MTG │ 大会レポート │井川良彦【ニューカペナ・チャンピオンシップ レポート】

皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。

先週末に開催されたニューカペナ・チャンピオンシップに参加しました。

今回のCSはこれまで一緒に調整してきたメンバーに加え、新たにTeam Uniteの森山真秀くん、そしてMOCSの権利を獲得した期待のホープ・komattamanこと小原壮一郎くんを加えて計13名での調整となりました。

(マジックザギャザリング公式より)

ということで今回の記事では、担当したスタンダードを中心にデッキ調整の話をしていきたいと思います。

 

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スタンダードの調整過程

■ニューカペナの実力やいかに

3名のチームをスタンダードとヒストリックの2チームに分けて調整スタート。今回は前回からメンバーの配置を変え、スタンダード担当になったのは井川・熊谷・原根・市川・加藤・森山・小原の7名。

新スタンダードということで、直近の大会結果を参考にしつつ、まずは色々なデッキを使って各自バリバリラダーを回していきます。

前評判が最も高かったカードといえば《敵対するもの、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis, the Adversary》。ジャンドミッドレンジ、ラクドスサクリファイス、ラクドスアグロなど様々なデッキで使ってみましたが、その評価は下がる一方。

最初は4枚で試してましたが徐々に減っていき、最終的には0-1枚程度で落ち着くように。後攻だと定着しづらく、「犠牲」なしではパワー不足という弱点が露呈してしまった格好です。

逆に評価を上げたのは間違いなくこのカード。密輸人の回転翼機/Smuggler’s Copter》+《光輝王の野心家/Luminarch Aspirant》のような性能を持っており、3ターン目にドロップしてそのまま暴れまわるのは勿論のこと、後半に引いても盤面に展開していたクリーチャーたちが殴ることで実質速攻のような打点と手札回転を行ってくれるバケモンクリーチャーであることに気付くのには時間がかかりませんでした。

最初こそ《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》《エシカの戦車/Esika’s Chariot》という2大パワーカードを擁するジャンドに軍配が上がっていましたが、調整を進めるにつれ評価は一変。《策謀の予見者、ラフィーン/Raffine, Scheming Seer》擁するエスパーミッドレンジこそが環境のトップメタであり、「エスパーに勝てるデッキを作る」or「最高の(もしくはベターな)エスパーを作る」が調整の目標となりました。

かなり早い段階で《浄化の野火/Cleansing Wildfire》を使った土地破壊デッキを小原くんが組んでくれていたものの、その後の大会でイゼットランデスコントロールが出てきてしまい頓挫。基本地形が増えると全然勝てません。

報復招来/Invoke Justice》から《ヴェロマカス・ロアホールド/Velomachus Lorehold》を釣り上げる、市川くんの意欲作もラダーで圧倒的な成績を残した後にチーム調整に持ち込まれたものの、適当なエスパーミッドレンジにボコボコにされる始末。ちょうど《常夜会一家の介入者/Obscura Interceptor》がエスパーにメイン採用されるようになったタイミングでもあり、下準備を経たのちに行う5マナソーサリーは明らかなカモでした。

セレズニアヒロイックもメインだけなら非常に強力でした。相手の除去の数よりこちらの脅威&呪禁スペルが多いため圧倒的に勝つゲームが多数。
しかし《強迫/Duress》《レイ・オヴ・エンフィーブルメント/Ray of Enfeeblement》といったカードが入るサイド後は言うに及ばず。。。ああ無情。

黄金架のドラゴン/Goldspan Dragon》デッキもいわゆるコンボ型・《暁冠の日向/Hinata, Dawn-Crowned》型とテストしましたが、こちらはラダーですらエスパーに対して有意な勝率を出すことができず早々に断念。

カラーリングの問題で《策謀の予見者、ラフィーン/Raffine, Scheming Seer》をうまく対処することができない上に、サイドボード後は相手のカウンター/手札破壊にいいようにやられてしまいました。

