MTG │ 観戦ガイド │ 細川侑也【世界選手権2019】
皆様、ご無沙汰しております。
細川 侑也です。
いよいよ今週末はマジックの最高峰のイベント、世界選手権2019!
ミシックチャンピオンシップ優勝者とミシックポイント獲得上位者の計16名のみが参加できる本大会。どんなドラマが待っているのか、始まる前から楽しみです。
さて、今回はその世界選手権2019をもっと楽しめるように、今回持ち込まれた5つのデッキのリストの解説と考察をしていきたいと思います。
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■環境おさらい
世界選手権2019では、
4名 – ティムール再生
4名 – 赤単アグロ
4名 – ジェスカイファイアーズ
3名 – 青白コントロール
1名 – ジャンドサクリファイス
このようなデッキ分布となりました。
現在のスタンダード環境は、一言で言うならば「絶対王者の青白コントロールが中心の環境」です。
強力なエンチャント、《メレティス誕生》・《エルズペス、死に打ち勝つ》・《海の神のお告げ》、帰ってきた《神の怒り》こと《空の粉砕》、そして最強のフィニッシャーである《夢さらい》と、『テーロス還魂記』の恩恵を最も受けたのが青白コントロールなのです。
青白コントロールはアグロに対しては《メレティス誕生》と《空の粉砕》、《夢さらい》が強力で、ミッドレンジには打ち消しと《エルズペス、死に打ち勝つ》があるため、あらゆるデッキに有利に立ち回ることができます。極端に相性の悪いデッキはジャンドサクリファイスぐらいでしょう。
ジャンドサクリファイスは、前環境のミシックチャンピオンシップⅦを制したデッキであり、環境最強のデッキでした。
《大釜の使い魔》と《波乱の悪魔》がアグロを殺し、ミッドレンジを《パンくずの道標》と《フェイに呪われた王、コルヴォルド》で倒す。デッキのメインエンジンである《大釜の使い魔》と《パンくずの道標》がビートダウンにもコントロールにも強力で、ゲームプランを自在に変化できるのが強みなのです。
前環境では青白コントロール側に《次元の浄化》が入っていたため、《パンくずの道標》と《魔女のかまど》を並べすぎると負けてしまう場合があったのですが、今の青白コントロールに《次元の浄化》は採用されていません。そのため、《パンくずの道標》と《魔女のかまど》を置き続けるだけで勝利できるようになりました。
そんな青白コントロールキラーのジャンドサクリファイス。一見すると良い選択肢に思えますが、『テーロス還魂記』によって強化された二つのデッキが立ちはだかります。
まずは赤単アグロ。
しばらくはスタンダードでずっと下火だった赤単アグロですが、『テーロス還魂記』で《鍛冶で鍛えられしアナックス》を得たことで、見事に復活を遂げました。
アグロと言えば、以前まではラクドス騎士が主流でした。軽いクリーチャーによるビートダウンと、《朽ちゆくレギサウルス》+《エンバレスの宝剣》の2つの軸を持つのがラクドス騎士です。このラクドス騎士が消えて、赤単に取り替わった理由となるのが、この《鍛冶で鍛えられしアナックス》なのです。
以前の赤単は、軽いクリーチャーによるビートダウンについては問題ありませんでした。むしろここを支えるカードはラクドス騎士よりも強いと言えるでしょう。《朱地洞の族長、トーブラン》は軽いクリーチャーと相性が良いですからね。
問題は、《エンバレスの宝剣》を使いにくい点にありました。クリーチャーはすべて小粒で、唯一付ける価値のあるカードは《砕骨の巨人》ぐらいです。それでも《朽ちゆくレギサウルス》+《エンバレスの宝剣》の16点ダメージには遠く及びません。
この《エンバレスの宝剣》の相方として《鍛冶で鍛えられしアナックス》は最適です。クリーチャーが2体場にいれば4/3。ここに《エンバレスの宝剣》を出せばそれだけでパワーは6。そう、実質このカードは《朽ちゆくレギサウルス》なのです。
更に《朽ちゆくレギサウルス》より優れている点として、クリーチャーが死亡した際にトークンを生み出すという能力も付いています。これにより攻撃クリーチャーの頭数を減らさずに済むため、《エンバレスの宝剣》を唱えやすくしているのです。
前述の《朱地洞の族長、トーブラン》とも相性がよく、《鍛冶で鍛えられしアナックス》はまさしく赤単復活の救世主と言って良いでしょう。
そしてジャンドサクリファイスの敵となるもう一つのデッキがティムール再生です。
ティムール再生もまた、《海の神のお告げ》と《嵐の怒り》、《タッサの介入》、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を得て大きく進化しました。
従来のティムール再生は一言で言うと、《発展+発破》にひどく依存したデッキでした。《荒野の再生》を置いて《発展+発破》を打ち、大量のドローで追加の《荒野の再生》と《発展+発破》を見つけ無ければ勝利できません。5ドローで《発展+発破》を見つけられないものなら、有利な状況にもかかわらず、《荒野の再生》をもてあまして負けることも多々ありました。
また、《荒野の再生》への依存度もひどく高いデッキでした。《薬術師の眼識》は《荒野の再生》を置いていない状態では打つ暇があまりなく、《薬術師の眼識》をたくさん引いて負けることも多かったのです。
このちぐはぐなドローをなくしてくれたのが《タッサの介入》です。
