MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【イニストラードチャンピオンシップレポート】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末に開催されたイニストラード・チャンピオンシップに参加しました。
今回のCSはいつものメンバーである佐藤・原根・熊谷・高橋に加えて、各予選で権利を勝ち取った友人たち7名を加えた計12名と大所帯でのチーム調整となりました。
大会結果はご存知の方も多いかと思いますが、なんとチームメイトの市川 ユウキが優勝!!うおおおおお!!!!!
そして優勝の市川だけでなく、熊谷・斉藤・高橋の3名がトップ8入賞&世界選手権の権利獲得!旧PTと同レベルの大会に1チームから4人トップ8を輩出するのは歴史的にも非常に稀であり快挙です!
さらには小泉・河野・廣澤の3名も10-5の好成績で次回CSの権利獲得!
僕自身は3-4初日落ちという悲しい結果ではありましたが、チームとしてこれ以上ない最高の結果を残すことができました。
ということで今回の記事では、ヒストリックを中心にデッキ調整の話をしていきたいと思います。
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■ヒストリックの調整過程
データがないヒストリック環境。0からのスタート
12名のチームをスタンダードとヒストリックの2チームに分けて調整スタート。ヒストリック担当になったのは高橋・津村・廣澤・小泉・河野・井川の6名です。
調整を開始するに当たって最初に行ったのはデッキの洗い出し。なにせヒストリックは直近に大型大会がなく、アリーナ予選が2回とRedbull Untapped(国内予選)が1回あったのみ。どんなデッキがいるかは知っていても、その相性がどうなっているのかはアリーナ予選組の経験を除くとほとんど分からない状態です。
いそうなデッキをざっと並べてみると…セレズニア人間、ヘリオッドカンパニー、イゼットフェニックス、ゴルガリフード、ジャンドフード、ジェスカイコントロール、青白オーラ、ゴブリン、エンチャントレス、親和、ジェスカイ独創力、マーフォーク、緑単、イゼット天啓、ジャンド城塞、赤単マッドネス、5色ニヴ、etc…。
多い!多すぎる!!!
ということで人気がありそう&アリーナ予選で結果を出していた&直近のラダー上位報告が多かった「セレズニア人間・ヘリオッドカンパニー・イゼットフェニックス・ゴルガリフード」をまずは上位4つと定めて、それらに他のデッキをぶつける作業を行いました。(ぶつけるまでもなく当たってて弱かった&ある程度相性差が分かっているデッキは放置)
ラダーでも人気なセレズニア人間はスペル重視のコントロール/コンボ系全般キラー。アグロ相手もブン回りがありデッキの地力を感じました。
ただし白いデッキには《赦免のアルコン》が大量に積まれている可能性があり、それによって相性が激変するのが弱点。
さらに上位デッキ対決では一段劣り、ヘリオッドカンパニーとゴルガリフードには不利、さらにはイゼットフェニックスにも単体除去を多めに採用することで攻略されてしまい、チーム内候補としては早めの脱落となりました。
ヘリオッドカンパニーは直近のラダーで好成績を残しているだけあって上位デッキに強い。調整初期はフェニックス、人間、フード全部に有利が付いており、いかにコレを倒すかに注力したほど。
しかし練習すればするほどその対処に慣れたこと、またチーム内の他のデッキがこのデッキを無理なくメタることに成功した結果勝率はダウン。最終的には候補から外れることに。
イゼットフェニックスはコントロール系に強く、細かい調整次第ではアグロにもいける万能デッキ。ラダーでは一番人気であり、CSでも上位メタであることが予想されます。ただし《魂標ランタン》をメインに採用したゴルガリフードは非常に相性が悪く、最後まで克服することはできませんでした。
赤が抜けてシュッとした新時代のフードデッキ。《パンくずの道標》以外にもドローが多く、デッキ全体が軽いので非常に安定して動くのが強み。
《安らかなる眠り》や《墓掘りの檻》をメインから採用しているデッキや、スケールの大きいコンボ/コントロールは苦手ですが、それ以外には有利に立ち振舞えるためチーム有力候補の一角として最初から最後まで生き残りました。
こうして上位デッキに様々なデッキを当てていきましたが、ラダーでもそれなりに当たる上に安定しているこの4つは流石に強く、半端なデッキは蹴散らされていきました。
