MTG │ 大会レポート │ 高橋優太【第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権】
先週末は、アメリカのラスベガスにて開催された「第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」に参加しました。
世界選手権と併催の「MagicCon: ラスベガス」は、これまでで最大規模と思えるほどの広さ!統率者や構築・リミテッドのイベントに、5000人以上は参加していました。
販売ブースも多数の企業が出店しており、お祭りのようなイベントです!
さて、世界選手権初日はブースター・ドラフト3回戦と、スタンダード4回戦を行い、4勝3敗以上の成績で2日目へ進出。
普段のプロツアーが4勝4敗以上の成績で2日目なので、それと比較してドラフトの勝敗が重要です。
井川良彦さん、井上徹さん、小坂和音さん、斎藤慎也さん、中村修平さん、原根健太さん、平山怜さん、松浦拓海さん、増門 健太さん、森山真秀さんとチームを組んで練習を行いました。
以下その大会レポートです。
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■ドラフト
『ダスクモーン:戦慄の館』のドラフトは、白赤緑のナヤカラーに人気が集中しやすい環境です。
白赤緑の3色はクリーチャーの質、除去の質ともに高く、2マナから5マナまで高品質のものが揃っています。特に《画面の中への幽閉》《焦熱の竜火》の2つは、環境に死亡誘発能力が多いため追放する除去が嬉しくて、どちらもタッチで使う可能性もある、最上級のコモンです。
ドラフトの練習でもボロス(白赤)とグルール(赤緑)の3-0する率は高く、世界選手権でもこの3色が人気になると認識していました。
その反面、人気が無いのが黒です。他の色に比べてクリーチャーの質がとても低く、クリーチャーの戦闘で不利になりやすい事が理由です。
除去の《殺害》は強いですが、ダブルシンボルのカードなので黒メインのデッキでないと使いにくく、《殺害》が5手目以降で流れてくることも良く起こります。
僕が練習段階で勝率が良かったのが、青からスタートしてコントロール気味にデッキを組む戦略です。
青は《光霊噴出》《食肉用冷凍室+冠水した食堂》により、後半にドローしてアドバンテージ差で勝つことを得意としています。《声も出せない》は実質除去として機能しますし、《付け回される研究者》はブロッカーとしてもアタッカーとしても優秀。
《付け回される研究者》を中心に2マナ域のクリーチャーをしっかり取って、白や黒の確定除去を挟みつつ、後半に《光霊噴出》《食肉用冷凍室+冠水した食堂》でのドローでリソース差をつけて勝つのが得意でした。
白赤緑のナヤカラーに人気が集中しやすい環境なので、必然的に青黒は不人気になりやすいです。ただ不人気ならカードが回って来やすい色でもあるので、青黒をやることに抵抗はありませんでした。《無限への恐怖》が4手目・5手目で流れてくるなら、青黒に参入する動機になります。
1パック目初手は《ヴァルガヴォスの猛攻》!!!
ドラフトが始まる前に、《ヴァルガヴォスの猛攻》か《忌まわしき眼魔》引けたら良いなと願っていたのですが、願いが届きました。
5マナで戦慄予示2回で4/4を2体生成、7マナで戦慄予示3回で5/5を3体生成、どちらもゲームに勝つほどの性能!
