先週末は、アメリカのシカゴにて開催された「プロツアー・カルロフ邸殺人事件」に参加しました。
会場のホテルの入り口がマジックのマナシンボルになっていたり、
プロツアーと併催の「MagicCon: シカゴ」では、統率者スペースや販売ブースが大盛況。合計1万人くらいは来場したそうです。
会場では「Magic Kids」なるルールを教える会があって、新規プレイヤー向けに非常に良い取り組みだと感じました。
さて、プロツアー初日はブースター・ドラフト3回戦と、パイオニア5回戦を行い、4勝4敗以上の成績で2日目へ進出。2日目で10勝6敗以上の成績で次回のプロツアーの権利が付与されるため、上位入賞を目指します。
年度1回目のプロツアーで好成績を残せれば、後の世界選手権出場にも繋がっていきます。次回のプロツアー権利が無いので、何としても10勝6敗以上の成績を目指したい!!!
市川ユウキさん、井上徹さん、加藤健介さん、中村修平さん、原根健太さん、松浦拓海さん、森山真秀さん、長谷川翔一さんとチームを組んで練習を行いました。
以下その大会レポートです。
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■1stドラフト
「カルロフ邸殺人事件」のドラフトは、白が極端に強い環境です。
飛行で継続してライフを削れる《市場見廻りの幻影》、サイズ関係なく倒せる除去の《その場しのぎの束縛》、《犬の散歩者》や《確固たる証人》といった強い変装クリーチャー、横並べしてからの《遂行中》で大ダメージと、白だけで何でも出来てしまう圧倒的な強さ。MTGアリーナでボロスをピックして7-0する方も多いでしょう。
問題は、その余りの強さゆえに人気が集中してしまうことです。実際、8人ドラフトではアリーナのように白がピック出来ずに、ボロスが卓に3人でデッキが弱いなんて事態も起こっていました。
僕がプロツアー前に思い描いていたのは、《殺害》や《闇討ち》といった除去から入って、白が行けるようならオルゾフ、白に行けないならラクドスという方針でした。
黒はクリーチャーが弱めなので人気は低いものの、《殺害》《闇討ち》など除去は強いので、除去を取ってクリーチャーを他の色に任せれば、デッキ構築が上手くいきやすいです。
1パック目初手は《闇討ち》。
他の候補は《探偵鞄》ですが、練習中に青赤をピックして上手くいった経験が少ないのと、お互いに変装クリーチャーを出し合う環境での《探偵鞄》が少し遅いカードだと考えているので、練習通りに黒をピック。
2手目は《自白勧告》。相手に変装クリーチャーを出されても護法を気にせずにプレイできる除去で、後半は証拠収集6により最大パワーのクリーチャーを除去出来ます。
《殺害》や《闇討ち》には劣るものの、使い勝手の良い除去です。
3手目は《殺害》。これくらいで流れてくるなら、黒が出来そう。
その後4手目で《自白勧告》の2枚目、5手目で《殺害》の2枚目で黒は出来そうなポジションです。
2マナ域が薄くなりそうだったので、アーティファクトクリーチャー達を一周する前にピック。
2パック目初手は《蜘蛛網の頭、アイゾーニ》!!!
戦場に出た時と攻撃時に蜘蛛トークンを生成する、《墓所のタイタン》に似た性能を持つ超強力レアです。しかも同じパックに黒緑諜報土地の《地底の遺体安置所》があり、1周して帰ってくる可能性あり!アイゾーニをタッチ緑で使うことを頭に置いてピックします。
2パック目2手目は《死人に口無し》!!!相手の墓地利用も防げる、強力な全体除去です。
1パック目に青赤のカードを多く流したこともあり、うまく協調出来てそう。
2パック目3手目は弱めのパックから《聖堂の追跡者》。変装で出した時は(相打ちなどを経て墓地に落ちて)証拠収集6のコストになってくれますし、地上が膠着した後半では頼りになる飛行クリーチャーです。
その後7手目で《殺害》が取れたり、目論見通り黒緑諜報土地の《地底の遺体安置所》が1周。
どうやら卓で黒をやっているのは僕だけだったらしく、3パック目も順調に除去やクリーチャーが取れてデッキが完成。
2マナ域が弱めですが、《自白勧告》を2マナ域に含めれば及第点。
同じカードが多く入っているので動きが安定しており、除去して《聖堂の追跡者》や《蜘蛛網の頭、アイゾーニ》で勝つのが再現しやすいコントロールデッキになりました。
デッキが強くて、危うげなく3勝0敗。
相手のデッキに除去が多い時には、よく《拡大鏡》をサイドインしていました。変装クリーチャーで攻めることが多い環境なのでメインは入らないですが、消耗戦になりやすい相手のサイド後に強くなるので、《拡大鏡》好きです。
■2ndドラフト
1パック目初手は《探偵社社長、エズリム》。文句なしの爆弾レアです。これくらい強かったら、初手から青白決定でも良し!