特にコントロール系はセレズニア人間に全く勝てず、あまり強いリストをチーム内で組めなかったこともあり早々にリタイア。自分たちで強いコントロールを作ることは諦め、他のチームもまた同様に《エスパーの歩哨》《スレイベンの守護者、サリア》の前に挫折するであろうと予想しました。
生き残ったのはゴブリン、イゼットフェニックス、そしてゴルガリフード
数日練習した後に対戦マトリクスを分析した結果、自分たちのデッキの選択肢になりそうなのは以下の3つ。さらにここから練習を進めていきます。
予想外に健闘したのがこのゴブリンでした。フェニックスとセレズニア人間には構造的に有利、ヘリオッドは厳しいがゴルガリフードにもいけそうということで最終候補直前まで残ることに。
しかし残念なことに、テストすればするほどデッキの脆弱性が浮き彫りになりました。《飛び道具の達人》が入って柔軟性が増したものの、結局は《上流階級のゴブリン、マクサス》頼みのデッキであり、バクチ感は否めない上に6マナのカードで決める都合上マリガン耐性も低め。
さらには対ゴルガリフードでは「《上流階級のゴブリン、マクサス》を2-3体出しても勝てない」といったゲームが多発し、最終的には諦めることとなりました。
ゴルガリフードには完全に狩られるポジションとはなってしまいましたが、逆にゴルガリフードがあまり得意でないヘビーコントロールやエンチャントレス、親和などにも対等に戦えるのがイゼットフェニックス。特にあんちゃんはこのデッキが好きで、最初から最後まで頑張って調整を重ねていました。
最初期はセレズニア人間、ヘリオッドカンパニーの両方に負けていましたが、この《両手撃ち》を発見してからは勝率が格段に上がりました。あんちゃんだけでなく、トップ8に残ったZachary Kiihneたちのイゼットフェニックスにもこのカードが採用されており、トッププレイヤーたちがしっかりと同じ解答に辿りついていることが嬉しかったです。
しかしやはりチーム内の有力候補であるゴルガリフードに対してかなり不利である点から選択理由としては弱く、最終的に選択したのは達人であるあんちゃん1人でした。イゼットフェニックスの詳細な解説については、使用者である彼の記事をどうぞ。
■使用したゴルガリフードについて
イニストラードチャンピオンシップ By井川 良彦【インポートデータ】 | |
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デッキリスト | |
2:《ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower》 3:《カルニの庭/Khalni Garden》 4:《草むした墓/Overgrown Tomb》 4:《花盛りの湿地/Blooming Marsh》 4:《闇孔の小道/Darkbore Pathway》 1:《目玉の暴君の住処/Hive of the Eye Tyrant》 1:《森/Forest》 3:《沼/Swamp》 22 lands 4:《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》
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4:《致命的な一押し/Fatal Push》 4:《パンくずの道標/Trail of Crumbs》 4:《魔女のかまど/Witch’s Oven》 4:《命取りの論争/Deadly Dispute》 4:《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre》 2:《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》 1:《村の儀式/Village Rites》 23 other spells 4:《思考囲い/Thoughtseize》 |
最終的に12名中11名が使用したチームデッキがこのゴルガリフード。セレズニア人間、ヘリオッドカンパニー、イゼットフェニックスといった上位メタと想定されたデッキすべてに有利に戦えるのがデッキの選択理由です。逆にそこまで多くないと考えた青白系コントロールや《波乱の悪魔》デッキには相性が悪く、そこをいかに踏まないかが勝率に直結します。
10月のアリーナ予選を突破した瀧村くんのデッキ(前回記事参照)からスタートして、最終的にはこのリストに辿り着きました。以下変更点に絞って簡単に解説します。
