MTG │ デッキ解説 │ 井川良彦【ティムール再生】

皆さんこんにちは。Rush Prosの井川(@WanderingOnes)です。

既にご存知の方も多いかもしれませんが、先週末開催されたRedBull Untapped International QualifierⅡというオンライン大会に参加し、幸運にも優勝することができました!!!

優勝者インタビューでも話したのですが、正直に申し上げますとPTファイナルの参加権利を持ってない僕としてはスタンダードをやる理由があまりなく、それほど熱意をもってこの大会に臨んだ訳ではありませんでした。

デッキリストについても、メインボード60枚は前の週に成績を残していたリストのコピーです。

ですが、これまで培ってきたティムール再生の経験/スキルが発揮できたこと。そして何よりこれまで縁がなかった「優勝」という最高の結果で終われたことを非常に嬉しく思います。 (これまでグランプリ準優勝2回、ミシックチャンピオンシップ準優勝1回と、プレミアイベントはすべて決勝で負けていました 涙)

応援いただいた皆さん、また祝辞をいただいた皆さん、ありがとうございました!

ということで今回の記事は、大会で使用したティムール再生の解説です。
結果を伴ったことでより説得力が増したと思いますので、ご一読いただければ幸いです。

※ラッシュメディア記事内紹介のカードは
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■環境概説:前環境の王・ティムール。なのにガードが下がってる???

6月に行われたプレイヤーツアー(PT)では、4回のPTのうち3回のPTを優勝するなど、トップメタとして君臨していたティムール再生。

環境末期にはバントランプがかなりメタって来たこともあり勝率を下げていましたが、それでも間違いなく最強デッキでした。

そして7月、基本セット2021が発売。

漁る軟泥/Scavenging Ooze》、《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》《耕作/Cultivate》といった強力な再録カード、そして新規収録のカードとしては《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル/Jolrael, Mwonvuli Recluse》が注目を集めました。

これらのカードはこれまでアクティブなカードが少なかったバントランプやスゥルタイランプなどに採用され、市民権を得ていきます。

これまでティムール再生を意識して採用していたであろう《霊気の疾風/Aether Gust》《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》《サメ台風/Shark Typhoon》といったカードたちが軒並み枚数を減らし、自分のアクションを優先したカード採択になっていったのです。

するとどうなったか。

そう、「他のデッキが新カードを採用したおかげでティムール再生へのガードが下がり、結果的にティムール再生のポジションが良くなった」という今の状況が発生したのです!

前環境の最強デッキであるにも関わらず、他のデッキがティムール再生へのガードを下げた結果、先週末のRedBull Untappedではティムール再生が1.2フィニッシュ。さらには上位デッキの中でも最高勝率を叩き出すという形でその地力の高さを証明することとなりました。ティムール再生なめたらアカン。

■今回使ったリストについて

今回使ったデッキリストは、Mattia Rizziというイタリアの強豪が前週にStandard Challengeで優勝していたリストをベースに微調整したものです。

メインについては個人的に必要な要素(《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire》、《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》、カウンターの枚数など)をすべて満たしていたので文句がなくそのまま使用し、サイドだけ微調整しました。

井川 良彦
RedBull Untapped International QualifierⅡ 優勝

3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath
1 《厚かましい借り手/Brazen Borrower
2 《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher
4 《成長のらせん/Growth Spiral
2 《霊気の疾風/Aether Gust
2 《否認/Negate
2 《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire
4 《神秘の論争/Mystical Dispute
4 《発展+発破/Expansion+Explosion
4 《荒野の再生/Wilderness Reclamation
3 《サメ台風/Shark Typhoon
2 《島/Island
2 《森/Forest
1 《山/Mountain
4 《寓話の小道/Fabled Passage
4 《繁殖池/Breeding Pool
3 《蒸気孔/Steam Vents
3 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground
4 《ケトリアのトライオーム/Ketria Triome
3 《ヴァントレス城/Castle Vantress
1 《神秘の神殿/Temple of Mystery
2 《爆発域/Blast Zone

4 《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant
2 《霊気の疾風/Aether Gust
2 《否認/Negate
2 《終局の始まり/Commence the Endgame
1 《厚かましい借り手/Brazen Borrower
1 《長老ガーガロス/Elder Gargaroth
1 《ナーセットの逆転/Narset’s Reversal
1 《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire
1 《サメ台風/Shark Typhoon

ということで毎度おなじみですが、各カードについてポイントだけ解説しています。

選択/Opt

6月の記事でも《選択/Opt》の有無について軽く触れましたが、今回のRedBull Untappedではトップ8のティムール再生は全員《選択/Opt》0枚でした。この理由について自分で少し考えてみたところ、

