MTG │ 解説記事 │ 井川良彦【新スタンダードメタゲーム】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川(@WanderingOnes)です。
今週末には、久しぶりのアリーナ・オープン!しかもスタンダードでの開催!!
フォーゴトン・レルム探訪後のスタンダードは、ちょうど先週末に大型大会の結果が出たおかげでメタゲームが動いていますので、そちらを順に見ていきましょう。
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■大会結果
日本選手権2021 SEASON2本戦
優勝 | グルールマグダ |
準優勝 | ナヤウィノータ |
トップ4 . |
スゥルタイ根本原理 スゥルタイ根本原理 |
トップ8 . . . |
ジェスカイ変容 ナヤウィノータ ナヤウィノータ 緑単アグロ |
予選を勝ち抜いたプレイヤーと、MPL/ライバルズ/殿堂/SEASON1優勝者による招待制のトーナメント、日本選手権。この形式の大会も4回目になり、定着した感がありますね。
トップ8に4人と圧倒的な成績を残したナヤウィノータ、そしてそのナヤウィノータに3連勝して見事優勝したのはグルールマグダ。
どちらも新エキスパンションのカードを活用しており、かつメタゲームにも合致した素晴らしいデッキです。
トップメタと目されていた緑単相手に同じサイズのクリーチャーを展開しつつ《バーニング・ハンズ/Burning Hands》や《巨人落とし/Giant Killer》で対応できる上に、《エンバレスの宝剣/Embercleave》《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》といった飛び道具があるため有利に立ち回れたことでしょう。
トップメタと目されていた緑単アグロはメタゲームブレイクダウンで3位なもののトップ8にはわずか1人。一番人気だったスゥルタイ根本原理もトップ8にはわずか1人と、どちらも負け組になっています。
特にスゥルタイ根本原理は軽量除去である《パワー・ワード・キル/Power Word Kill》が少量入った以外はほとんど新エキスパンションから戦力を得ておらず、相対的にデッキパワーが下がっているのが厳しそうに見えます。
$5K SCG Tour Online Championship Qualifier
優勝 | ナヤウィノータ |
準優勝 | グルールマグダ |
トップ4 | ジェスカイ変容 グルールマグダ |
トップ8 | ティムールルーカ ナヤウィノータ ジェスカイ変容 スゥルタイ根本原理 |
トップ12 | ナヤウィノータ グルールマグダ ティムールルーカ ティムールルーカ |
日本選手権が決着してから数時間後に開催されたのが、こちらの大会。「SCG Tour Online – Satellite」という予選大会を勝ち抜いたプレイヤーのみが参加できる招待制のPTQです。
日本選手権の結果を確認してからデッキを選択できたということで、こちらもウィノータ・グルールの両デッキが勝ち組となっており、トップ12にそれぞれ3人を輩出しています。
2つのトーナメントで大きく違ったのは、ティムールルーカの存在でしょうか。
《銅纏いののけ者、ルーカ/Lukka, Coppercoat Outcast》《星界の大蛇、コーマ/Koma, Cosmos Serpent》パッケージが緑対決で強力であることから、メタゲームを読んだ多数のプレイヤーがこの大会の頂点を目指して選んだのでしょう。ですがスゥルタイ根本原理やジェスカイ変容といった緑系以外へのデッキに対する脆弱性からか、最後まで勝ち残ることはできませんでした。
大会結果はここまでにして、ここからは現段階での2強といえそうな、グルールマグダとナヤウィノータに焦点を当てて見ていこうと思います。
■グルールマグダ
日本選手権2021 SEASON2本戦 (優勝) / by 廣澤 遊太 | |
---|---|
デッキリスト | |
2 《山》 9 《森 》 4 《岩山被りの小道》 4 《バグベアの居住地》 2 《ハイドラの巣》 21 lands 4《エッジウォールの亭主》 |
4 《レンジャー・クラス》 3 《エシカの戦車》 3 《エンバレスの宝剣》 4 《髑髏砕きの一撃》 14 other spells 2 《レッドキャップの乱闘》 |
旧環境最後の大会であったリーグウィークエンドでも勝ち組だったグルールマグダ。
メイン・サイド合わせて13枚とフォーゴトン・レルム探訪から少なくない枚数のカードを採用してパワーアップ。見事日本の頂点に立ちました。
ここ1年間、2マナ域の不足は常に緑系のデッキの悩みのタネでした。それを一挙に解消してくれたのが、この《レンジャー・クラス/Ranger Class》!
