MTG │ コラム │ 高橋優太【《フェアリーの黒幕》ができるまで】


本人に似すぎ!という反応が多くて嬉しいです。

僕自身も最初に来たイラストを見た時は似すぎて爆笑しました。第一印象で皆が笑顔になれば良いと思ったので、このイラストはとても気に入っています。

MTGの世界選手権優勝者には、自身をモチーフにしたカードが作られるという特典が与えられます。今回は、僕自身がカード化されるまでの話を書いていきます。

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■過去のインビテーショナル/プレイヤー・スポットライト・カード

過去にはインビテーショナルという大会があり、その大会の優勝者がカード化されていました。これはその一覧で、中には大会で見かけたカードもあるでしょう。全員の名前、当てられますか?

Bob Maherがデザインしたボブこと《闇の腹心》や、Chris Pikulaの作ったピキュラこと《翻弄する魔道士》は、今でもモダンで姿を見かけますね。

インビテーショナルが開催されたのは1998年から2007年で、ほとんどがクリーチャーです。クリーチャーは最近の方が強く作られる傾向にあるので、当時は強かったが、今はあまり強くないケースもあります。少し残念ですね。

宝石の洞窟》に関しては、殿堂表彰者の藤田剛史さんが原案のデザインで、大会後の一般投票で1位だったためカード化されています。後攻だと強い良いデザインで、今でも統率者で人気のあるカードです。こちらもモダンで採用されていますね。

僕以外にも、既に世界選手権優勝者がカード化されており、これはプレイヤー・スポットライト・カードと呼ばれています。

ハビエル(Javier Domínguez)こと《熱烈な勇者》と、PV(Paulo Vitor Damo da Rosa)こと《精鋭呪文縛り》は、どちらも記憶に新しいでしょう。

プレイヤーがカード化されたものの中で、特に使われているものはこの6つで、今でもモダンやレガシーで見かけます。

これらの共通点として言えるのは、「マナコストが軽い」「色マナがシングルシンボル」などです。

■マナコスト・色を決める

僕自身がカード化される際、Wizards of the Coastのスタッフとデザインについて話し合う場が設けられました。

スタッフに言われたのは「どんな色でも能力でも好きに決められるよ。しかしテストプレイをして、強過ぎたら変更するよ」というものでした。なんて寛容!

カード化される機会なんて一生に一度しかないだろうし、なるべく強く作ってみんなに使ってもらいたいので、過去のインビテーショナルカードを参考に「マナコストが軽い」「色マナがシングルシンボル」を必須条件としてコストと色を考えました。

僕はモダン・レガシー・ヴィンテージなど、昔のカードが使えるフォーマットが好きなので、そこで自分のカードが活躍できるようにしたい!

それなら、青である事は絶対条件です。自分のカードを代用コストにして、《否定の力》や《意志の力》を使いたいからです。「俺を生け贄(追放)に《意志の力》をキャスト!」って言いたい。

また、レガシー・ヴィンテージを見据えるとしたら、使われるラインは2マナです。昔のカードが使えるフォーマットほど高速環境なので、2マナと3マナの差はあまりにも大きい!ヴィンテージで各種《Mox》から1ターン目に出すことを考えたら、マナコストは(1)(青)に決定です。

■能力を決める

マナコストを決めたら、次は能力です。青のクリーチャーのキーワード能力は飛行、瞬速、果敢など。

僕のプレイスタイルは打ち消し呪文と瞬速で、2種類を構えながら相手のターンに動くのが得意分野です。特にレガシーやヴィンテージでは、マナをフルタップする=《意志の力》しか撃てないということになってしまうので、《紅蓮破》や《狼狽の嵐》を構えながら出すのに瞬速は必須。

「瞬速は絶対に欲しい」とスタッフに伝えたところ、瞬速クリーチャーの候補が複数送られてきて、その中で気に入ったのがこれです。

(1)(青)
瞬速、飛行
このカードが戦場に出た時、呪文1つか土地でないパーマネント1つを対象とする。それをオーナーの手札に戻す。それのコントローラーは、宝物トークン1つを生成する。

2/1

自分のカードを除去に対応して戻しながら、宝物トークンを出せてマナ加速になります。相手の4-5マナの重い呪文を戻せば、実質1ターンを得ているのに等しい!呪文もパーマネントも対象に取れるので、トリッキーな動きが出来て、非常に好みのデザインです!

