MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【日本選手権2021 FINAL TOP4のボロスができるまで】

皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。

先週末に開催された日本選手権201FINALに参加しました。結果はオリジナルのデッキを使ってのトップ4!優勝こそ逃しましたが、望外の好成績に大満足です。

今回の記事では、デッキ構築の過程や思考を書いていきます。

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■ステップ0:さらばエスパーコン

前回の記事でも書きましたが、今回の大会に向けては完全に一人でやることを最初から決めていました。普段のチャンピオンシップや昨年のリーグなどはチーム調整でやるのが常でしたので、自分の力試しとしては絶好の機会です。

そして自分でデッキを作る・使うとなると、デッキの強さも大事ですがもちろん好みも大事になってきます。「強さ100・楽しさ50」のデッキと「強さ95・楽しさ100」のデッキが存在した場合、プロとしてプレイしている以上基本的に前者を常に選択するようにしていますが、今回はむしろ後者を目指しました。たまにはエンジョイ勢でもいいじゃない。

僕は自分のプレイスキルの偏りや成功体験もあり、自分の中に遅いコントロールが好きな「エスパー井川」と速いアグロが好きな「ボロス井川」を飼っています。全部受けきって勝つか、全部無視して殴り勝つかの両極端が好きなのです。この2つはプレイ/調整ともに得意分野でもあり、プロの中でも比較的高いスキルがあると自負しています。

逆に全レンジで相手と戦い常に攻守を切り替えるミッドレンジや、対策カードへの対応だったりオールインするかの判断が必要となるコンボデッキはあまり得意ではなく、そのスキルはプロの中でもかなり劣る方だという自覚もあります。ここは今後の課題ですね。

今回はまず発売直後にアグロデッキを回した後に、ある程度環境が固まって「オルゾフ系が強そうだ」となった段階でコントロールの調整に着手しました。

エスパー・ウソリューション

インポートデータ

青白コントロールからスタートしましたが、オルゾフ系の《婚礼の発表》《不笑のソリン》《蜘蛛の女王、ロルス》といった多角的な攻めに対処するためにタッチ黒をすることを選択。これによりプレインズウォーカーに触れないという《告別》の弱点もカバーでき、より強く運用できるようになりました。

オルゾフ系のデッキの除去が《忘却の儀式》《消失の詩句》であるため、インスタントタイミングのコレに対処できないじゃん!ってことで採用。追放系カードとの噛合いは悪いですが、カウンターや《運命的不在》などもあり、相手のプレインズウォーカーをパクって勝利すること多数。

完全にラダーならではの「分からん殺し」であることは自覚しているのですが、その気持ちよさにハマり《トリックスター、ザレス・サン》と共に日本選手権出場を一度は心に決めました。これが大会前週の土曜日ぐらいです。

ですが、密かに「勝たないでくれ、流行らないでくれ」と願っていた祈りは通じず、cftsocのジェスカイコンボがチャンピオンシップ予選を優勝。

ジェスカイコンボ By cftsoc

インポートデータ

前の環境から重々承知していましたが、コントロール対決においてこのコンボは余りにも圧倒的です。2回仕掛けられるためカウンターに強い《感電の反復》、そして一度通るとマナ差が付く《予想外の授かり物》。この2種類がある限り他の色のコントロールデッキは相手にならないでしょう。

イゼットベースのデッキが流行ると僕のエスパーコントロールはまさにボコボコのボコ。こりゃアカンわってことで早々にコントロールに見切りを付けて、もう1人の僕に託すことにしました。

■ステップ1:環境的に強いカードを探せ!

コントロールがダメとなると、次に組むのはアグロデッキ。イゼット/ジェスカイとオルゾフ/エスパーの両方に有利なデッキを組みたいな、ということで効果的なカードを羅列していきます。

そこで真っ先に上がったのがこの3種類。《放浪皇》や《予想外の授かり物》といったカードに後攻でも対応できる《傑士の神、レーデイン》《精鋭呪文縛り》は効果的ですし、《スレイベンの守護者、サリア》はそれらに加えて《婚礼の発表》にも待ったをかけられます。

これぞ求めていた品質!新デッキ構築に向けて一気にテンションが上ります。うおおおお!!

■ステップ2:構造的脆弱性を許容しない。理想を高く!

