デュエルマスターズ │ プレイヤーインタビュー │ taki選手

By 安田 悠太郎

「DMロボット」というスラングがある。毎日、22時前後から夜中あるいは早朝までデュエル・マスターズをプレイする選手が、一部でそう呼ばれている。

今回、インタビューさせていただいた北海道のtaki(ツイッター:https://twitter.com/taki_sweets)は、DMロボットと呼ばれるプレイヤーの1人だ。

仕事を終えて帰宅すると、彼流の調整が始まる。長いときは朝方まで続き、しばしの睡眠を挟んで出勤。マラかっちのメンバーとともに、これを徹底して続けている。

面積に対してイベント数が少ない北海道在住ゆえに、休日はCSを求めて関東まで遠征することもあると言う。

何が、彼をそこまで駆り立てるのか。競技デュエル・マスターズのどこが、彼を惹きつけるのか。
takiの物語を聞いた。
(本インタビューは、5月初旬に行われています)

■プレイヤープロフィール

・年齢:25歳(1993年度生まれ)
・活動地域:北海道
・所属:ランド速報、マラかっち
・その他:関東などへ精力的に遠征を繰り返していることで有名

■デュエル・マスターズとの出会い、競技との出会い

takiがデュエル・マスターズと初めて出会ったのは、9歳の時だ。コロコロコミックに連載されていた漫画「デュエル・マスターズ」をきっかけに、1弾スターターを購入。中学を卒業するまで遊んでいた。

高校入学後はデュエル・マスターズから離れていたものの、同じ北海道の園長、とんかつらが立ち上げたSkypeグループ「ランド」への加入をきっかけに、競技デュエル・マスターズに触れた。もっとも、CSではない。北海道で初めてCSが開かれるのは2015年のことで、まだ先の話だ。

takiが知ったのは、DM vaultというサイトだった。
いわゆる対戦CGIの一種。夜毎に大会も行われ、サイト独自のレーティングシステムを持っている。当初は現在のように全国各地でCSが開かれるようになる以前は、居住地域によらず” ガチ “の対戦が味わえる貴重な場所だった。

takiは、当時のことをこう振り返る。

「先日、ランドのみんなで集まりました。その時、8周年とか9周年とか言っていたから……vaultで遊び始めてからもうそんなに経ったのかと思って。懐かしいです。
当時はランドのほとんどのメンバーがデュエル・マスターズで遊んでいて、vaultのレーティング1位を経験した人間も4-5人ほどいました。ほろさんや、ヌケサクなんかが有名ですかね」

「古本屋」というブログで高い評価を受けたほろ、ズンドコヒーローと呼ばれたヌケサク……他にも” 核弾頭 “ととろや、のちにシャドウバースのRatings杯で名を馳せるQ&B、今でも現役のプレイヤーである” 破壊神 ”がれなど、ランドには個性の強いメンバーが揃っていた。
そんなプレイヤーたちと通話で雑談しながら、面白いゲームで遊ぶ。楽しくないわけがない。

プレイ相手はグループ内に留まらず、メンバーに紹介された他地域の人間と対戦することもあった。こうして知り合いを作ったことが、後の関東遠征に繋がって行く。

■遠征への誘い、そしてCS出場

こうして全力で遊んでいたtaki。その実力をCSにぶつける日が、ついに訪れる。

2015年3月28日。第1回北海道CS。
DM史上初めて、北海道でCSが開かれた日だ。

「初めて出た時は、『緑単サソリス』を使いました。《大神秘イダ》なんかが入っている、ビートするタイプですね。初入賞は、1ヶ月後のおやつCS北海道大会で、優勝。『黒緑速攻』を使いました」

CSに出た結果、得たのは戦績だけではない。第1回北海道CSの後の飲み会に誘われた際に、今では北海道を代表するプレイヤーとして知られるセキボンと意気投合。リアルでの調整相手をも手に入れた。

そしておやつCSの後、takiはZweiLanceから遠征の誘いを受ける。

「Thunders#36さんが主催していた、静岡CSへの遠征に誘われたんです。当時の旅費は、往復で29000円ぐらい。LCCで中部国際空港まで行って、そこからは電車です。静岡にも空港はあるのですが、1日1便しかない上に高いので……」

迷いもあったが、静岡CSが評判の良いイベントだったこともあり、初遠征を決断した。持ち込んだのは『5Cイメン=ブーゴ』だ。
結果は3位。準決勝で、Team Heaven’sDiceのまさと48枚完全一致のミラーマッチを演じるなど、記憶に残る大会になった。

「静岡CS、良かったですね。予選ラウンドの多さが特徴的なCSで、とても充実した1日を過ごせました。ここで勝てたことがきっかけで自信がつき、遠征するようになりましたね。
遠征は、今でも定期的にしています。行き先は主に関東。飛行機は往復1万円程度と安めですし、電車移動を含めても2万円で済むんですよ」