2手目は《その場しのぎの束縛》で、他に白の強いカードも無かったので、白が出来るポジションになりそう。
3手目は《市場見廻りの幻影》。このクリーチャーは2マナ域の中でも最上級なので、流れてくるということは白が空いているサインでもあります。
ただここまでの3ピックで、白緑のアンコモンの《スマーラの歩哨》《庭園への埋設》を流しているので、下と白が被るのは避けられなそう。
2パック目初手は《市場見廻りの幻影》で、2手目には《蒸気核の学者》が流れて来ました。
探偵なのでシナジーもありますし、ここで青白探偵をピックするのが確定。
2パック目3手目と4手目は《凍らせ》。ダメージレースの際に、2ターン分の働きをする良いカードです。
その後遅い手順で《私立探偵》や《喝破》が流れてきて、青白のポジションが空いていることを確信。
3パック目でも《私立探偵》《喝破》が取れて、満足のいく青白が完成。
除去が薄いため相手のレアに対処しにくいのが青白の弱点なのですが、実際の試合も《華やかな支配者、テイサ》で負けてしまい、結果は2勝1敗。
■パイオニアのデッキ選択経緯
今回はチャンピオンズカップファイナル(モダン)も近い日程で過密なスケジュールだったので、少ない時間を上手く使うために、練習段階から使用候補デッキを「イゼットフェニックス」「アゾリウスコントロール」の2つに絞っていました。
「イゼットフェニックス」は《錠前破りのいたずら屋》によりインスタントタイミングで墓地を肥やせるようになったことで、ラクドスミッドレンジへの相性が大きく改善。相手のターン終了時に墓地肥やしから《宝船の巡航》という動きが再現しやすい。ラクドスやアゾリウスに少し有利で、ロータスコンボには不利ですが、雑多なデッキを全て打ち倒せるデッキパワーがあります。
ただ問題は直近のイベントで勝ちすぎていることで、《虚空の力線》などで過剰に対策される恐れがあります。
「アゾリウスコントロール」は《喝破》により信頼できる2マナ域を得たと共に、《行き届いた書庫》で序盤の安定性がアップ。
《行き届いた書庫》が平地・島タイプを持っているため、《ヴァントレス城》《アーデンベイル城》がアンタップ状態で出るのも地味に嬉しく、諜報で墓地を増やせるので《時を越えた探索》の探査コストにもなる!イゼフェニほどは過剰に対策されていないだろうし、どのデッキにもある程度戦えて、アゾリウス同士のミラーマッチにも一日の長があります。
チーム内では主に森山さんがイゼフェニ担当、僕がアゾリウスコントロール担当。大会直前にダイレクトマッチをやって、負け越したらイゼフェニを使うつもりでした。
最初はサイドボードに《安らかなる眠り》でしたが、この状態では全敗。相手のサイド後の《若き紅蓮術士》《弾けるドレイク》が墓地対策に耐性があり、自分の《安らかなる眠り》によって《記憶の氾濫》《時を越えた探索》が弱体化することで、後半のアドバンテージを取りにくくなるのが原因でした。
これに気づいた後、サイドボードの《安らかなる眠り》を《未認可霊柩車》に変更して、《記憶の氾濫》《時を越えた探索》を上手く使えるようにしたところ、サイド後の相性が大きく改善して勝ち越し。これにより対イゼフェニに自信が持てたので、アゾリウスコントロールに決定!
