毒性
〇白黒毒性

デッキ登録時に0-3が頭をよぎるほどでしたが、最終戦をなんとか勝つことが出来て1-2。

・パイオニア
〇グルール機体
×グルール機体
〇ロータスコンボ
〇アブザンパルへリオン
×アゾリウスコントロール

2日目

・2ndドラフト
〇赤白装備
×青緑毒性
〇赤緑油カウンター

相手の青緑毒性の完成度が高く、2ゲームとも7ターン目に毒殺されました。

・スタンダード
〇アゾリウスコントロール
〇アゾリウスコントロール
〇ラクドスサクリファイス
〇イゼットフェニックス
×緑単信心

2日目6勝2敗。

合計で10勝6敗、41位入賞で、次回のプロツアー権利を獲得!

■おわりに


久しぶりのプロツアーは、自分が半生を費やした憧れのプロの舞台そのもので、懐かしさを感じると共に、再びマジックへの情熱が高まる原動力になりました。今年も世界選手権出場を目指して、日々練習していきます!

そして、僕の世界選手権2021優勝記念カードである《フェアリーの黒幕》が発表されました!次回の記事では、このカードの制作過程について述べていきます。


それではまた。


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