MTG │ デッキ紹介│ 井川良彦【プロツアー直前!モダン環境の有力デッキ紹介】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
明日7/28(金)から、今シーズン最後のプロツアーであるプロツアー・指輪物語が開幕。
2019年のプロツアーバルセロナ以来、実に4年振りのモダンプロツアーです!同じ季節、同じ土地でのモダンプロツアー復活にテンションが上がるのは僕だけではないでしょう。
今回の記事ではプロツアー観戦をする方、最近モダンをプレイしていないという方に向けて、モダンの「今」を簡単にまとめていこうと思います!
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★モダンを激変させた『指輪物語:中つ国の伝承』
スタンダードおよびパイオニアを通さない、いわば「モダンホライゾン3」ともいえるポジションとして発売された『指輪物語:中つ国の伝承』。
前評判こそ一部のカードのみに評価が集中していましたが、蓋を開けて見れば様々なカードが活躍しています。
◎《オークの弓使い/Orcish Bowmasters》
最も影響度が高いのがこのクリーチャー。
その除去能力で《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》《エスパーの歩哨》といったタフネス1クリーチャーを殲滅。特に《敏捷なこそ泥、ラガバン》に対して強く、1点を打った上で戦場に1/1が2体出るため、2枚目以降も実質的に封殺してしまいます!
このカードの登場によりモダンにおけるタフネス1クリーチャーの価値が著しく下がっており、スタンダードでクリーチャーサイズを定義した《反射魔道士》や《砕骨の巨人》と似た状況になっています。
また、誘発型能力でも「1点+オーク動員」が誘発するので、《ミシュラのガラクタ》《考慮》《彩色の星》《時を解す者、テフェリー》そして《一つの指輪》といった「カードを引く」と書いてあるカード全般を大きく抑制しています。
このように能力が超強力なだけでなく、2マナと軽く、瞬速であるため相手のアクションに対して後出しできて、そしてシングルシンボルなため採用しやすい。
モダンの様々なデッキに対して強く、「《オークの弓使い》に対して《オークの弓使い》を出すのが一番」という状況であるため、非常に多くのデッキで採用されています。
よくある先手ゲーとは異なり、珍しく「後出し」が強いのがオークミラーでの注意点。気軽に出して返しにオーク返しされないよう、十分気をつける必要があります。
◎《一つの指輪/The One Ring》
続いてはこちら。指輪物語の代名詞とも言えるカードがマジックに登場しています。
《Time Walk》+《Ancestral Recall》が1枚に内蔵されたともいえる圧倒的パワーカード。もちろんその代償は安くなく、結構な量のライフを要求されますが、定着すれば1枚で10枚以上ドローすることもことも珍しくありません。
「プロテクション:すべて」は範囲が広く、クリーチャーのアタックはもちろんのこと本体火力や手札破壊、《残虐の執政官》や《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》なども完全に防ぐことができます。
◎《喜ぶハーフリング/Delighted Halfling》
《死儀礼のシャーマン》以来のスーパーマナクリーチャー。「カウンターされない」ってこんなに簡単に付けて良いの?と首を傾げずにはいられません。
《否定の力》を構えている続唱デッキ(リビングエンドやティムールカスケードなど)が《喜ぶハーフリング》→《時を解す者、テフェリー》で2キルされるのも日常茶飯事。
よくあるマナクリーチャーと異なりタフネスが2なので、上記の《オークの弓使い》や《レンと六番》といったタフネス1キラーで死なないのが偉い!