■アゾリウスコントロール
というわけで、アゾリウスコントロールを使用しました。
各種打ち消し呪文で序盤を凌ぎながら、《至高の評決》で盤面をリセット。4マナを構えるターンには、《記憶の氾濫》で手札補充or《放浪皇》で盤面干渉、もしくは打ち消し呪文と、相手に合わせた動きが可能で、最終的には《ドミナリアの英雄、テフェリー》によるカードアドバンテージ差で勝利するデッキです。
新加入の《喝破》は使い勝手の良い序盤の打ち消し呪文で、《弧光のフェニックス》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》といった墓地から戻ってくるクリーチャーに対しても追放効果が役立ちます。
現在のパイオニア環境で主流なのはイゼットフェニックス、アゾリウスコントロール、ロータスコンボなどの非クリーチャー呪文を中心としたデッキです。
そのため《ドビンの拒否権》はメイン4枚。新勢力のラクドス吸血鬼にも、《傲慢な血王、ソリン》《鏡割りの寓話》の両方を打ち消せるので信頼できます。
打ち消し呪文の枚数配分には悩みました。
《検閲》の良さは、後半引いた時にサイクリングで他のカードに代わる所です。2,3ターン目は相手のカードとの交換になり、後半は1ドローに代わって《時を越えた探索》の墓地肥やしにもなる。アゾリウスコントロールは長いゲームを想定したデッキなので、後半引いて無駄にならないのは素晴らしい。
アゾリウスコントロールをよく理解している対戦相手なら、《喝破》のために3マナを余らせてから呪文をプレイしてくることが多い。《方程式の改変》はそういった状況で強い打ち消し呪文で、例えば3マナ余らせの《鏡割りの寓話》や《ニヴ=ミゼット再誕》を打ち消したりします。トップメタであるイゼフェニに対しても、《弾けるドレイク》含めて打ち消せるカードが多いのが良い!
プロツアーはデッキリスト公開制なので、相手のプレイに裏目を作らせる目的で《神秘の論争》をメインに1枚採用。
今回のメタゲーム予想がイゼフェニ、アゾリウス、ロータスで、青が強い環境なので《神秘の論争》をメインサイド合わせて3枚採用したいと考えました。特にイゼフェニ相手に《神秘の論争》を引けるかどうかはゲームの勝敗に関わるほど重要です。
ただ、感覚としてデッキ全体で見たマナ要求の打ち消し呪文が《喝破》4《神秘の論争》3だと多すぎて、後半弱くなります。しかし《神秘の論争》は1マナでの行動回数を増やすカードなので減らしたくない。
そこでバランスを取るために《喝破》を3枚に変更。この調整には満足しています。
以前《対抗呪文》が再録される前のモダンでは《マナ漏出》を愛用していましたが、そのときも3枚だったのを思い出していました。
マナ要求の打ち消し呪文ばかりでは後半戦弱くなるので、確定の打ち消し呪文が1枚は欲しいと考えて《吸収》。ボロス召集やラクドスミッドレンジ相手には、3点回復が嬉しいタイミングも多いです。本戦でも、3点回復のおかげで勝てたことが2回ありました。
《失せろ》は汎用性の高い除去なので、最初は3枚からスタート。しかし何度も使ううちに、《失せろ》によって相手がアドバンテージを得る事で敗北するゲームもあり、《失せろ》を連打することにリスクを感じるようになっていました。
特にボロス召集やボロスヒロイックに対して、序盤に撃ちたい除去なのに、地図トークンで相手に土地や+1/+1カウンターを与えていては対処しきれません。複数引くと弱い除去ですが、1枚程度ならデメリットも薄いと感じて1枚に。
《冥途灯りの行進》は、X=0でボロス召集の《上機嫌の解体》を対象不適正にしたり、ボロスヒロイックのクリーチャーを後腐れなく除去したり、ラクドスミッドレンジの《勢団の銀行破り》を対処するなど、幅広く使えるため、メインとサイドに1枚ずつ。
アゾリウスコントロールの単体除去は、役割が薄いです。デッキの目指す方向としては、全体除去してから打ち消し呪文、そこから《放浪皇》《ドミナリアの英雄、テフェリー》で蓋をすること。
