MTG │ 環境解説 │ 井川良彦【ヒストリックのメタゲームと注目デッキ】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
今週末はカルドハイムチャンピオンシップが開催されます!スタンダード・ヒストリックのダブルフォーマットで競われるこの大会。誰が、どんなデッキが勝つか。個人的には普段のリーグウィークエンドに比べると「プレッシャー少なめ、楽しみな気持ち多め」で迎えられそうです。メンタル安定、プレイも安定で行きたいところ。
さて今回の記事では、観戦勢に向けて、ヒストリックのメタゲームと注目デッキを簡単に解説していきたいと思います。
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■カルドハイムチャンピオンシップのヒストリック・メタゲーム
今夜の開戦に先駆けまして、公式記事でメタゲームブレイクダウンが公開されています。
メタゲームブレイクダウン
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》禁止前からトップメタだった、《大釜の使い魔》《波乱の悪魔》《魔女のかまど》有するジャンドカラーが戦前の予想通りトップメタ。
フード・カンパニーという2種類のデッキ合わせての数字ではありますが、実に30%オーバーと、その強さに相応しい占有率を誇っています。
2番手に付けたのはMRLグジェゴジュ・コワルスキ選手によるビルディングも記憶に新しいオルゾフオーラ。
2種のキークリーチャーによる爆発力と、見た目以上の粘り強さにより、細かい除去の少ないクリーチャーデッキや、大振りな全体除去に頼ったコントロールデッキを圧倒します。
カウンター・全体除去・プレインズウォーカーで相手を制圧していく、どの環境にも存在すると言っても過言ではない正統派・青白コントロールが3番手。
カルドハイムで各種「予顕」カードを手に入れ、一段階デッキが強化されています。
4番手には1月のリーグウィークエンドでの活躍により一気にヒストリックの上位デッキとして定着したグルールアグロが。
特に新しいカードは採用されていませんが、これまで《自然の怒りのタイタン、ウーロ》およびスゥルタイを意識していたラインナップだったのが、メタに合わせて違うクリーチャーに変更されていることが予想されます。
その下にはアブザンミッドレンジ、スゥルタイ根本原理、ゴブリン、バントミッドレンジと続きます。
一時期はトップメタの一角として君臨していたゴブリンがここまで数を減らしているのは少し寂しく映りますが、やはり《波乱の悪魔》有するジャンドへの不利が覆せないのが致命的なのでしょう。
実際にチャンピオンシップで使用されるデッキはまだ公開されていませんので、先週末に開催された「$5K Strixhaven Championship Qualifier」の上位リストを元に、次項より簡単に解説していきたいと思います。
■ジャンドフード
Daniel Toledo ジャンドフード $5K Strixhaven Championship Qualifier 優勝 |
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デッキリスト | |
4:《草むした墓/Overgrown Tomb》 4:《闇孔の小道/Darkbore Pathway》 3:《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》 3:《寓話の小道/Fabled Passage》 2:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 2:《血の墓所/Blood Crypt》 2:《沼/Swamp》 2:《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》 1:《ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower》 1:《山/Mountain》 1:《森/Forest》 25 lands
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4:《魔女のかまど/Witch’s Oven》 4:《パンくずの道標/Trail of Crumbs》 3:《古き神々への拘束/Binding the Old Gods》 4:《初子さらい/Claim the Firstborn》 2:《思考囲い/Thoughtseize》 17 other spells 2:《思考囲い/Thoughtseize》 |
2019年冬から2020年夏頃までスタンダードで一世を風靡した、「食物」エンジンをデッキの主軸にしたミッドレンジデッキ。
《大釜の使い魔》《波乱の悪魔》《魔女のかまど》というサクリファイスパッケージで盤面を制圧しつつ、《パンくずの道標》でじわじわとアドバンテージ差を付けていき、最終的には《フェイに呪われた王、コルヴォルド》でフィニッシュする構成となっています。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》存命時は「攻めること」が重要だったので、後述する《集合した中隊》型のジャンドデッキ(ジャンドカンパニー)が主流でしたが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が禁止になったことにより、ジャンドカンパニーに強いこのフード型に再度注目が集まる形となりました。
メインボードでは対処しづらいアドバンテージ源である《パンくずの道標》、そして《フェイに呪われた王、コルヴォルド》がジャンドカラーのミラーマッチにおいて輝きます。
カルドハイムから採用されている新戦力がこちら。空いていた4マナ域の万能除去として活躍しつつ、次のターンには「第二章」でマナを加速しながら《フェイに呪われた王、コルヴォルド》のエサになるという最高の橋渡し役として機能します。
またスタンダードのスゥルタイ根本原理ではほぼ空気だった「第三章」もこのデッキでは活躍します。なんと戦場にいる《波乱の悪魔》に接死を付けることができるのです!
