MTG │ 考察記事│ 高橋優太【禁止改定後のレガシー環境考察】
今回はレガシー記事です。
禁止改定後に、環境がどう変化しているかを追って行きましょう。
■禁止改定
3月6日に《表現の反復》《白羽山の冒険者》の2つがレガシーで禁止されました。
レガシーでは長らく「イゼット・デルバー」により環境支配が続いており、その中核となっていたのが《表現の反復》です。
《表現の反復》によって中盤~終盤にかけて最適な手札を整える事が出来て、さらには《神秘の聖域》で再利用し、さらに《神秘の聖域》を《目くらまし》で戻すことで繰り返し《表現の反復》をプレイし続ける事が出来ました。《目くらまし》を使うデッキは本来長期戦に弱いはずですが、《表現の反復》によってそれを克服して、どのゲームレンジにも対応出来る器用さを「イゼット・デルバー」が獲得していました。
《白羽山の冒険者》は最も軽くプレイできるイニシアチブ・クリーチャーであり、《古えの墳墓》などのマナ加速から早いターンに出す事で、そのままゲームに勝つほどのインパクトがあります。イニシアチブの隆盛により、攻撃でイニシアチブを取り返すのが難しいコントロールデッキが下火になっていました。
「イゼット・デルバー」はコンボデッキ全般に対して強く、「白単イニシアチブ」はコントロール全般に対して強いため、この2つ両方に強いデッキを作るのがかなり難しい状況が続いていました。僕自身も、今回の禁止改定によって変化を起こすことに賛成です。
《白羽山の冒険者》は禁止されたものの、イニシアチブという能力自体は依然として強力なので、今後もレガシーで姿を見かけるでしょう。
禁止改定に加えて、最近のレガシーでの大きな変化は《偉大なる統一者、アトラクサ》です。
青いので《意志の力》の代用コストに出来て、《グリセルブランド》と違いライフを支払わずに莫大なアドバンテージを得るフィニッシャー!
レガシーではマナコストを踏み倒す手段が豊富にあるので、リアニメイトやスニークショーと言ったデッキがアトラクサによって強化されました。
ここからは、先週末の大会結果をもとにレガシー環境を考察して行きます。
■参考情報
4/1-4/2に、マジックオンライン上で開催された大会結果を参考にしています。
■8キャスト
使用者JESSY_SAMEK LEGACY CHALLENGE 32優勝 |
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デッキリスト | |
4:《古えの墳墓/Ancient Tomb》 4:《ウルザの物語/Urza’s Saga》 4:《教議会の座席/Seat of the Synod》 2:《天上都市、大田原/Otawara, Soaring City》 2:《島/Island》 16 Lands 3:《練達飛行機械職人、サイ/Sai, Master Thopterist》 |
4:《虚空の杯/Chalice of the Void》 4:《ミシュラのガラクタ/Mishra’s Bauble》 4:《ウルザのガラクタ/Urza’s Bauble》 4:《オパールのモックス/Mox Opal》 4:《水蓮の花びら/Lotus Petal》 1:《上天の呪文爆弾/AEther Spellbomb》 1:《影槍/Shadowspear》 1:《真髄の針/Pithing Needle》 4:《物読み/Thoughtcast》 4:《意志の力/Force of Will》 31 other spells 2:《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre》 |
「8cast」というデッキ名は、《物読み》の英語名「Thoughtcast」から来ています。
各種0マナアーティファクトや《教議会の座席》で親和(アーティファクト)のコストを軽減しながら《物読み》《思考の監視者》でドローして、アーティファクトシナジーのあるクリーチャー達で攻めて行くデッキです。
《湖に潜む者、エムリー》は《教議会の座席》《オパールのモックス》経由で1ターン目にプレイする事も容易で、《ミシュラのガラクタ》《ウルザのガラクタ》を墓地から繰り返し唱えて追加ドロー。《虚空の杯》が破壊されても回収できるのが強み。
《練達飛行機械職人、サイ》は0マナアーティファクト呪文を唱える事でトークンを大量生成して、強力な盤面を作って行きます。
《ウルザの物語》はデッキの中核と言えるカードで、アーティファクトが多いデッキなので構築物トークンのサイズが5/5を超えて、さらに3章で状況に合わせたアーティファクトをサーチできます。サーチ対象は《上天の呪文爆弾》で大型クリーチャーをバウンスしたり、《真髄の針》でプレインズウォーカーを止めたり、《影槍》でダメージレースを優位にしたりと器用。サイド後は3章で《魂標ランタン》《墓掘りの檻》などの墓地対策にアクセスしやすくなります。
