MTG │ 解説記事 │ 井川良彦【禁止改訂後スタンダードメタゲーム】

* こちらの記事は6月2日時点での執筆内容の記事となります 

みなさんこんにちは。Rush Prosの井川(@WanderingOnes)です。

6/1、スタンダードの禁止改定と相棒のルール変更という大きな発表がありました。

創案の火/Fires of Invention》、《裏切りの工作員/Agent of Treachery》、禁止!

 

相棒、ルール変更により大幅弱体化!

これにより、スタンダード環境は大幅に変化。

相棒の大活躍によりあまり焦点が当たっていませんでしたが、実際のところ『イコリア:巨獣の棲処』のカードで一線級の活躍をしているものは、「変容」「サイクリング」といったキーワード能力を軸にしたイコリア産デッキを除くと《サメ台風/Shark Typhoon》《水晶壊し/Gemrazer》などほんの数種類。

つまり、テーロス還魂記環境末期の頃のスタンダードに近いものになると考えられます。

ということで、今回の記事では想定される最初期のメタゲームおよびデッキと、評価が上がりそうなカードを紹介していきたいと思います。

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■トップメタ予想

ティムール再生

増田 勝仁  2020/5/17
RedBull Untapped International Qualifier Online トップ4

自身は今回の禁止改定で全くダメージを受けず、上位デッキのジェスカイルーカや青白コントロールがダメージを受けた結果、元々強かったティムール再生は文句なしのトップメタとして君臨することが想定されます。

荒野の再生/Wilderness Reclamation》+《発展+発破/Expansion+Explosion》のコンボによりミッドレンジ帯のデッキに対して無類の強さを誇り、アグロデッキにも軽い火力と《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》の組み合わせで対抗できるため、《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》以外は特筆すべき弱点は見当たりません。

このリストは禁止改定前のものでしたので、メインに《物語の終わり/Tale’s End》を採用し、さらに《否認/Negate》を4枚取るなどかなり対コントロールに寄せたリストにはなっていますが、ティムール再生は比較的フリースロットが多く、カウンター・除去の枠をメタに合わせて変更することができるのも大きな魅力です。

 

除去なら《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire》《炎の一掃/Flame Sweep》《嵐の怒り/Storm’s Wrath》、カウンターなら《否認/Negate》《神秘の論争/Mystical Dispute》《物語の終わり/Tale’s End》《霊気の疾風/Aether Gust》など多数の選択肢がありますので、メタに合致した形で細部を詰められるかがこのデッキの勝率を左右するでしょう。

(これはティムール再生に限りませんが) 今回の禁止改定で影響が出た点としては、1ゲーム目に相手の相棒を確認してデッキを特定し、それに合わせてマリガンすることが不可能になったことは見逃せません。

アグロ相手に《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire》、青いデッキ相手に《神秘の論争/Mystical Dispute》などのカードを探してマリガンしづらくなったため、デッキ公開のないラダーなどではカウンターのない手札でキープ→3ターン目に《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》が通って死亡、という負けパターンは増えてしまうことでしょう。

ジャンドサクリファイス

市川 ユウキ  2020/5/17
RedBull Untapped International Qualifier Online トップ4

こちらも禁止改定でダメージを受けなかったデッキ。

大釜の使い魔/Cauldron Familiar》+《魔女のかまど/Witch’s Oven》+《波乱の悪魔/Mayhem Devil》コンボによるビートダウン封殺、《パンくずの道標/Trail of Crumbs》による無限のアドバンテージ、《ボーラスの城塞/Bolas’s Citadel》による1ショットなど、複数の軸を備えており、対策がしづらいデッキでもあります。

ただし、次の環境もこの形が継続されるかどうかは分かりません。

負けている盤面でもライフさえあれば大逆転できる《ボーラスの城塞/Bolas’s Citadel》ですが、その能力の都合上アグロデッキには弱く、サイドアウト候補筆頭です。

仮に赤単やグルールのようなデッキが復権するのであれば、2-3月に流行った《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》型に回帰する可能性もあります。

フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》にも懸念点があります。細かい理由は後述しますが《霊気の疾風/Aether Gust》の増加が予想されることです。

霊気の疾風/Aether Gust》が効かず《否認/Negate》のようなカードがメインから減ることを考えると、ティムール再生や青白/バントのような青いデッキに対して《ボーラスの城塞/Bolas’s Citadel》に比べると一段落ちることとなるでしょう。

バントランプ

宇都宮 巧  2020/4/12
MagicFest Online Season 1 Finals トップ8

『イコリア:巨獣の棲処』が導入される前の世界で、後述するラクドスサクリファイスと2強だったのがこのバントランプ。

ジェスカイルーカなき今、《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》を最も上手く使えるデッキとして再起することは疑いようもありません。

ティムール再生に対してはマナ加速で引けを取らないため、カウンターを構えながら《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》をプレイできますし、《サメ台風/Shark Typhoon》を強く使うこともできます。

青白コントロールに対しては色を増やしている分《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》といったロングゲームに強いカードを使えます。

