先週末は、アメリカのミネアポリスにて開催された「プロツアー・機械兵団の進軍」に参加しました。
「プロツアー・機械兵団の進軍」は、地域チャンピオンシップを勝ち抜いたプレイヤー、過去の戦績やMTGアリーナ、Magic Onlineのプレミア・イベントで参加資格を得たプレイヤー、殿堂顕彰者ら約250名が賞金総額500,000ドルを懸けて戦う、競技マジックの世界大会です。
会場ではプロツアー以外にも誰でも参加可能な「MagicCon: ミネアポリス」が併催されており、コスプレイヤーや販売ブースなど、お祭りのような雰囲気です。
プロツアー初日はブースター・ドラフト3回戦と、スタンダード5回戦を行い、4勝4敗以上の成績で2日目へ進出。2日目で9勝7敗以上の成績で次回のプロツアーの権利が付与されるため、上位入賞を目指します。
小澤毅さん、市川ユウキさん、加茂里樹さん、河野融さん、佐藤レイさん、中村修平さん、原根健太さん、森山真秀さん、矢田和樹さん、(それとプロツアーには出ないものの信頼できる調整相手の熊谷陸さん)とチームを組んで練習を行いました。
以下その大会レポートです。
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■1stドラフト
「機械兵団の進軍」のドラフトは、「賛助」「召集」がクリーチャーを軸にしたものであり、それに加えて「バトル」もクリーチャーの数が多い方が守備値を削りやすいので、クリーチャーの展開で出遅れない事が最優先される環境です。2ターン目に何も出来ずターン終了は避けたくて、2マナ以下は5-6枚は欲しい。
それに加えて、「多元宇宙の伝説」枠により通常よりも強いレアが出やすいパックなので、相手のレアに対処できる除去も必要です。
今回のプロツアーのドラフトでは、まず最初に両面カードを公開して卓の全員に見せて、その後パックのカード全てにスリーブを入れてドラフトを開始する方法でした。
周りが強力な両面カードを引いていた場合、そのことを頭に入れた上でドラフトをする必要があります。
1パック目初手は《呪文槍のケンラ》。表も裏も高スタッツの、上質な2マナ域です。
《呪文槍のケンラ》は公開情報だったので、これをピックすることで下に赤を主張する狙いもあります。
1パック目2手目は他の候補がコモンしか無かったので、《デジェルとハゾレト》をピック。
しかし、練習段階で白赤は弱い色と認識しており、まだ赤白は不確定の状態です。
1パック目4手目は《悩まされる職工》。珍しく赤で飛行に変身できるクリーチャーで、この手順で取れるのなら赤は出来るポジションかも。
1パック目6手目は、なんと2枚目の《デジェルとハゾレト》!
白赤は弱い色というのは参加者の共通認識なのでしょう。しかし誰もやらないのなら、自分が切り込むチャンスだと思いピック。攻撃時の能力を強く使うために、伝説のクリーチャーをピックすることを意識します。
以降も白赤の流れは良く、なんと2パック目5手目で爆弾レアの《伝承師、クイントリウス》が流れてきます!
クリーチャー除去が目の前を通らず、ほとんど取れなかったことが懸念ですが、クリーチャーの質は良い白赤が出来ました。
2種類の装備品が攻め手を継続してくれて、結果は2勝1敗。
■2ndドラフト
1パック目初手は悩むことなく、爆弾レアの《卓絶した声明》。
《羽づくろう勇者》で召集元を用意して、X=5以上でプレイ出来れば勝利は目前です。
1パック目2手目は《囚われの奇魔》で、青と召集を軸にしたデッキを想定。
両面カード公開時に、2つ上の席の人も《囚われの奇魔》を引いていたので、《囚われの奇魔》2枚目が流れてくるなら青確定と考えていました。
しかし1パック目3手目に《囚われの奇魔》の姿はなく、既に青のポジションが悪い予感がします。
代わりに3手目は《ファイレクシアの覚醒》、その後6手目に《次元壊しの掌握》が流れてきたこともあり、白ピックに方針を変更します。
青のカードは全く流れてきませんでした。
2パック目初手は《デジェルとハゾレト》。青の流れが悪かったので、赤に舵を切ります。
そうしたら2パック目2手目《呪文槍のケンラ》、3手目《カーサスへの侵攻》と強力カードをピック出来て、一安心。
2パック目4手目は、なんと《デジェルとハゾレト》の2枚目!みんなが白赤をやらないのなら、僕がやります!