なら白単アグロでいいじゃん、と思われる方が多数だと思いますが、僕としては「オルゾフ系がある程度いるだろう」と考えていた今大会で白単アグロを使いたくありませんでした。その理由が、タフネス1クリーチャーたちの脆弱性です。

デッキに採用する以上、初手に来て適正ターンでプレイすることを念頭にするのですが、少し想像して萎えました。

先攻白単1T《堕ちたる者の案内者》、後攻オルゾフ1T《よろめく怪異》。対戦ありがとうございました。

先攻白単2T《剛胆な敵対者》、後攻オルゾフ2T《神憑く相棒》。対戦ありがとうございました。

こういう圧倒的に損なトレードをしたくなかったので、他のカードを使って弱点を克服することに。ここで白羽の矢が立ったのが、環境初期に使ってカードパワーを感じた1マナ域たちです。

赤単やボロスといった赤いビートダウンを回しましたが、これら2種類のカードはどちらも「後半に引いても腐りづらい」「適正ターンだとなお強い」という素晴らしい1マナ域だと実感。

最高の1マナ域。実質1マナ2/2に加えて、3つ能力が付いているという謎の優遇されっぷりです。

第1章の1点は後半引いたときに速攻のように打点計算できるだけでなく、プレインズウォーカーを撃ち落としてくれます。戦闘中に出てきて「-2」を使った《放浪皇》、「-3」でトークンを生み出した《蜘蛛の女王、ロルス》などがメインターゲットとなります。

第2章は本当に凄い!「+1/+1カウンターを置く」効果によって2マナ域の価値が一気に向上します。特に《スレイベンの守護者、サリア》《光輝王の野心家》が《棘平原の危険》されなくなるのが最高ですね。

第3章でクリーチャー化、速攻を持っているため殴れるようになります。しかも常在型能力が地味に凄い。「あなたがコントロールしている発生源からダメージを受けたクリーチャーが死亡する場合、代わりに追放する」という能力なのですが、これがオルゾフ系にとても効果的です。死亡誘発を阻止できるため《ひきつり目》《よろめく怪異》《魅せられた花婿、エドガー》といったクリーチャーでのブロックがやりづらくなりますし、《蜘蛛の女王、ロルス》の忠誠度も復活しなくなります。

これだけ能力があってたったの1マナ。「赤ければ使いたいカード」であるのは間違いありませんが、僕は一歩踏み込んで「このカードのために赤を使う」という選択に至りました。

1T《熊野と渇苛斬の対峙》から2T《スレイベンの守護者、サリア》。相手は死ぬ。これが今回のデッキコンセプトです。

タフネス1なので《堕ちたる者の案内者》と変わらないように見えるかもしれませんが、コイツは序盤にドロップして《神憑く相棒》などと睨み合っても損はしません。余ったマナを毎ターン「換装」に充てることにより打点が上がりますし、「換装」しておくことで全体除去からも避けることができるという史上最強の《怒り狂うゴブリン》です。

特に白単ベースでデッキを組むと《傑士の神、レーデイン》《精鋭呪文縛り》《輝かしい聖戦士、エーデリン》など3マナ域が少し膨れやすいので、4ターン目に「3+1」で動く選択肢を作れるという点でも非常にデッキと噛み合っています。

この2種類の1マナ域を採用する=赤を足すことに決めたので、サイドボードには《スカルドの決戦》を採用できるように。

・仕事をしにくい、弱いクリーチャーが多い
・全体除去に耐性がない、盤面で見えている分しか打点が出ない
・長期戦をしたときにアドバンテージを取れるカードが少なくジリ貧になりやすい

これらの個人的に気になっていた白単の弱点が、これらの採用で一気に解消できました。

白単に拘らずに自由な発想でデッキを組めたおかげです。

■ステップ3:マナベースを考えよう!

ベースが白単アグロなのに1マナ域が赤いという少し変わった構成になったので、マナベースを慎重に作らなければいけません。

・初手に欲しいので、赤マナはアンタップインが最低でも13、できれば14枚欲しい。(最終的に14)
・3マナ域の(白)(白)のカードを考えると、白マナは最低でも17、できれば18欲しい。(最終的に17)

これらの要請を満たすために採用されたのが、最弱と名高い通称「見せランド」です。

中盤以降はほぼ確定タップインであり、デッキ構築にもかなりの制限をかけるこの土地。ですが最序盤の2色アンタップインを重要視するのであれば、《日没の道》(通称スロウランド)よりもこちらを優先すべきでしょう。

これを使うために《皇国の地、永岩城》《反逆のるつぼ、霜剣山》といった土地は諦めざるを得ませんでしたし、《髑髏砕きの一撃》も1枚に抑えてなんとか平地/山カウントを11枚確保しました。それもすべては最序盤の2色アンタップインのためです。

■デッキ完成!