◎《ロリアンの発見/Lorien Revealed》
土地サイクリングシリーズのうち《オリファント》《気前のよいエント》の2種類は早い段階からリビングエンドに見出されていましたが、ここ2週間で急激に使われ始めたのがこの《ロリアンの発見》。
基本的には土地サイクリング=タップイン土地相当として運用しつつ、消耗戦においては3ドローも可能。そしてなんといっても青いカード=《否定の力》のコストとして使えるのが◎。
「土地スロットがピッチコストになる」ことでデッキの安定性を上げてくれるため、モダンだけでなくレガシーやヴィンテージでも採用され始めています。
★上位デッキ紹介
◎ラクドススキャム
MODERN CHALLENGE 7/22/2023 (優勝) by BEENEW | |
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デッキリスト | |
2:《汚染された三角州/Polluted Delta》 2:《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》 3:《血の墓所/Blood Crypt》 2:《湿地の干潟/Marsh Flats》 2:《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》 4:《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》 3:《沼/Swamp》 18 lands 4:《敏捷なこそ泥、ラガバン/Ragavan, Nimble Pilferer》 |
4:《思考囲い/Thoughtseize》 3:《フェイン・デス/Feign Death》 3:《不死なる悪意/Undying Malice》 1:《稲妻/Lightning Bolt》 3:《終止/Terminate》 2:《血染めの月/Blood Moon》 2:《アガディームの覚醒/Agadeem’s Awakening》 18 other spells 3:《虚空の力線/Leyline of the Void》 |
《悲嘆》or《激情》を想起で唱えつつ、スタックで《フェイン・デス》もしくは《不死なる悪意》をプレイすることで、1ターン目から圧倒的な盤面を作ることが可能なミッドレンジ。特に先攻1ターン目の《悲嘆》+《フェイン・デス》を止める術は非常に限られており、1ターン目においてはモダン最強のアクションといっても過言ではないでしょう。
ただしそのコンボに依存しすぎている訳でもなく、《思考囲い》からの《オークの弓使い》、《敏捷なこそ泥、ラガバン》からの《血染めの月》、ロングゲームを《歴戦の紅蓮術士》で耐えて《激情》を通常プレイして勝つなど多角的な攻めが可能な構成になっているのがトップメタの所以です。
手札破壊が主軸になっているためドロースペルには弱いのが常でしたが、それも昔の話。
そのドローを咎めることができる《オークの弓使い》が登場したことによりデッキが完全体になりました。《オークの弓使い》のおかげで《フェイン・デス》《不死なる悪意》が手札で腐ることも減り、かつ《オークの弓使い》対決でも《激情》分だけ優位に立つことができます。
このようにデッキパワーが高く、今回のプロツアーでもほぼ間違いなく一番人気であろうこのラクドススキャムですが、デッキの性質上「デッキ公開制」が有利に働くため、さらに使用率が高くなりそうです。
除去or手札破壊or《血染めの月》など相手によって効果が違うカードのマリガン基準もそうですし、「《激情》+《フェイン・デス》コンボだけでキープしていいのか」といった点も勝率に大きく影響します。
メインのデッキリストが固定化されつつあるラクドススキャムですが、今回のプロツアー・指輪物語ではミラーマッチが多数想定されるため、ミラーで不要牌となる《血染めの月》をサイドに落としてミラーで有効なカードをメインから採用するかどうかも焦点になりそうです。
MOのデッキリストを色々見てみましたが、候補となりそう=実際に使われているのは《鏡割りの寓話》や《砕骨の巨人》《黙示録、シェオルドレッド》、あとは追加の単体除去あたりでした。トッププロたちの選択に注目しましょう。
◎ディミーアコントロール
新戦力であり最高峰のアドバンテージ手段、《一つの指輪》を軸にした最新型の青黒コントロール。
最序盤を除去とカウンターで凌ぎ、ドローからフィニッシャーで締めるという点では通常のコントロールと大きく変わりませんが、このデッキは《一つの指輪》を最大限活かせるよう特化した構成となっています。
《一つの指輪》さえ出れば手札は十分に補充できるので、そこまでの時間稼ぎに、そして《一つの指輪》をフルタップでプレイした隙を守るために、ピッチスペルのカウンター呪文を実に7枚も採用しています。
《否定の力》と《緻密》を構えつつ出す《一つの指輪》は最高に気持ち良い!!
《緻密》は正確には「打ち消す」ではないため、《喜ぶハーフリング》経由の《時を解す者、テフェリー》や、《魂の洞窟》経由の《原始のタイタン》も対処できることをお忘れなく。
《一つの指輪》のライフ損失をカバーするのが、最高の相棒ともいえる《黙示録、シェオルドレッド》。どれだけ重荷カウンターが貯まろうとも、《黙示録、シェオルドレッド》さえいればライフの損失を気にする必要はありません!4ドローして8ゲイン!5ドローして10ゲイン!!
