MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【チャンピオンズカップファイナル サイクル1レポート】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末に開催されたチャンピオンズカップファイナル サイクル1(以下CC)に参加しました。
先に結果だけお伝えすると8-2-2で9位と、トップ8進出こそ逃しましたが目標だった次回PT権利を獲得!やったー!!!
チャンピオンシップファイナルはナシフの青白コンを微調整して参加。8-2-2で9位→PT権利獲得!うおおお!!!2回引き分けたのは反省。
8-2-2. Qualified for the next PT!
I played @gabnassif 's Azorius Control with a few changes. Thx! pic.twitter.com/q5cxzmjACy— Yoshihiko Ikawa (@WanderingOnes) November 27, 2022
ということで、今回の記事ではCCに向けたパイオニアの調整過程等をお届けしたいと思います。
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★パイオニアの調整過程
今回のCCはこれまでに調整を共にしてきたメンバーを中心にチームを結成。
井川・高橋・熊谷・佐藤・中村・井上・斉藤・小泉・河野・矢田・小澤の計11名と1フォーマットにしては大所帯での調整となりました。
緑単信心、ラクドスミッドレンジ、イゼットフェニックス、白単人間、青白コントロール…と想定できる範囲のデッキでも10以上はあるのがパイオニアという環境。そこで触っていないデッキがないように、そしてどのデッキも「1人だけが担当している」という状態がないように、1つのデッキに2人以上を割り振ります。
そこからは毎夜Discordに集結。Magic Onlineでの練習やリアル大会の結果をスプレッドシートで共有しつつ、画面共有を行ってプレイの検討したり、毎日決まった時間に報告する時間を作ったりという流れは従来の調整と同じ感じでした。
僕は担当となる青白コントロールをベースに、緑単信心、ラクドスミッドレンジ、イゼットフェニックスといったトップメタの感触を一通りチェック。
チームメイトたちの対戦結果や討論なども踏まえて考えてみたところ、個人の感触としては以下の通りになりました。
緑単信心。メインボードの完成度・勝率は随一。だが性質上サイドボードがほぼできないので、2ゲーム目以降は常に苦戦を強いられる印象。メインをマリガンや事故などの不運で落としたときに取り返せなさそうなのと、「サイドボードこそがマジックの華」と考えているため嫌いなデッキタイプ。できれば使いたくない。
ラクドスミッドレンジ。プレミアム予選やエリア予選、パイオニア神挑戦者決定戦などの結果からも今大会のトップメタであることが予想される。サイド後は改善されるものの緑単への勝率が芳しくないこと、ミラーマッチで勝てる程やり込んでいない/リストに差別化がないこと、そしてグルール機体や《創案の火》など「ラクドス(だけ)には勝てる」デッキが存在することがネック。あまり使いたくない。
イゼットフェニックス。前週にヨーロッパ・アメリカでの勝ち組だったため、デッキパワーが高くない割に過剰にメタられることが予想される。緑単信心には有利だがラクドスミッドレンジ、青白コントロールには不利で、ポジションも良くない。まず使わない。
白単人間。緑単信心に強く、イゼットフェニックスにも五分以上、ラクドスミッドレンジにも思ったより弱くない(強くはない)と上位だけ見るといい選択肢。だが上位メタに強い分下位メタには弱く、マッチングによっては序盤に躓きやすいためわざわざ使う理由も見いだせない。できれば使いたくない。
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「俺は緑単信心を使います」「僕はラクドスにしようと思ってます」と各自が表明する中、上記の通り僕はどのデッキも使いたくないという悲しい状態。そんな中、青白コントロールだけはまだマシかなーという感想を持っていました。ちなみに次点候補はラクドスミッドレンジでした。
青白コントロール。ラクドスミッドレンジに少し不利(練習ではラクドス担当の小澤さんにボコられたものの、世界各地のデータでは五分程度でした)、イゼットフェニックスに有利、緑単に五分という感触。その他のデッキにも大きな有利不利は付きにくく、マッチング運で下振れにくい印象。それでいて《創案の火》デッキ(ケルーガ、エニグマ)、セレズニア天使など「ラクドスを倒しにくる」デッキに大きく有利なのがプラス。
今回の大会はPT権利獲得=18位以上を目標としているため、雑多なフィールドになるであろう初日のフィールドである程度勝率を期待できるのは嬉しいです。
もちろん青白コントロールにも「完全に受け身でありブン回りが少ない」「メタゲームを読んで構築をしないといけない」などいくつか弱点/欠点はありますが、そこを受け入れて使ってもいいかなと考えていました。
紆余曲折を経て、最終的にチームの面々が選んだデッキはこちら。
緑単信心
中村、井上、斉藤、矢田
ラクドスミッドレンジ
小泉、河野、小澤
白単人間
熊谷、佐藤
イゼットフェニックス
高橋
青白コントロール
井川
みんなで調整と討論を繰り返した結果、「パイオニアはどのデッキも強いので、自分のプレイスタイル/目標に合ったデッキを選ぼう」という結論に着地。