ミラーマッチのキーカードであった《裏切りの工作員/Agent of Treachery》が禁止になってしまったため、何か代替手段を考えないと時間切れになるおそれがあるのでその点だけ注意しましょう。

超長期戦が必至であるミラーマッチを考えると、弱体化したとはいえ相棒というアドバンテージを活かせる《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》を使って80枚デッキにする選択肢もあるかもしれません。

ラクドスサクリファイス

覚前 輝也  2020/4/12
MagicFest Online Season 1 Finals トップ8

かつてバントランプと双璧をなしたデッキがラクドスサクリファイスでした。相棒が出てからは《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream Den》型、《獲物貫き、オボシュ/Obosh, the Preypiercer》型に分化していきましたが、相棒が使えなくなったからには元の《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》型に戻ることになるでしょう。

イコリア:巨獣の棲処からの数少ない新戦力である《鋸刃蠍/Serrated Scorpion》が今後も継続して採用されるのかが個人的に気になるところ。《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream Den》の(相棒ではない)メイン採用と合わせて一緒に使われるのでしょうか?

■相棒弱体化によりダメージ受けるデッキたち

青白コントロール

空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》弱体化により従来の60枚の形に回帰すると予想。ティムール再生には《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》のおかげで有利に戦えるものの、お得意様であったジェスカイルーカが消え、苦手なサクリファイス系が増え、さらにバントランプが復活するとなるとポジションが悪そう。

セレズニアオーラ

リカバリー・フラッド受けという2つの役割をこなしていた相棒《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream Den》が使えなくなり戦力大幅ダウン。メタゲームがアグロに寄れば復権しそうではあるが、サクリファイスが増えそうなのは大きなマイナス。

シミック変容

集めるもの、ウモーリ/Umori, the Collector》が使えなくなりデッキの安定性がダウン。その分クリーチャー単に拘る必要がなくなったため、サイドボードに《否認/Negate》のようなカードをとれるようになったという点を活かせるかどうかが肝になりそう。

サイクリング

相棒《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream Den》への依存度は低かったので、他の相棒デッキに比べて損害はそこまで大きくないと予想。アイレンクラッグの紅蓮術師/Irencrag Pyromancer》のような相性の良いカードを採用してみたり、相手が《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》を減らしてきたところにサイドボードから《黒き剣のギデオン/Gideon Blackblade》のようなコントロールに強いカードを使ってみたりなど新しいアプローチに期待。

赤単

相棒の弱体化により、旧来の《エンバレスの宝剣/Embercleave》型に回帰。ただし、他のデッキと比べてイコリア:巨獣の棲処からの新戦力がほぼ皆無なので、ただでさえ旧環境ですらトップメタではなかった赤単がこの戦いについて行けるのかは甚だ疑問ではある。

■環境の変化により相対的に弱くなりそうなデッキ

ティムールアドベンチャー / ティムールエレメンタル系

どちらのデッキも土地が爆発的に伸びる&《裏切りの工作員/Agent of Treachery》で取られても痛くないパーマネント陣ということでトップメタのジェスカイルーカへのメタデッキとして活躍していました。そのターゲットがいなくなり、苦手なティムール再生・サクリファイス系が増えそうとなると使う理由は大幅に下がりますね。

■環境の変化により強くなりそうなカード

青白コントロール以外ほぼすべてのデッキにヒットするため、2マナのカウンター/除去としてまた有用になりそうです。ティムール再生やバントランプ、青白コントロールといった青いデッキはまたメイン採用が基本になるかと。

禁止改定前も強かったですが、ティムール再生とサクリファイス系の2つがトップメタとなるようであればこのカードの評価も上がります。変容系(青緑・赤緑)だけでなく、グルールアグロや緑単アグロといったデッキでも使えるので、それらのデッキが勝ち上がることがあるようであれば、きっとこのカードが多数採用されていると思います。

「8枚目の手札から出てくるオマケ付き4/5飛行」であった《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》が相棒として弱体化したこと、そしてアグロデッキがある程度復権してくることを考えると、この狼、そしてフラッシュ系のデッキにもまた陽の目が当たりそうです。賢明なる読者の皆様はお気づきかと思いますが、僕はこのカードが大好きです。

■最後に

今回の禁止改定・相棒ルール変更により、新しい環境になったというよりは少し前の環境に戻ったという感じで、個人的には少しガッカリです。

ですがそれは最初の感想でしかなく、相棒という強すぎたルール/カードのせいでプレイに値しなかったカードが使えるようになるため、きっとこれから新しいデッキが出てくるのではないかとも思っています。

霊気の疾風/Aether Gust》が当たらないデッキとして、エスパーカラーのヒーローデッキや、《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》を普通にデッキに入れた青白/エスパーブリンクのようなデッキが輝くと嬉しいですね。

マジック史上初めてのオンラインで行われるプレイヤー・ツアー。僕は4つあるうちの後半週で出場予定なのでまだ2週間以上ありますが、序盤の週で出場する人はあと10日程しかありません。

限られた時間の中でいかに良いデッキを作るか、選べるか。そういった点もプレイヤーの力の一つとして試されています。
チームメイトと共にベストを尽くせるよう頑張りたいと思います!

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

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