
MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【プロツアー・霊気走破】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
今年1回目のプロツアーであるプロツアー『霊気走破』に参加してきました!
結果だけ先に書いてしまいますと10-6と個人だけ見るとそこそこの成績でしたが(10-6もチェイン=次回PT権利獲得のラインなので悪くないです)、チームメイトの原根くんがトップ8、そして行弘くんが12-4の10位と好成績!!
(引用:MTG公式サイトより)
プロとして活動する以上、個人の成績が一番大事ですが、チームメイトの勝利も当然嬉しい!!
2人ともおめでとう!
ということで今回の記事では、プロツアーの調整過程と簡易レポートをお届けしたいと思います。
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★調整メンバーについて
前回のワールドから継続の面々に、前回PTからチェインの行弘、RCで権利獲得したユン・小原・平見を加えた総勢12名で臨みます。
ご存知の通り、あんちゃんは今大会よりチームコスモスに移籍しています。詳しくは彼の記事をどうぞ。
★スタンダードの調整過程とチーム内の選択
様々な記事でも語られている通り、前環境がベースになる=グルール果敢・エスパーピクシー・ドメインランプの3強であることは明白であり、あとは新規のカードによりどれだけ強化されるか/新デッキが作れるかというのが今回の焦点でした。
特に今回はMTGA/MTGOへの実装からデッキ提出まで1週間程度しかなく、後者のハードルが少し高め。『霊気走破』のカードパワーが低めなこともあり、メタゲーム自体は大きく変わらないと最初から予想していました。
■グルール果敢
個人的には「グルールかエスパーを使いそう/使いたい」と思っていたので初期からテスト。
ですが、こちらは全く強化されてないのに、エスパーは《不気味なガラクタ》を得ているため相性が悪化。
ミラーにエッジがあるわけでもなく、ドメインランプが3番手=グルール・エスパーが上位12だと想定した結果、特に使う理由がなくなり撤退。
チーム内では僕の他に平見も興味を示していましたが、最終的にチーム内で選んだのは0名。
■エスパーピクシー
こちらも結構力入れてテスト。前述の通り《不気味なガラクタ》が入って対グルールやミラーが強化されたのはプラス。
だが対ドメインはドメイン側のマナベースが強化され、《害獣駆除》の打ちやすさ/枚数が上がったので前より悪くなった印象。
ラダーレベルではそれなりに勝てた&手応えも良かったので結構悩みましたが、チームデッキが良さそうだったのでそちらに乗ることにしました。
最終的には小原のみ使用。
■ドメインランプ
多くのチームメイトが触っていたので僕自身はテストしませんでしたが、優勝したMatt Nassと同様に《魂の洞窟》0枚のリストを井上が使っていたりと、今振り返ってみると結構調整は進んでいた気がします。
どこまでいってもグルールに不利、ミラーが五分ということを毛嫌いしたのか、また1人また1人と離れていき、最終的にはワールドでも同デッキを使用していた増門のみが使用。
■ジェスカイ/ボロス召集
召集マスター・松浦が調整、そして使用。
従来のジェスカイ型に限界を感じ、『ファウンデーションズ』で再録された《ドラゴンの餌》、『霊気走破』の《入れ子ボット》《サンビロウの境界》を使って2色にまとめました。
■グルール恐竜
先攻で1→3→3or4とブン回ってやっと上位メタと戦える程度の力。
デッキが弱すぎて一瞬で断念しました。ワイルドカード返してほしい。
■陰湿な根
有名ラダー配信者のリストでテスト。新カードが複数採用されていますが、結局根幹を支えるカード=複数枚を要求するコンボが序盤に揃ったときだけ強い。要するに?
