MTG │ 攻略記事 │ 井川良彦【スタンダードメタゲーム解説】

皆さんこんにちは。Rush Prosの井川(@WanderingOnes)です。

全世界待望の禁止改定で《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》《夏の帳/Veil of Summer》《むかしむかし/Once Upon a Time》の3枚が退場してから一週間。スタンダードは日々進化をしています。

許されるはずもなく。マジックの歴史に名を刻みました。

そこで今回の記事では、禁止改定後の新スタンダードのトップメタデッキと、今が旬の注目のデッキをご紹介したいと思います。

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■ジェスカイファイアーズ

王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》無きスタンダード現環境の頂点に君臨する2強デッキ。その一つがジェスカイファイアーズです。デッキ名の「ファイアーズ」はデッキのキーカードである《創案の火/Fires of Invention》から取られており、その能力で《炎の騎兵/Cavalier of Flame》《風の騎兵/Cavalier of Gales》を連打する形が各地のトーナメントやMTGアリーナのミシック帯を席巻しています。

 

GOBERN 11/23 MOPTQ優勝

現在の主流のリストで特徴的なのが、メインに4枚採用された《予見のスフィンクス/Sphinx of Foresight》。ミシックチャンピオンシップⅥで9位入賞したグジェゴジュ・コヴァルスキ選手が使ったリストでは1枚に抑えられていましたが、禁止改定直後に開催されたTwitch Rivalsでズヴィ・モーショウィッツ選手が《予見のスフィンクス/Sphinx of Foresight》を4枚採用したリストで上位入賞。今に至ります。

初手にあると占術3をしてくれるという変わった誘発型能力のおかげでキープ率が向上すると共に最序盤を安定させるだけでなく、大事になってくるのが4マナ4/4飛行というスタッツです。創案の火/Fires of Invention》を出したターンに出すアクションとして優れており、特に後述するサクリファイス系デッキには飛行クリーチャーが重宝します。アグロデッキにも4/4の壁として《探索する獣/Questing Beast》をしっかりブロックしたりとデッキにフィットしている1枚です。強い!

ジェスカイファイアーズという名前のため《創案の火/Fires of Invention》に依存しているように思われますが、ティムール再生の《荒野の再生/Wilderness Reclamation》とは異なり創案の火/Fires of Invention》に頼らずともミッドレンジ戦略で戦うことができます。砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》→《予見のスフィンクス/Sphinx of Foresight》→《風の騎兵/Cavalier of Gales》とマナカーブ通りにクリーチャーを展開するだけでもインパクトがあり、サイド後は特に相手の《強迫/Duress》や《打ち壊すブロントドン/Thrashing Brontodon》といった対策カードを横目に悠々と勝利することも珍しくありません。

逆に願いのフェイ/Fae of Wishes》とそのパッケージは減少傾向にあります。旧環境に比べてエンチャント対策が増えたので《創案の火/Fires of Invention》依存であるこのカードを使いづらくなったこと、そして《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》の禁止とそれによるシミックフードの衰退により、2マナ1/4飛行というサイズの価値(鹿クリーチャーや《厚かましい借り手/Brazen Borrower》に対する壁)が下がったことなどがその理由でしょう。ただし《創案の火/Fires of Invention》を対処されづらいメインボードでは主なサーチ先である《戦争の犠牲/Casualties of War》が劇的な効果を発揮するので、ミラーマッチを見据えて1-2枚だけ採用する構築も散見されます。

個人的にはこのジェスカイファイアーズが現在一番強いデッキだと感じており、来週のミシックチャンピオンシップⅦでも最多勢力になるのではないかと予想しています。

■サクリファイス

ミシックチャンピオンシップⅥの横で開催されていたGPリッチモンドで優勝し一躍脚光を浴びた《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》+《魔女のかまど/Witch’s Oven》+《パンくずの道標/Trail of Crumbs》デッキ。《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》は使えなくなりましたがそのシナジーは健在で、強固な盤面と豊富なシナジー、そして凄まじいアドバンテージで相手を圧倒します。ゴルガリ2色バージョンとジャンド3色バージョンの2タイプがありますが、このサクリファイスデッキが環境2強デッキのもう一つといえます。

 