これは全てのフォーマットで強そう。と言うか、こんなに強くて大丈夫?バランス壊れてない?

そんなことを考えていた数日後、スタッフから連絡が来ます。

テストしたけど対象に出来る範囲が広すぎて、強すぎたわ。能力を変更で、対象に出来るのは3マナ以下に変更するね

強すぎるよね、納得の変更です。3マナ以下バウンスでも結構強いのですが、これだとモダン・レガシー・ヴィンテージで使われるかは微妙なラインです。2マナのカードをバウンスして、宝物トークンを渡すのは嬉しいとは言えません。

そこで他の候補から選び直し、再びスタッフと話し合います。

(1)(青)
瞬速、飛行
対戦相手が各ターン内の自分の2枚目のカードを引くたび、あなたはカードを1枚引く。
(2)(青):各プレイヤーはカードを1枚引く。

1/3

現在の《フェアリーの黒幕》にかなり近いデザインです。

モダンやレガシーで、瞬速で出して相手の《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《スレイベンの守護者、サリアをブロックしたかったので、1/3のサイズで提出しました。

ヴィンテージなら相手が《Bazaar of Baghdad》を起動するたびに1枚引けますし、《猛火のルートワラ》もブロック出来ます。それと《レンと六番の1点で焼かれたくなかった!

その数日後、再びスタッフから連絡が来ます。

「テストしたけど、1/3は小型クリーチャーをブロックするのに便利で、遅いデッキで使うのに強すぎたので2/1になるよ。サイズを1/3にするなら、瞬速を無くす必要が出てくる。起動型能力は3マナにするか4マナにするかで検討している。3マナだと強すぎるかも」

スタンダードに収録されるカードということもあり、1/3瞬速だとアグロデッキを抑制してしまうのが問題でした。瞬速を無くす代わりにサイズを1/3に変更する可能性もありましたが、それだと打ち消し呪文と瞬速で、2種類を構える動きが出来ません。

瞬速はどうしても欲しかったので、サイズは2/1に変更。起動型能力は、2ターン目に出す→3ターン目に起動の動きが強かったため、4マナに変更されました。

カード名は、英語名で「フェアリーマスター」と繋がる単語が良かったので、Mastermind(首謀者、黒幕)を選びました。この際の日本語訳も、自分で選ぶことが出来ました。

フェアリーの黒幕》の能力を決める上で、統率者で強い能力であることも意識しました。統率者ではどのデッキもドローするカードが多いので、能力で自然とドローできます。

神秘的負荷》《リスティックの研究は統率者で定番の追加ドローカードであり、これに《フェアリーの黒幕》が加わってくれれば嬉しい!

船殻破り》は統率者で禁止されており、その理由は《Timetwister》《意外な授かり物といったカードと組み合わせて、簡単に対戦相手の手札を無くしてしまう点にあります。

過去の禁止例を参考にして、相手の追加ドローを無くすのはやり過ぎだったので、相手のドローを禁止せずに自分も引くことにしました。《フェアリーの黒幕》は寛容なんです。ま、1枚引かせてもらいますがね。

フェアリーの黒幕はクリーチャータイプが人間ではなく、フェアリー・ならず者ですが、これはモダンやパイオニアで部族デッキに組み込むためです。

かつて僕がモダンで愛用していたフェアリーデッキで、《呪文づまりのスプライト》とセットで使いたい。更に以前にスタンダードで強かった、ディミーアローグも好きなので、部族シナジーの恩恵を受けられるように、フェアリー・ならず者にしました。

自分が好きだったデッキに、自分のデザインしたカードが採用されるのは、カードゲーマーにとって至上の喜びです!

■完成


こうして、高橋 優太こと《フェアリーの黒幕》は完成したのでした。

自分がカード化されることは、一生に二度ない…いや、普通は一回すらない貴重な経験であり、自身がマジックの歴史の一部になることを意味して、僕にとっては「歴史の教科書に載った」「銅像が建てられた」ことと同じくらいの最高の栄誉です!

稲妻》を撃たれたり、格闘されたり、《サメ台風》トークンでサメに食われる《フェアリーの黒幕》を見るのが、今から楽しみです。

みんな、《フェアリーの黒幕》を使ってね♪

それではまた。


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