MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【チャンピオンズカップファイナルサイクル2 レポート】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末のチャンピオンズカップファイナル サイクル2は、チャンピオンズカップファイナル サイクル1のときのチームをベースに、新たにグリクシスの名手・齋藤慎也さんを加えつつ計8名で調整スタート。その結果、小澤さん、修平さんの2人がチーム謹製のグリクシスを手に権利を獲得しました。おめでとうございます!
しかしその一方で、王者グリクシスを直前で諦め、赤単アグロに乗り換えて敗北した井川。弱い。弱すぎる…!!!
ということで、今回はチャンピオンズカップファイナル サイクル2の調整過程と簡易レポートをお届けします。
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★時間がないなら、最強デッキに注力しよう!
今回は直前に開催されていたプロツアー=パイオニア&ドラフトに注力していた関係で、調整時間が限られていました。
そこで一通り新興デッキを触りはしたものの、調整開始当初から「使用経験がある」「トップメタである=デッキパワーが担保されている」「デッキが好みである」と一通り条件が揃っているグリクシス・ミッドレンジを半ば決め打ちで調整。
・ファストランドの枚数はどうなのか。8枚は多くない?でも少ないとダメラン痛いよね?後半のタップインと前半のアンタップインのバランスを考えよう。→紆余曲折を経て6枚に着地。
・流行りのリストに採用されている《青の太陽の黄昏》はどうなんだ?《呪文貫き》は?→最終的にどちらも解雇。
・ミラーは《眼識の収集》でアドバンテージを稼いでもテンポを取り返せず負ける場合も多い。《剃刀鞭の人体改造機》が最強。3枚欲しい。
など色々とリストを変えつつラダーを回し好調。手応えもそれなりということで2月末には概ねデッキをロックしていました。地力の高いデッキを、地力の優るプレイヤーが使う。それ即ち王道なり。
回せば回すほど慣れていき勝率向上。ラダー自体はアリーナ予選権利=順位維持のため途中で中断しました。
★本当にグリクシスは最強デッキなのか?
しかしラダーが罠なのはいつものこと。ラダーで勝つのはスタートラインであって、ゴールではありません。
「ラダーではある程度勝てているけど、強いやつが使う白単ミッドレンジに本当に勝てるのか?」というのはずっと頭の片隅にあった懸念点でした。
そこでチーム内でテストプレイしてみると、思っていたよりも遥かに惨敗。白単側がよほど悪いドローでない限りは、消耗戦の末に白単側に軍配が上がる試合ばかりです。
白単ミッドレンジは除去が豊富なのでグリクシス側は攻めきれず、かといって長引くと《セラの模範》《道路脇の聖遺》といったアドバンテージカードで引き離されていきます。長期戦になると「デッキの中身が少なく、攻め手が乏しい」というグリクシスの欠点が浮き彫りになります。
《スクレルヴの巣》の存在も相性の悪さを後押ししました。グリクシス側が後手の場合(主に3ゲーム目)はクリーチャーで押し切るのは難しいので《眼識の収集》や《刃とぐろの蛇》で長期戦を制したいところなのですが、そこを咎めてきます。
2T《スクレルヴの巣》は《強迫》でしか止められず、都合よく《兄弟仲の終焉》を引かない限り劣勢を跳ね除けることができずにグリクシスはずるずると敗北することとなります。
ラダーでは《かき消し》《軽蔑的な一撃》がキレイに刺さって勝つケースが多かったものの、強いプレイヤー相手ではそううまく行かず。カウンターを構えてロングゲームを仕掛けようとする際の障壁となったのが《ミレックス》でした。