このように「第一章」から「第三章」までが噛みあっており、かつパーマネントなので《パンくずの道標》で探せると、デッキにフィットしている《古き神々への拘束》を手に入れたこと。
そしてメタゲームのポジション的にジャンドカラー対決であるジャンドカンパニーに相性が良いことなどにより、先週末の「$5K Strixhaven Championship Qualifier」ではダントツのトップメタでありつつも見事優勝。
そして今夜から始まるカルドハイムチャンピオンシップでも一番人気のデッキとなっています。今後もヒストリックの顔として活躍していくこと間違いなし。
■ジャンドカンパニー
Connor Mullaly ジャンドカンパニー $5K Strixhaven Championship Qualifier トップ4 |
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デッキリスト | |
4:《血の墓所/Blood Crypt》 4:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 4:《草むした墓/Overgrown Tomb》 4:《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》 3:《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》 3:《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》 1:《ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower》 23 lands
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4:《魔女のかまど/Witch’s Oven》 4:《初子さらい/Claim the Firstborn》 4:《集合した中隊/Collected Company》 12 other spells 3:《思考囲い/Thoughtseize》 |
こちらは9月の2020ミシックインビテーショナルからずっとヒストリックの第一線を走っているデッキです。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》という最大のライバルが消えたことにより、そのままトップメタに君臨するかと予想されていましたが、同じカラーリングであり構造的に少し相性の悪いジャンドフードが台頭してきたことにより、そのシェアは当初の予想よりもかなり少ないものとなりました。
《波乱の悪魔》を使いたいプレイヤーの大半がジャンドフードに流れたものと予想されます。
息の長いデッキであり、構成もほぼ変化がないのでここではデッキリストの紹介に留めておきます。詳しくは高橋さんの過去記事をどうぞ。
■オルゾフオーラ
Kyle Boggemes オルゾフオーラ $5K Strixhaven Championship Qualifier 7-2 |
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デッキリスト | |
1:《沼/Swamp》 4:《平地/Plains》 4:《陽光昇りの小道/Brightclimb Pathway》 4:《秘密の中庭/Concealed Courtyard》 2:《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》 4:《神無き祭殿/Godless Shrine》 19 lands
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4:《ケイヤ式幽体化/Kaya’s Ghostform》 1:《セジーリの防護/Sejiri Shelter》 4:《歩哨の目/Sentinel’s Eyes》 2:《結束のカルトーシュ/Cartouche of Solidarity》 4:《思考囲い/Thoughtseize》 4:《モーギスの好意/Mogis’s Favor》 2:《ぬかるみの捕縛/Mire’s Grasp》 1:《アガディームの覚醒/Agadeem’s Awakening》 4:《きらきらするすべて/All That Glitters》 3:《天使の贈り物/Angelic Gift》 29 other spells 2:《死の重み/Dead Weight》 |
ジャンプスタートで《コーの精霊の踊り手》が採録されて以来、一定以上のシェアを維持してきたオーラデッキ。
最近では1月にグジェゴジュ選手がオルゾフオーラをビルディングして以来、黒が入ったこの形が主流になっています。
黒が入っている最大のメリットは、ヒストリック最高の妨害である《思考囲い》、そして除去耐性を与える《ケイヤ式幽体化》が使える点です。
特に後者はマジックの歴史においてもかなり珍しいカードであり、破壊だけでなく追放にすら耐性を与えることができるため、《不可解な終焉》《スカイクレイブの亡霊》といった白い追放除去もケアしながら盤面を作っていくことができます。
