MTG │ デッキ紹介 │ 井川良彦【国内大型イベント直前!大会結果から見るパイオニア環境】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
今週末は久しぶりの国内大型イベント!名古屋は常滑で「プレイヤーズコンベンション愛知2022」と「チャンピオンズカップファイナル」が開催されるということで、パイオニアに注力している方も多いことでしょう。
先週末には一足先に、世界各地でRegional Championshipが開催されました。
そこで今回の記事では、特に規模の大きかったLegacy European Championship SofiaとDreamhack Atlanta 2022 U.S. Regional Championshipの結果を見ていきたいと思います。
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★各大会の結果まとめ
◎Legacy European Championship Sofia(引用:MTG Melee)
優勝 :イゼットフェニックス
準優勝 :アゾリウスコントロール
トップ4:イゼットフェニックス
トップ4:イゼットフェニックス
トップ8:アブザンパルヘリオン
トップ8:ラクドスサクリファイス
トップ8:緑単信心
トップ8:ラクドスミッドレンジ
参加者408名、スイス15回戦+SE3回戦の長丁場で争われた本大会。
一時期は勢力を減らしていたイゼットフェニックスですがここ数週間は活躍を見せており、トップメタの貫禄を見せつけるように上位を席巻&優勝しました。強いリストが周知され、メインの60枚がほぼ固定化されたのがイゼットフェニックスの勝因の一つでしょう。
プロツアーの権利獲得=上位36名まで見てみると、イゼットフェニックス・緑単信心・ラクドスミッドレンジの3強が堂々たる成績を残しているのが分かります。
また、《にやにや笑いのイグナス》コンボや《嵐の伝令》コンボといったオリジナルデッキが活躍したのもこの大会の特徴だと言えるでしょう。どちらも2日目に少し失速してしまったものの、見事次回プロツアーの権利を獲得しています。
グルール機体、セレズニア天使といったミッドレンジは散見されるものの、白単・赤単のような純然たるアグロデッキは全滅。さらに青単/バントスピリットも上位メタであるイゼットフェニックス・ラクドスミッドレンジに弱いのが響いたか、権利獲得者は0人とアグロデッキ好きにとっては少し寂しい結果となりました。
◎Dreamhack Atlanta 2022 U.S. Regional Championship(引用:MTG Melee)
優勝 :白単人間
準優勝 :イゼットフェニックス
トップ4:ロータスコンボ
トップ4:セレズニアオーラ
トップ8:ラクドスミッドレンジ
トップ8:青単スピリット
トップ8:奇怪な具現ファイアーズ(ヨーリオン)
トップ8:アゾリウスコントロール(ヨーリオン)
参加者928名と世界最大規模であろうアメリカの地域チャンピオンシップ。先に紹介したSofia(ブルガリア)の地域チャンピオンシップとは異なり、トップ8に8つのアーキタイプが進出する、パイオニアの多様性を示すかのような結果となりました。
白単、青単、オーラなど、Sofiaでは全滅していたデッキたちが活躍しているのも興味深いところです。
トップ8進出こそ0名に甘んじましたが、プロツアー権利獲得者=トップ48まで見渡すとそこには緑単信心が多数。権利獲得人数でいえば最多勢力であり、あと一歩が出なかっただけで間違いなく上位デッキの一角である証左といえるでしょう。
アメリカの地域チャンピオンシップではトップ8進出も果たした《睡蓮の原野》コンボ。使用者数がそこまで多くないので単純比較はできませんが、数字だけでいえば「勝率58%」と圧倒的な勝ち組になっています。
元々イゼットフェニックスやアゾリウスコントロールをカモにしていたデッキであり、「デッキが進化した」というよりは「フィールドがロータスコンボに寄ってきた」という感じですね。今週末も注目のデッキの一つです。
★デッキ解説:《嵐の伝令》コンボ
Marc Tobiasch 《嵐の伝令》コンボ Legacy European Championship Sofia (10-4-1・PT権利獲得) |
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デッキリスト | |
4:《植物の聖域/Botanical Sanctum》 4:《尖塔断の運河/Spirebluff Canal》 2:《カープルーザンの森/Karplusan Forest》 1:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 1:《繁殖池/Breeding Pool》 1:《シヴの浅瀬/Shivan Reef》 2:《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast》 1:《島/Island》 1:《山/Mountain》 1:《マナの合流点/Mana Confluence》 2:《耐え抜くもの、母聖樹/Boseiju, Who Endures》 20 lands 4:《嵐の伝令/Storm Herald》 |
4:《異世界の凝視/Otherworldly Gaze》 4:《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》 1:《イゼットの魔除け/Izzet Charm》 4:《群れの結集/Gather the Pack》 4:《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald》 4:《著大化/Colossification》 4:《燃え盛る怒り/Burning Anger》 25 other spells 4:《沈黙の墓石/Silent Gravestone》 |
デッキビルダーとして知られるMarc Tobiaschが地域チャンピオンシップに持ち込んだのは、誰も予想しなかったであろう《嵐の伝令》を使用したワンショット・キル・コンボ!!!