生まれ変わった《アーデンベイル城》、いや《Kjeldoran Outpost》はカウンターマジックを仕掛けるグリクシスに対して効果覿面。グリクシス側がろくなクロックを用意できないと見るや、《かき消し》の範囲外になるまでひたすら《ミレックス》だけで攻めてくるプレイパターンに苦しむこととなりました。
そんなこんなで完敗。「ショートゲームでは押し込めない」「ロングゲームも相手に分がある(最終的にデッキの中身が足りなくなる)」「構え続けるのも厳しい」ということで特定のサイドカードを使うだけではマッチ相性を改善できず、暗雲が立ち込めます。
そしてチームメイトのラダーの成績を見て気づいたのが、赤単への相性の悪さ。ラダーの総合勝率が7-8割あっても対赤単だけは五分に近い=ということは…(ざわざわ)という流れです。
こちらもチーム内で実際にやってみたところ、完膚なきまでに叩きのめされました。
サイドボード後の《引き裂く炎》4枚+《血に飢えた敵対者》4枚の計8枚体制により、《黙示録、シェオルドレッド》に頼るプランは完全に崩壊。
メインを早い展開で落とし、サイド後は変幻自在の速度感に敗北。《切り崩し》が《焼炉の懲罰者》に効かない、《兄弟仲の終焉》が速攻クリーチャーたちには効果が薄いなどサイドボードの噛み合わせも悪く、《寄生性掌握》のような専用サイドを一定枚数取らないとかなり厳しそうだなという認識になりました。
★いつもの自分を捨てよう。直前でのデッキ乗り換え
白単に負け。赤単にも負け。ミラーはどこまでいっても五分強(対戦相手も強いので、ラダーのようにミラー圧勝とはいかない)。《法務官の声、アトラクサ》系のデッキや、エスパーレジェンズ・アゾリウスソルジャーといったアグロには相性良いですが、メタゲームをフラットに見るとグリクシスのポジションはかなり悪そうに思えました。
普段は使い慣れたデッキで大会に望むことが多い僕ですが、上記の流れでグリクシスを使う気が起きず。今回は嫌な予感がしたのでデッキリスト提出日に(!)使い慣れたグリクシスとお別れすることにしたのです。
「グリクシスと白単に有利、アトラクサ系にも最速パターン以外は押し込めるだろう」ということで、急遽赤単アグロを使用することにしました。
金曜日の移動中にスマホでプレイした分を除くと、自身ではこれだけしか赤単をプレイできていません。グリクシスとは雲泥の差。
◎チームの最終的なデッキ選択
グリクシス:中村、小澤、齋藤(慎)
赤単:熊谷、小泉、井川
白単:高橋
ラクドスアトラクサ:井上
★使用したデッキについて
ということで直前に乗り換え、本戦で使用したのはこちら。
メインから《勝負服纏い、チャンドラ》《レジスタンスの火、コス》が入ったミッドレンジ型も試しましたが、白単への耐性、そしてライフを詰めるというメインボードの一貫性のために《フェニックスの雛》+《轟く雷獣》の形に回帰しました。
《轟く雷獣》を安定してプレイできるよう、土地はテンプレリストより1枚多めの23枚。
よく採用されている《怪しげな統治者、スクイー》が《死体鑑定士》に食べられる&《死体鑑定士》で止まるので手応えが非常に悪かったです。そこで同じ3マナ域には環境最強カードの一角である《鏡割りの寓話》を採用。
ただし、《鏡割りの寓話》の採用でデッキの安定性は上がったものの、「ライフを詰める」という観点では《怪しげな統治者、スクイー》のほうが間違いなく強いので、もしかしたら良くない変更だったかもしれません。
《黙示録、シェオルドレッド》対策の5点火力は《一斉蜂起》ではなく《引き裂く炎》を採用。サイドインする相手であるエスパーレジェンズには《敬虔な心霊、デニック》(デニックの裏)や《夜明けの空、猗旺》といったスピリットが多少なりとも採用されていて、2点の追加ダメージが染みる展開もあり得ると考えたからです。
《一斉蜂起》の「破壊不能を失う」という追加効果は、今の環境だと《新ベナリアの守護者》《ウィンドグレイスの魂》といったごく一部のカードにしか意味がなく、その他の「破壊不能を得る」カードが《タイヴァーの抵抗》や《英雄の公有地》など「呪禁」も同時に付与するため、装備品の入っていないこのデッキでは《引き裂く炎》のほぼ下位互換だと思います。
