MTG │ デッキ紹介│ 高橋優太【モダン大型大会結果分析】
先週はイタリアのトリエステで、 LMS Triesteというモダンの大型大会が開催されました。
配信や解説も行われて、かつてのモダングランプリのような盛り上がりを感じました!
徐々に海外渡航への制限が少なくなっている今、マジックの大会のために海外へ行く日が再び来るかも!
今回は、この大会のトップ4デッキを紹介して行きます。
■参考情報
Twitter:@LegacyEUTour
LMS Triesteの大会結果を参考にしています。
■ティムールライノ(優勝)
ティムールライノ(優勝) | |
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デッキリスト | |
1:《繁殖池/Breeding Pool》 1:《蒸気孔/Steam Vents》 1:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 1:《ケトリアのトライオーム/Ketria Triome》 1:《天上都市、大田原/Otawara, Soaring City》 1:《耐え抜くもの、母聖樹/Boseiju, Who Endures》 2:《焦熱島嶼域/Fiery Islet》 4:《霧深い雨林/Misty Rainforest》 4:《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》 3:《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 2:《宝石の洞窟/Gemstone Caverns》 1:《森/Forest》 1:《島/Island》 1:《山/Mountain》 24 Lands 2:《歴戦の紅蓮術士/Seasoned Pyromancer》 |
2:《強大化/Become Immense》 4:《厚かましい借り手/Brazen Borrower》 4:《衝撃の足音/Crashing Footfalls》 4:《死亡+退場/Dead+Gone》 4:《火+氷/Fire+Ice》 4:《否定の力/Force of Negation》 4:《暴力的な突発/Violent Outburst》 26 other spells 3:《血染めの月/Blood Moon》 |
デッキ内のマナ総量2以下のカードを0枚にすることで、続唱により確実に《衝撃の足音》を唱えて、4/4のサイトークン2体で攻めて行くデッキです。デッキ名のライノ(Rhino)はそのままサイです。
《衝撃の足音》は打ち消し呪文に弱い性質があるものの、《暴力的な突発》がインスタントなので相手のターンに仕掛ける事が出来て、ターン終了時に《暴力的な突発》→《衝撃の足音》から次のターンに《断片無き工作員》→《衝撃の足音》という動きを全て対処するのは困難です。
《断片無き工作員》は4/4を2体出すため、3マナで合計10/10と驚異のスタッツ!
同じく続唱を軸としたデッキに《死せる生》があり、《死せる生》の場合はデッキ全体をサイクリング付きクリーチャーで構成するため、固定パーツが多いです。そのぶん《死せる生》は通れば勝ちと言える威力があり、全体除去と強力な盤面形成をします。
比較してティムールライノの場合は続唱2種類と《衝撃の足音》が中心パーツで、残りのスロットは相手への除去や打ち消しに充てる事ができます。3マナ10/10を守ればそれだけで勝ちますからね。
固定パーツが多いが続唱後の威力が高いのが《死せる生》、ティムールライノは《死せる生》ほどの威力は無いものの、より相手への妨害を重視したデッキといった区分です。
続唱の効果の都合で、デッキ内にマナ総量2以下のカードを採用できませんが、そこを補ってくれるのが分割カード。
「分割カードがスタック以外の領域にある場合、カード・タイプや色、マナ・コストは両方の合計として扱う。」というルールなので、《死亡+退場》や《火+氷》はマナ総量が4で、続唱を阻害せずに序盤の軽量除去として使用する事が出来ます。
《激情》は軽量クリーチャーが多く使われるモダンでは、4点振り分けで2体以上除去できる事も多く、ハンマータイムや黒緑ヨーグモスに特に効きます。
このリストでは《強大化》を採用しているのが面白い!サイトークンはトランプル持ちなので+6/+6修正によりダメージが貫通しますし、8/8の《濁浪の執政》も乗り越えられます。モダンはフェッチランドやショックランドでライフが減りやすいので、《断片無き工作員》からの合計10/10から《強大化》で合計16点で勝つこともありそうです。
続唱の効果の都合で、デッキ内にマナ総量2以下のカードを採用できないので、サイドボードはこの4種類が一般的。ティムールライノで検索しても、多くのリストのサイドボードがこの4種類で、それほどこの4種類が安定しているとも言えます。
《血染めの月》は《原始のタイタン》や《不屈の独創力》を軸にしたデッキへの対策。《活性の力》はハンマータイムなど《ウルザの物語》を中心にしたデッキに良く効きます。
イゼットラガバンのように打ち消しが多いデッキ相手に対しては、サイドボード後には《衝撃の足音》だけに頼るのではなく、《忍耐》《神秘の論争》サイドインによりティムールミッドレンジとして戦って行きます。
■マーフォーク(2位)
マーフォーク(2位) | |
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デッキリスト | |
1:《水辺の学舎、水面院/Minamo, School at Water’s Edge》 1:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》 2:《天上都市、大田原/Otawara, Soaring City》 8:《冠雪の島/Snow-Covered Island》 4:《変わり谷/Mutavault》 4:《魂の洞窟/Cavern of Souls》 20 Lands 4:《緻密/Subtlety》 |
2:《四肢切断/Dismember》 4:《霊気の薬瓶/AEther Vial》 6 other spells 1:《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》 |
マーフォークを並べ、各種ロードにより全体強化して攻撃して行くデッキです。
《アトランティスの王》《真珠三叉矛の達人》はどちらも+1/+1修正と島渡り(防御プレイヤーが島をコントロールしているかぎり、このクリーチャーはブロックされない)を付与して、最近のモダンは《蒸気孔》など島を使うデッキが多いのでブロック不可が強烈!