自分の《一つの指輪》と相性が良いだけでなく、相手の《一つの指輪》対策としても最上の1枚。このディミーアコントロールだけでなく、ラクドススキャムやヨーグモスなど黒いデッキでの採用率が上がってきています。
冒頭で紹介した《オークの弓使い》《一つの指輪》《ロリアンの発見》に加えて、『指輪物語:中つ国の伝承』からの新戦力である《サウロンの交換条件》がドローソースとして採用されています。
レガシーのグリクシスデルバーなどでも採用されているこのカード。
不確定情報から推理する必要はありますが、3マナで4枚掘り進めることができる=《一つの指輪》を探しに行ける、絶対に2枚以上は手札に加えることができる=アドバンテージを稼げるとかなり優秀な1枚です。また、「手札に加える」であって「カードを引く」ではないため《オークの弓使い》を気にせずプレイするできる点が環境にマッチしています。
◎4色オムナス
4色オムナスも『指輪物語:中つ国の伝承』で大きく強化されました。《喜ぶハーフリング》はこのデッキに「カウンターされない」ブン回りをもたらしてくれましたし、《一つの指輪》はライフゲイン&マナ加速をしてくれる《創造の座、オムナス》ととても相性が良いです。
このデッキにはいくつかのバージョンが有り、《大いなる創造者、カーン》を採用して《一つの指輪》へのアクセスを増やしていたり、さらには黒を足して《オークの弓使い》を入れているリストまで存在します。
4色オムナスの問題点は、回りの環境の変化でしょう。自身のデッキが強くなった一方、相性の良かったイゼットマークタイドが数を減らしてしまい、逆に天敵であるトロンが増えてきています。《隔離するタイタン》で土地を5枚割られて悶絶することも珍しくありません。
◎ゴルガリヨーグモス
ヨーグモスも《オークの弓使い》に『指輪物語:中つ国の伝承』よって構成が変化したデッキの一つです。《極楽鳥》《下賤の教主》といったタフネス1のマナクリーチャーをすべて排除し、《喜ぶハーフリング》+《金のガチョウ》のタフネス2のマナクリーチャーに差し替わりました。
《喜ぶハーフリング》は《飢餓の潮流、グリスト》《スランの医師、ヨーグモス》がカウンターされないこともあり、デッキにフィットしています。
ただ対策するだけなく、黒いデッキの嗜みとして《オークの弓使い》を自分も採用しています。1枚で2体並ぶので《召喚の調べ》とも相性が良いですね。
★おまけ。簡易メタゲーム予想
プロツアー・指輪物語では、以下のようなメタゲームになるのではないかと予想しています。
Tier1
ラクドススキャム
Tier1.5
4Cオムナス
ゴルガリヨーグモス
ディミーアコントロール
リビングエンド
Tier2
バーン
トロン
イゼットマークタイド
5C独創力
アミュレットタイタン など
ラクドスが一番人気なのは間違いないでしょう。基本的には20-25%前後だとは思いますが、「倒せなかったのでラクドスを使う側に回る」といったチームが増えた場合、最大で35%ぐらいまでいてもおかしくないです。根幹が強く、かつブン回りが最強デッキ。
Tier1.5には『指輪物語:中つ国の伝承』で強化されたデッキたちが並びます。
Tier2のデッキたちはマッチアップの得手不得手が激しい、もしくは直近で強化されてないデッキたちです。
この辺りの並びは比較的分かりやすいですね。基本的には『指輪物語:中つ国の伝承』そして『モダンホライゾン2』で強化されたデッキがそのまま上位に来ていますね。唯一バーンだけは数年前とほぼ変わりません。バーン凄い。
前環境と大きく違うのが栄華を誇っていたイゼットマークタイド、5C独創力、ハンマータイムの大幅な後退です。『指輪物語:中つ国の伝承』でほぼ強化されず、他のデッキが《オークの弓使い》《一つの指輪》などで大幅に強化されたことにより相対的に弱体化。
特にマークタイドを始めとしたイゼット系統は1マナクリーチャーとキャントリップが軸になっているデッキなので《オークの弓使い》によって大ダメージを受けました。
■終わりに
冒頭にも書きました通り、今回のプロツアーの開催地はヨーロッパ・バルセロナ!
我々日本人にとっては時差が比較的少なく、配信時間も夕方~深夜と視聴しやすい時間帯となっています。
【お知らせ】7月28・29・30日の3日間、「プロツアー・指輪物語」日本語生放送を実施!
開催地はスペイン・バルセロナ。ドラフトおよびモダンで行われる世界大会の模様を、豪華実況解説陣と共にお届けします。どうぞお楽しみに!
⬇概要&放送情報https://t.co/CShmyjGzcI#mtgjp #PTLOTR pic.twitter.com/A8kRD4jdF5
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) July 21, 2023
僕も久しぶりに解説を担当させていただきますので、ぜひご視聴いただければ幸いです。みんなで日本人トッププレイヤーたちを応援しましょう!!
それでは今回はここまで。
また次回の記事でお会いしましょう!