アグロ・ミッドレンジ・コントロールなど様々なタイプが上位メタに存在していることもあり、各々が手に馴染んだデッキを手に取りました。
■青白コントロールの調整
ここからは僕が主に担当した、青白コントロールの調整について書いていきます。
パイオニアの青白コントロールは上位メタの中で唯一といっていい程に構成が固まっておらず、様々な形が存在しています。
列挙すると以下の通り。
・60枚、《一時的封鎖》型
・60枚、《ポータブル・ホール》型
・60枚、《力線の束縛》型 (さらに《一時的封鎖》の有無で分かれます)
・80枚、《一時的封鎖》型
・80枚、《ポータブル・ホール》型
・80枚、《力線の束縛》型 (さらに《一時的封鎖》の有無で分かれます)
・60枚、《睡蓮の原野》型
この中で《睡蓮の原野》型は大嫌いなのでまず排除。残りのパターンを考えたり試したりしていきます。
リストを作成しただけのヤツもありますが、様々なバージョンを検証・検討しました。
青白コントロールだけでなく4色《創案の火》(ケルーガファイアーズ)でも使用されているこの除去。緑単信心のマナ加速を一掃できる点、そして白単人間のクリーチャーたちを《至高の評決》よりも軽く捌ける点が強みです。
ですが僕はこのカードが好きになれませんでした。緑単信心が《機能不全ダニ》を手に入れたことにより簡単に割られるようになったのが大マイナス。そしてラクドスやイゼットフェニックスといった上位に弱い点もかなりのマイナス。
一方、《ポータブル・ホール》は《一時的封鎖》ほどの制圧力はありませんが、3ターン目に《ポータブル・ホール》+カウンターといった複数アクションを可能にしてくれますし、《一時的封鎖》よりも幅広い相手に機能します。《帳簿裂き》や《苦難の影》といった単体で強力なクリーチャー相手に《一時的封鎖》をプレイすることの弱さに比べると段違いです。
もちろん白単人間に対しては《一時的封鎖》型の方が好ましいのですが、そこまで白単人間のシェアが多くない、一方ラクドスミッドレンジやイゼットフェニックスは多いであろうと想定されることを考えて《ポータブル・ホール》に軍配が上がりました。
モダンで大活躍中の《力線の束縛》。追放かつ瞬速、最高で1マナにまで軽くなるという優れモノ。僕も最初は懐疑的でしたが徐々に手応えを感じ、そして最終的にはその弱さに気づきナシとなりました。
このカードが問題というよりは、これを使用するための大前提となるマナベースが問題。活用するには《ラウグリンのトライオーム》のようないわゆるトライオーム(3色タップイン)を大量に採用する必要があり、それが致命的に感じました。《力線の束縛》を強く使うためには2枚程度はトライオームを引く必要がありますが、そうするとタップインが多くてアクションが阻害されます。特に4マナ(《放浪皇》《記憶の氾濫》)・5マナ(《ドミナリアの英雄、テフェリー》《黎明をもたらす者ライラ》)のターンがラグると致命的で、《力線の束縛》の強さよりもデメリットが目立ちます。初手にトライオームがないと最悪で、《力線の束縛》は重い、途中からはタップイン祭という地獄。
青白コントロールという、初手時点である程度相手への対処を考えてキープしたいデッキには向いていない、不安定なカードだと感じました。(フェッチがあるモダンはまた別の話。)
過去の記事でも書いている通り、僕はかなりの《空を放浪するもの、ヨーリオン》信者です。これまでもヒストリックやエクスプローラーでは《空を放浪するもの、ヨーリオン》入りの青白コントロールを愛用してきました。
ですが今回はこのパッケージとサヨナラ。その理由は「《海の神のお告げ/Omen of the Sea》をプレイする余裕がない」と感じたからです。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》のバリューは「デッキ外の追加リソースとして4/5飛行が手に入る」という点がありますが、そのバリュー担保として採用されている《海の神のお告げ》自体は所詮「2マナ1ドロー」。ほぼ手番パスなので、環境が早ければ早いほど弱いカードとなります。今のパイオニアで2マナ1ドローをしている余裕があるのはミラーマッチ、イゼットフェニックス、そして《創案の火》系だけで、それ以外の相手には2マナでカウンターなり除去なりで相手に対抗しないと《空を放浪するもの、ヨーリオン》のバリューを発揮するまでにプレイヤーが倒れてしまいます。
2マナ3マナとちゃんと相手へのリアクションしてこその《記憶の氾濫》であり《ドミナリアの英雄、テフェリー》です。プレイするタイミングを逸して手札にたまり続ける《海の神のお告げ》を見て、《空を放浪するもの、ヨーリオン》との決別を決意しました。
また、尖ったかつデッキの種類が多いパイオニアではサイドボードの重要性が高いという点も見逃せません。環境のデッキが少なく、サイドボードを絞れるのであればまた別の話ですが、今回のような環境であれば多くの種類を沢山入れて幅広いサイドボードを構築したいもの。こんな感じで80枚より60枚の方に優位性を見出しました。
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ということで、青白コントロールを使うなら「《ポータブル・ホール》型で」「《力線の束縛》を使わず」「《空を放浪するもの、ヨーリオン》ではない」、シンプルなリストがいいなと考えていたところ。理想のリストが現れました。
MPLであり殿堂。マジックプレイヤーとして頂点に君臨するであろうプレイヤーの1人であるGabriel Nassif(以下ナシフ)が、僕の使いたいと思っていたバランスの青白コントロールで上位入賞したのです!