■イゼットディスカード
これは僕が最後に試してたリスト。他にも《鉄面提督のトンネル掘削機》まで入れたリストや、ジェスカイで《忍耐の記念碑》+《新ベナリアの守護者》型などもありましたが、どれも没。
ただしユンさんが見出した《苦々しい再会》(+《プロフトの映像記憶》/《逸失への恐怖》)は非常に強く、このパッケージだけ後述するジェスカイ眼魔に流用されました。色んなデッキを回すことも無駄じゃないんだよね。
■アーティファクト系デッキ
《再利用隔室》が入ったことにより《身代わり合成機》が安定して着地するようになったアーティファクトデッキ。
シミック、アゾリウスなどいくつものバージョンが試された後、最も序盤の除去が強い&《再利用隔室》でサクりやすいディミーアに着地しました。
「エスパーにこそあまり強くないが、ドメインに強く、グルールにもサイズで戦える!」「《邪悪を打ち砕く》《脚当ての陣形》が強い今、アーティファクトだ!」と盛り上がりましたが、回せば回すほど粗が見えてくるという悲しい現実。
使いたい時に使えないのが嫌なのでみんなで一斉に《身代わり合成機》《奇怪な宝石》《フォモーリの宝物庫》といった高額カードを買い集めましたが、最終的には誰も使わないという結末を迎えました。ああ無情。
■ジェスカイ眼魔
そして最終的にチームの大多数が使うことになったのがジェスカイ眼魔。
僕個人の話をすると
オモチャを試すがどれもダメ→グルール断念→ディミーアアーティファクト断念→エスパー断念→最後にチームデッキを選んだ
という感じです。デッキをロックしてからはテストプレイや微調整にも参加していますが、完全に「乗らせてもらった」側です。感謝。
ラダーですら勝てなかったディミーアは論外として、エスパーは結構やり込んだので悩みました。
ですが最終的にはチームデッキを信じて選択。
ジェスカイ眼魔の調整過程や詳細については、メイン担当だった森山キャプテンが記事を書いていますので、そちらを御覧ください。
【全文無料・サイドボードガイド付き】
プロツアーシカゴに向けて調整したジェスカイ眼魔(スタンダード)の解説記事を書きました👁️
気付いたら1万字を越えていました。
励みになりますので記事が参考になれば拡散やサポートぜひよろしくお願いします!https://t.co/lcYfrf8cJ9 pic.twitter.com/BHJJsGGtWP— Masahide Moriyama/鮭くれーぷ (@SakeIzumo) February 27, 2025
★使用したリストの解説
ということで、今回のデッキリストはこちら。
・井川良彦 ジェスカイ眼魔 プロツアー『霊気走破』
基本的な部分はチームメイトと変わらないので、個人的に変えたところだけ簡単に解説します。
チームメイトたちが「メイン《呪文貫き》2・サイド《邪悪を打ち砕く》3」にしているところを、僕は「メイン《呪文貫き》1《邪悪を打ち砕く》1・サイド《邪悪を打ち砕く》2《喝破》1」にしました。
これはサイドボード後のゲームにおいて、前者(カウンターの構成は《呪文貫き》2《否認》2)よりも後者(《呪文貫き》1《喝破》1《否認》2)の方が相手がやりづらい/多くのデッキに対応できると考えたからです。
《呪文貫き》2だと相手がケアすればいいだけで、特にゲームレンジが少し後ろに寄りがちなサイドボード後は腐りやすくなります。幅がある方がカウンター打たれる側はやりづらく、かつ打つ側は効果的に打てると判断しました。
もちろん、チームメイトたちがキレイに全展開から《審判の日》を《呪文貫き》したり、《アブエロの覚醒》を《呪文貫き》2枚で勝った試合があったことも知っています。それは間違いなくメイン《呪文貫き》2枚にしたおかげの勝利でしょう。
ですが僕は僕で、ミラーのメインで《邪悪を打ち砕く》で相手の《忌まわしき眼魔》を、ドメインの《永遠の策謀家、ズアー》を撃ち落としたり、セレズニア相手に《輝晶の機械巨人》を《喝破》して勝ったりしたので、まぁ一長一短=好みの範囲かなと思います。この枚数バランスについては特に後悔していません。
もし今後セレズニア系統が増えるようであれば、《喝破》の2枚目も検討したいですね。それぐらいセレズニアはキツイ相手でした。
★ドラフトについて
今回はドラフトに関して自信がなかったので、あまり思考をまとめることができていませんでしたが、考えていたのは大体こんな感じ。
・緑は圧倒的に強いので、ポジション取れそうなら無理やりでもやる。青緑だけマルチのアンコモンが微妙で一歩劣る印象。白緑=黒緑>赤緑>青緑。
・その上で、白緑は白が安い&マルチのアンコモンが非常に強力なのにタッチしづらいこともあり、2パック目以降は比較的遅い手順で流れて来やすい。安いクリーチャー・コンバットトリックだけでもそれなりに勝てるので、トータルで見ると安定して勝率を出せるアーキタイプ。殴る白は白緑>白黒>白赤。
・白赤の2色が弱い&コモンの層が薄い関係で白や赤は比較的流れやすいので、マルチカラーのアンコモンが流れてくるようであればしっかり流れを掴んで参入する。青赤>赤黒>白赤。
・アーティファクト主体のデッキは、自分が練習でもあまり上手く組めなかった&少しでも被ると悲惨なデッキになる。赤が一部のカードしか強くなく、かつ緑を避けるとなるとエスパーカラーに集中する可能性もあるので、初日はともかく2日目は危険。細いデッキになりがちなので、なるべく避けたい。白青≧青黒。
まとめると、個人的な優先順位はこんな感じでしょうか。
S(是非ともやりたい):白緑・黒緑
A(できればやりたい):赤緑・白黒
B(やりたい寄り):青赤
C(流れで渋々):青緑・赤黒
D(余程でないとやらない):白赤・白青・青黒
今回の環境で唯一エッジがあったなと感じたのは、《アラクリアのジャガー》の評価でしょうか。
アリーナのプレミア・ドラフトであれば24-5枚目ぐらいの評価かもしれませんが、全体的にデッキのパワーレベルが落ちる卓ドラフトにおいてはエースクリーチャーとして十分活躍してくれるのです!
