MTG │ 考察記事 │ 高橋優太【禁止改訂を受けて各フォーマットを分析!】

2024年8月26日、大きな発表がありました。

パイオニア:
アマリア・べナヴィデス・アギーレ》 禁止
傲慢な血王、ソリン》 禁止
モダン:
有翼の叡智、ナドゥ》 禁止
悲嘆》 禁止
レガシー:
悲嘆》 禁止
ヴィンテージ:
ウルザの物語》 制限
苛立たしいガラクタ》 制限

・禁止制限告知(公式記事)
・《有翼の叡智、ナドゥ》について(公式記事)

特に《有翼の叡智、ナドゥ》については、個別に記事が発表されて、デザインに失敗したことが明言される異例の事態でした。

環境が激変する禁止制限告知なので、各フォーマットについて今後の影響を考えていきます。

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■パイオニア

アマリア・べナヴィデス・アギーレ》は、《野茂み歩きとのコンボで大量の探検とライフ回復を誘発させて、パワー20になって攻撃したり、大量に得たライフから《霊気貯蔵器》の50点ダメージで勝つデッキでした。

このコンボの際に、《野茂み歩き》に対して《ロランの脱出で破壊不能を付与すると、アマリアと《野茂み歩き》のライフ回復から探検のループが終わらなくなり、ゲームが強制的に引き分けになってしまいます。引き分けが何ゲームも続いて新しくゲームをやり直すのは、プレイヤーの望むものではありません。

傲慢な血王、ソリン》は以前は《ガルタとマーブレンを出す程度の、一線級までは行かないデッキでしたが、《血管切り裂き魔》が出たことにより一変しました。

3ターン目に出てくる《血管切り裂き魔》は対処が非常に難しく、除去できたとしてもライフとリソースを大きく失います。そして6マナなのでソリンに頼らずともプレイ可能で、《鏡割りの寓話のマナ加速から6マナで出すこともしばしば起こりました。3ターン目に必殺コンボがあり、単体でもプレイ可能な《血管切り裂き魔》の存在で、ラクドス吸血鬼はパイオニアの最強デッキに上り詰めました。

傲慢な血王、ソリン》を禁止しないと、今後のセットで強い吸血鬼が出る度にソリンが強化されてしまうため、禁止は妥当だと言えます。やはりマナを踏み倒すカードは強い!

宝船の巡航》が禁止されなかったため、新環境はイゼットフェニックスに人気が集まることが予想されます。墓地対策は多めにしておきたい。

その他のデッキは、アゾリウスコントロールやラクドスミッドレンジ、ロータスコンボなど、少し前のパイオニア環境に戻っていきそうです。

■モダン

有翼の叡智、ナドゥ》の禁止。
既に始まっているモダンの地域予選の結果が示す通り、バントナドゥはモダンで最強と言えるデッキに成っていました。

単体除去されたとしてもアドバンテージを獲得し、その除去も《森を護る者》で守ることが出来て、打ち消し呪文も《喜ぶハーフリング》で乗り越える。場に《手甲》があればナドゥもしくは《召喚の調べ》《召喚士の契約》で勝ちと、トップデッキの受けが広い。

過酷な指導者》で起動型能力を防ぐなどの対策はありますが、それも《召喚の調べ》経由で《荒れ模様のストームドレイクするなど、解決策は十分にあります。

対策されたとしても《ウルザの物語》や《春心のナントゥーコのトークンで攻撃して勝つなど、勝利条件が広くて多彩なデッキでした。これは僕の経験則なのですが、本当に強いデッキは対策されても容易に貫通して来ます。環境を動かすために、ナドゥ禁止は必要な措置でしょう。

手甲》を禁止したとしても、0マナで対象に取る能力は《稲妻のすね当て》《コーの先導》があるので、ナドゥを禁止することでしか止める手段はなかったでしょう。

悲嘆》禁止に関しては、少々疑問が残ります。

現在のモダンのメタゲーム上で、《悲嘆》を使うデッキは「黒単ネクロ」「エスパー御霊」「死せる生」などで上位に多いわけではなく、ナドゥのように支配的な強さとまではいきません。《悲嘆の性能そのものよりも、1ターン目に《儚い存在》や《マラキールの再誕とのコンボで2枚手札破壊されることに対する不快度が高い点が、禁止に繋がったように思えます。

悲嘆》を禁止するなら、指輪物語発売後で《激情》が使えて、ラクドス想起が一番強かった頃に禁止すべきだった!