■そして残ったデッキたち

最終的にチーム内の候補として残ったのは以下のデッキたち。

王者エスパー。そう、結局このデッキに対して「明らかに有利」といえるデッキを作ることはできませんでした。
作れなかった以上は自分たちが使うしかない、ということで細かいチューニングの後にチームデッキの筆頭に。しかし「ミラーマッチで差をつけた」と自信を持って言えるほどでは全くないため、正直不安ではありました。最終的に13名中8名が選択。

メインはエスパーに対して有利ですが、サイドボード後は《エメリアのアルコン/Archon of Emeria》との戦いに四苦八苦することとなります。火力で対処しようとするとサイズを上げられ、エンチャントで対処しようとすると《消失の詩句/Vanishing Verse》が咎めてきます。

対戦相手がどれだけ意識してくるかで勝率は上下するものの、こちらも間違いなくトップメタの一角だろうと予想されました。プレイが非常に繊細で難しいこともデッキ選択しづらい要因になったのか、最終的には2名が選択。

鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》・《エシカの戦車/Esika’s Chariot》という強力かつ複数のパーマネントを展開できるカードで盤面を作りつつ、《電圧のうねり/Voltage Surge》《レイ・オヴ・エンフィーブルメント/Ray of Enfeeblement》といった軽量除去のおかげでエスパーに微有利程度。

しかしナヤルーンやその他雑多なデッキに対しては脆く、総合力でエスパーに劣るという判断が大多数でした。最終的にはジャンドを調整し続けた1名のみが選択。

上記3つが想定のトップメタなのに対して、こちらはローグデッキ。コントロールの顔をしたコンボデッキであり、最速で5ターン目にパワー40以上のトークンを投げつけることができます。
エスパーとの直接対決は有利とは言えないものの、その他のデッキに対しての優位性があり、差を付けられなかったエスパーよりは、とチームデッキの1つとして生き残りました。最終的に2名が選択。

★使用したエスパーミッドレンジについて

井川 良彦「エスパーミッドレンジ」 ニューカペナチャンピオンシップ
デッキリスト
1:《沼/Swamp
1:《平地/Plains
4:《陽光昇りの小道/Brightclimb Pathway
4:《清水の小道/Clearwater Pathway
4:《連門の小道/Hengegate Pathway
3:《さびれた浜/Deserted Beach
2:《難破船の湿地/Shipwreck Marsh
1:《砕かれた聖域/Shattered Sanctum
1:《目玉の暴君の住処/Hive of the Eye Tyrant
4:《ラフィーンの塔/Raffine’s Tower
25 Lands


3:《光輝王の野心家/Luminarch Aspirant
4:《しつこい負け犬/Tenacious Underdog
1:《敬虔な新米、デニック/Dennick, Pious Apprentice
4:《策謀の予見者、ラフィーン/Raffine, Scheming Seer
2:《軍団の天使/Legion Angel
14 creatures

2:《冥府の掌握/Infernal Grasp
1:《かき消し/Make Disappear
3:《消失の詩句/Vanishing Verse
1:《ジュワー島の撹乱/Jwari Disruption
4:《婚礼の発表/Wedding Announcement
2:《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre
2:《漆月魁渡/Kaito Shizuki
3:《放浪皇/The Wandering Emperor
2:《蜘蛛の女王、ロルス/Lolth, Spider Queen
1:《エメリアの呼び声/Emeria’s Call
21 other spells


3:《レイ・オヴ・エンフィーブルメント/Ray of Enfeeblement
1:《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke
2:《否認/Negate
2:《軍団の天使/Legion Angel
1:《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre
3:《エメリアのアルコン/Archon of Emeria
2:《聖域の番人/Sanctuary Warden
1:《消失の詩句/Vanishing Verse
15 sideboard cards

基本的には一般的なリストと大きな違いはありませんので、細かい部分のみ解説していきます。

しつこい負け犬/Tenacious Underdog》の4枚目と枠を争ったカード。結構な時間テストした結果、複数枚《しつこい負け犬/Tenacious Underdog》を引いて嵩張るケースが散見されたので1枚こちらに差し替わりました。

ダメージレースに強い点、《消失の詩句/Vanishing Verse》されない点はもちろんのこと、「押されている盤面だったり《軍団の天使/Legion Angel》/PW合戦をしている時に「降霊」で盤面に飛行クリーチャーを出せるのが特に強力です。