シングルシンボルなので緑タッチで使うのも容易で、この環境で最強のレアです。
1パック目2手目は《焦熱の竜火》。
レア抜けだったので上は強いレアを取っていますが、それでも最上級のコモンを喜んでピック。
1パック目3手目、ここで命運が分かれます。
《月の賢者の養子、ナシ》か《光霊の探求者》。カードとしては《月の賢者の養子、ナシ》の方が《光霊の探求者》よりも強いのですが、ここで青黒に切り込むと1手目か2手目のどちらかは捨てる事になり、タッチで《焦熱の竜火》か《ヴァルガヴォスの猛攻》を使う事になります。
僕は普段の練習で同じ場面に遭遇しており、周りが青黒を嫌って《月の賢者の養子、ナシ》が流れてくるようなら、青黒が良いポジションな証拠なので参入していました。
しかし望外の初手である《ヴァルガヴォスの猛攻》、最上級コモンの《焦熱の竜火》と、1手目2手目で強いカードがピック出来ていた事により、判断を誤ってしまいます。
ナヤカラーをやりたい気持ちが強くなってしまい、《光霊の探求者》をピック。
そして1パック目4手目。
再び青黒が空いているサインである《無限への恐怖》が流れて来ます。ここで《無限への恐怖》を取って、青黒タッチ緑に修正すればまだ間に合ったのですが、《月の賢者の養子、ナシ》を流してしまった事で自分の中に「青黒をやらない」という考えが固まってしまい、本来こんなに早く取るカードではない《肉潜り虫》をピックします。
その後は赤緑のカードのみをピック。
2パック目で《チェーンソー》や《怒りのワルツ》は流れて来ましたが、流れてくる赤緑のクリーチャーの質はイマイチ。
3パック目になると赤緑の良いカードをほとんどピック出来ず、流れてきた2枚目の《月の賢者の養子、ナシ》や《止められぬ斬鬼》をカットする事しかできません。
赤緑が出来るポジションでないのに、1パック目の初手と2手目に引きずられて強行して、失敗。
結果は0勝3敗。
本番でいかに普段通りの力を発揮できるか、その普段通りの基準を上げるのが練習です。
本番は焦りや緊張も生まれます。上手く行かない時もそうですが、上手く行きすぎている時にも焦りや緊張は生まれます。
望外のレアを引き、2手目に良いコモンも取れたことで思考が固定されてしまい、柔軟にドラフトをする事が出来なかった。リラックスした状態で臨めなかった。
ここ2年ほど競技イベントで0-3が減っていたので、少しは成長したかと思っていたのですが、プロツアー・モダンホライゾン3に引き続き0-3。
またやり直しです。ドラフトを克服しない限りは上位入賞は目指せませんし、逆にドラフトさえ2-1で終えられれば上位に入れています。自分の課題ははっきりしているので、諦めずにドラフトを練習して行きます。
■スタンダードのデッキ選択
「ドメイン」「ゴルガリミッドレンジ」「白コントロール」「エスパーミッドレンジ」など様々なデッキを試しましたが、最終的にチーム内で有力候補になったのは、「グルール果敢」「ディミーアミッドレンジ」の2つ。
打ち消しや瞬速を構えるデッキが自分のプレイスタイルに合っているので、「ディミーアミッドレンジ」を選びました。
「グルール果敢」は《心火の英雄》や《熾火心の挑戦者》から、各種のクリーチャー強化でライフを詰めて行くデッキです。
井川さんが「グルール果敢」を使用してトップ8入賞していますので、詳細な解説は井川さんの記事をどうぞ。
■ディミーア・ミッドレンジ
打ち消しや除去で相手を妨害しながら、飛行クリーチャーたちで攻めて行くデッキです。
《遠眼鏡のセイレーン》は単体性能は少し低いものの、後述する《悪夢滅ぼし、魁渡》と相性が良く、1マナの忍術元として便利。
《大洞窟のコウモリ》は手札破壊しながら飛行が残り、相手によって強さがブレにくい2マナ域。
《フェアリーの黒幕》はインスタント呪文を構えながら、瞬速で相手に合わせて動いて行けます。《豆の木をのぼれ》や《不浄な別室+祭儀室》など、ドローするエンチャントに合わせてプレイする事で自分もドローを進められます。