土地置いて2マナ払うだけで5/5トークン2体とサーチは、ゲームに勝てる性能であり、土地が出来る範囲を大きく超えています!アーティファクトを多く入れたデッキの特権ですね。
「8cast」は、直近の大会でトップ8入賞率が高いです。考えられる理由としては、《虚空の杯》《意志の力》両方を使える事による、コンボデッキへの耐性がある事。
コンボデッキは《思案》《渦まく知識》《納墓》《暗黒の儀式》などが多く採用されており、《虚空の杯》X=1が良く効きます。
特に《偉大なる統一者、アトラクサ》を早く出してくるデッキ相手に対しては、《上天の呪文爆弾》に加えて《天上都市、大田原》というバウンス手段があり、《真髄の針》で《騙し討ち》を止める事も出来ます。コンボの増えた現在のメタゲームに合った、良いデッキ選択だったと予想しています。
■最後の審判
使用者 WONDERPREAUX LEGACY CHALLENGE 優勝 |
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デッキリスト | |
1:《沼/Swamp》 1:《島/Island》 4:《Underground Sea》 1:《湿った墓/Watery Grave》 1:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》 1:《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 1:《霧深い雨林/Misty Rainforest》 4:《汚染された三角州/Polluted Delta》 1:《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》 1:《魂の洞窟/Cavern of Souls》 16 Lands 2:《タッサの神託者/Thassa’s Oracle》 |
4:《水蓮の花びら/Lotus Petal》 1:《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》 4:《渦まく知識/Brainstorm》 4:《思案/Ponder》 1:《考慮/Consider》 1:《狼狽の嵐/Flusterstorm》 2:《思考囲い/Thoughtseize》 1:《強迫/Duress》 4:《暗黒の儀式/Dark Ritual》 2:《陰謀団の儀式/Cabal Ritual》 2:《秋の際/Edge of Autumn》 4:《親身の教示者/Personal Tutor》 4:《最後の審判/Doomsday》 4:《意志の力/Force of Will》 38 other spells 1:《殻船着の島/Shelldock Isle》 |
ライフを半分支払うことで自分の好きなライブラリー5枚を作り直すことが出来る効果で、ライブラリーが少ないと勝利する《タッサの神託者》の効果と合わせて勝利するデッキです。
《最後の審判》が解決した後の例を挙げると、《渦まく知識》と青マナ、手札1枚がある場合はこの順番で積みます。
まずは《渦まく知識》で《考慮》《通りの悪霊》《ライオンの瞳のダイアモンド》をドローして、《考慮》を1番上、不要な手札を2番目に置きます。
その後《ライオンの瞳のダイアモンド》をプレイ、《通りの悪霊》のサイクリングをスタックに乗せてドローが解決する前に《ライオンの瞳のダイアモンド》を生贄にして青3マナ生成。
《通りの悪霊》のサイクリングを解決して、一番上の《考慮》をドロー。《考慮》をプレイして、2番目に置いてある不要なカードを墓地に落として《通りの悪霊》2枚目をドロー。
《通りの悪霊》2枚目をサイクリングして、デッキの一番下の《タッサの神託者》を引いて、残る青2マナでプレイして特殊勝利します。この際ライブラリーが0枚なので、《タッサの神託者》がインスタント除去されたとしても問題なく勝つことが出来ます。
ライフが足りない時は《通りの悪霊》ではなく《秋の際》をサイクリングしたり、相手の打ち消し呪文をケアしたい場合なら《魂の洞窟》をライブラリーに残したりなど、他にも多くのルートがあり、パズルを解くような楽しさのあるコンボデッキです。《最後の審判》は脳のトレーニングに良いので、一人回しするのにおすすめです。
サイドボードにも多くの工夫があり、コンボデッキ対決を意識してか《悲嘆》と《再活性》がセットで採用されています。《再活性》は相手の墓地から出す事も出来るので、相手が捨てた《偉大なる統一者、アトラクサ》を利用するのが主な狙いです。
1ターン目に《悲嘆》想起から《再活性》で手札破壊してそのまま《悲嘆》で殴るパターンもあり、《通りの悪霊》を《再活性》しても、3/4沼渡りが意外と強いです!