今回の一番のブレイクスルーだったのが《よろめく怪異》。もともと《ひきつり目》のスロットだったのですが、《ひきつり目》があまりアグロに対して強くない点、そして講義を使う分サイドボードのスロットが少ない点が気になっていました。
そこで今回ゴルガリを中心にテストしてくれていた廣澤が目を付けたのがこの《よろめく怪異》。この採用によりヘリオッドカンパニーに対して格段に勝率が上がっただけでなく、デッキの動きもスムーズになり、デッキの強さが1ランク上がりました。
こちらも《太陽冠のヘリオッド》を見据えた採用です。この《神秘の撤回》と先程挙げた《よろめく怪異》の採用により、最初は不利だったヘリオッドカンパニーは有利にまで相性が改善されました。
ミラーマッチでもテンポよく《パンくずの道標》を割れる&《夢の巣のルールス》での回収を防げるため重宝します。
サイドボードの追加除去枠は幅広く見るために1枚ずつスプリット。これは調整初期からの津村の案で、最後まで続投する形となりました。
《骨の破片》は少し珍しいカードですが、1マナで《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》《弾けるドレイク》といった致命的なパーマネントに触れる、テンポに優れるカードです。追加コストも猫や苗木トークンをサクったり、余った土地を捨てたりとそこまで困ることはありません。
今回の問題児。「自分達が使う以上、他のチームもゴルガリフードを持ってくるかもしれない」と考え、ミラーマッチで差を付けられそうなカードとして最後に選ばれた1枚です。中盤~終盤に打つことにより互いの墓地から《貪欲なるリス》《辺境地の罠外し》《夢の巣のルールス》あたりを一気に戻し、盤面に大差を付けて圧殺するのが目的です。
ちなみにこのカードを見つけた&入れることになったのはデッキ提出まで残り30分というギリギリのタイミング。一度も試すことなく理論だけで採用しました。カードリストから見出して推したのはこの僕。よく見つけたというよりは「こんなもんよく入れる気になったな」といった方が正しいかもしれません。
結果的にはミラーだけでなく苦手なジャンド系にも《波乱の悪魔》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を取れる=勝機を見いだせて案外悪くなかったと、チーム内の評判は上々。この1枚のスロットのせいで大敗していたら、危うく戦犯になるところでした。セーフ。
本戦の結果
R1 5色ニヴ ○○
R2 ジェスカイ独創力 ×○×
R3 セレズニア人間 ○××
1-2。
R2のG3では、長期戦の末に放たれた《不屈の独創力》X=4で出てきた《セラの使者》3枚と《絶え間ない飢餓、ウラモグ》1枚に対して《食肉鉤虐殺事件》X=10ができれば勝ち!というところでしたが1マナ足りずに敗北。《ファイレクシアの塔》の2枚目を途中の《パンくずの道標》で手札に加えておかなかったのがミスでした。
そして有利マッチであるR3ではG3で不運に見舞われます。ライブラリーの上24枚に《貪欲なるリス》《パンくずの道標》《食肉鉤虐殺事件》というキーカードたち3種12枚が1枚も見つからずまさかの敗北。悔しい1敗となりました。
チーム全体では51-25=勝率67.1%(予選ラウンドのみ)とこれまでのチャンピオンシップの中でも過去最高の勝率を記録!!ヒストリックはデータが少ない分、デッキの完成度やメタゲームの読みで他チームに差を付けることができました。
また僕らと同じようにセレズニア人間/ヘリオッドカンパニーを意識してきたであろう、ChannelFireballのラクドスアルカニストに対して直接対決で圧倒的な相性差があり(マッチ7-0!)、これも好成績の要因の一つとなりました。これは噛み合いであり、完全に幸運です。
■スタンダードの調整過程
スタンダード担当はまとめ役の原根を筆頭に熊谷・佐藤・市川・井上・斉藤の6名。ヒストリックほどデッキタイプが多くないので、イゼット天啓は原根、白単は佐藤といったように担当デッキを振り分けてラダー→チューン→チーム内対戦をしていたようです。
最終的に「イゼット天啓が最強」という結論にたどり着いたチームメイトたち。そこで主にイゼット天啓を担当していた原根くんを中心に最後の微調整が行われ、結果的に「白単へのガードを上げて、緑単へのガードを少し下げる」ことになりました。
使用したイゼット天啓について
あんちゃんだけ少し構成が異なりますが、チーム全員がイゼット天啓を使用。他のデッキの選択肢はほぼありませんでした。