通常は打ち消し呪文として使用しつつ、《荒野の再生》下ではドロー呪文として使って《発展+発破》を引き込みにいけます。ドローと妨害を兼ねるこのカードの加入は非常に大きいと言えます。
また、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》もティムール再生をもう一段階上のデッキへと押し上げました。
アグロ相手に信頼できるフィニッシャーを持たなかったティムール再生でしたが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の登場によってその弱点は消えました。生き残ってターンが帰ってくればほぼ勝利です。しかも序盤はマナブーストとして運用でき、ライフも回復と、至れり尽くせり。
《海の神のお告げ》も《選択》のほぼ上位互換であり、《荒野の再生》を貼った状態で手持ち無沙汰になることはほとんどなくなりました。《タッサの介入》を含め、この3種のドロースペルが、ティムール再生のマナフラッドを助けています。
《嵐の怒り》は貴重な全体除去です。
前環境では、ティムール再生対ジャンドサクリファイスの相性は実は五分程度のものでした。というのも、ティムール再生側に入っている除去が《砕骨の巨人》や《炎の一掃》だったため、《波乱の悪魔》が触りづらかったのです。
最速で《荒野の再生》⇒《発展+発破》と動けば勝てるものの、そうでない場合は《波乱の悪魔》を並べられて一瞬でライフを削られていました。
《世界を揺るがす者、ニッサ》の土地を薙ぎ払いつつ忠誠値を下げられたり、《覆いを割く者、ナーセット》や《時を解す者、テフェリー》がマイナスから入ってこようものならまとめて一掃できるなど、その用途は対アグロだけにとどまりません。
加入したカードは地味に見えますが、『テーロス還魂記』によってティムール再生は本当に強いデッキになりました。
まとめると、
・赤単、ティムール再生、その他雑多なデッキに強い青白コントロール
・その青白コントロールを倒すジャンドサクリファイス
・ジャンドサクリファイスに強い赤単とティムール再生
ということになります。
さて、以上の点を踏まえた上で、実際に世界選手権に持ち込まれたリストを見てみましょう。
■青白コントロール
使用者:Ondřej Stráský/Paulo Vitor Damo da Rosa
3:《平地/Plains》
7:《島/Island》
4:《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4:《啓蒙の神殿/Temple of Enlightenment》
1:《ヴァントレス城/Castle Vantress》
3:《アーデンベイル城/Castle Ardenvale》
2:《寓話の小道/Fabled Passage》
1:《廃墟の地/Field of Ruin》
1:《太陽の恵みの執政官/Archon of Sun’s Grace》
1:《夢さらい/Dream Trawler》
2:《神秘の論争/Mystical Dispute》
3:《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》
3:《空の粉砕/Shatter the Sky》
3:《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》
4:《海の神のお告げ/Omen of the Sea》
4:《吸収/Absorb》
3:《意味の渇望/Thirst for Meaning》
2:《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》
4:《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》
2:《払拭の光/Banishing Light》
3:《メレティス誕生/The Birth of Meletis》
サイドボード
4:《霊気の疾風/Aether Gust》
1:《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》
2:《神秘の論争/Mystical Dispute》
2:《太陽の恵みの執政官/Archon of Sun’s Grace》
1:《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》
1:《ガラスの棺/Glass Casket》
2:《終局の始まり/Commence the Endgame》
2:《紺碧のドレイク/Cerulean Drake》
今大会大本命の青白コントロール。その中でも一際異彩を放ったのが、ミシックチャンピオンシップ・リッチモンドを制したOndřej Stráský選手と、その決勝を戦ったPaulo Vitor Damo da Rosa選手のリストでしょう。
なんといっても、3~4枚入っているのが一般的だった《夢さらい》が1枚しか採用されておらず、その代わりに打ち消し呪文が9枚。《神秘の論争》すらメインに採用されています。
このリストははっきりと、同型やティムール再生を強く意識したリストと言えるでしょう。《メレティス誕生》は青白コントロール同型では弱く、《夢さらい》も同様です。