2マナ2/2を展開しつつ、サイズアップとマナフラッド受けの2つの側面を持ったエンチャントが場に残るこのカード。ただの単体除去では残った《レンジャー・クラス/Ranger Class》自体が脅威となるため、動き出すまでに相手を倒す必要が出てきます。
グルールだけでなく、後述するナヤウィノータ、そして緑単など、緑が入ったあらゆる緑系アグロに採用されているこのカード。これから1年以上は、この《レンジャー・クラス/Ranger Class》をどう使うか、どう倒すか考える日々が続きそうです。
緑単アグロが思うように勝てず、グルールやナヤウィノータが勝っている要因の一つが、この《バーニング・ハンズ/Burning Hands》でしょう。
このカードで赤単が隆盛するかと思いましたが、蓋を開けてみると「《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》デッキがミラー用に使う」のが一番強いことが発覚。
これまで《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》デッキは「先攻3T《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》」に対する明確な解答を持っていませんでしたが、これのおかげで後攻でもそのムーブを返すことができるようになりました。
似たようなデッキ対決で片方だけ2マナの確定除去を使えるのは流石に致命的で、今後ますます緑単アグロの肩身は狭くなりそうです。
グルールマグダは最序盤から手札を展開していくデッキであるため、どうしてもマナフラッドしやすいという弱点を抱えていました。《黄金架のドラゴン/Goldspan Dragon》や《厚顔の無法者、マグダ/Magda, Brazen Outlaw》でいくら宝物トークンを出しても、その使いみちがなければ意味がありません。
その弱点を克服してくれたのが、今回新たに採用されたこの2種類のミシュラランド。
従来の色マナが出るミシュラランド(《樹上の村/Treetop Village》《怒り狂う山峡/Raging Ravine》など)と異なり、最序盤だとアンタップインしてくれるので、テンポを損ねることなく後半の打点/戦力としてカウントできます。
一度殴ると場に1/1トークンを残しやすい《バグベアの居住地/Den of the Bugbear》、そして1/1になれる《ハイドラの巣/Lair of the Hydra》、どちらも《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》の相棒として活躍できるのがグルールとしては非常に嬉しいですね。
過去のスタンダードの歴史を振り返ってみても、《樹上の村/Treetop Village》、《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》、《変わり谷/Mutavault》、《怒り狂う山峡/Raging Ravine》など、ミシュラランドを上手く活用できたデッキはスタンダードにおいて王者として君臨してきました。
今回のグルールもその例に漏れず、トップメタの一角として残り数ヶ月暴れてくれそうな予感です。
■ナヤウィノータ
$5K SCG Tour Online Championship Qualifier (優勝) / by Martin Del Guercio | |
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デッキリスト | |
2 《平地》 1 《山》 2 《森》 3 《寓話の小道》 4 《枝重なる小道》 4 《針縁の小道》 4 《岩山被りの小道》 2 《ハイドラの巣 》 22 lands 4 《無私の救助犬 》 |
1 《レンジャー・クラス》 4 《エシカの戦車》 3 《髑髏砕きの一撃》 8 other spells 2 《傑士の神、レーデイン》 |
2大会の上位デッキ20個のうち7個=3割強を占めた、今もっとも旬なデッキ。それがこのナヤウィノータです!