環境屈指のコンボ・コントロールであり、一強デッキとして暴れる姿はティムール再生を彷彿とさせます。最終的には上位卓の大部分がイゼット天啓ミラーだったことを考えると、まさに最強デッキであったことは疑いようもないでしょう。
今回、チームリストで優れていたのは《多元宇宙の警告》の採用でした。ミラーマッチにおいて予顕を駆使して軽く動けるのは非常に大きく、2ターン目に予顕→3ターン目に《ジュワー島の撹乱》をケアしながらドロー、といった感じで自分だけ安心して手札を整えられました。
また単純にドローソースの枚数を多く採用しているという点でも差を付けられていたと思います。
《アールンドの天啓》《感電の反復》パッケージ以外のフィニッシャー枠はデッキ公開を意識して散らしてあります。これはどれかに偏ると相手がプレイしやすくなること、そして自分視点でもこれらのカードは同一のものを複数引くよりは違う種類ものを引いていた方がプレイの幅が出て優位に立てることから、1枚ずつの構成になっています。
ただしミラーマッチ、特に《才能の試験》が増えるサイドボード後においては《黄金架のドラゴン》が多いと5-6ターン目の攻防で一方的に攻める展開にもできたので、《黄金架のドラゴン》だけはもう1枚少なくともサイドボードに採用すべきだったかもしれません。
サイドボードの火力について。この2枚は当初《バーニング・ハンズ》のスロットでしたが、白単の《傑士の神、レーデイン》《輝かしい聖戦士、エーデリン》といったカードに対してガードを上げるために《削剥》《轟く叱責》に枠を譲りました。《削剥》はジャンドトレジャーの《無謀な嵐探し》《エシカの戦車》対策も兼ねています。
本戦の結果
R4 イゼット天啓 ○××
R5 オルゾフコントロール ○○
R6 グリクシスコントロール ××
R7 白単アグロ ×○○
2-2。
トータル3-4で初日敗退。ミラーで《感電の反復》を1枚も引かずに敗北したり、グリクシス相手には土地が止まったりと不運もありましたが、プレイが完璧だったというわけでは全くないので、妥当なところかなと思います。少しプレイ練度が足りていませんでした。
チーム全体では55-33=勝率62.5%とこちらも高い勝率を出すことができました!!スタンダードはメタがはっきりしていた分プレイヤー間の意識の差も小さかったと思うのですが、そんな中非常にバランスの良いデッキに仕上げてくれたチームメイトたちに感謝です。
余談にはなりますが、このチーム謹製イゼット天啓をコピーして使ってくれた彌永 淳也が、CSの裏番組だったRedbull Untapped International Stop 5のプラチナディビジョンを優勝!!デッキの強さと彼自身の強さを同時に証明するかのごとく、見事ポルトガル行きの権利を獲得していました。彌永おめでとう!
We have the winners of the final #RedBullUntapped2021 International Stop Divisions!
Platinum: Junya Iyanaga
Izzet EpiphanyGold: Matthaios Kosmidis @Manthos300
Mono-GreenSilver: Davide Conterno @DavidescherMTG
Jund MidrangeBronze: DJ Hermit
Mono-White pic.twitter.com/1nMDeYbR1K— Play-MTG (@Play_MTGgg) December 5, 2021
■終わりに
今年最後のプレミアイベントだったイニストラード・チャンピオンシップ。僕自身は久しぶりの初日敗退となってしまいましたが、チームはかつてない程の成功を収めることができ、嬉しい限りです!
チーム全体が勝っている以上、調整の方向は間違っていないはず。あとは自分の力量不足が問題なので、もう一度しっかりと見つめ直して、次こそチームメイトたちと共に自分自身が勝てるよう頑張っていきたいところです。
それと、最終日は久しぶりに公式配信の解説を務めさせていただきました。カード名を間違えたりと拙い部分も多かったかと思いますが「詳しくない人にも分かりやすく・楽しい解説」を心がけて話してみました。いかがだったでしょうか。
次の機会がいつあるかは分かりませんが、解説を担当するのはプレイヤーとはまた違った楽しさがあってとても好きなので、お声がけいただける限り担当したいと思っています。でもできれば勝ち上がって「解説される側」でありたいですね!
それでは今回はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!