■全国への憧憬

現在は、ランドではなく「マラかっち」というチームで調整をしているtaki。マラかっちへの加入は2018年からだ。ランドのメンバーが、徐々にデュエル・マスターズから離れていったことに依る。

「マラかっちは、◆ドラえもんが加入した2018年の4月からDMロボット集団へと変貌しました。平日の朝5時まで調整とかやるようになったのはこの時期からです。大学生組はもちろん、社会人組のdottoさんやイヌ科も遅くまで頑張っています」

練習で使用するのは、変わらずvaultだ。

「Discordで通話しながら画面を共有し、お互いに意見を出し合います。練習したい対面をずっと回しながら、コメントし合うのが大事ですね。
特に熱が入っているのは◆ドラえもん。自分が気になったことや、他人の指摘を全部メモしているんです。彼、DM用のノートまで作っているんですよ。プレイヤーとしても優秀ですし、ビルダーとして新たなデッキを見出す能力もあって。本当に多才で、ぶっ飛んだ男だと思います」

仕事の傍ら、平日も夜から朝まで練習する。並大抵のことではない。
彼らが燃やす情熱の、その根源は何か。何が彼らを駆り立てるのか。takiに問うと、「全国大会ですね」と答えてくれた。

「負けず嫌いがすごく多いんです、マラかっちは。自分は” 全国大会に出るまでは死んでも死に切れない “と思っていますし、他のみんなも同じでしょう。
自分は、ハースストーンで日本選手権に出た経験があります。あのゲームでは、感情的になった状態、いわゆるティルトを起こしたままゲームを続けても意味がないということを学びました。その経験はデュエル・マスターズにも生きていて、vaultでも2-3時間続けてプレイしたら風呂へ入り、リフレッシュしています」

「死んでも死に切れない」――。
カードゲームで死とは穏やかではないが、takiの口調は真剣だ。

「残念ながら、自分はめちゃくちゃゲームが上手い側の人間ではありません。だから、他人よりもやり込まないと勝てない。そして、やり込まないと勝てないならやるしかない。そう思って調整しています。
カードパワーが上がったせいで運ゲーが増えた、とはよく言われます。確かに最近のカードが強いことは事実ですが、自分がその恩恵を受ける試合だってある。こうしたゲームに運はつきものですし、受け入れています。
だからこそ、ほんの少しでもプレイが勝敗に絡む局面では必ず正解を導き出し、絶対に勝ちに繋げる。その為に、他選手を上回る練習量が必要なんです」

takiには、忘れられない大会がある。
2018年度の北海道エリア予選。決勝トーナメントには上がったものの、相手の『青赤覇道』に完璧な回りを見せられ、ベスト16落ち。負けた盤面から目を離して顔を上げると、少し離れた卓でセキボンも同じ負け方をしていた。

互いに、言葉を掛けられなかった。無言のまま二人で会場を出て、下の階のトイレへ行き、個室へ篭った。声を押し殺して泣いた。
持ち込んだデッキは『青赤覇道』だった。『白零サッヴァーク』と当たることを想定し、それに寄せたリストを選択。毎日のように練習を積んでいた。

なんで。どうして。

悔しくて悔しくて仕方がなかった。涙を抑えられず、決勝戦の結果を見届けることは出来なかった。

それだけに、GP8thの結果は嬉しかったと彼は振り返る。

「セキボンは去年、何度も遠征して、ランキングを走っていました。北海道のCSはそこまで多いわけではなくて、毎週出場することは出来なかったので。でも……そこまでしても、上位10位には届かなかった。
だからGP8thでセキボンが全国への切符を獲得した時、とても嬉しかったんです。彼の努力が報われる日が来て、本当によかった」

もっとも――とtakiは言う。

「こうなった以上、自分ももっと頑張らないと。1人だけ抜け駆けなんて、させません」

セキボンは友人であり、そしてライバルでもある。
全国を目指し、takiの挑戦は続く。

きっと、彼の努力も報われる日が来るはずだ。

■あとがき

平日だろうと、深夜あるいは早朝まで調整しているチームがいる――。

正直、最初に聞いたときは耳を疑った。大会の前だけというわけでもなく、毎日続けているらしい。
思わず、チームのメンバーであるtakiに連絡を取り、インタビューをお願いした。

初めてお会いしたのは、彼の初遠征だった第5回静岡CSでのことだ。筆者は運営側のメディアチームのスタッフとして、準決勝の48枚ミラーマッチを目撃した。

名前は以前から存じ上げていたし、その裏にある努力の量を知って納得もした。
経験豊富な選手だと思っていたが、実はあの静岡CSが3度目のCS参加だったと今回聞いて驚いた。

デュエル・マスターズは、運が絡むゲームではある。しかし、長期的な勝率を左右するのはプレイングやビルディングの技術だ。
真摯に練習を重ねるtakiが、全国大会へ出場することを願っている。

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