主にミラー対策、追加の《火遊び》。圧倒的先手ゲーである赤単ミラーにおいて後手を返すにはこういうカードしかないかと採用に至りました。《ロノムの発掘家、フェルドン》を損せず倒せると嬉しい(という想定。実際は一度もプレイしたことありません)
★本戦の結果
×エスパー・レジェンズ
R1 マルドゥアトラクサ○×○
R2 エスパーレジェンズ ×○×
R3 グリクシスミッドレンジ ○××
R4 グリクシスミッドレンジ ×○×
R5 アゾリウスフラッシュ ×○○
R6 赤単アグロ ×○○
R7 グリクシスアトラクサ ×○×
全マッチ3ゲーム目までもつれ込むという熱戦&激戦でしたが、終えてみると3-4と惨敗。
後手が多かったり(先手2回、1ゲーム目勝った回数も2回)、ラストターンに《兄弟仲の終焉》をトップされて2マッチ落としたり、はたまた3ゲーム目でダブマリしたりとツイてない展開が多く、お世辞にも幸運な一日だとは言えなかったのは事実です。
しかし同じデッキを使用した熊谷・小泉の両名も負けてしまったので、デッキ自体あまり強くなかった可能性が高いです。僕1人の成績不振であればただの不運で済みますが、3人の成績不振はすなわちデッキ自体の敗北です。
※なおこの記事を書く段階で知りましたが、翌日のスタンダードオープンでは、僕らのと74枚同じリストを使っていた方がトップ8に入賞していました。(コス増やしてて偉い!)おめでとうございます!
同じ赤単でも、好成績を残したゆうやん・加茂くんのリストを見てみると「メインはアグロに、サイドはミッドレンジに」というビートダウンの基本を忠実に守っています。
一方、僕らの赤単はメインに《鏡割りの寓話》を入れて速度を落としていたり、サイドのプレインズウォーカーを減らしてしまったりと、彼らのリストに比べて悪い部分が目立ちます。このリストの完成度がそのまま成績の差につながったと考えるのは自然な流れでしょう。
大会結果を見る限り赤単は数が多い割には勝率が高く、大会における勝ち組デッキの一つではありました。なので「赤単を選べた」という点だけは良かったですが、同じアーキタイプを選んでも、弱いデッキリストでは何の意味もありません。表層をなぞっているだけですし、むしろ勝率を勘違いしている分悪いともいえるかもしれませんね。
今回は直前に乗り換えた=微調整に十分な時間をかけられなかったのが最大の失敗といえるでしょう。
逆にグリクシスは勝率だけ見ると負け組デッキでしたが、同じ調整チームの小澤さん・修平さんは前述の通りグリクシスを信じて使い、好成績を残しました。これは彼らのスキルの高さもありますが、グリクシスを使い続けたゆえの微調整が行き届いた結果でもあるでしょう。
「デッキ選択も重要だが、デッキリストの完成度も重要だ」
という当たり前のことを再確認しつつ、僕はまた一つ敗北を積み重ねたのでした。
■終わりに
ということでプロツアーに続き地域予選も敗北し、ついにプロツアーへの継続参戦は途切れることとなってしまいました。ごく一部のプレイヤーしか出場できなかった、プレイヤーツアーファイナルやグランドファイナル、ミシックチャンピオンシップ(アリーナ)以外は基本的にここ数年ずっと参加していたので、出場できなくなるのは悔しいです。本当に、めっっっちゃ悔しいです。
ですが、まだ戦いは終わりません。
2月のアリーナ予選で幸運なことに好成績を残せたので(2日目進出&4勝)、次のアリーナチャンピオンシップの出場が少し現実味を帯びてきたのです。
今週末の3月アリーナ予選、そして4月のアリーナ予選のどちらかで好成績を残してアリーナチャンピオンシップに出場できるよう、引き続きマジックに没頭していきたいと思います。
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!