《分派の説教者》は2/4接死で地上を止めつつ、ライフが有利なときにはドロー、不利なときには吸血鬼トークン生成と、押している盤面・押されている盤面の両方で活躍。
3マナ域は《止められぬ斬鬼》との比較になりますが、斬鬼よりもブロッカーとしての性能が少し高く、ドローが付いているのでブロックされた場合でもアドバンテージを稼いでくれます。
《塔の点火》や《エルズペスの強打》など、斬鬼を狙った3点ダメージの追放除去に対しても、《分派の説教者》のタフネス4が良い場面があり、斬鬼だと《切り崩し》で2ターン麻痺するのが敗因になり得ます。総合点で見たら《分派の説教者》の方が強く、おすすめ。《分派の説教者》は4枚入れるべきでした。
新加入の《悪夢滅ぼし、魁渡》は、強い相手と弱い相手がはっきりしているカードです。
クリーチャー除去の多いコントロールデッキに対しては、呪禁で対処しにくいプレインズウォーカーとして強く、{0}能力でカードを引いていれば、忍術した返しのターンに《失せろ》で破壊されたとしても、アドバンテージ面では損していません。《失せろ》《力線の束縛》以外では対処しにくく、相手によっては1枚で勝てるカード。
逆に速攻クリーチャーの多いデッキに対しては弱く、3ターン目に忍術しても、返しのターンに《僧院の速槍》と《巨怪の怒り》による攻撃で簡単に落とされてしまいます。
《悪夢滅ぼし、魁渡》が赤いデッキに弱い事は認識していました。しかし赤以外の相手には強かったため、サイド後に《遠眼鏡のセイレーン》《フェアリーの黒幕》《悪夢滅ぼし、魁渡》を除去に置き換える形で対応しようと考えていました。
《永劫の好奇心》はディミーアミッドレンジを大きく強化しました。《永劫の好奇心》があるからこそ、少し単体性能が低い《遠眼鏡のセイレーン》でも、飛行によって価値が生まれてきます。《大洞窟のコウモリ》で相手の動きを阻害しながら、《永劫の好奇心》でドローするのが一番の勝ちパターンで、瞬速持ちであることもデッキに合っています。
瞬速と打ち消し呪文を構える動きが好きで《三歩先》を4枚入れましたが、おそらく僕はこのカードが好き過ぎるため、4枚は適正な枚数ではないです。
今のマジックはグルール果敢を筆頭に、強いカードが1マナと2マナに集中しています。3マナの打ち消し呪文が強いタイミングは相手の4-5マナのカードを打ち消した時で、4枚は過剰でした。
1ターン目に青マナから《遠眼鏡のセイレーン》を出したいこと、《噴水港》でトークンを生贄にするタイミングが少ない事から《ミレックス》を採用していましたが、これは《分派の説教者》を多く採用する前のマナベースになっており、未完成でした。今なら《噴水港》に変更します。
除去はどれも一長一短ですが、ドメイン系のデッキが大主を多く使ってくると考えて、大主も倒せる除去である《喉首狙い》4枚《保安官を撃て》2枚に。
《覆い隠し》はディミーアミッドレンジミラーで《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》の両方を対処できる除去して採用しました。
■大会結果
・ドラフト
×白赤
×青赤
×黒緑
・スタンダード
〇ドメインランプ
〇ドメインランプ
×ディミーアミッドレンジ
×アゾリウス眼魔
ドラフトの0-3が響いて、2勝5敗で初日落ち。
■おわりに
今回の大会に備えて、自分が万全の準備を出来たかと言うと、そうではありません。ドラフトは普段通りにピック出来ず、スタンダードのデッキリストは未完成だった。
大会が終わった後に「もっと準備できた、練習できたのではないか」と思うのが、最も後悔が残る瞬間です。
今までに、誰かのせい、何かのせいにして、練習しない言い訳を作り、ゲームに情熱を持てない事を誤魔化して、勝てなくなって消えて行った人を山ほど見て来ました。
だからこそ、ハビエルや井川さんのように、折れずに不屈の意志を持って、諦めずに練習し続ける人間を、心から尊敬出来ます。
次回は来年2月のプロツアー。それまでに、サボることなく、特にドラフトに集中して練習して行きます!来年もプロツアーが楽しみだ!!!
それではまた。