MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【ライバルズリーグ#3】
明けましておめでとうございます。Rush Prosの井川(@WanderingOnes)です。
今年もここ、ラッシュメディアに定期的に記事を寄稿していきます。どうぞよろしくお願いします。
年明け早々にリーグ・ウィークエンドの第3週目が開催されました。
フォーマットはヒストリック。ほとんど環境が変わらないまま、ミシックインビテーショナル・ゼンディカーの夜明けチャンピオンシップ・そして今回のライバルズリーグと3イベント目なので、正直めちゃくちゃ飽きていましたが、文句を言っても始まらないので日々練習を積み重ねました。
今回の記事では、リーグで使用したスゥルタイの解説と、それに至るまでの過程についてお話ししていきたいと思います。
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■試行錯誤の過程
今回のリーグではスゥルタイが中心のメタゲームになることは分かっていたので、「打倒スゥルタイ」を目標にいくつか試しました。
1.グルールアグロ
打倒スゥルタイとして年末から頭角を現していたのでテスト。
しかし《霊気の疾風》だけでなく《物語の終わり》も意外と当たるためか、想定より勝率が出ず、調整初期に断念してしまうことに。
これは明らかな失敗で(切るのが早すぎ)、スゥルタイ以外のマッチアップもしっかりやるべきでした。
スゥルタイには良くて(かなり寄せた構成にした上で) 5.5:4.5~6:4ぐらいで「超有利!」って感じではなかったのですが、他のデッキにも同じような勝率なら良いデッキだった可能性高し。試さないのは悪であり、手落ちです。
リーグでは実際にスゥルタイへのメタデッキとして多数のプレイヤーが使用しており、今回の大きな反省点となりました。
2.ゴブリン
スゥルタイに有利と言われているものの、実際どうなの?ということでテスト。そしてその結果は散々でした。
《物語の終わり》のメイン採用によりスゥルタイには良くて五分程度しかなく、他には全方位不利なため使う理由を感じず早々に脱落しました。
リーグでも使用者は2リーグ70名中2名だったので、認識が合っていて良かったです。
3.ラクドスアルカニスト
スゥルタイに対して構造的に強く、《漁る軟泥》や《魂標ランタン》のような生半可な墓地対策では良い勝負はできてもマッチを取るには足りず。今回の調整の「壁」としてスゥルタイの前に立ちはだかり続けました。
しかし構造上《虚空の力線》はどうしようもない上に採用枚数が増える傾向にありましたし、スゥルタイ以外のデッキにはそこまで勝率が良くないのも事実。
ということで自分たちではアルカニストを使用せず、自分たちのスゥルタイに対抗策として《虚空の力線》を大量に採用することにしました。
蓋を開けてみると、アルカニストは2リーグ70名でまさかの0名!《虚空の力線》を恐れた、または他のデッキへの相性の悪さからか、「スゥルタイに相性が良いデッキ」としてはアルカニストよりグルールを選んだプレイヤーが多く、自分たちの調整との乖離を感じました。
ジャンドカンパニー
ジャンドカンパニーは「スゥルタイ以外の、スゥルタイを倒しに行くであろう全部に強い」という認識であり、スゥルタイに五分程度の勝率を出せるならぜひ使いたいデッキでした。
チーム内でもいくつかのアプローチを試したものの、スゥルタイの牙城を崩せなかったので断念することにしました。
リーグでは多数のプレイヤーが選択して高い勝率を出していましたが、ライバルズの中の最強格であるCifkaが10-2と大勝した一方、同じく最強格であるLSVは4-8と大きく負け越すなど、実際は好成績のプレイヤーとそうでないプレイヤーに大きく分かれる結果に。
サイドボーディングのプランが上手かった/ハマったプレイヤーがしっかりと勝ちきったようで、同時に僕らチームのジャンドカンパニへーの理解度が低かったことも自明になりました。
5.黒単アグロ
グルールを調整初期に断念したあと、「《物語の終わり》《霊気の疾風》が効かないアグロ」として構築したのが黒単。
スゥルタイに強いだろうということで調整を開始しましたが、徐々に化けの皮が剥がれていき最終的にはお蔵入りになりました。