(1)《漁る軟泥/Scavenging Ooze》の登場により、《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》の信頼性が下がった。そのため早いターンに《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》を脱出させるという《選択/Opt》の価値も下がった。

(2)緑単・黒単といった高速アグロの登場により、選択/Opt》の1マナ・打つためのギルランアンタップイン(=2点)が重くのしかかるようになった。

この2点が挙げられるのではないかという結論になりました。

ミラーマッチにおいても、メインはそれなりに有用ではあるもののサイド後はそこまで強くない(《荒野の再生/Wilderness Reclamation》への依存度が下がるため中身の濃さの方が重要度が高い)と考えているので、今後は《選択/Opt》が少ないリストが増えると思います。

夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher

前環境ではメイン《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》については否定派でしたが、今の環境ではメインから肯定派です。

理由の1つはアグロの増加です。

緑単、黒単、ラクドスサクリファイスといったアグロが増えつつあったため、1枚でイージーウィンができる《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》はティムール再生というデッキにとって追加のフィニッシャーとなります。

また、デッキ公開制の大会であれば「4マナ立ってる=《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》を構えている」という動きにも見えるため、相手が《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》をケアして殴って来ず、結果としてライフを得する展開なども多々あります。

緑単が《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》対策にもなる《漁る軟泥/Scavenging Ooze》を採用しているため、《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》以外にアグロに強いカードが欲しいというのもあります。これは後述する《長老ガーガロス/Elder Gargaroth》にも共通して言えることです。

もう1つの理由はムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル/Jolrael, Mwonvuli Recluse》の増加とメイン《霊気の疾風/Aether Gust》の減少です。

バントやスゥルタイから出てくる《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル/Jolrael, Mwonvuli Recluse》はティムール再生に対して強いカードという訳ではないですが、放置してるとかなりのダメージを食らってしまいます。

ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル/Jolrael, Mwonvuli Recluse》を採用している=比較的メインでマナを使って行動してくるので、そこを《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》で咎めつつ盤面を作るのが相手への対策として一番良いアクションとなります。

前述した通り《霊気の疾風/Aether Gust》が減っているのでこちらの《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》も咎められづらく、盤面を制圧しつつ相手へのプレッシャーをかけることができるのです。

前環境ではこのスロットには《中和/Neutralize》のような確定カウンターを採用していたのですが、アグロが増えたこと、ミッドレンジも《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル/Jolrael, Mwonvuli Recluse》という軽い脅威を展開してくること、これらの理由から《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》のメイン採用が肯定されるようになったと考えています。

砕骨の巨人/Bonecrusher Giant

軽量除去の中で最も性能が高い1枚。特に緑単に対しては3/4/3のボディが《探索する獣/Questing Beast》《変容するケラトプス/Shifting Ceratops》《石とぐろの海蛇/Stonecoil Serpent》といった処理しづらいクリーチャーと相打ちしてくれるので非常に優秀です。

2・3マナのアクションを担保しつつ4マナ以上を止めてくれるのはコイツだけ。夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》を採用している場合は《嵐の怒り/Storm’s Wrath》を使用しづらいので、その分このカードに頼る部分も大きくなっています。

長老ガーガロス/Elder Gargaroth

これは再生マスターであるHareruya Hopesの増田くんが採用していたのをTwitterで見る→試してみたら強い!という流れで採用したカード。

漁る軟泥/Scavenging Ooze》を無視し、《初子さらい/Claim the Firstborn》される《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》ではダメだった部分を見事に補ってくれる、アグロキラーの1枚です。今後アグロが増えるようであれば2枚目も視野に入ります。

マスターに感謝!

《ナーセットの逆転/Narset’s Reversal》

耕作/Cultivate》を得てデッキの安定性が大幅に向上したスゥルタイランプを意識した1枚。相手の《戦争の犠牲/Casualties of War》《思考のひずみ/Thought Distortion》を跳ね返したときの快感たるや他のカードの比ではありません。

スゥルタイ以外では、デッキ公開制で、相手のデッキに《終局の始まり/Commence the Endgame》が2枚以上入っている場合サイドインしています。ミラーマッチですね。

相手から先に《終局の始まり/Commence the Endgame》をプレイされるとマウントを取られやすいので、そこを跳ね返して逆マウントを取れるカードです。

また、《否認/Negate》を絡めたカウンター合戦では、自分の《否認/Negate》などに対して《ナーセットの逆転/Narset’s Reversal》をプレイすることにより、そのカウンター合戦に勝利した際には実質《否認/Negate》1枚分得することができます。

自分のスペルに《ナーセットの逆転/Narset’s Reversal》を打つ、というのはパッと思いつき辛いので覚えておくと得するかもしれません。

■ティムール再生のミラーマッチについて

サメ台風/Shark Typhoon》《終局の始まり/Commence the Endgame》されるターンを見極めろ!