墓地に《著大化》と《燃え盛る怒り》を落とした状態で《嵐の伝令》が着地するとアラ不思議。なんと20点オーバーのダメージを本体に叩き込むことができるという、一風変わったコンボデッキです。
このコンボの強みは「《嵐の伝令》の誘発型能力が対象を取っていないこと」。
戻すエンチャントたちが戦場のどのクリーチャーに付くのかが解決するまで分からないため、コンボを防ぐためには召喚酔いしていないクリーチャーすべてを除去する必要がある=単体除去に耐性が非常に高いです。
同じ墓地に依存しているデッキである《大牙勢団の総長、脂牙》《パルヘリオンⅡI》デッキとの差別化がココで、イゼットフェニックスのような墓地対策が薄く、単体除去に依存しているデッキに対しては優位に振る舞えることでしょう。
デッキの構造は非常にシンプル。墓地を肥やす&パーツを探すことに特化しており、《マーフォークの秘守り》《異世界の凝視》《サテュロスの道探し》《群れの結集》と掘れるカードをこれでもかと採用。カラーリングの都合上《帳簿裂き》《鏡割りの寓話》といった相性の良いパワーカードもしっかり採用できています。
パルヘリオンデッキと違ってオール・インデッキ=軸を変えた戦い方はできないため、サイドボードは「相手の対策に対する対策」にスロットを割いています。《沈黙の墓石》は相手の《未認可霊柩車》を止めるだけでなく相手の《大牙勢団の総長、脂牙》も止めれる、相手への対策と墓地対策対策を兼ねたグッドカード。
《沈黙の墓石》では《大いなる創造者、カーン》からの《トーモッドの墓所》を防げないので、元から止めるための《真髄の針》。そして《ウルヴェンワルド横断》でサーチ可能な《ファイレクシアの破棄者》と様々な対策カードに対処できるようになっています。
★デッキ解説:セレズニア天使
Charles Wickham セレズニア天使 Legacy European Championship Sofia (10-5・PT権利獲得) |
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デッキリスト | |
3:《低木林地/Brushland》 1:《皇国の地、永岩城/Eiganjo, Seat of the Empire》 2:《耐え抜くもの、母聖樹/Boseiju, Who Endures》 2:《草茂る農地/Overgrown Farmland》 2:《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine to Nyx》 4:《枝重なる小道/Branchloft Pathway》 5:《平地/Plains》 1:《低木林地/Brushland》 4:《寺院の庭/Temple Garden》 24 lands 4:《希望の源、ジアーダ/Giada, Font of Hope》 |
2:《ポータブル・ホール/Portable Hole》 4:《集合した中隊/Collected Company》 3:《カイラの再建/Kayla’s Reconstruction》 9 other spells 2:《真髄の針/Pithing Needle》 |
ヒストリックなどでも長いこと活躍している、天使を主体とした《集合した中隊》デッキ。ライフゲインを多く有することからアグロ耐性が非常に高く、その一方でアゾリウスコントロールのようなデッキには滅法弱い、メタゲームに強く依存するという性質を持っています。
今回、『兄弟戦争』にて大きなアップデートがあったことにより、一躍上位に食い込めるようになりました。
そのカードがこちら!!