常夜会一家の介入者/Obscura Interceptor》は構えるのが重く、優勢な場面でしか有効に働かないためチーム内で試した全員が口を揃えてNO。そこで「2マナアクション」「優勢時の蓋」「劣勢時での2アクション」といった要素を兼ねた2マナカウンターを採用することとなりました。

かき消し/Make Disappear》のほうが「犠牲」もしやすいため後半でも腐りづらく強力であり2枚採用の予定だったのですが、27枚目の土地も欲しかったため最終的に1枚《ジュワー島の撹乱/Jwari Disruption》になりました。

一般的にはメイン1:サイド3のバランスが多いですが、僕たちは2:2のバランスに変更。

軍団の天使/Legion Angel》をお互いが採用している場合、このカードの有無がゲームの勝敗を分けることは少なくありません。そこで2:2にすることにより「自分だけ《軍団の天使/Legion Angel》」になる確率を上げるとともに、「相手だけ《軍団の天使/Legion Angel》」の確率を下げることにしました。

ミラー、ジャンド、そしてその他諸々の雑多なデッキ相手のフィニッシャーとして活躍する1枚。

試す前は「《消失の詩句/Vanishing Verse》されて弱そうだな」という印象でしたが、実際に試してみると他のカード(《婚礼の発表/Wedding Announcement》や《放浪皇/The Wandering Emperor》)に《消失の詩句/Vanishing Verse》をプレイしないと盤面が押されるため手札に余るケースは少なく、アドバンテージを稼ぎながら盤面を圧倒できる優秀なクリーチャーであることがわかりました。

◎本戦の結果

R1 ジェスカイコンボ ××
R2 ジェスカイコンボ ×○○
R3 エスパーミッドレンジ ××
R8 ジェスカイコンボ ××
R9 ナヤルーン ○○
R10 ジャンドトレジャー ××
R11 白単アグロ ×○×

2-5。見ての通り2タテ負けが多いのですが、このほとんどがダブルマリガンだったりスクリュー/フラッドだったりでゲームにならないことが多く、10分程度で瞬殺されたマッチばかりで正直不完全燃焼でした。とはいえ運が悪かっただけではなく、最終戦ではティルトに陥った上に致命的なイージーミスでマッチを落としたため実力的にも難あり。情けない限りです。

ただし僕だけでなくチーム全体でも19-25=勝率43.2%と非常に低い数字となっています。森山くんが5-2したおかげで何とかギリギリ体裁を保ったというところでしょうか。

今回の敗因は間違いなく黄金架のドラゴン/Goldspan Dragon》デッキへの意識の低さです。
チーム内で良い形が組めなかった、ラダーでもほとんど当たらなかったなど《黄金架のドラゴン/Goldspan Dragon》デッキの台頭は予想しづらかったですが、強豪チームが持ち込めばそれだけで一大勢力となるのがチャンピオンシップ。
自分たちが到達できない領域ではあったものの、もう少し意識をすれば《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》《勢団の銀行破り/Reckoner Bankbuster》といった構えるためのカードの増量により勝率を上げることができたでしょう。完全敗北。

★ヒストリックの調整過程

ヒストリック担当はまとめ役の佐藤を筆頭に高橋・中村・小泉・河野・矢田の6名。
敵対するもの、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis, the Adversary》のような新カードこそ試したものの、既存のフードとイゼットフェニックスに弱いカードであったため早々に断念。

最終的には既存のアーキタイプをブラッシュアップすることに力を入れ、ゴルガリフード(9名)とアゾリウスオーラ(4名)がチームデッキとして選ばれました。

★使用したゴルガリフードについて

井川 良彦「ゴルガリフード( 夢の巣のルールス)」 ニューカペナチャンピオンシップ
デッキリスト
4:《草むした墓/Overgrown Tomb
4:《花盛りの湿地/Blooming Marsh
4:《闇孔の小道/Darkbore Pathway
1:《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway
1:《血の墓所/Blood Crypt
2:《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway
1:《ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower
2:《目玉の暴君の住処/Hive of the Eye Tyrant
1:《見捨てられたぬかるみ、竹沼/Takenuma, Abandoned Mire
1:《耐え抜くもの、母聖樹/Boseiju, Who Endures
1:《カルニの庭/Khalni Garden
22 Lands