白緑や赤緑など、自分から積極的に殴るカラーリングであればほぼ5マナ6/6警戒として運用できるため、近いマナ域/高評価コモンである《雷頭の砲手》《砂丘の危険》に対して一方的にアタックできますし、《渡りをするケトラドン》よりも先に着地できるので堂々とコンバットトリックを構えながらアタックできます。
このカードが他の人が安かった=少し遅めに取れると想定できたため、しっかりと序盤のカードを埋めつつ重い枠をコレで埋めることができたのは大きかったかなと思います。こういう「他の人があまり評価していないが、実際は結構強いカード」をどれだけ見出だせるかは今後もドラフトの勝率に大きく寄与してくるかなと考えています。
★本戦の結果
◎Day1
・1stドラフト
1stドラフト、レアなし地味ゴルガリで2-1。初戦ミス負けしてティルりそうだったけど何とか持ち堪えた。 pic.twitter.com/wfex7nrXIn
— Yoshihiko Ikawa (@WanderingOnes) February 21, 2025
初手はレアがゴミなパックで、素直に一番強い《轟雷のブルードワゴン》からスタート。その後《脱皮の世話人》、《浚渫機の洞察》など黒緑なカードを複数取れたので、決め打ち気味にピックしていきます。緑の流れはそこまで良くないですが、他の色も微妙で色変えするほどでもないなーって感じ。
2パック目はレアもアンコモンも碌なカードがない残念パック。一番マシな《毒袋持ちのラガーク》からのスタートとなります。《轢殺》も取れた上、遅い順目で《砂丘の危険》が流れてきたので緑のポジションはそこまで悪くなさそうです。
3パック目も酷いパック。なんとデッキに入る可能性があるのが《勝利の刻》しかありません(しかも全然強くない)。落胆しながらピックしていると、、、我慢した甲斐がありました。2枚目の《轟雷のブルードワゴン》、そして待望の《スピン・アウト》が!
結果として、レアこそないもののそれなりにまとまっている黒緑になりました。0-3はしなそう、2-1できればいいな、というのが組み終えた際の感想。
R1 白緑 ×◯×
R2 失念 ◯◯
R3 赤緑t青白 ×◯◯
R1で卓唯一の顔見知りであり友人でもあるLiu Yuchenと対戦。酷いミスでマッチを落とすものの、残り2ラウンドはしっかりデッキが回ってくれてなんとか2-1と耐えました。
・スタンダード
R4 ドメインランプ ◯××
R5 ゴルガリ抹消者 ◯◯
R6 グルール果敢 ◯◯
R7 ジェスカイ眼魔 ××
R8 エスパーピクシー ◯◯
スタンダードは3-2。ツイてない負け方(ダブマリから土地13枚)もありつつ、ツイてる勝ち方(眼魔の1枚目の戦慄余示が眼魔×2連続)もあったためトータルではイーブンでしょうか。
トータル5-3で2日目へ。
◎Day2
・2ndドラフト
白黒との熱戦を制して3-0!トータル8-3で構築ラウンドへ。
デッキはレアアンコ満載の強白緑。時間なくて1枚組み間違えた(土地16にしてクリーチャー回収入れるべき)のは素直に反省。サムトにピックも構築時間も引っ張られ過ぎ。 pic.twitter.com/hYisRVBIAu
— Yoshihiko Ikawa (@WanderingOnes) February 22, 2025
昨日に続きレアが弱いパック。《轟雷のブルードワゴン》がありましたが、今回は隣に《歴戦の獣騎兵》があったため喜んでピック。その後《牙の守護者》→《栄光荒野のオオヤマネコ》→《峡谷の跳躍者》→《クラウドスパイアの隊長》と白のポジションをキープし白緑を志向します。白緑では結構強い《煌々野の滑空騎》も狙い通り一周してニヤリ。
2-1で《重厚な世界踏破車》、2-2で《威厳ある放漫トカゲ》と色の合ったレアを順々にピック!さらには2-4で最上級のカード:《アラクリアの魂、ラゴリン》が流れてきて白緑ポジションを確信します。その後2-5で《推進力、サムト》が来たためこちらも確保し、タッチ赤を模索します。
3-1は悩みに悩んだ末、デッキに合っている《ボヤージャーの滑空車》ではなくタッチ赤を見据えて《脱皮の世話人》。2手目は除去が足りなかったのでさらに赤い《衝突と炎上》と《推進力、サムト》に引っ張られたピック。ですが、このあと2枚目の《歴戦の獣騎兵》、2枚目の《クラウドスパイアの隊長》などが取れたため、結果的には純正2色で組むことになりました。
デッキ構築時に《推進力、サムト》を入れるかどうかギリギリまで悩んでしまったため、2色バージョンの細かい採択を吟味できず。
デッキにめちゃくちゃ合っている&欲しい《残骸からの再生》をサイドにしてしまったのが反省です。
R9 失念 ◯◯
R10 白青 ◯×◯
R11 白黒 ×◯◯
3-0!!