《夢さらい》はまず通すことが難しい上に、戦場に出ても《空の粉砕》で対処されてしまいます。出したターンが大きな隙になり、致命的なスペルである《エルズペス、死に打ち勝つ》を通し、それを《時を解す者、テフェリー》で回収されてしまうでしょう。
メインから3枚入っている《ドビンの拒否権》は、同型で《エルズペス、死に打ち勝つ》を絶対にカウンターしたいという強い意志が伝わってきます。
サイド後はしっかりと赤単に対してガードを上げつつ、同型で強力な《終局の始まり》を用意しています。
青白コントロールが3人と少なかったのは少し予想外だったでしょうが、ティムール再生とジェスカイファイアーズを足せば計11人と、このリストは世界選手権で比較的当たりなのではないでしょうか。
苦手なジャンドサクリファイスを使用しているのが1人であるという点も実に大きい。
ちなみに、今回優勝するデッキは青白コントロールだと、僕は予想しています。
■ジェスカイファイアーズ
使用者:Gabriel Nassif/Raphaël Lévy
2:《ヴァントレス城/Castle Vantress》
4:《寓話の小道/Fabled Passage》
4:《蒸気孔/Steam Vents》
3:《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
3:《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
4:《凱旋の神殿/Temple of Triumph》
2:《天啓の神殿/Temple of Epiphany》
2:《平地/Plains》
2:《島/Island》
2:《山/Mountain》
3:《帰還した王、ケンリス/Kenrith, the Returned King》
4:《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》
4:《予見のスフィンクス/Sphinx of Foresight》
4:《炎の騎兵/Cavalier of Flame》
3:《厚かましい借り手/Brazen Borrower》
4:《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》
4:《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》
4:《創案の火/Fires of Invention》
2:《海の神のお告げ/Omen of the Sea》
サイドボード
4:《義賊/Robber of the Rich》
1:《巨人落とし/Giant Killer》
2:《チャンドラの螺旋炎/Chandra’s Pyrohelix》
1:《解呪/Disenchant》
3:《神秘の論争/Mystical Dispute》
1:《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire》
1:《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》
1:《敬虔な命令/Devout Decree》
1:《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》
共に殿堂表彰者、共にフランスが誇る古くからのプロプレイヤー、そして共に今年からMPLに加入というコンビが持ち込んだのがこのジェスカイファイアーズ。
既にお気づきの通り、ジェスカイファイアーズは環境おさらいで紹介したデッキではありません。前環境から特にリストに変化はなく、特別に数が多いわけでもなかったので、紹介していませんでした。しかし世界選手権2019では、実に4名のプレイヤーが選択しています。
ジェスカイファイアーズは赤単とジャンドサクリファイスを得意とし、ティムール再生を苦手とするデッキです。対青白コントロールはメインこそ打ち消し呪文の量で不利になりますが、《時を解す者、テフェリー》を通せば勝利が近づきますし、サイド後は有利で、青白コントロールとの相性は悪くありません。
このリストは、その青白コントロールを強く意識したものです。それがよくわかるのが《風の騎兵》0枚、《厚かましい借り手》3枚という部分です。
《風の騎兵》は《神秘の論争》を受ける対象にもなりますし、青白コントロールが同型を睨んで入れている《覆いを割く者、ナーセット》に対して非常に弱いカードです。
一方、《厚かましい借り手》は打ち消しを構える青白コントロールのターン終了時にけん制として使えますし、複数枚引けばそのまま殴り勝つことすら可能です。
サイドボードで光るのはやはり《義賊》。ティムール再生や青白コントロールへサイドインすることを想定しているのでしょう。
《厚かましい借り手》はならず者なため、実は《義賊》で追放したカードを使用できます。メインに《厚かましい借り手》、サイドに《義賊》は素晴らしい対コントロールメタですね。今後のジェスカイファイアーズはこれが一般的になりそうです。
やはり大会を勝ち抜けるかどうかは、ティムール再生を倒せるかどうかにかかっているでしょう。《厚かましい借り手》と《義賊》が不利マッチすら有利に変えてしまうようであれば、使用者の2人が共にトップ4に進出してもなんら不思議ではありません。
■ティムール再生
使用者:Chris Kvartek
