MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【ストリクスヘイヴンチャンピオンシップ】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末に開催された『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップに参加しました。
今回のCSはいつものメンバーである佐藤・原根・熊谷・高橋に加えて、増田 勝仁・斉藤 徹・市川 ユウキ・松本 友樹の計9名で臨みました。
画像は晴れる屋公式サイト、Team Cygames公式サイト、BigMagic公式サイトよりそれぞれ引用
結果だけ最初に書くと、僕個人としては前回のCSに続き、今回も10-5で22位、2,000ドルとリーグポイント2点を獲得!
チームとしても9人中7人が2日目進出、さらには佐藤・高橋が11-4、熊谷・原根・井川が10-5と、トップ8進出こそできなかったものの、チームとして高いアベレージを記録することができました!
今回の記事では、スタンダードとヒストリック、それぞれのデッキ調整についてお話していきたいと思います。
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★スタンダードの調整過程
■今回のウソリューション:ディミーアコントロール
今回のチャンピオンシップはスタンダードとヒストリックのデッキ提出日が別日程に設定されていたため、チーム内を二分して担当フォーマットを決めることなく、全員が両方のフォーマットを調整するかたち。
スタンダードはすでに固まっている環境であり、比較的新しいデッキであるイゼットドラゴン周りを最初に試した(そして手応えは良くなかった)以外は、既存のデッキのどれをブラッシュアップするか、選ぶか、というところ。
直前のリーグで好成績を収めていたジェスカイ変容こそ増田くんが熱心に調整していましたが、チーム内でのスパーリングも、彼自身のラダーの成績も、お世辞にも良いものではなく、個人的にはまず使うことはないだろうな、と横目で見ながら他のデッキの検討を進めていました。
相変わらずトップメタはスゥルタイ根本原理。ただし白単や赤単には厳しく、そこに厚く取るとイゼットやミラーに弱くなるため、繊細な調整が必要な印象。チーム内に知見を持つメンバーがいるので、彼らが選ぶのであればその際に検討する形で、自分ではノータッチ。
イゼットはラダーでよく当たる。概ね2番人気。ただしスゥルタイにそこまで強いわけではない上に白単にも相性が悪く、器用貧乏な印象。積極的に使う理由は見出だせない。
スゥルタイ・イゼットに強いので高評価。個人的にプレイが慣れており、細かい調整もできる。ただしメタられると脆いだけでなく、ナヤ・ローグといった天敵がいることにも注意。何もなければコレ。
可もなく不可もなく。CSという場では色々なデッキに対して五分程度で臨めるのは強みであるが、このデッキ自体は伸び代もなく、意識もされている側。できれば使いたくない。
といった感じで考えていたところ、とある大会結果がチームの目に留まります。
スゥルタイに強く、イゼットにも強く、白単にも強い。もしかしてこのデッキ、ソリューションか??
降って湧いて来た新デッキにテンションの上がる面々。特にコントロールが好きな僕はこのデッキにかなりの期待を込めて熱心に調整しました。
調整に数日を費やした結果、、、デッキが、あまり、強く、ない???
スゥルタイとイゼットにある程度有利ではあるのですが、あくまで微有利。対スゥルタイでは除去が多めに入っているのでカウンターを引けずに負けるパターンもあれば、《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》1体に苦戦を強いられるパターンもあります。
この生物1体に何度苦杯を喫したことか…
対イゼットはスゥルタイよりは良いものの、相手だけ《精神迷わせの秘本》だと不利になったりと、それなりに再現性のある負け方を繰り返しました。
《精神迷わせの秘本》ゲー=運ゲーでは?本当に有利か?
そして、有利な相手に対する相性が「微有利」でしかないのに対して、不利な相手には「かなり不利」。赤緑ベースのアドベンチャーデッキにはサイド後に《運命の神、クローティス》だけで負ける試合が多発しました。
といった感じで徐々にボロが出てきて、また1人、また1人とこのデッキを離れていき、最終的にはこのデッキを選択肢に入れたのはごく少数でした。
とはいえスゥルタイ・イゼット両方に五分以上あるという利点、また普段のリーグでは使えない系統のデッキ(大勝ちも大負けもしやすいためハイリスク)であるため、挑戦という意味も込めて僕はディミーアコントロールでサブミットして布団に入りました。他に良い選択肢がなかったため、半ば盲目的になっていたというのも正直なところです。
サブミット〆切12時間前、チーム状況は以下。
ジェスカイ変容:増田・市川・佐藤
ディミーアコントロール:井川・斉藤
ディミーアローグ:高橋
未定:原根・熊谷・松本
■一眠りして…あれ?????