相手が島を使わないデッキだったとしても、《激浪の形成師》キッカーにより島に変えて、島渡りでブロック不可にできます。
団結のドミナリアで《ヴォーデイリアの呪詛抑え》が加入したことにより、打点を強化すると共に妨害能力も得ました。例えば相手がフルタップで続唱から《衝撃の足音》したとき、瞬速から打ち消して行けます。
《霊気の薬瓶》はカウンターを2個乗せて、2マナが中心のマーフォークの序盤の展開を後押ししてくれます。インスタントタイミングでクリーチャーを出せるので、例えば2点の《邪悪な熱気》にスタックでロードを出して、他のマーフォークを守るような動きも出来ます。
《霊気の薬瓶》と《魂の洞窟》により、相手の《対抗呪文》に対して強いのもマーフォークの長所です。
《リシャーダの荷運び》は《リシャーダの港》内蔵で相手のマナを制限しつつ、1マナマーフォークから2マナロードと繋げて攻めて行きます。
《海と空のシヴィエルン》はマーフォーク以外のデッキにも時折採用される、3/4で攻撃時1ドローと単体性能が非常に高いクリーチャー。マーフォークと組み合わせたときは更に強力で、単体除去で対処するのが難しいです。伝説のクリーチャーですが、生き残れば勝つ性能なので4枚採用されています。
デッキのカードのほとんどが青なので《緻密》は想起でプレイしやすく、相手の《激情》や《スランの医師、ヨーグモス》といった除去付きのクリーチャーをデッキに戻します。
マーフォークはモダンホライゾンが出る前は、メタゲームに一定数いるデッキでした。使用者が減った背景としては、《虹色の終焉》で《霊気の薬瓶》がメインから対処されてしまう事、《激情》による複数除去などが考えられます。
とは言え今は《虹色の終焉》や《激情》を使うデッキはそこまで多くないので、たくさんの島を渡りながら上位入賞したと考えられます。メインに4枚入った《緻密》も良い印象を受けます。
■ドメインZoo(トップ4)
ドメインZoo(トップ4) | |
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デッキリスト | |
4:《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》 4:《吹きさらしの荒野/Windswept Heath》 4:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》 1:《ゼイゴスのトライオーム/Zagoth Triome》 1:《サヴァイのトライオーム/Savai Triome》 1:《繁殖池/Breeding Pool》 1:《蒸気孔/Steam Vents》 1:《草むした墓/Overgrown Tomb》 1:《寺院の庭/Temple Garden》 1:《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》 1:《平地/Plains》 1:《森/Forest》 21 Lands 4:《野生のナカティル/Wild Nacatl》 |
4:《部族の炎/Tribal Flames》 4:《頑固な否認/Stubborn Denial》 4:《稲妻/Lightning Bolt》 2:《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》 4:《力線の束縛/Leyline Binding》 18 other spells 1:《湧き出る源、ジェガンサ/Jegantha, the Wellspring》 |
フェッチランドからショックランド、さらにはトライオームをサーチする事により《平地》《島》《沼》《山》《森》を揃えて、「版図」など基本地形タイプを参照するカードを軸に攻めて行く、アグロデッキです。
《野生のナカティル》は1マナ3/3、《縄張り持ちのカヴー》は2マナ5/5に能力付き、《ニショーバの喧嘩屋》は2マナ5/3トランプル、《ドラコの末裔》は2マナ4/4飛行と、それぞれが軽量コストで高打点を持っています。
《ドラコの末裔》は、先制攻撃付与で《敏捷なこそ泥、ラガバン》《縄張り持ちのカヴー》に先制攻撃付与でブロックで止まりにくくして、《タルモゴイフ》にトランプルを与えます。
余談ですが、《野生のナカティル》はかつてモダン禁止カードでした。2012年ごろ《野生のナカティル》を中心にしたナヤ・アグロがモダンで支配的な強さを持ち、アグロデッキに多様性を持たせるために禁止された経緯があります。現在はモダンホライゾンでの全体的なカードパワー上昇により、禁止級の性能ではないです。
呪文も基本地形タイプを参照するものが中心で、《部族の炎》の2マナ5点はマジック史上でも最高の威力。2発本体に撃ってゲームが終わる事もしばしば起こります。
《力線の束縛》は汎用性の高い1マナ除去で、このデッキが求めていた品質!