2:《寓話の小道/Fabled Passage》
2:《ヴァントレス城/Castle Vantress》
4:《蒸気孔/Steam Vents》
4:《繁殖池/Breeding Pool》
4:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4:《神秘の神殿/Temple of Mystery》
2:《天啓の神殿/Temple of Epiphany》
2:《森/Forest》
1:《山/Mountain》
2:《島/Island》
4:《厚かましい借り手/Brazen Borrower》
2:《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》
3:《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》
4:《タッサの介入/Thassa’s Intervention》
4:《荒野の再生/Wilderness Reclamation》
4:《発展+発破/Expansion+Explosion》
4:《海の神のお告げ/Omen of the Sea》
4:《成長のらせん/Growth Spiral》
4:《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》
サイドボード
4:《霊気の疾風/Aether Gust》
4:《神秘の論争/Mystical Dispute》
2:《否認/Negate》
4:《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire》
1:《丸焼き/Fry》
2019年にミシックチャンピオンシップ予選を突破し続け、本戦でも結果を残し、1年でMPLに駆け上がったプレイヤー、Chris Kvartek選手。(余談ですが、僕はMCロンドンの初戦でChris Kvartek選手にボコボコにされました)
今回ティムール再生を4人が持ち込みましたが、その中でも一際異彩を放つリストです。
まず、通常のティムール再生には1枚も入っていない《世界を揺るがす者、ニッサ》がなんと4枚。そして《嵐の怒り》が0枚。
これははっきりと、対青白コントロールを見据えています。《時を解す者、テフェリー》を通されただけで負けてしまう青白コントロール戦を、《世界を揺るがす者、ニッサ》+《ハイドロイド混成体》のお馴染みのコンビで勝とうとしているのです。
マナベースも《世界を揺るがす者、ニッサ》が出やすいようにしっかりと調整されており、緑マナは16枚。実は従来のリストは2ターン目に《成長のらせん》を打つには緑マナが少し足りていませんでしたが、このリストなら心配はいりません。
《嵐の怒り》を排除したのは思い切った選択です。赤単に対してだけでなく、相手の《世界を揺るがす者、ニッサ》にも強いこのカードですが、自分自身が使うことと、《世界を揺るがす者、ニッサ》デッキを世界選手権に持ち込むプレイヤーはいないだろうと判断したのでしょう。そしてそれは見事に的中しています。
サイド後は《嵐の怒り》がない分、赤単メタを8枚投入しています。とはいえ、《嵐の怒り》がないことが相手に知られているため、メイン戦は赤単にほぼすべて落としてしまうでしょうから、相性は不利だと思われます。
赤単を避け続ければ、トップ4に残る可能性は非常に高いはずです。
■赤単アグロ
使用者:Andrea Mengucci/Seth Manfield
18:《山/Mountain》
4:《エンバレス城/Castle Embereth》
4:《遁走する蒸気族/Runaway Steam-Kin》
4:《義賊/Robber of the Rich》
4:《焦がし吐き/Scorch Spitter》
4:《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》
4:《熱烈な勇者/Fervent Champion》
4:《リムロックの騎士/Rimrock Knight》
3:《朱地洞の族長、トーブラン/Torbran, Thane of Red Fell》
4:《鍛冶で鍛えられしアナックス/Anax, Hardened in the Forge》
4:《舞台照らし/Light Up the Stage》
3:《エンバレスの宝剣/Embercleave》
サイドボード
1:《実験の狂乱/Experimental Frenzy》
4:《溶岩コイル/Lava Coil》
2:《炎の侍祭、チャンドラ/Chandra, Acolyte of Flame》
4:《解き放たれた狂戦士/Unchained Berserker》
3:《レッドキャップの乱闘/Redcap Melee》
1:《無頼な扇動者、ティボルト/Tibalt, Rakish Instigator》
MPLプレイヤーのコンビが持ち込んだ赤単アグロは、やはりというべきか、青白コントロールを強く見据えたリストとなっています。
それが顕著に表れているのが呪文の枠です。そう、《ショック》が0枚なのです。
《ショック》は対サクリファイス系、ミラーマッチではほぼ必須の除去です。一方でティムール再生・ジェスカイファイアーズ・青白コントロールには弱く、つまりこの《ショック》0枚の赤単は、世界選手権のメタゲームを見事読み切ったリストなのです。