サブミットも終えているため、アラームも付けず眠りにつき、起きたら14時半。サブミット〆切まであと1時間半です。
悩んでた面々はどうなったかなーと軽い気持ちでDiscordを覗くと…
ジェスカイ変容:増田・市川・佐藤・原根・熊谷・松本・斉藤
ディミーアコントロール:井川
ディミーアローグ:高橋
あれ?????
悩んでいた面々が全員ジェスカイ変容になっているだけでなく、「僕はこのデッキで行きます!」と自信満々に答えてくれていた斉藤くんまでジェスカイ変容になってる!!
ここで決断を迫られます。
自分を信じて、仕上げたディミーアコントロールを貫くか。チームを信じて、ほとんど回していないジェスカイ変容に乗り換えるか。
僕は後者を選びました。残った1時間半で軽くラダーをして、最低限は回せることを確認してから再サブミット。あとは直前に猛練習して極めよう。
自分を信じるな、チームメイトを信じろ。
★使用したジェスカイ変容について
ジェスカイ変容【インポートデータ】 | |
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デッキリスト | |
4:《ラウグリンのトライオーム/Raugrin Triome》 4:《針縁の小道/Needleverge Pathway》 4:《河川滑りの小道/Riverglide Pathway》 4:《連門の小道/Hengegate Pathway》 3:《島/Island》 3:《山/Mountain》 22 lands 4:《雷の頂点、ヴァドロック/Vadrok, Apex of Thunder》
|
1:《果敢な一撃/Defiant Strike》 2:《神秘の論争/Mystical Dispute》 2:《火の予言/Fire Prophecy》 1:《真実の視認/See the Truth》 4:《非実体化/Unsubstantiate》 2:《セジーリの防護/Sejiri Shelter》 3:《棘平原の危険/Spikefield Hazard》 4:《戦利品奪取/Seize the Spoils》 4:《表現の反復/Expressive Iteration》 3:《プリズマリの命令/Prismari Command》 26 other spells 2:《レッドキャップの乱闘/Redcap Melee》 |
増田くんが最初から最後まで1人で調整してくれた珠玉のジェスカイ変容。彼以外のメンバーがこのデッキに乗り換えたのが直前だったため、細かい調整を手伝えなかったことが悔やまれます。
僕自身はこのデッキの調整に一切貢献しておらず、語る術を持ちません。細かい解説については、彼が執筆した記事をご覧いただければと思います。
ジェスカイ変容デッキガイド ~チャンピオンシップに持ち込んだ理由~
■本戦の結果
R4 イゼットドラゴン ○○
R5 ナヤアドベンチャー ×○○
R6 ジェスカイ変容(くまぴー) ××
R7 白単 ○×○
R12 サイクリング ×○○
R13 イゼットドラゴン ○×○
R14 スゥルタイ根本原理 ××
R15 スゥルタイ根本原理 ×○×
5-3。直前に乗り換えての勝ち越しに感謝感激です。上振れたと言ってもいいでしょう。スゥルタイには基本的に有利という認識でしたが、相手の構成が比較的こちらに強い構成であり、またミスがあったことも重なり、最後2連敗を喫してしまいました。
チーム全体では34-21=勝率61.8%と好成績。マイナーデッキであるがゆえの「わからん殺し」も含めて、良いタイミングでベストデッキを使うことができました。
★ヒストリックの調整過程
■ヒストリックアンソロジー5?知らない子ですね。。。
オラクルパクトが禁止になったヒストリック。イゼットフェニックスが最強デッキの一角であることは疑いようもなく、イゼットフェニックスを使うか、それともイゼットフェニックスを倒せるデッキを作るかの2択であることは、調整開始時点からわかっていたことでした。
チーム内では早い段階からイゼットフェニックスに注力していたメンバーが数人いたので、僕はイゼットフェニックス以外のデッキに着手。