カウンターされずにインスタントタイミングで脅威を展開できる《サメ台風/Shark Typhoon》と《終局の始まり/Commence the Endgame》がゲームのカギを握ることはご存知の方も多いでしょう。

ここで大事になるのが「いかに《サメ台風/Shark Typhoon》《終局の始まり/Commence the Endgame》を楽に打たせないか」。

例えば、土地6枚をアンタップ状態でターンエンドしてきた場合はほぼどちらかを構えていると考えられます。

この際にもし自分の手札に《厚かましい借り手/Brazen Borrower》や《サメ台風/Shark Typhoon》といったカードがないようであれば、このままゲームが進むと圧倒的に不利な盤面でゲームが続いていくこととなります。

そのため、その状況を防ぐためには相手のエンドに《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》をプレイしたり、自分のターンにあえて《荒野の再生/Wilderness Reclamation》を仕掛けてみたりといった形で相手に「マナを使って対処する(プランを後回しにする) or このターンはプラン通りに《サメ台風/Shark Typhoon》/《終局の始まり/Commence the Endgame》をプレイする」という2択を迫るプレイが時には必要となります。

厚かましい借り手/Brazen Borrower》で不利な盤面を返せ!

また、片方だけ土地が詰まったり《成長のらせん/Growth Spiral》を引いた場合、その生まれたマナ差からの《サメ台風/Shark Typhoon》《終局の始まり/Commence the Endgame》はそのままゲームの主導権を握るアクションとなります。

そのため、このマウントを返すためにも《厚かましい借り手/Brazen Borrower》は必ずデッキに必要となります。

もし片方だけ《厚かましい借り手/Brazen Borrower》が入ってない場合、相手の《サメ台風/Shark Typhoon》《終局の始まり/Commence the Endgame》に対しては同じかそれ以上のサイズのトークンを出すというアクションが必要となりますが、それは既に後手を踏んでいる以上難しく、最悪の場合はそのトークンに対して相手の《厚かましい借り手/Brazen Borrower》が飛んできて簡単にゲームが決着してしまいます。

「土地が止まったから相手の《サメ台風/Shark Typhoon》がキツくて負けた」
「相手だけ《終局の始まり/Commence the Endgame》を引いたから負けた」

こういった敗因を少しでも減らすためにも、《厚かましい借り手/Brazen Borrower》は最低2枚、ミラーを強く意識するならば3枚は用意することをオススメします。

その他すべてのポイントを記事に書くのは紙面の都合もあり難しいのですが、昨日の配信にて詳細な解説をしましたので、もし気になる方はぜひこちらのアーカイブをご覧いただければと思います。

3時間強と長い配信ではありますが、僕が持っているティムール再生の知識についてほぼすべてを語っています。

https://www.twitch.tv/videos/680651843

■最後に。今週末、RedBull Untappedに参加する方へ

先週末、僕は「6-0まで勝ち上がった後にガチって負け→ガチって勝ち」という形で初日を7-1・スイス4位で終えました。

最終戦で負ければ6-2となり2日目に残れない可能性も高かったですが、それでもガチったのは「1日目のスイスラウンド終了時点での順位が高いプレイヤーが、2日目の先攻/後攻を選ぶ権利を得る」という大会独自のルールがあったからです。

平凡な成績で2日目に行っても、どこかの段階で後攻を強制されるために苦戦を強いられることが必至であり、2日目に半端な成績で終えては意味がありません。

最低でもマネーフィニッシュ=8位以上になるためには3勝が必要です。さらにいえばこのトーナメントは優勝に重きが置かれた「All or Nothing」形式のトーナメントです。

特にスタンダードは先攻であることが重要となりますので、なるべく高い順位で2日目に進出することが非常に大事であるということを理解しましょう。

先週末の結果だけ見ても、僕を含めたトップ4が「スイスラウンド2位・3位・4位・33位」であったことがこの証左と言えるでしょう。

もしあなたがこのトーナメントを優勝したいのであれば、僕から言えることはただ一つ。「ガチれ!!!!!」

ということで、今回の記事はここまで。

6月の記事に続きティムール再生について書きましたが、使う側/使われる側のどちらであっても、少しでも参考になれば幸いです。

今週末参加する方の中で、RedBull Untapped本戦に共に参加できる方が現れることを期待しています。みなさん頑張ってください!!

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

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