最後の2戦は相手のデッキも強かったですが、こちらのデッキもしっかり回ってくれたため押し切れました。
強い白のデッキに対抗する=肉太にするため、サイドに落とした2枚目の《アラクリアのジャガー》もサイドインして、実際に大活躍してくれました。
これで8-3!4-0や4-1でトップ8も見えるラインですが。。。
・スタンダード
R12 セレズニア檻 ×◯×
R13 エスパーピクシー ◯××
R14 ドメインランプ ◯◯
R15 エスパーピクシー ◯××
R16 マルドゥ記念碑 ×◯◯
比較的相性の良いエスパー戦を2回落としてしまう不運もあり、2-3。トータル10-6でフィニッシュしました。
チェインラインではあるので満足すべき成績ではあるのですが、良いラインからの連敗で少し落胆したというのもまた事実。うーん、悔しい。
同じ8-3ラインから4-0した原根、7-4ラインから5-0した行弘はお見事!!
不運とは書きましたが、負けたエスパーは2戦とも「サイドに《除霊用掃除機》+《鋼と油の夢》入り」と想定よりも少しジェスカイ眼魔に強い形になっており、サイド後にそこをしっかり引かれてしまった&《漸増爆弾》が間に合わない/《灯を追う者、チャンドラ》を全く引かなかったこともあり、負けたこと自体は納得です。やはりプロツアーは簡単に勝たせてくれませんね。
■終わりに
中村JAPAN🇯🇵 pic.twitter.com/4YCfSJsFJC
— Masahide Moriyama/鮭くれーぷ (@SakeIzumo) February 23, 2025
チームとしての成績は上記の通り。全員揃っての勝利とはなりませんでしたが、1名がトップ8(原根)、1名が世界選手権の権利(行弘)、3名がプロツアーチェインのライン(増門・井川・小原)、11名中10名が2日目進出、ということで上々の成績だったと言えるでしょう。
僕自身は昨年の好成績により今年全てのプロツアー&世界選手権の権利がすでにある状態ですが、来年のプロツアー参戦を考えると今回のポイントもとても嬉しいです。勝ちきれずともアベレージをしっかりと出して、次以降に繋げて行きたいと思います。
最後に一点だけ。ドラフトラウンドはプロツアーに復帰してから
PTサンダージャンクション:5-1(3-0,2-1)
モダンホライゾン3:2-1
世界選手権:4-2(2-1,2-1)
霊気走破:5-1(2-1,3-0)
と、かつてない程に絶好調です。
単純に上振れているのもありますが、僕自身がそこまで優れたリミテッダーでないのは自覚しているので、この好成績はひとえに普段一緒にドラフトを練習してくれている仲間たちのおかげです。
八十岡・中村・行弘・井上をはじめとしたPT権利保持者だけでなく、松本・石村といったトップリミテッダーたちがPTドラフト練習会に参加してくれており、間違いなく世界最高の環境で練習できていると常々感じています。いつも本当にありがとう!
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!
★おまけ★
今回のシカゴは-10℃を下回る日もあるぐらい寒かったのですが、そんな中活躍したのが防寒具。
手袋、耳当て、ネックウォーマー。どれもドン・キホーテで1000円前後で買えました。特に耳当てはニット帽と違って髪型も崩さず防寒できたのでかなり良かったです。今回のMVPかも。
来年以降、もしシカゴでプロツアーがあるようでしたら、これらの用意を強くオススメします!