4:《大釜の使い魔/Cauldron Familiar
4:《金のガチョウ/Gilded Goose
4:《貪欲なるリス/Ravenous Squirrel
12 creatures

4:《思考囲い/Thoughtseize
4:《致命的な一押し/Fatal Push
1:《骨の破片/Bone Shards
4:《魔女のかまど/Witch’s Oven
2:《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern
4:《パンくずの道標/Trail of Crumbs
4:《命取りの論争/Deadly Dispute
3:《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre
26 other spells


1:《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream-Den
2:《辺境地の罠外し/Outland Liberator
3:《選別の儀式/Culling Ritual
2:《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse
2:《定命の槍/Mortality Spear
3:《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Outland Liberator
2:《探索する獣/Culling Ritual
15 sideboard cards

ゴルガリフードを使う上で絶対に避けられないのがミラーマッチ。そのミラーマッチを「サイドから《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》を採用する」という荒業で見事解決したのが今回のリストの一番の特徴です。

最近はミラーやオーラ対策である《選別の儀式/Culling Ritual》にサイドボードの枠が割かれており、《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》に触れるカードはメインサイド合わせても2-3枚しか採用されていないのがゴルガリフードの現状。その隙を突いた奇襲的な作戦ですが、これが非常に効果的でした。

◎本戦の結果

R4 アゾリウスオーラ ○○
R5 イゼットフェニックス ○○
R6 ゴルガリフード ×○○
R7 ゴルガリフード ××
R12 ゴルガリフード ○○
R13 イゼットフェニックス ○○
R14 アゾリウス親和 ××
R15 アゾリウスオーラ ×○○

6-2。トータル8-7で次回プロツアーの権利を逃すことに。しかしコレはスタンダードの大敗が原因であり、ヒストリックの成績としてはとても満足しています。相手が大フラッドを起こすなど幸運もありましたが、トップメタとしか当たらなかったおかげで想定内のことしか起こらず、盤面や時間が不利な場でも冷静に対処できました。前々回のチャンピオンシップで使っていたという経験も大きいでしょう。

チーム全体でも39-25=勝率60.9%と好成績!ヒストリックについては今年の3大会とも非常に良いチーム成績を残すことができており、チームメイトたちに改めて感謝です。

今回使ったゴルガリフードについて一点だけ感想を。デッキ自体は非常に強力だったものの、個人的に疑問を覚えたのが4枚とフル投入された《思考囲い/Thoughtseize》です。

昔のジャンドフードと異なり、今のゴルガリフードはアドバンテージと除去でゲームレンジをできるだけ長く引き伸ばすコントロールデッキです。そうなってくると後半に引く《思考囲い/Thoughtseize》はほぼカード1枚損であり、初手以外で引きたいケースは非常に限られてきます。

このスロットはメイン2枚程度に抑えて、《定命の槍/Mortality Spear》や《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre》の4枚目といった除去カードに充てた方がデッキの方向性とマッチし、より安定した成績を収められるのではないかと感じました。

定命の槍/Mortality Spear》がなく《耐え抜くもの、母聖樹/Boseiju, Who Endures》も減っている今回のリストだと相手の置物に触るカードが限られており、その結果ミラーマッチとアゾリウス親和に対する勝率が少し下がっていると感じたので、次があればそういった点を改善しようかなと考えています。

■終わりに

前回に引き続き今回もチームは全体的に成績が振るわない大会となりました。ですがそんな中でも見事次回プロツアーの権利を獲得した森山くんと矢田くん、そして世界選手権の権利を獲得した小泉くんは本当にめでたい!

今週末の日本選手権には喉痛が長引いている関係で出場を見送るので、僕がMPLとして参加する大型の公式大会は今回が最後となります。今後もBMOや神決定戦といった大会には変わらず参加しますが、この2年間ほど力を入れて大会に臨むことはきっとないでしょう。とても楽しかったです。

それでは今回の記事はここまでです。また次回の記事でお会いしましょう!


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