MTG │ 考察記事 │ 井川良彦【海外の地域チャンピオンシップから考えるモダン環境分析】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末にヨーロッパ、カナダ、中南米の3地域で地域予選がモダンで開催されました!
日本でも2/8-9にチャンピオンズカップファイナルが開催されますので、そのメタゲームを占うためにも上記の大会結果について分析・ご紹介していきたいと思います。
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★先週末に開催された大型大会
◎Ultimate Guard European Magic Series(参加者:996名)
■大会結果
優勝:ティムールブリーチ
準優勝:エルドラージランプ
3位:ボロスエネルギー
4位:ボロスエネルギー
トップ8:ボロスエネルギー
トップ8:繁殖鱗コンボ
トップ8:ティムールブリーチ
トップ8:ティムールブリーチ
◎Ottawa Round 8 Regional Championship(参加者:430名)
■大会結果
優勝:ボロスエネルギー
準優勝:オルゾフブリンク
3位:4色ブリーチ
4位:ボロスエネルギー
トップ8:4色ブリーチ
トップ8:青単ベルチャー
トップ8:アミュレットタイタン
トップ8:ボロスエネルギー
◎City Class Games Showdown VIII(参加者:189名)
■大会結果
優勝:エルドラージランプ
準優勝:オルゾフブリンク
3位:ボロスエネルギー
4位:ティムールブリーチ
トップ8:エルドラージランプ
トップ8:ディミーア眼魔
トップ8:ティムールブリーチ
トップ8:ドメインズー
今週末はボロスエネルギー・ティムール(4色)ブリーチ、エルドラージランプの3デッキが大暴れ。それぞれの大会を制しただけでなく、多数の入賞者を送り込んでいます。
プロツアー権利獲得者(ヨーロッパ36名・カナダ12名・中南米6名)を表にまとめてみると
このようにかなり偏った結果になったことが分かりますね。
エネルギー・ブリーチ・エルドラージの3強が39/54と権利獲得者の72%を占めているのです。
一方、上位メタとして人気だったディミーア眼魔は大敗と明暗が分かれてしまいました。どの大会でも上位デッキでありながら、なんと3大会合わせて権利獲得者はたったの1名しか輩出できていません。
公開されていた対戦マトリクス(勝率表)を見てみると、エネルギー・ブリーチに負け越しており、その下にいるオルゾフやヨーグモスにも大きく負けていたので、今回の結果は当然の帰結だったのでしょう。
★注目デッキ紹介
◎4色ブリーチ by Jacob Richer
《死の国からの脱出》+《研磨基地》+《オパールのモックス》or《モックス・アンバー》のコンボでライブラリーを全て削りきり、最終的には《タッサの神託者》《神秘を操る者、ジェイス》《ぶどう弾》といったカードで勝利するコンボデッキ。
基本的にはティムールカラーで構成されますが、こちらのデッキではさらに白を加えて4色にすることにより、対応力を上げています。これも《オパールのモックス》が解禁されたおかげですね。
白を足すことで強化されているのが、まず単体除去。
普通の火力では触りづらい《超能力蛙》を対処できるだけでなく、サイド後に出される《石のような静寂》《虚無の呪文爆弾》といったヘイトカード対策としても運用することができるのが嬉しい!《ドラニスの判事》と《石のような静寂》、両方を対処できるカードを無理なく採用できるため、サイドボードの枠を節約できています。
ブリーチコンボの実態は《死の国からの脱出》による実質1枚コンボ。《研磨基地》や各種モックスも「脱出」により墓地からプレイできるので、《死の国からの脱出》さえあれば完結しますし、逆に言うと《死の国からの脱出》がなければコンボは絶対に決まりません。
その《死の国からの脱出》の枚数を水増ししてくれるのが《セヴィンの再利用》。
カウンターされた《死の国からの脱出》を戻すのはもちろんのこと、《研磨基地》しかない盤面からでも自分のライブラリーを削って《死の国からの脱出》と《セヴィンの再利用》を落とす→フラッシュバックで《死の国からの脱出》を戻して勝利という、ティムールでは存在しない勝ち筋を作っています!
また、白を加えたことにより、各種ヘイトベアーも採用できるようになりました。
メインから採用されている《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》は主にミラーマッチ対策。「マナを支払っていない呪文を打ち消す」能力により相手の各種モックスを完封します。
また、ディミーア眼魔やベルチャー、ヨーグモス相手でも《否定の力》《拒絶の閃光》《忍耐》といったカードのピッチでのプレイを封じることができるので完全に無駄になるわけではありません。
《ガドック・ティーグ》はエルドラージ対策でしょう。これ1枚で天敵の《大いなる創造者、カーン》を封じることができますし、万能スペルである《コジレックの命令》すら禁止します。エルドラージ側は《コジレックの帰還》を何枚残すべきか悩みそうです。
環境屈指のコンボデッキでありながら従来からいるティムール型・4色型と選択肢があり、研究のし甲斐がありそうですね。
◎エルドラージランプ by FerMTG
『モダンホライゾン3』で大幅強化されたエルドラージ。《一つの指輪》を失って弱体化こそしましたが、未だフェアデッキキラーとして上位メタデッキに君臨しています。
《コジレックの帰還》をトリガーさせつつアドバンテージを稼げる《虚構漂い》、そしてミラーマッチ最強サイドである《記憶への放逐》のために青をタッチしている形が主流ですが、ヨーロッパの地域予選で準優勝したこちらのリストは赤緑2色にまとめています。
『モダンホライゾン3』リミテッドにて最強コモンの名をほしいままにし、パウパーでも絶賛大活躍中の《のたうつ蛹》がついにモダンに登場!!