サイド後に相手の妨害が多そうな場合は、《最後の審判》後に《殻船着の島》秘匿から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱えて攻撃で勝つことも出来ます。
■ジェスカイコントロール
使用者 JUJUBEAN__2004 LEGACY SHOWCASE QUALIFIER 優勝 |
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デッキリスト | |
1:《山/Mountain》 4:《島/Island》 2:《平地/Plains》 2:《Tundra》 1:《Volcanic Island》 1:《神秘の聖域/Mystic Sanctuary》 3:《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 4:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》 3:《虹色の眺望/Prismatic Vista》 21 Lands 1:《船殻破り/Hullbreacher》 |
4:《渦まく知識/Brainstorm》 4:《思案/Ponder》 4:《剣を鍬に/Swords to Plowshares》 1:《対抗呪文/Counterspell》 2:《激しい叱責/Dress Down》 4:《虹色の終焉/Prismatic Ending》 2:《至高の評決/Supreme Verdict》 2:《一日のやり直し/Day’s Undoing》 2:《否定の力/Force of Negation》 4:《意志の力/Force of Will》 4:《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》 3:《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》 1:《放浪皇/The Wandering Emperor》 37 other spells 2:《溶融/Meltdown》 |
マジックオンラインの強豪が揃う、LEGACY SHOWCASE QUALIFIERを優勝したのはジェスカイコントロール。
《剣を鍬に》《虹色の終焉》《至高の評決》など除去で盤面をコントロールしながら、プレインズウォーカーでアドバンテージを獲得して行くデッキです。
目を引くのが4枚フル採用の《覆いを割く者、ナーセット》と、ナーセットとコンボの《一日のやり直し》!
この2つが揃えば、自分の手札は7枚、相手の手札は1枚と言う実質勝ちに近い状況を作る事が出来ます。《覆いを割く者、ナーセット》《船殻破り》が単体で相手を妨害する機能する機能を持ち、決まれば勝ちの奇襲性の高いコンボも狙えるのが良いですね。
■《語り部の杖/Staff of the Storyteller》コントロール
トップ8の中から、最近注目されている《語り部の杖》デッキを紹介します。
戦場に出た時にトークンを生成し、1マナで1ドローする《語り部の杖》。単体でも機能しつつ、《鏡割りの寓話》や《時を超えた英雄、ミンスクとブー》のようにトークン生成するカードと相性が良く、これを主軸にした4色コントロールデッキが入賞しています。
《語り部の杖》は明滅する効果と相性が良いため、《空を放浪するもの、ヨーリオン》でトークン1体と1ドローが狙えて、《語り部の杖》が2枚ある場ならそれぞれ誘発するので、大きなアドバンテージを得る事が出来ます。
《語り部の杖》は統率者セットなので流通量が少ないのが問題ですが、僕もレガシーで試してみたいカードです。
■おわりに
大会結果からレガシー環境を考察して行きました。
「8cast」は立ち位置良し、最速コンボの《最後の審判》や、新しいデッキの《一日のやり直し》《語り部の杖》もあり、禁止改定後に良い変化が起きているレガシーはかなり面白そうです。
それではまた。