X=2で《集合した中隊》とほぼ同等の効果を持ち、フラッドした状況や《ニクスの祭殿、ニクソス》が機能している戦場では《集合した中隊》すらも超える性能となるこのカード。
3マナの天使を手札からプレイするだけではテンポが悪いため「《集合した中隊》を何枚引けるか」に勝率が依存するデッキでしたが、この《カイラの再建》が入ったことにより《集合した中隊》が実質8枚になり超進化!!!
ラクドスミッドレンジ側のデッキリストの変化=《反逆の先導者、チャンドラ》《ヴェールのリリアナ》が抜けたこと、そして天使側がこの《カイラの再建》を使えるようになったことにより、元々苦手だったこのマッチアップももはや相性が逆転したといえるでしょう。
《カイラの再建》は《集合した中隊》と異なりアーティファクトも捲ることができるため、サイドボードには苦手マッチであるアゾリウスコントロールや緑単信心用に《真髄の針》、ロータスコンボ用のサイドボードとして《減衰球》を採用しています。どちらも枚数は少ないですが、《カイラの再建》で探せるので採用枚数に対して効果の大きいサイドボードです。
★デッキ解説:セレズニアオーラ
白黒で構成されたオルゾフオーラことタカオーラが活躍したプレイヤーズツアーからもうすぐ3年。ヒストリックではよく見かけたオーラ戦略ですが、パイオニアではめっきり見ることも少なくなっていました。
そんな中、今回アメリカの地域チャンピオンシップで活躍したのはセレズニアカラーのオーラデッキ。モダンとは異なり《ぬめるボーグル》こそ使えませんが、パイオニアで唯一使える1マナの呪禁クリーチャー《林間隠れの斥候》をフィーチャーし、セレズニアオーラとして復活しました!
《皇の声、軽脚》《照光の巨匠》といった最近のカードで実は少しずつ強化されているオーラデッキ。
今回はオーラも新戦力が加入しており、今回の新人は1マナで+2/+0とトランプル付与という《怨恨》を思い出させる高性能。特に《照光の巨匠》と相性がよく、「巨大クリーチャー×二段攻撃×トランプル=即死」の方程式で勝利を掴みにいきましょう!
回避スペルも地味にアップデートされました。《ケイラメトラの恩恵》ではエンチャントしていない生物は守れない=エンチャントにスタックで除去を防ぐことはできませんでしたが、この《ロランの脱出》であればそれも可能。占術2もこういうピーキーなデッキでは重宝されます。
そしてなんといっても嬉しいのがマナベースの強化です。最序盤から2色を均等に使うアグロデッキなので、ダメージランドである《低木林地》は待望の一枚!!
安定が第一、減ったライフは《持続のルーン》で取り返せと言わんばかりに、フル投入されていることからもこの《低木林地》が如何に重要で、かつこのデッキを強化したかを感じ取ることができます。
■終わりに
先週末の大型大会にて活躍を見せた、新進気鋭のデッキたちを今回の記事ではご紹介しました。デッキビルダーたちの確かな腕が発揮されており、素直に感心しましたね。特にMarc Tobiaschの《嵐の伝令》コンボは凄かった!
ご存知の方も多いだろうとあえて文中ではピックアップはしませんでしたが、トップメタのデッキたちも『兄弟戦争』で着実に強化されており、新エキスパンションの影響は大きいなと改めて感じている次第です。
『兄弟戦争』の主な新戦力たち。特に緑単信心はサイドボードが大幅に強化されました。
アグロ、ミッドレンジ、コントロール、コンボと何でもアリなパイオニア環境。今週末は果たして何が勝ち組になるのでしょうか?今から楽しみですね!
もちろん僕もチャンピオンズカップファイナルに参加予定です。プロツアーの権利、そして世界選手権の権利を獲得できるよう、全力を尽くして頑張ります!会場でお会いする方、対戦する方はよろしくお願いします!
それでは今回はここまでです。
次回は地域チャンピオンシップのレポートをお届けします!!