ヒストリックアンソロジー5のカードを使った多数のオモチャをビルド&スクラップした後、ジェスカイコントロールを調整することにしました。
楽しかったオモチャたち。Bo1ならまだ未来があったけどBo3はちょっと…
ジェスカイコントロールには2パターンあり、《奔流の機械巨人》《マグマ・オパス》《ミジックスの熟達》を搭載したコンボコントロール「ジェスカイオパス」と、《サメ台風》とカウンターを多めに採用した純正コントロール「ジェスカイシャーク」の2つに分類されます。前者の方は原根くんが調整初期から熱心に触っていたので、僕は後者を担当。
※この呼称は一般的ではないですが、どちらも「ジェスカイコントロール」と呼ばれて混同されているのが個人的に気に食わないのでこう呼んでいます。ジャンドサクリファイスの悲劇を繰り返すな。
対イゼットフェニックスを考えると、「メインは《マグマ・オパス》での押しつけが強いオパス型が有利で、サイド後は無駄牌の少ないサメ型が有利」というのがリーグ時点での感触でしたが、改めてテストしてみると、サメ型でもメインでイゼットフェニックスに対して有利に戦えるという嬉しい誤算。
それであれば《神秘の論争》に弱い《奔流の機械巨人》《マグマ・オパス》パッケージが入っていないため安定感もあり、またジェスカイ同士の直接対決で軍配が上がるため、メタ上位を見るのであれば、サメ型の方が優れているのは自明の理。ということで僕はサメ型で最もイゼットフェニックスに強い形を追求していき、最終的にはサブミットした形に着地しました。
■Phoenix or not?
チームの大多数はイゼットフェニックスを選んだのですが、僕は自分で調整したジェスカイシャークを使うことにしました。その理由は主に3つです。
1. チームのイゼットフェニックスが、他チームが持ってくるであろうイゼットフェニックスに比べて、特別優れていると思えなかった。
トップメタであるイゼットフェニックスを使う以上は、それなりの差別化が欲しいところ。チーム内では《アゴナスの雄牛》と《魂標ランタン》の採用により差を付けた、と結論づけていましたが、僕はこれに懐疑的でした。
確かに《アゴナスの雄牛》《魂標ランタン》ともにミラーマッチで強いカードですが、どちらも環境初期から散見された、いわば普通のカードです。自分たちが気づいた以上、他のチームもこのカードにたどり着いている可能性は高く、そうなるとほぼ五分の勝負になる=優位性はないのではないか、と考えました。
なお、蓋を開けてみるとこの《アゴナスの雄牛》《魂標ランタン》を採用しているリストは予想外に少なく、チームのイゼットフェニックスはミラーマッチ7-3と大きく勝ち越すこととなりました。僕の杞憂で終わったのですが、正直他のイゼットフェニックスが弱かっただけであり、考え自体が間違っていたとは思っていません。(相手が弱い方に期待するのは下策なため)
2. 自分のジェスカイシャークがイゼットフェニックスに対して高い勝率を出せていた。
イゼットフェニックスを使わないのであれば、イゼットフェニックスに有利なデッキを使うのが理。ということで自分で調整したジェスカイシャークが、イゼットフェニックスに対して高い勝率を見込めると判断した段階で、このデッキを使うことを決めました。
ちなみに僕のジェスカイシャークは《渦まく知識》を不採用にしている都合上、どうしてもミラーマッチに不利な構成になっています(特に1ゲーム目)。ただし、僕の形の方がタップインが少なく、かつドローだらけのハンドが来ることが少ない=ラグらずに相手を捌けるため、イゼットフェニックスに強い構成であるのもまた真です。
ということで今回は「基本的にミラーに弱いデッキ=バッドデッキである」というセオリーを無視し、「トップメタに強く作った別デッキだ」と考え直すことにしました。
3. デッキ提出後に、イゼットフェニックスを練習する時間を確保する余裕がなかった。
ヒストリックのデッキ提出後、CSの開始までに2-3日ほど時間があるのですが、この時間はすべてジェスカイ変容の習得に充てる必要があります。イゼットフェニックスは前環境である程度回していたので知見があるとはいえ、使うのであれば(特に《アゴナスの雄牛》入りのリストは)練習が必要です。