ゴルガリサクリファイス

_BATUTINHA_ 11/23 MOPTQ準優勝

金のガチョウ/Gilded Goose》《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》《魔女のかまど/Witch’s Oven》《パンくずの道標/Trail of Crumbs》といった「食物」シナジーをふんだんに使ってアドバンテージを稼ぐデッキ。《戦慄衆の将軍、リリアナ/Liliana, Dreadhorde General》《呪われた狩人、ガラク/Garruk, Cursed Huntsman》といった重量級プレインズウォーカーがフィニッシャーを務めることが多かったですが、最近ではミラーマッチとジェスカイファイアーズの両方に有効である《戦争の犠牲/Casualties of War》を3-4枚搭載した形が主流になっています。このゴルガリサクリファイスはミシックチャンピオンシップⅦの権利を持つcrokez選手(@crokeyz)が日々配信を行っており、ミシック1位を数回記録していることで一気に広まりました。

ミラーマッチでは《魔女のかまど/Witch’s Oven》《パンくずの道標/Trail of Crumbs》セットに加えて《ゴルガリの女王、ヴラスカ/Vraska, Golgari Queen》と《ロークスワイン城/Castle Locthwain》、ジェスカイファイアーズには《創案の火/Fires of Invention》と大型クリーチャーと《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》と《ヴァントレス城/Castle Vantress》など、今の環境では対象に困ることは少なく、相手の盤面に大打撃を与えます。夏の帳/Veil of Summer》が禁止になったことで裏目になることも少なくなったため、この《戦争の犠牲/Casualties of War》をお互いが打ち合う不毛なミラーマッチが世界各地で多発しています。

王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》がこの世を去った今、再評価されている1枚です。《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》《魔女のかまど/Witch’s Oven》システムがドローになる上に、《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》のような全体除去にも耐性が付くのが嬉しいですね。

ジャンドサクリファイス

YAMAKILLER 11/23 MOPTQ4位

ゴルガリ型は禁止改定後に作られた新しいデッキですが、ジャンド型は前環境からほとんどそのままの形で使用されています。色を足している分メインやサイドの選択肢が広く、プレイヤーによってかなりカードの取捨選択や土地の枚数がかなり異なっているのが面白いところ。最終的にどのバランスに収束するのか、今後が楽しみなデッキでもあります。

赤の主な理由である《波乱の悪魔/Mayhem Devil》はほぼ全員が3-4枚採用で、このカードの存在がゴルガリ型への有利に繋がっています。誘発条件が「プレイヤー1人がパーマネントを1つ生け贄に捧げるたび」なので、対戦相手の生け贄を忘れないように!ジェスカイファイアーズには《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》の的になるので出すタイミングがシビアではありますが、ダメージレースをしている際には有利に働きます。また《波乱の悪魔/Mayhem Devil》を戦場に出した段階で《魔女のかまど/Witch’s Oven》や《寓話の小道/Fabled Passage》でマナを使わずに1点を飛ばせるのが各種アドベンチャーやアグロに非常に強力なカードです。

そして赤を採用しているもう一つの理由がこのドラゴン。場に出たターンに3-4枚引くことも珍しくなく、圧倒的なアドバンテージをもたらしてくれます。また大型の飛行クリーチャーとしても環境屈指のサイズであり、《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》《魔女のかまど/Witch’s Oven》に止められないクロックなので除去の薄いミラーマッチで特に大活躍します。この《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》は《帰還した王、ケンリス/Kenrith, the Returned King》と同様、通常のブースターパックでは手に入らないため流通量が少ないため、活躍次第では今後も値上がる可能性大です!

■ティムールアドベンチャー

littlebeep MTGAミシック1位

littlebeep選手(@AaronGertler)がつい先日ミシック1位を記録した、一風変わったアドベンチャーデッキ。デッキリストを見ただけでは少し分かりづらいですが、《幸運のクローバー/Lucky Clover》+《豆の木の巨人/Beanstalk Giant》や《僻境への脱出/Escape to the Wilds》で土地を伸ばしていき、最終的には《幸運のクローバー/Lucky Clover》+《願いのフェイ/Fae of Wishes》で勝つという構成になっています。