「《物語の終わり》《霊気の疾風》が効かない」というのはメインボードだけの話ですし、メインですらその2種類を引かなければ普通に戦えるというのが実態。サイドボード後に最適化されること、後述する《破滅を囁くもの》を意識して《無情な行動》が増えるだろうというメタの動きもマイナスに働きました。
グルールの調整を最序盤で止め、このデッキに大きく時間を割いたのは今回の調整の最大の反省点です。
■使用したスゥルタイのポイント解説
ということでスゥルタイ以外のデッキを頑張って模索しましたがどれもスゥルタイほどの魅力を感じず、最終的にはスゥルタイに屈した形に。
もちろん平行してスゥルタイのミラーマッチも重点的に練習していたので、スゥルタイについてはミラーマッチを強く意識した形を追求し、少しでもエッジを出すことを意識しました。
僕がリーグで使ったスゥルタイはこちら。
『カルドハイム』リーグ・ウィークエンド(1月) By井川 良彦 | |
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デッキリスト | |
2 《島/Island》 2 《森/Forest》 1 《沼/Swamp》 4 《寓話の小道/Fabled Passage》 4 《ゼイゴスのトライオーム/Zagoth Triome》 4 《繁殖池/Breeding Pool》 4 《草むした墓/Overgrown Tomb》 3 《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》 2 《異臭の池/Fetid Pools》 2 《ロークスワイン城/Castle Locthwain》 28 lands 4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》 |
4 《思考囲い/Thoughtseize》 4 《成長のらせん/Growth Spiral》 2 《霊気の疾風/Aether Gust》 2 《物語の終わり/Tale’s End》 2 《取り除き/Eliminate》 2 《無情な行動/Heartless Act》 1 《探検/Explore》 1 《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》 2 《絶滅の契機/Extinction Event》 3 《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》 23 other spells 4 《サメ台風/Shark Typhoon》 |
チーム5名全員がスゥルタイを使用しましたが各人で少し差異があり、僕(と佐藤 レイ)が使用したのはもっともミラーを意識した形です。
これまでの2リーグでまだ当たってない=今後2週で当たるプレイヤーのデッキを予想したところ、6割近くがスゥルタイを選ぶだろうという予想になったため、少しリスクを負ってデッキを寄せてみました。
《破滅を囁くもの》の増量
僕らのチームが出した結論は、「ミラーは《破滅を囁くもの》が最強」というものでした。
《物語の終わり》《霊気の疾風》《取り除き》というスゥルタイの基本的な2マナインスタントが当たらず、一度盤面に出ると相手の《世界を揺るがす者、ニッサ》にプレッシャーをかけながら、ライフを大量に支払うことで「手札破壊 or カウンター+《自然の怒りのタイタン、ウーロ》」「《世界を揺るがす者、ニッサ》+《自然の怒りのタイタン、ウーロ》」という二の矢を用意するという超優秀クリーチャー。スタンダードでスゥルタイ全盛期だった際にこのカードを見出した高尾くんは本当に凄い!!!
当初はメイン1-2枚+サイドボードに1-2枚という体制でしたが、《大渦の脈動》《絶滅の契機》といったメインに入っているソーサリー除去で対処されても大体の場合ゲームに勝っていたこと、そして差を付けるにはメインから寄せるべきという理由により、最終的にメイン《破滅を囁くもの》3枚というバランスになりました。
もちろん自分たちが使う以上は相手も《破滅を囁くもの》を使って来るだろうという想定のもと、《無情な行動》もメイン2枚に増量しています。
しかしリーグの中には僕らの一歩上を行き、メインから《検閲》、サイドに《軽蔑的な一撃》という「《破滅を囁くもの》メタ」をしてきたプレイヤーもいました。これだからプロマジックは面白い!