従来は「オールイン」一辺倒だったオーラデッキでしたが、これらの軽いアクションにより耐性を付けることができるようになったことが、人気上昇の、ひいてはデッキパワー向上の理由です。
■アゾリウスコントロール
12月に開催されたゼンディカーの夜明けチャンピオンシップで優勝したアーキタイプでもあり、根強い人気を誇るコントロールデッキ。《ドミナリアの英雄、テフェリー》でカードを引きつつカウンターを構えている時の全能感は、他のデッキでは中々味わうことはできません。
《思考囲い》からの《世界を目覚めさせる者、ニッサ》《ハイドロイド混成体》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》という悪夢のようなビッグアクションをしてくるスゥルタイが弱体化したことにより、相対的にポジションが良くなっています。
アゾリウスコントロールがカルドハイムから得た新戦力はこの3種。
《思考囲い》が跳梁跋扈しているヒストリックにおいて「予顕」はスタンダード以上に貴重です。《襲来の予測》は予顕しておくことにより、手札破壊を避けて確実に相手のマストカウンターを打ち消すことができますし、《ドゥームスカール》はエルフやグルールの超ブン回りに対する最高のカウンターとして、3ターン目《神の怒り》を実現してくれます。
■グルールアグロ
Lukas Schwendinger グルールアグロ $5K Strixhaven Championship Qualifier 準優勝 |
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デッキリスト | |
5:《森/Forest》 4:《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》 4:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 3:《山/Mountain》 2:《ハシェプのオアシス/Hashep Oasis》 2:《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》 20 lands
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3:《エンバレスの宝剣/Embercleave》 2:《髑髏砕きの一撃/Shatterskull Smashing》 3:《集合した中隊/Collected Company》 8 other spells 3:《マグマのしぶき/Magma Spray》 |
ジャンドカンパニー同様、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》環境でのトップメタであり生き残り組。
《ラノワールのエルフ》からの高速展開、《炎樹族の使者》による爆発力、そしてスタンダード同様、必殺の《エンバレスの宝剣》という見た目通りの純粋なアグロデッキです。
カルドハイムヒストリックアンソロジー4からの新しいカードは特に無いので、ここでは評価が上がったカードをピックアップ。
《通電の喧嘩屋》はベースが2/3/2、殴るときは4/3トランプルと非常にスタッツが優秀なクリーチャーですが、タフネス2であるがゆえに「《炎樹族の使者》と一緒に《肉儀場の叫び》で流れてしまう」という悲しみを背負っており、そのためスゥルタイ全盛期では《ザル=ターのゴブリン》が優先される傾向にありました。
スゥルタイが減り《肉儀場の叫び》を見なくなった今、再評価されつつある1枚です。
■スゥルタイ根本原理
メタゲーム5番手のデッキからはこのデッキをご紹介。あれ?スタンダードのデッキかな?と思った方、ご安心ください。ヒストリックです。
スタンダードでトップメタだったデッキは他の環境でも使われるケースが多々ありますが(ティムール再生、ジャンドフードなどが分かりやすいですね)、その例に漏れずスゥルタイ根本原理はヒストリックでも活躍しています。
今回のカルドハイムチャンピオンシップではスタンダード・ヒストリックともにこのデッキをプレイしている、なんてプレイヤーも数人はいることでしょう。
スタンダードでは2マナ域のマナ加速が《狼柳の安息所》しかありませんが、ヒストリックでは《探検》を使うことができるため、安定した回りを期待できます
。リストによっては《成長のらせん》も採用されており、どの2マナ加速がベストかは検討の余地がありそうです。
《戦慄衆の将軍、リリアナ》は単体での制圧力が高いため、《出現の根本原理》の前のビッグアクションとしても優秀ですし、《飢餓の声、ヴォリンクレックス》と合わせると即死コンボになるため、《出現の根本原理》のサーチ先としても優秀な選択肢になります。
■終わりに
今夜から始まるカルドハイムチャンピオンシップ、もちろん僕も参加します!今回は総勢10名と大人数のチームで調整しましたので、チームの誰かはトップ8入賞、なんなら優勝と明確な結果を残したいですね。
願わくばそれが自分であって欲しいですが、自分以外のメンバーが勝っても喜べるのがチーム調整の楽しさでありメリットかなとも思います。
今回のチームメンバー。楽しく真面目にやりました。(画像はマジック日本公式サイトとTeam UNITE公式サイトより)
観戦、応援、どうぞよろしくお願いします!
来週はチャンピオンシップのレポートをお届けします。それではまた次回の記事で!