非人間クリーチャーを展開しつつ《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》から《刃の歴史家/Blade Historian》《帰還した王、ケンリス/Kenrith, the Returned King》といった優秀な人間クリーチャーを呼び出して勝つ、アグロコンボともいえるこのデッキ。
《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》をインスタントで触ることが難しいため、特にアグロデッキ対決で強いデッキです。
ナヤウィノータにとって最大の収穫がこちら。2→4にジャンプアップしつつ、《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》を出したターンに殴れる、非人間の2マナクリーチャー。まさに《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》のためにデザインされたといえる1枚です。
ライフゲインの能力も嬉しく、《エシカの戦車/Esika’s Chariot》や《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》で展開したときには1ターンに複数回ゲインできることも珍しくありません。このカードのおかげでよりダメージレースに強いデッキになりました。
《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》のエサ(非人間)とアタリ(人間)、両方を兼ねてくれる1枚。
ハムスタートークンである「プー」は速攻を持っているので、ウィノータを出したあとに《敬愛されるレンジャー、ミンスク/Minsc, Beloved Ranger》をプレイしても、即《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》が誘発するので相性◎。
ただし《敬愛されるレンジャー、ミンスク/Minsc, Beloved Ranger》本体、そして出てくるハムスタートークンともにレジェンドであるため複数枚引くのは厳しい点がマイナス。
このリストは3枚と最も多い採用となっていますが、他のプレイヤーは0-3枚と評価が分かれています。このカードの枚数がどうなっていくか、ウィノータの進化を左右するスロットかもしれません。
様々なナヤウィノータが活躍
2大会連続で同じ形が好成績を残したグルールに対して、ナヤウィノータは様々な構成が好成績を残しています。
様々な構成が勝っている=地力の高さだけで勝っている証でもあり、まだまだ伸び代があることは間違いありません。
日本選手権準優勝。
《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》《巨人落とし/Giant Killer》《クラリオンのスピリット/Clarion Spirit》といったカードを採用している、既存のナヤアドベンチャーに《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》を投入した形。
《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》のアタリである《刃の歴史家/Blade Historian》が入っておらずウィノータ要素が薄くなっている分、最も《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》への依存度が低く、アドベンチャー軸で戦えるデッキになっています。
日本選手権トップ4、SCGトップ12。
こちらは2マナ域に《厚顔の無法者、マグダ/Magda, Brazen Outlaw》を採用したナヤウィノータです。グルールでも使われている《ヤスペラの歩哨/Jaspera Sentinel》+《厚顔の無法者、マグダ/Magda, Brazen Outlaw》のパッケージが揃ったときの展開力は圧巻の一言。
最も爆発力がある構成といえそうです。
日本選手権トップ8に2名、《ヤスペラの歩哨/Jaspera Sentinel》を採用していない代わりに《絡みつく花面晶体/Tangled Florahedron》をフル投入したウィノータ。
マナスクリューしにくい構成に加えて《怪物の代言者、ビビアン/Vivien, Monsters’ Advocate》をメインから多めに採用してあり、マナフラッドにも強く、最も安定感を重視した構成だと思います。
SCGを優勝した形を含めると実に4つの形が先週末に好成績を残しています。
どの形が最も優れたナヤウィノータなのか、現段階で答えを出すことは難しいです。
ですがこれからアリーナオープン、アリーナ予選、そしてチャレンジャーガントレットと大型大会が開催され環境が解明されていくにつれ、その答えもきっと明らかになっていくでしょう。
■おわりに
もう少し色々なデッキを取り上げようかと考えたのですが、ジェスカイ変容やスゥルタイ根本原理、ティムールルーカといった他の上位デッキは旧環境からほとんど変化がなかったので、今一番強い2つのデッキ、グルールとウィノータに焦点をあてる形でお届けしました。
両デッキに共通している要素、それは《レンジャー・クラス/Ranger Class》と《エシカの戦車/Esika’s Chariot》です。
この2種類のカードはどちらもトークンを出しつつプラスでパーマネントが残るので、単体除去に強く、かつ残れば1枚でゲームを終わらせる可能性を秘めています。
これらのカードを上手く捌けないデッキは今後のスタンダードで勝つのは難しいでしょう。逆にこれらのカードを上手く対処できるデッキが登場すれば、そのデッキはグルール・ウィノータという二強の牙城を崩せるかもしれません。
まだまだ環境は始まったばかり。今後メタゲームがどう動いていくのか、楽しみですね!
それでは今回はここまで。アリーナオープン、楽しんでいきましょう!!