これは《スフィンクスの啓示》ならぬ神の啓示。ということでこのナシフのリストをベースに、青白コントロールの調整をさらに進めていきました。
■使用したデッキについて
デッキ選択には最後まで自信ありませんでしたが、最終的にできあがったのがこちら。
カウンターと除去のバランス、マナベース、サイドボードなど大部分がナシフのリストと同じになりました。様々なパターンを試しましたが、最終的にナシフバランスに戻った形です。思考停止ではありませんよ、念の為。
細部の話になりますが、変更した点を順に紹介していきます。
「《検閲》4・《かき消し》1」だったバランスを「《検閲》3・《かき消し》2」に変更。チーム内で練習をした結果、《検閲》に寄せるとデッキ公開のためケアが容易で、腐る=カウンターできず困るケースが多かったのでこのバランスになりました。後半に腐る確率は上がりましたが、《かき消し》は基本的にケアできないので最序盤の攻防はより盤石に。
ナシフのリストで採用されていた《拘留の宝球》は「追放」「複数対処可能」という点でイゼットフェニックスには良かったのですが、ソーサリータイミングの3マナのカードは除去として重すぎます。そこでより軽く、コントロールが苦手とするミシュラランドにも対応できる《運命的不在》に変更しました。2マナインスタントは《ドミナリアの英雄、テフェリー》とも相性◎。《運命的不在》は2枚入れたかったので、初手に2枚は欲しくない《ポータブル・ホール/Portable Hole》を1枚カット。
イゼット独創力が一定数いると思っており、サイド後に繰り出される《船砕きの怪物》への対抗策が欲しかったというのも、《運命的不在》を採用した理由の1つです。
ちなみに巷で話題かつ高評価の《魂の仕切り》ですが、僕は一度も試していません。
青白コントロールを使う上で「いかにラクドスミッドレンジに勝率を上げるか」が一番の懸念点であり、必然的に長期戦になるこのマッチにおいては弱いだろうと思ったためです。緑単信心の《老樹林のトロール》を気楽に対処できるのは良さそうですが、《黙示録、シェオルドレッド》や《大いなる創造者、カーン》は追加2マナ=6マナでもプレイされると対処を迫られてキツそうと判断しました。
ちなみに最終的に使うかどうかはともかく、脳内で却下して試しもしなかったのはただの怠慢です。反省してます。
カウンター枠は「《吸収》2・《襲来の予測》2」だったのを「《吸収》4」に統一しました。《襲来の予測》はロータスコンボの《思考のひずみ》に対しては「予顕」が機能するものの、それ以外のマッチ、特にラクドスミッドレンジ相手では《吸収》の3ゲインが重要なのでこちらに統一しました。
ドロー枠も「《多元宇宙の警告》2・《記憶の氾濫》1」だったものを「《記憶の氾濫》3」に統一。これは単純に《記憶の氾濫》の方が圧倒的にカードが強いからです。今回選んだ青白コントロールは《空を放浪するもの、ヨーリオン》がない分、手札が足りなくなったりマナが余るケースが多発します。そこを補ってくれるのが《記憶の氾濫》のフラッシュバック。唯一無二のアドバンテージソースです。
メインの「予顕」を廃したことによりサイド後に「予顕」=《シュタルンハイムの解放》だとバレることになりましたが、「予顕」の中身自体はプレイの過程で概ねすぐ分かるのであまり気にならず。「予顕」する余裕がないこと、そして「予顕というアクション自体が相手に情報を与えているだけ=弱くない?」という(中村)修平さんの率直な意見のおかげで、《吸収》4《記憶の氾濫》3と「強い」カードに寄せることができました。
「《黎明をもたらす者ライラ》1《悪斬の天使》1」だったバランスを「《黎明をもたらす者ライラ》2」に統一。レジェンド側に寄せるのは基本的にはあまり良くない選択なのですが、今回は《悪斬の天使》《黎明をもたらす者ライラ》を並べられないリスクより、《シュタルンハイムの解放》との相性を優先しました。