「2→4→7」の動きを支えるカードとして追加の《まき散らす菌糸生物》のような働きも見せますし、一度育てば優秀なブロッカーとして《魂の導き手》に対しても立ちはだかってくれます。《コジレックの命令》のトークンと合わせれば超巨大サイズになったり、《コジレックの帰還》のオール5点に耐えることも可能とスグレモノですね。
《記憶への放逐》が打てないなら土地破壊すればいいじゃない。ということで、最初期から存在する元祖土地破壊であり代名詞・《石の雨》です!!!
こういうカードが稀に使われたりするところがマジックの面白いところですよね!
ミラーマッチにおける土地破壊の強さは今更説明不要でしょう。3マナと軽いため、後攻だとしても相手の《まき散らす菌糸生物》よりも早くプレイして《エルドラージの寺院》、《ウギンの迷宮》、《楽園の拡散》付きの土地といった2マナ分の土地を破壊して勝利することも現実的です。
《記憶への放逐》は強力ですが、構えるのが難しかったり青マナの捻出がそもそも厳しかったりもしたので、こういうストレートなプランで色を減らしているのは好感が持てます。
◎オルゾフブリンク by Max Dore
エネルギー・ブリーチ・エルドラージの陰に隠れてはいるものの、かなりの勝ち組だったのがこちらのオルゾフブリンク。
《ベイルマークの大主》を《溌剌の牧羊犬、フィリア》《ちらつき鬼火》でブリンクさせて圧倒的な盤面を築きつつアドバンテージを稼ぐデッキです。
またそれだけでなく、従来のデス&タックスのように《霊気の薬瓶》+《護衛募集員》で相手に合わせたクリーチャーを探して戦うことも可能な構成となっています。
この系統のデッキは《ちらつき鬼火》の使い方が勝敗を大きく左右するため、細かいTipsを知っておく必要があります。
少しだけ例を挙げると、
・《魔女の結界師》《ボガートの獲物さらい》といった両面カードは、土地としてセットランドした後に《ちらつき鬼火》でブリンクするとクリーチャーとして戦場に出せる。頻出。
・《ちらつき鬼火》を《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《ちらつき鬼火》でブリンクすると、ターンの終了時に帰ってくる=その誘発型能力で好きなパーマネントを「次のターン終了時まで」消すことができる。これを利用して相手の土地を減らして《至高の評決》を1ターン打たせなくする、なんて芸当も可能。ターン終了時に《儚い存在》でも同様。
《溌剌の牧羊犬、フィリア》と違ってブリンクの対象が広い(相手も自分もOK、パーマネントならなんでもOK)ので、よく考えて使う必要があります。
特に相手のターンで《霊気の薬瓶》を起動する場合、第2メインで動くのか、ターン終了時で動くのかよく考えること。
スタンダードの白系アグロや、パイオニアのセレズニアカンパニーなどでも使われている《エイヴンの阻む者》。スタンダードやパイオニアでは「墓地や追放領域からカードをプレイする」機会が少ないため、このカードで「計画」させたカードにしか機能しないことが多いですが、モダンにおいては様々なカードに制約を突きつけます。
よく見るカードをザッと上げると、
・《火の怒りのタイタン、フレージ》の「脱出」
・《死の国からの脱出》での「脱出」
・《湖に潜む者、エムリー》の起動型能力由来のプレイ
・《睡蓮の花》の「待機」明けでのプレイ
・《力線の神童、ラル》の「-8」や《レンの決意》《無謀なる衝動》で追放したカード
・《ダウスィーの虚空歩き》の起動型能力由来のプレイ
・「続唱」で追放した《衝撃の足音》《死せる生》
などでしょうか。
このようにかなり幅広い範囲に刺さる=追加コストを要求するので、自分がオルゾフブリンクを使うにせよ、相手に使われるにせよ、一度どのカードに当たるのかしっかり考えておくと良いでしょう。
★おわりに
ということで、今回の記事では先週末に開催された大型大会の結果を見ていきました。
日韓で開催されるチャンピオンズカップファイナルの前にこれだけの大会が開催されたため、メタゲームもかなり明確になってきましたね。
ボロスエネルギー、ティムールブリーチ、エルドラージランプ。この3つが上位を形成しつつ、その下にオルゾフブリンクやベルチャーなどが続く感じでしょうか。
日韓では(禁止改定前とはいえ)エリア予選が開催されていたので、そちらの情報も多少参考になるかもしれませんね。エネルギーが一番人気になるかなと個人的には予想しています(海外/MOに比べるとマルドゥの割合が少し増えるかもしれませんが)。
先週末大敗に終わったディミーアの動向は気になるところです。
今後リストを見直して逆襲が始まるのか、それとも見限られて少数派となってしまうのか。参加者たちの選択に注目しましょう。
それでは今回はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!