こういった過程を経て、自分の理想を詰め込んだデッキが完成しました。ボロスアグロというか白単タッチ赤です。自分のMTGアリーナ上ではデッキ名が「Kumano Thalia」でした(笑)

ボロスアグロ By 井川 良彦:日本選手権2021 FINAL (トップ4)

インポートデータ

デッキの根幹は最初に作った時点から変わらず、枚数の微調整だけを行っていきました。

ビートダウンとして最高峰の4マナ域。地上が止まっても飛行だけで殴り切るパターンは多いですし、リソースを稼いでくれる数少ないカードです。攻めても守っても強い。

特にこのデッキでは《兎電池》の「換装」で速攻を付与できるので、そのもっさり感もかなり改善されています。毎ターン天使が走る!!!

なお余談ですが、最初にこのデッキを組んだときはサイドボードに《軍団の天使》の3・4枚目を入れ忘れており、出した瞬間に恥ずかしくてマッチ投了しました。なんかサイドボードに余裕あるなーと思ってたんだよね。。。皆さんも気をつけてください。

最初は入っていなかったものの、メインの除去の枚数担保&白/緑アグロを考えるとサイドボードにも複数枚欲しいので、最終的にメイン2:サイド1というバランスに。《粗暴な聖戦士》《スカイクレイブの亡霊》の合計枚数は対アグロ系の勝率に直結するというのが僕の持論です。

特に除去が薄いナヤルーンに対してのメイン戦での性能は凄まじく、これをクルクルしているだけで勝てたゲームも実際に本番でありました。イージーウィン。

最初は白系アグロの《スカイクレイブの亡霊》《粗暴な聖戦士》合戦を制するために《炎恵みの稲妻》を採用していました。

ですがラダーで緑単の《群れ率いの人狼》にボコボコにされまくったのと、ナヤルーンに対して後引きした際に何もしない点に嫌気が差して、《ポータブル・ホール》に変更することに。

逆にこちらは試して採用を見送ったカード。自分が《スレイベンの守護者、サリア》を4枚採用しておきながらコレを大量に採用するのはあまりにも理じゃなかったので、一瞬で抜けました。

4マナだけど4マナではなく、攻めたいタイミングで、しかも自分都合でプレイできないのはあまりにもビートダウンとして厳しいです。

本戦の結果

R1 ナヤルーン ○××
R2 ナヤルーン ○×○
R3 ナヤ人間 ○×○
R4 スゥルタイ忍者 ○×○
R5 白単アグロ ○○
R6 ゴルガリミッドレンジ ○○

5-1でトップ8進出!

QF グルールアグロ ○○
SF 白単アグロ ××

ということで最終結果はトップ4!!意識して作ったはずのイゼット系/オルゾフ系といったデッキに一度も当たらなかったのは想定外でしたが、デッキが良く回ったりと一日通して運が良かったですね。

大会を優勝したのは、白単アグロを使用した中道くん。(おめでとう!!!)

白単アグロ By 中道 大輔日本選手権2021 FINAL (優勝)

インポートデータ

僕が色を足してまで見限った白単アグロ。しかもキレイな構成&《放浪皇》4枚入りと完全に構築理念が違う形であり、悔しいと同時に新しい発見をした気分です。

準決勝で対戦しましたが、中道くんはプレイも非常に巧みで、特に彼のコンバットは一度のミスもなかったように見えました。リミテッドGP王者でもある彼は戦闘巧者であり、すなわちアグロ巧者です。素晴らしい!

草の根時代から彼にはよく当たっては負けていたので、個人的に一目置いているところもあります。次こそはリベンジしたいですね。

■終わりに

久しぶりに1から一人でデッキを組んだので、思考整理も兼ねてその調整過程やデッキ構築の思想などを書いてみました。普段よりノリノリで書いたのが伝わったかと思います(笑)

来週末には神河チャンピオンシップ、フォーマットはヒストリックとアルケミー!気分を一新して、チームメイトたちと調整に励んでいきます。目指せ世界選手権!

ということで今回の記事はここまで。次回はチャンピオンシップのレポートをお届けします。お楽しみに!


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