パワー4以上のクリーチャーが多いので、《頑固な否認》は獰猛の条件を満たしやすく、後半も機能する打ち消し呪文です。
《ドロモカの命令》は、最近モダンでも大活躍している《鏡割りの寓話》を除去したり、相手の《力線の束縛》や《ウルザの物語》を除去したり、+1/+1カウンターと格闘で使ったりと便利な除去枠です。
■5色不屈の独創力(トップ4)
5色不屈の独創力(トップ4) | |
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デッキリスト | |
1:《山/Mountain》 1:《ザンダーの居室/Xander’s Lounge》 1:《ジェトミアの庭/Jetmir’s Garden》 1:《血の墓所/Blood Crypt》 1:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 1:《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》 3:《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 2:《蒸気孔/Steam Vents》 2:《乾燥台地/Arid Mesa》 3:《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》 4:《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》 4:《ドワーフの鉱山/Dwarven Mine》 24 Lands 4:《残虐の執政官/Archon of Cruelty》 |
3:《呪文貫き/Spell Pierce》 4:《火+氷/Fire+Ice》 4:《稲妻/Lightning Bolt》 2:《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》 4:《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》 4:《力線の束縛/Leyline Binding》 4:《レンと六番/Wrenn and Six》 4:《不屈の独創力/Indomitable Creativity》 2:《頑強/Persist》 3:《プリズマリの命令/Prismari Command》 32 other spells 2:《兄弟仲の終焉/Brotherhood’s End》 |
過去の記事でも何度か紹介した、《残虐の執政官》の早期着地を狙う、コンボ要素のあるコントロールデッキです。
4ターン目に《ドワーフの鉱山》からドワーフトークンを生み出し、トークンを対象に《不屈の独創力》をプレイして、デッキ内に入っているクリーチャーが《残虐の執政官》のみなので、そのまま確定で出てきます。
《レンと六番》《鏡割りの寓話》がデッキの骨組みを支えており、これら2つにより単純な除去だけでは相手から対処が難しいです。
《レンと六番》の「+1」を安定させるためにもフェッチランドが12枚採用されており、5色のマナベース+《ドワーフの鉱山》という厳しい色マナ要求を満たしてくれます。《不屈の独創力》はフェッチ12枚が良さそうです!
《鏡割りの寓話》のゴブリンシャーマンと裏面の《キキジキの鏡像》はどちらも放置するとアドバンテージを生み続ける性能なので、相手が《稲妻》など単体除去を使う必要があります。
言うなれば《鏡割りの寓話》1枚で2枚除去を吸い取れるという事であり、これにより後続の《不屈の独創力》がインスタント除去で対象不適正になる確率が下がります。もちろん2章の手札入れ替えも、《残虐の執政官》が手札に溜まりやすいこのデッキにとって大事!
《不屈の独創力》デッキはジャンドやティムールや5色など様々なバージョンがあります。
白を足すメリットは、《力線の束縛》による対処範囲の広い除去で、特にサイド後に出される《ヴェクの聖別者》なども難なく除去。
《時を解す者、テフェリー》は相手のインスタントアクションをさせない事で、安全に《不屈の独創力》をプレイできます。《死せる生》《衝撃の足音》など、続唱カードも常在型能力により唱える事が出来なくなります。
ただ色を足すほど、マナベース面での要求が多くなり、タップインやライフの損失が大きくなるというデメリットもあります。
サイドボードの《セラの使者》は特に《不屈の独創力》のミラーマッチで強いカードです。
《残虐の執政官》の誘発型能力は対戦相手を対象に取るので、《セラの使者》でプロテクション(クリーチャー)を指定すれば、誘発型能力を防ぐことが出来ます。プロテクション(クリーチャー)により自分が戦闘ダメージを受けなくなるので、相手のデッキタイプによってはこれだけで勝つことも。
既に《不屈の独創力》デッキが強い事が認知されて来ており、《残虐の執政官》から捨ててコピーするために、サイドボードに《万物の姿、オルヴァール》を入れたデッキも見かけるようになってきました。
相手の《万物の姿、オルヴァール》の枚数が多かった場合に、軸をずらすために《セラの使者》に入れ替える選択肢もアリです!
■おわりに
Legacy European Tourさんは、今後も定期的にモダンやレガシーの大型大会を開催されるようで、昔の海外グランプリに似ていて僕も気になっています。
興味のある方は参考情報から調べてみて下さい。
それではまた。