《黎明をもたらす者ライラ》自体は速攻等を持たないため、返しに《戦慄掘り》で処理されるとテンポ損になります。ですが《シュタルンハイムの解放》を打った次のターンにプレイできれば「戦場に出たとき10点ゲインを得る」といった効果を持つことになります。もちろん多発するケースではありませんが、実際に練習でも起こった&本番でも起こりうると感じたので、今回は《黎明をもたらす者ライラ》に寄せました。
◎本戦の結果
R1 ラクドスミッドレンジ ×○×
R2 ケルーガファイアーズ ○○
R3 イゼット独創力 ○×○
R4 緑単信心 ○×△
R5 緑単信心 ○○
R6 アブザンパルヘリオン ×○○
R7 ケルーガファイアーズ ○○
5-1-1。初戦で平山くん(優勝おめでとう!!)のラクドスミッドレンジとの接戦を落としてしまいましたが、そこからはドローもダイスも絶好調。途中緑単信心とのマッチを引き分けてしまうものの(負けそうな試合を耐えて耐えて粘った形)、まずは初日を5-1-1の好成績で突破することができました。
青白コントロールにとっては超が付くほどのお得意様であるケルーガファイアーズに2回当たるなど、マッチングもかなりの上ブレ。ラクドスミッドレンジを使っていたら逆に粉砕されていたはずなので、結果論ではありますが青白コントロールを選んでよかったなと。
初日の結果を見ると上位はラクドスミッドレンジと青白コントロールが多数。得意デッキがフィールドに多かった初日と変わって、2日目は苦戦を強いられそうだなと思いながら就寝。
R8 ラクドスミッドレンジ ○××(フィーチャーマッチ)
R9 緑単信心 ×○○
R10 ラクドスミッドレンジ ○○
R11 グルール機体 ×○△(フィーチャーマッチ)
R12 ラクドスミッドレンジ ○○
3-1-1。またしても初戦でMPL・佐藤くんのラクドスミッドレンジとの接戦を落とすという幸先の悪いスタート。しかし「昨日も初戦負けから勝ったし大丈夫っしょ」と謎にポジティブシンキング。またしても途中で引き分けてしまうものの(こちらは時間があれば勝てたゲーム。フィーチャーだったせいで時計を確認できなかったのが原因)、最終戦でチームメイトである小澤さんとの聖戦に勝利してトータル8-2-2。9位で次回プロツアーの権利を獲得しました!!!
MPLとして活動した2021-2022シーズン、チームはともかく僕自身の成績は全く振るわず、ずっと悔しい思いをしてきました。ですが今年最後のプレミアムイベントでこうして勝利し、プロツアーに継続参戦できることを本当に嬉しく思います。
また、僕自身の勝利はもちろん嬉しいですが、チーム全体で見ても好成績だったのも喜ばしい限りです。
11人で参加して7人が初日突破。最終的には今回の「勝ち」といえるであろうPT権利(18位+繰り下がり)ライン以上に4人。しかもその4人は緑単信心(中村)・ラクドスミッドレンジ(河野)・青白コントロール(井川)・白単人間(熊谷)と4アーキタイプでそれぞれ上位入賞者を送り込むことができました!
「コレがベスト!」というチームデッキを作って全員が乗れるのが理想ですが、毎回そうはいかないもの。なのでこういった形での結果の出し方も「チームとしての総合力」の証明といえるでしょう。仲間たちに感謝です。いつもありがとう!
■終わりに
僕の場合、チーム調整している都合上「チームで誰も選ばないデッキを、自分1人だけが選ぶ」というのはかなりのレアケース。なのでデッキを決めるまでも、決めてからも結構ウジウジしていましたが、最終的に自分の信じたデッキで結果を出せたことはある種の自信・プライドにも繋がりそうです。
チームメイトを信じろ。そしてチームメイトが信じてくれている自分を信じろ!
今回権利を獲得したプロツアー・フィラデルフィアではドラフトもあるとのこと。多くの友人が世界選手権や今回の大会で権利を獲得しましたし、久しぶりの「紙&2種目制のプロツアー」が今から楽しみです!!
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!