《覆いを割く者、ナーセット》との決別
《破滅を囁くもの》を主軸にした構築、意識したプレイを心がける上で相性が悪かったのが《覆いを割く者、ナーセット》です。
従来の構築に比べてクリーチャーの比率が上がっているためスカる確率が上がっていますし、マナベースでも裏目を引きやすくなります。
(例:「トライオーム・森・島・寓話の小道」という土地4枚。小道でデーモン用に沼を持ってくると、ナーセット+カウンターの青青青が揃いません。)
また、自分が《破滅を囁くもの》を採用している場合は、《破滅を囁くもの》を押し付けることで《覆いを割く者、ナーセット》を出しづらい/そこまで効果的でない盤面にすることも可能なので、僕は思い切って《覆いを割く者、ナーセット》をすべて排することにしました。
1枚だけ残して上振れ/相手の意識の分散を狙うことも考えましたが、それよりもプレイ/デッキの一貫性を意識した形です。
ミラーを見据えた《探検》《厚かましい借り手》の採用
《破滅を囁くもの》対決で大事になるのが、「相手より先に《破滅を囁くもの》を出すこと」と「相手の《破滅を囁くもの》をインスタントタイミングで(立てた2マナで)対処すること」です。
前者を意識して採用したのが《探検》です。
ミラーに関わらず、スゥルタイが《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を初手に引いたときと引けなかったときで勝率が大きく変わるデッキ(依存度が高いとも言えます) だという認識もあったので、9枚目のマナ加速を採用することにしました。初手のキープ率を向上させるとともに、ミラーのマナ加速で差を付けられる/他のデッキに対してもブン回りが増えるということで、とても使い勝手が良い1枚でした。
なおこのカードはデッキ提出直前に決めた1枚であり、実践はほぼ0でしたが(アリーナのみの調整において、1枚挿しの効用をテストするのは時間がかかります。リアル/紙との大きな違いでもあります)、理論的には大丈夫だろうということで採用しました。
こちらは《探検》とは違い、ずっと試していたカード。チーム内でも賛否が分かれており、実際僕と佐藤以外の3名は使用していませんし、リーグ全体で見てもMa Noahが採用していたのみと少数派です。
クリーチャーであるので《覆いを割く者、ナーセット》とも相性が悪いのですが、僕は《覆いを割く者、ナーセット》を排していたためそこは気にせず、「相手のナーセットを殴れる」「相手のデーモンをバウンスできる(3枚目の《無情な行動》のような使い方)」「《サメ台風》ゲーに強い」という3点から採用しました。
実際、単体除去を多く残しすぎたくないミラーにおいては良い働きをしましたし、グルール相手の後手で「とにかく2マナで盤面を触れれば良い」という意識からサイドインしたりもしました。
■番外編:めっちゃ使いたかったけど諦めたカード
ラダーをやっていた時に、ミラーマッチのサイドボード後でプレイされて目から鱗だった1枚。
瞬速なのでカウンターや《サメ台風》を構えながらプレイでき、《物語の終わり》《霊気の疾風》《否認》といったカードが当たらず、墓地の枚数によっては墓地から帰ってくるので《思考囲い》もしづらい。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を戦闘で返り討ちにしつつ《世界を揺るがす者、ニッサ》も落とせるというスーパーマン!
ボッコボコにされ、「凄い!!!!」と感動してチームのDiscordに書き込んだ日を今でも鮮明に覚えています。
実際テストしてみても手応えが良かったのですが、6マナという重さが最終的にはネックになりました。そう、《破滅を囁くもの》の方が出てくるのが早く、《破滅を囁くもの》のマウントに対しては余りにも無力だったのです。
《戦争の犠牲》も同じ理由で解雇となりました。《破滅を囁くもの》の罪深さたるや。
■リーグの結果と感想、そしてこれから
ミラーマッチに寄せた結果、ミラーに8回当たるという幸運には恵まれましたが、どこまで行ってもスゥルタイミラーなため大きく勝ち越すことはできず5-3。他のアーキタイプとのマッチをミスで落としたこともあり、今リーグはトータル6-6と期待した結果を得ることはできませんでした。
せめて7-5はしたかったなというのが正直な気持ちですが、ここまで毎週最低1ゲームは自分のミスで落としている以上、何一つ文句を言うことはできません。
ここまで3回のリーグを終えて7-5、5-7、6-6という平凡な成績(※)であるため、これが今のライバルズ内でのポジションであり実力だなと分かりやすく実感できています。
※対Emma Handy戦がリーグ脱退により無効試合になったため、リーグ上の今の成績は17-18になっています。
1年間84試合のうちまだ36試合と半分も終わっていませんし、今のスタンディングを気にしすぎるのは百害あって一利なし。次はもっと良いデッキを作れるよう、もっと良いプレイをできるよう、調整チームのメンバーと一緒に反省しつつ、引き続き戦っていこうと思います。
『カルドハイム』リリース後は、2月に日本選手権ファイナルとライバルズリーグ、3月に『カルドハイム』チャンピオンシップとスタンダードのイベントが目白押し!ヒストリックに飽き飽きしていたこともあり、今から楽しみで仕方ありません!
アーリーアクセス、プレビュー記事、デッキ記事など今後もコンテンツを定期的に作成していく予定なので、お楽しみに!
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事(来週かな?)でお会いしましょう。