ジェスカイの方は既にプレイが慣れている&守るだけのコントロールは基本的に簡単(だと僕は思っている)なので、サブミット後に練習は不要です。実際、デッキ提出から本番までこのジェスカイは全くプレイしませんでしたが、特に困ることはありませんでした。
こういった理由から、チーム9人中7人がイゼットフェニックスを手にとるのを横目に、自分を信じてジェスカイシャークでサブミットしたのでした。
チームメイトを信じることも大事だが、時には自分を信じることも大事だ。
★使用したジェスカイシャークについて
個人的に思い入れもある、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を軸にした純正コントロール。「+1」で起こした2マナからしっかりと動けるよう、一般的なリストに比べて、2マナ呪文をかなり多めに採用しているのが特徴です。
今回、このジェスカイシャークを使う理由になったカード。イゼットフェニックスのクリーチャーを基本的にすべて裏目なく倒すことができるだけでなく、《サメ台風》トークン、《ヴェロマカス・ロアホールド》、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》、《探索する獣》など、環境の大部分のクリーチャーを2マナで対処することができる、強力なインスタントです。メイン2枚、サイドに1枚と、かなり多めの枚数を採用しています。
《コーの精霊の踊り手》《空飛ぶ思考盗み》など、一部のマッチではキーとなるクリーチャーを倒せない(そして致命的になる)のですが、オーラもローグもデッキが弱く、CSではまず当たらないだろうと考えていました。
イゼットフェニックスを捌くにはこのカードが必須です。何度も帰ってくる《弧光のフェニックス》と真面目に向き合うとライフもリソースも足りなくなりますし、《信仰無き物あさり》のフラッシュバックを防がないと、相手の不要な土地が呪文に替わってしまいます。
イゼットフェニックス以外にも、ジェスカイターン・ジェスカイオパスの《ミジックスの熟達》、黒単の帰ってくるクリーチャー陣、ジャンドフードの《大釜の使い魔》、オーラの《歩哨の目》《夢の巣のルールス》など、見た目以上に幅広いデッキに刺さります。この《安らかなる眠り》をメインから無理なく採用できるのも、ジェスカイシャークの強みです。
形は違えど、同じジェスカイを調整していた原根くんが見出した1枚。《終局の始まり》のスロットを、より強力なフィニッシャーである《パルン、ニヴ=ミゼット》に置き換えたことで、《ドミナリアの英雄、テフェリー》をサイドアウトできるようになり、イゼットフェニックスに対して更に強くなりました。ただしその代償に、ミラーマッチとジェスカイターンには弱くなりました。
■本戦の結果
R1 イゼットフェニックス ○×○
R2 イゼットフェニックス ○×○
R3 ジェスカイターン ×○×
R8 イゼットフェニックス ○○
R9 イゼットフェニックス ○○
R10 ジェスカイシャーク ××
R11 5色ニヴコントロール ○×○
5-2。メタったイゼットフェニックスに4回も当たれる幸運もあり、好成績を残すことができました。従来のジェスカイターンには有利という認識だったのですが、初めて対峙する《原初の潮流、ネザール》に完敗。
★終わりに
チームを信じたスタンダード、自分を信じたヒストリック。どちらも裏目を引くことなく、満足行く結果が出せました。毎度のことながら、共に調整し戦ってくれたチームメイトたちに感謝です。
またチーム全体で見ても好成績であり、ZNRCS→KHMCS→そして今回のSTXCSと、回を重ねるごとに成績が良くなっていったことが嬉しいです。反省を糧に、次の大会に臨む。「これぞチームの力」と胸を張れます。
今年のリーグは残すところあと1回。なんとかガントレットの出場権を掴み取り、ガントレットからのMPL昇格という逆転満塁ホームランを打つべく、引き続き頑張っていきます!
それでは今回はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!