ちなみにSebastián Pozzo選手もリストは少し違えど、《ショック》は0枚。Eli Loveman選手は3枚と、今大会で《ショック》が4枚の赤単は0人でした。全員が世界選手権のメタをしっかりと読んでいたということですね。
さて、《ショック》の枠に入っているのは《義賊》。《エンバレスの宝剣》を無効化してしまう《時を解す者、テフェリー》を倒すために、また全体除去の返しのターンに打点を入れられる《義賊》は便利だという判断なのでしょう。
サイドボードも《無頼な扇動者、ティボルト》に《炎の侍祭、チャンドラ》、《解き放たれた狂戦士》と、とにかく青白コントロール対策をしっかりと行っています。
一方、ティムール再生にはほぼサイドインするカードがなく、メインのまま戦うことを余儀なくされそうです。
《ショック》0枚という判断は完璧でしたが、青白コントロールが想定よりも少なかったのは誤算だったかもしれません。しっかりとサイドボードを用意しているであろうジェスカイファイアーズやティムール再生に勝つことができるのか、注目です。
■ジャンドサクリファイス
使用者:Piotr Głogowski
4:《森/Forest》
1:《山/Mountain》
3:《沼/Swamp》
4:《草むした墓/Overgrown Tomb》
4:《血の墓所/Blood Crypt》
4:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4:《寓話の小道/Fabled Passage》
1:《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
4:《金のガチョウ/Gilded Goose》
4:《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》
3:《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》
1:《永遠神バントゥ/God-Eternal Bontu》
4:《波乱の悪魔/Mayhem Devil》
1:《残忍な騎士/Murderous Rider》
2:《虐殺少女/Massacre Girl》
3:《打ち壊すブロントドン/Thrashing Brontodon》
4:《苦悶の悔恨/Agonizing Remorse》
4:《パンくずの道標/Trail of Crumbs》
4:《魔女のかまど/Witch’s Oven》
1:《戦慄衆の将軍、リリアナ/Liliana, Dreadhorde General》
サイドボード
2:《害悪な掌握/Noxious Grasp》
2:《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》
2:《壮大な破滅/Epic Downfall》
2:《変容するケラトプス/Shifting Ceratops》
1:《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》
2:《強迫/Duress》
2:《見栄え損ない/Disfigure》
1:《戦慄衆の将軍、リリアナ/Liliana, Dreadhorde General》
1:《戦争の犠牲/Casualties of War》
そして最後に紹介するのがジャンドサクリファイス。使用者は、Piotr Głogowski選手のみ。ミシックチャンピオンシップⅦで栄光を掴んだデッキを、世界選手権の舞台にも持ち込んできました。
今大会のジャンドサクリファイスも、独自のチューンが光っています。
メインから《苦悶の悔恨》4枚は、はっきりとティムール再生・ジェスカイファイアーズ・青白コントロールへの意識が伝わってきます。
特に前者2つのデッキが厳しいため、それに対しては更にメインから《打ち壊すブロントドン》も3枚採用と、自由枠のほとんどを対コントロールに費やしています。
《戦慄衆の将軍、リリアナ》は対《夢さらい》を見据えたチョイスで、青白コントロール相手は取りこぼさないようにしているのでしょう。
《虐殺少女》は赤単、とりわけ《鍛冶で鍛えられしアナックス》に対して強い1枚です。どれだけクリーチャーが場にいようとも、《虐殺少女》を1枚出せば、一気に戦場を更地にすることができます。
少し戦場が膠着すれば《パンくずの道標》で探せますし、マリガンで探しに行くことも考え、メインから2枚入っています。コントロールやティムール再生には腐ってしまいますが、リターンの方が大きいとの判断だと思われます。
青白コントロールが想定よりも少なかったと、Piotr Głogowski選手は考えているかもしれません。このリストでティムール再生やジェスカイファイアーズにどれだけ勝てるのかは不明です。僕の見た限りではかなり厳しそうではありますが、そこは百戦錬磨のPiotr Głogowski選手の駆るジャンドサクリファイスなだけに、非常に楽しみです。
■おわりに
いよいよ2/15の深夜4時から、世界選手権2019が始まります。
今回は日本語解説を八十岡 翔太選手、行弘 賢選手、佐藤 レイ選手の3名のMPLプレイヤーが担当するということで、放送を見るだけでマジックが上手くなること間違いなし!
今夜から3日間は夜更かしをして、世界最高峰の戦いをその目に焼き付けましょう!