王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》が退場したことにより、このカードも評価が上がりました。2T《幸運のクローバー/Lucky Clover》からの《豆の木の巨人/Beanstalk Giant》は最高のブン回りですし、《厚かましい借り手/Brazen Borrower》や《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》といった軽量バウンス/除去をコピーすることで序盤を支えてもくれます。《幸運のクローバー/Lucky Clover》なしでゲームに勝つことは珍しいので、2Tに出せなくても後述する《僻境への脱出/Escape to the Wilds》でドローを進め、より多くの《幸運のクローバー/Lucky Clover》を盤面に並べることがデッキのゴールになります。
ティムール再生でよく使われているこのカードですが、この2.5倍《舞台照らし/Light Up the Stage》はスペル側のコストが非常に軽い出来事クリーチャーと相性◎。土地を伸ばしながら盤面を捌きつつ、追放領域に出来事クリーチャーを補充しながら《幸運のクローバー/Lucky Clover》を探すという多数の役割を1枚でこなしてくれるこのデッキの名脇役です。

願いのフェイ/Fae of Wishes》からサーチする対象である、《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》《過去と未来/Once and Future》《次元を挙げた祝賀/Planewide Celebration》といった墓地回収カードを何回も駆使して戦うことになるので、非常にプレイングが難しいデッキでもありますが、他のデッキでは味わえない豪快さと緻密さを兼ね備えた逸品となっています。ミシック1位を記録しているということでデッキパワーも保証済みなので、ジェスカイファイアーズやサクリファイスといったデッキが性に合わなかった方はこちらを試してみると良いでしょう。

■エスパーコントロール

WRSPENNY89 MOスタンダードリーグ5-0

※サイドボードは12枚です。

こちらはMagic Onlineで5-0していた、懐かしい香りがするエスパーコントロール。メタゲームがはっきりしている今こそコントロールの出番、ということでしょう。ジェスカイファイアーズには手札破壊と7枚のカウンターで、サクリファイスにはパーマネント除去と追放手段で対抗しようという意図がデッキリストから伝わってきます。

久しぶりに見ましたね、このカード。《魔女のかまど/Witch’s Oven》と《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》を対処できるだけでなく、《金のガチョウ/Gilded Goose》や食物トークンすらも対処できるというまさにサクリファイス・キラーな1枚。ゴルガリアドベンチャーには《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》《穢れ沼の騎士/Foulmire Knight》を対処しつつ、墓地を掃除することで《真夜中の騎士団/Order of Midnight》《採取+最終/Find+Finality》というコントロール泣かせな墓地回収も防げるのでかなり効果的です。メインに2枚、サイドにさらに追加で1枚と計3枚も採用していることからわかるように、このオルゾフの簒奪者、ケイヤ/Kaya, Orzhov Usurper》が使えるからエスパーコントロールを使っていると言っても過言ではないでしょう。

肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》は《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》《真夜中の死神/Midnight Reaper》対策として完璧な働きをしてくれます。肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》に対応して《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》を生け贄に捧げても追放されてしまうので、サクリファイスを使うプレイヤーは今後この《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》をケアして「自分のターンの間に《魔女のかまど/Witch’s Oven》を起動して《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》を墓地に置いておく」といったケアが必要になりそうですね。

屈辱/Mortify》は《創案の火/Fires of Invention》と《パンくずの道標/Trail of Crumbs》を割りつつ単体除去としても機能するため、環境にマッチしています。このリストでは1枚ですが、僕が自分で使うなら2-3枚は採用しそうです。

■まとめ

「爆発力があり、アグロにも耐性があるコンボコントロール」であるジェスカイファイアーズ。「猫かまどコンボで地上を封殺し、パンくずが圧倒的なアドバンテージを生み出すミッドレンジ」であるサクリファイス。この2種類がコントロールとアグロを軒並み駆逐しており、ほぼ2強状態になっている、というのが僕の認識です。Tier2以降としてゴルガリアドベンチャー、ティムール再生、グルール/ラクドスの《エンバレスの宝剣/Embercleave》デッキやエスパースタックス、赤単などアーキタイプは多数ありますが、どれもジェスカイ/サクリファイスの両方に安定した成績を残すことはできず、勝ちきれていないのが実情でしょう。

ただし2強状態ということはメタがはっきりしているということでもあり、デッキビルダーの腕の見せどころとも言えます。
来週末に行われるミシックチャンピオンシップⅦではこの2強がどれだけいるのか、またこの2強にどう立ち向かうのか、楽しみですね!

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

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