今後のモダンで、メタゲームの中心になりそうなのはボロス・エネルギーです。今回で何も禁止されず、フェアデッキ同士の対決では無類の強さを誇ります。
もともとモダンホライゾン3発売後に人気を集めたデッキでしたが、ナドゥに対して不利なことから使用者が減少。

特に《火の怒りのタイタン、フレージ》や《鏡割りの寓話》は、3マナのカードを出してフルタップすると返しにナドゥコンボを決められる恐れがあります。ナドゥに勝つためにボロス・エネルギーは3マナのカードを極力減らして、《オセロットの群れ》や《ゴブリンの砲撃で高速化する傾向になっていました。

コンボデッキが減り、よりフェアな対決が増えるのなら、《鏡割りの寓話といった3マナのカードが再び採用されていくでしょう。

ボロス・エネルギーが増えるのなら、同系に強くするための選択肢になりそうな4つ。

オークの弓使い》は《色めき立つ猛竜》や《オセロットの群れを除去するのに強く、《黄泉帰る悪夢》は消耗戦に強いので、黒を足す形も増えそう。

一つの指輪》も、今までは4マナでフルタップする行為が、返しにナドゥコンボを決められリスクとなっていました。
ナドゥ禁止によりアドバンテージを取り合うゲームが増えそうなので、《一つの指輪》を使うデッキも増えそう。

僕の好きなディミーア・マークタイドは、ボロス・エネルギーとエルドラージトロンに対して不利なので、禁止改訂直後は苦しい戦いが多くなりそう。
トークンをまとめて除去できる《集団疾病》が、サイドボード候補として良さそうです。

■レガシー

レガシーでも《悲嘆》が禁止に。

レガシーでは長らく、ディミーア・リアニメイトが一強状態になっており、《悲嘆》はその中心となるカードです。
モダンの《儚い存在》《マラキールの再誕》よりも、単体で機能する《再活性》《動く死体》が、レガシーでの《悲嘆》の性能を押し上げています。

確かに《悲嘆》は強いカードではあるのですが、リアニメイトしない限りは、2枚使って1枚手札破壊するカード。

むしろ《再活性》こそが、リアニメイトデッキの根幹なのではないかと、僕は思います。

わずか1マナでどんなクリーチャーも、相手の墓地からもクリーチャーを戻せる《再活性》こそが、リアニメイトデッキの強さを支えています。

1ターン目に《カザド=ドゥームのトロール》で《Underground Sea》をサーチしながら、2ターン目に《不毛の大地》と《目くらまし》でバックアップした上でトロールを《再活性》。ほぼゲームに勝ちです。
1ターン目に《悲嘆》想起で相手の手札の《偉大なる統一者、アトラクサ》を捨てながら、相手の《偉大なる統一者、アトラクサ》を《再活性》。これもゲームに勝ちです。

レガシーやヴィンテージなど、下環境になるほど1マナの差は大きく、2マナの《動く死体》と1マナの《再活性》では、プレイできるターンや相手の対策できるターンが全く異なります。

1マナの《再活性》は本当に強力で、禁止されてもおかしくない性能です。
それでもレガシーは昔のカードを楽しむフォーマットであり、渦まく知識》が禁止されないのと同様に、レガシーの顔である《再活性》は禁止されないでしょう。

超能力蛙》は禁止の議論対象でもあると、公式サイトに記載がありました。
火力で倒せず、青黒という色が《意志の力》の代用コストになり、サイドボード後の墓地対策を平気で乗り越え、1枚でゲームに勝つカードです。

マウントを取る性能が高く、レガシーの《超能力蛙》は強すぎるかも。遊べるうちに《超能力蛙》を使っておきましょう。

■ヴィンテージ

ウルザの物語》と《苛立たしいガラクタ》が1枚制限カードに。

ウルザの物語》制限に関しては、『モダンホライゾン2』が発売された当初から言われ続けてきたことです。
ヴィンテージでは各種《Mox》があるため、2章の構築物トークンのサイズが大きく、3章で《Black Lotus》や《太陽の指輪》をサーチすればマナが増えます!

打ち消し呪文を抱えたまま構築物トークンだけで負ける展開を何度も経験してきました。やっとプレイヤーの要望が通った形です!

苛立たしいガラクタ》に関しては、ヴィンテージは各種《Mox》や《意志の力》を使ったデッキが多く、0マナの呪文を打ち消す効果があまりにも強い!

先攻で自分は《Mox》を置いた後に《苛立たしいガラクタ》を置けば、相手は《Mox》を置けません。先攻有利を加速させるカードだったので、早めに制限してくれて嬉しい限り!

苛立たしいガラクタ》の影響で、最近は《Bazaar of Baghdad》を使ったピッチヴァイン、発掘などが数を減らしていました。
どちらのデッキも0マナ呪文を多用するため、《苛立たしいガラクタ》がとても苦手で、《虚ろな者》が打ち消されますし、後から破壊しようにも《活性の力》も打ち消されます。

苛立たしいガラクタ》を打ち消せないと終わり、なんて状況すらありました。
1枚制限により、《Bazaar of Baghdad》が復権しそうです。

ウルザの物語》対策で《広がりゆく海》が強かったですが、今後はこれも減りそう。

青黒ルールスサーガは、サーガは1枚に減るものの、デッキの根幹は無事なので今後も強そうです。

■おわりに

大変動した禁止改訂。今後のモダンはボロスエネルギー中心。
オークの弓使い》《一つの指輪絡みのアドバンテージゲームにもなりそうです。

それではまた。


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