最近のクリーチャーは戦場に出た時点でアドバンテージを得るものが多く、除去するよりは打ち消しで対処した方がリソースを損しにくい。《鏡割りの寓話》が良い例で、除去するよりも打ち消すべき!そのため今回のデッキリストは打ち消し呪文多め、単体除去少なめです。
デッキリスト公開制なので、相手がボロス召集やボロスヒロイックだった場合に《一時的封鎖》を探しにマリガン出来るように、メイン2枚採用しています。
サイド合わせて合計4枚《一時的封鎖》を採用するかも考えましたが、除去が《一時的封鎖》に寄るとエンチャント破壊に弱くなってしまうので4枚は過剰に思えます。
《神聖なる月光》はイゼフェニと、アマリアコンボへの対策です。《弧光のフェニックス》の戻る能力や、《集合した中隊》《戦列への復帰》のプレイにスタックで《神聖なる月光》をプレイすれば、出てくるクリーチャー達を追放できます。
《神聖なる月光》はデッキに入れたり抜けたりを繰り返していたのですが、入れないとフェニックス側に裏目を作れないのと、《告別》だと《呪文貫き》で防がれやすいことから、結局1枚は必要だと考えて採用。《鏡割りの寓話》の1章と3章にスタックでプレイするとクリーチャーが出なかったり、相手の《サメ台風》サイクリングにスタックでプレイするとサメが出なかったりと、意外と便利です。
今回は不採用でしたが《推理》も候補でした。アゾリウスコントロールのミラーマッチではお互い構えあうので、《推理》は最強です。
しかし他の相手には4マナで2ドローする暇はないので、アゾリウス以外にはサイドアウト候補筆頭でした。同じドロー呪文でも、《神聖なる月光》の方が役割が多いのでおススメです。
4マナを構えて《記憶の氾濫》or《放浪皇》という動きが強いデッキなので、《記憶の氾濫》は3枚固定枠だと思っています。
《時を越えた探索》は、特にラクドスミッドレンジやイゼフェニ相手の消耗戦に強いカード。《強迫》など手札破壊をサイドインされやすいデッキなので、リソース回復要素は《記憶の氾濫》から追加で欲しい。諜報土地のおかげで、前よりも少し探査しやすくなっています。
《エメリアのアルコン》はロータスコンボへの対策。ロータスコンボは《耐え抜くもの、母聖樹》《大ドルイドの魔除け》を擁しているため、《減衰球》よりもクリーチャーで対策する方が望ましいです。
相手が《神秘の論争》をサイドインしていた場合にも《エメリアのアルコン》は通りやすく、天敵ともいえる《沈黙》も呪文を連続で唱えられないので実質無効化、更に特殊地形タップインで展開を遅らせて殴っていきます。《演劇の舞台》がタップインになるので《睡蓮の原野》コピーが1ターン遅れるのは大きい。実質《Time Walk》です。
《黎明をもたらす者ライラ》《加護をもたらす戦乙女》は、ライフを詰めてくるボロス召集やボロスヒロイック、ラクドスミッドレンジへの対策。《黎明をもたらす者ライラ》は《皇国の地、永岩城》《天上都市、大田原》の起動コストが軽くなります。
《船砕きの怪物》はアゾリウスコントロールのミラーマッチでの最強カード。アゾリウスミラーは超長期戦になるので、9マナ以上になってから《船砕きの怪物》と《ドビンの拒否権》で、《失せろ》も回避できます。
■大会結果
・初日
×ラクドスミッドレンジ
×ラクドス吸血鬼
〇イゼット魂込め
〇アゾリウスコントロール
△アゾリウスコントロール
・2日目
〇アマリアコンボ
×アゾリウスコントロール
〇アゾリウスコントロール
〇イゼットフェニックス
〇アマリアコンボ
合計で11勝4敗1引き分けで、12位入賞で、次回のプロツアー権利を獲得!目標達成!!!
■おわりに
(ネイサン・ストイア選手との対戦風景)
世界中から集まる強豪プレイヤーとの戦い。やはりプロツアーは最高に楽しい!
プロツアーに魅せられ続けて、マジックを続けているとも言えます。この楽しさがあるからこそマジックへの情熱が高まり、練習する原動力になっています。
競技マジックは楽しいぞ!チャンピオンズカップから、プロツアーを目指してほしい!
これで次回のプロツアーシアトルの権利も獲得したので、今年も世界選手権出場を目指して、日々練習していきます🔥
それではまた。
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