ドラフトで同じレアを合計4枚ピックしたのは、長いMTG歴でも初めてです。
3パック目3手目に《獲物貫き、オボシュ》が流れてきて、《デジェルとハゾレト》の能力で出す最高のアタリ枠をピック出来ました。
それと、《デジェルとハゾレト》の能力で《面晶体の掘削者、ザダ》を探して、《空中ブースト》で味方全員に+2/+2飛行を与えて勝つコンボも狙えます。
デッキは合格点を与えられるものでしたが、相手のレアに苦しんだり、マリガンが重なったことで、結果は残念ながら1勝2敗。
■スタンダード:グリクシスミッドレンジ
【インポートデータ】
環境を定義しているのは、間違いなく《鏡割りの寓話》です。1章でマナ加速、2章で手札を最適化、3章でコピーを生成し、序盤から終盤まで常に強い!
《鏡割りの寓話》と土地3枚さえあればデッキは問題なく回るため、あらゆるフォーマットで活躍する超強力なカードです。
特に3章を強く使うためにはコピー先も重要で、除去の《税血の収穫者》だけでなく、墓地対策兼アドバンテージ源である《死体鑑定士》も必要。更に青を足すことで《かき消し》《否認》を採用でき、未知のデッキ相手にも対応しやすいと考えたため、グリクシスミッドレンジを使用しました。
今のスタンダードは、軽い除去やアドバンテージの取れる3-4マナ域を入れたミッドレンジが強い環境で、多くのデッキに《勢団の銀行破り》が3-4枚採用されています。3枚引いた後自分で操縦士トークンを用意してくれるので、ミッドレンジ対決は「銀行ゲー」と言われるほど。
しかし、《勢団の銀行破り》は毎ターン2マナかかるため盤面展開が遅れて、4枚だと複数引いた時に起動している暇が無いと感じたため、3枚に抑えました。
多くのデッキが《鏡割りの寓話》による宝物トークンと、《勢団の銀行破り》により2マナを構えてターン終了をするので、《かき消し》は2マナ払えることが多く、今の環境では弱めです。
ただプロツアーはデッキリスト公開なので、《かき消し》を入れることにより相手のプレイを簡単にしない狙いで、2枚採用。
グリクシスやラクドスなど赤黒系だけを考えるなら、《かき消し》ではなく《否認》《強迫》をメインから採用した方が勝率は上がりますが、《否認》《強迫》をメインにたくさん入れすぎると、クリーチャー中心のエスパーレジェンズに対して勝率が下がるのが問題でした。
クリーチャーも打ち消せる中間策としての《かき消し》2枚なので、もっと赤黒系中心のメタゲームになるのなら《かき消し》を減らすことも考えられます。
前環境から比較して、デッキの最大のアップデートは《希望の標、チャンドラ》です。
常在型能力により呪文をコピーするので、「+2」から2マナ生み出して、《喉首狙い》《削剥》で2回除去。除去が手札に無い場合でも、「-X」で2体除去。
そしてターンが帰って来たなら「+1」からインスタント・ソーサリーを探し出し、《絶望招来》をコピーすることで圧倒的なアドバンテージを得ながら、相手のライフを攻めていきます。
これまでのグリクシスミッドレンジは、消耗戦をした後の決定打に欠けるデッキでしたが、《希望の標、チャンドラ》からの《絶望招来》コピーという必殺技を得たことで、苦手としていた白単ミッドレンジにも相性が改善しました。
《希望の標、チャンドラ》は《絶望招来》《骨化》といったプレインズウォーカー除去には弱いものの、戦場に出た時点でコピーや「-X」によりアドバンテージを取るので、除去されても損失が少なく、なおかつ残った時の制圧力が凄まじい!たとえ《偉大なる統一者、アトラクサ》が着地したとしても、《絶望招来》コピーにより逆転することすらあります。
《希望の標、チャンドラ》に加えてもう一つ、グリクシスミッドレンジを使用するに至った理由が、サイドボードの《多元宇宙の突破》です。
グリクシスは最初は白単ミッドレンジに全く勝てなかったので選択肢としては弱目だったものの、チーム内練習で森山さんが《多元宇宙の突破》を試したところ、これが超強力で相性を改善!相手の《永遠の放浪者》や《セラの模範》と同時に《希望の標、チャンドラ》を出す動きが圧巻で、どんな盤面でも《多元宇宙の突破》1枚で逆転する程でした。
仮想敵として想定していた、《原初の征服者、エターリ》《偉大なる統一者、アトラクサ》を《ギックスの残虐》で戦場に出すリアニメイト系のデッキに対しても《多元宇宙の突破》が強かったので、7マナと重いですがサイドボードに2枚採用。実際に本戦でも《多元宇宙の突破》1枚で逆転するゲームが複数回ありました。おすすめ!
2マナ除去の選定には悩みました。
《喉首狙い》は《黙示録、シェオルドレッド》を最も効率よく除去出来て、エスパーレジェンズには《喉首狙い》を複数引きたいと考えたため、4枚フル採用。
グリクシスやラクドスなど赤黒系に対して、相手が《勢団の銀行破り》スタートに《喉首狙い》が撃てずに、「これが《削剥》だったら」と思うタイミングはあるので、これは個人の好みで枚数を配分してください。《切り崩し》はエスパーレジェンズメタのカードなので赤黒系に対しては弱く、サイドアウト候補です。ただ《切り崩し》が無いと、先攻の《スレイベンの守護者、サリア》にマウントを取られやすいです。
《苦痛ある選定》はグリクシスミラーではインスタントが大事なのと、相手の《死体鑑定士》を誘発させないための追放除去。
相手から《剃刀鞭の人体改造機》を出されることを考えると、追放除去は2枚ほどは欲しいです。
《抹消する稲妻》は、リアニメイト系デッキの出してくる《燃え立つ空、軋賜》に効く追放除去で、《夜明けの空、猗旺》にもスマートな解答です。ただプレイしたい状況が限られる除去で、基本的には《喉首狙い》《削剥》の方が便利なので、あまり多くの枚数は入れたくないです。
《眼識の収集》は打ち消しを構えてターン終了する相手、ジェスカイコントロールや白単ミッドレンジ用のサイドカードですが、今のメタゲームでは不要かも知れません。赤黒系に対しては、展開・除去・銀行破りの起動などで、《眼識の収集》をプレイする余裕はほとんどありません。
《剃刀鞭の人体改造機》はグリクシス同系ではとても強いのですが、ラクドスは基本地形が多いため復活条件が厳しく、他にサイドインできる相手も少ないので、これも良い選択とは言えなそうです。
■大会結果
初日
×青黒切削
〇赤緑
〇黒緑
×4色レジェンズ
×ラクドスリアニメイト
×グリクシス《金属の徒党の種子鮫》
〇白単ミッドレンジ
〇ラクドスミッドレンジ
スタンダード3連敗で顔面蒼白になりますが、その後勝ってなんとか4勝4敗で初日抜け。
2日目
×青黒切削
×白黒
〇白緑
〇ラクドスリアニメイト
〇グリクシスリアニメイト
〇ラクドスミッドレンジ
〇《共同魂の刃》コンボ
〇ラクドスリアニメイト
2日目6勝2敗。
合計で10勝6敗、50位入賞で、次回のプロツアー権利を獲得!
■おわりに
それにしても、ネイサン・ストイア選手の成績は凄まじいですね。
世界選手権2022優勝から、「プロツアー・ファイレクシア」トップ8、そして今回の「プロツアー・機械兵団の進軍」優勝。若干20歳でありながら、直近の全てのイベントで好成績を残し続けています。
突出した個人が存在すると、それに連鎖して周りのレベルもどんどん上がって行くといった話を聞いたことがあります。
ネイサン選手の存在により周りも良い刺激を受けて、どんどんMTGの新しい世代が出てきてくれたら、これほど嬉しいことはありません。
もちろん、僕もまだまだ負けていられないので、次のプロツアーに向けてモダンを猛練習していく予定です。
それではまた。
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