MTG │ メタゲーム解説 │ 井川良彦【スタンダード注目デッキ紹介】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川(@WanderingOnes)です。
各地では大会の中止や延期が相次いでいますが、マジックアリーナでは今週末にミシックポイントチャレンジ、そして再来週には今年2回目のミシック予選があります。そう、まだまだスタンダードを走り込むタイミングなのです!
そこで今回はミシックポイントチャレンジ直前特集として、ミシック上位のデッキや個人的に興味があるデッキなどをご紹介していきたいと思います。
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■ティムールアドベンチャー
littlebeep:Dreamhack Anaheim 優勝、MTGAミシック1位
驚異的な勝率でミシック1位を守りつつ、Dreamhack Anaheimでも見事その強さを発揮して優勝したティムールアドベンチャーの達人、littlebeepことAaron Gertler(@AaronGertler)。11月の記事で紹介したティムールアドベンチャーも彼のデッキで、新環境になってからもその刃を研ぎ続け、見事頂点に立っています。
ティムールアドベンチャーがテーロス還魂記で得た戦力はたったの4種5枚、メインの《奔放の神殿/Temple of Abandon》2枚にサイドの《神秘の撤回/Mystic Repeal》《嵐の怒り/Storm’s Wrath》《影槍/Shadowspear》だけです。しかしこの数枚、特に後者2枚がデッキの力を底上げしたのです。
《嵐の怒り/Storm’s Wrath》
ティムール=青赤緑の3色で構成されているため、せっかく《願いのフェイ/Fae of Wishes》の「ウィッシュボード」を使えてもカード選択の幅が狭く、意外と対応できない盤面に陥ることがありました。そこに登場したのがこの《嵐の怒り/Storm’s Wrath》です。
爆発的なマナ加速からであれば4マナという重さも気になりませんし、《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》+3/3エレメンタル複数体といった絶望的な盤面も一気に解決できるようになりました!
《影槍/Shadowspear》
そして持ってくる頻度がかなり高いのが、この《影槍/Shadowspear》。赤単のようなアグロ相手に持ってきて《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》につけて6/6絆魂で一気にゲームを決めることもありますし、青白コントロールには《夢さらい/Dream Trawler》の呪禁を牽制しつつダメージレースをすることができます。装備先として《豆の木の巨人/Beanstalk Giant》という超巨大クリーチャーが入っているのも良いところで、これまで無限にチャンプされていた《アーデンベイル城/Castle Ardenvale》の1/1トークンを突破できるのです!
《幸運のクローバー/Lucky Clover》《豆の木の巨人/Beanstalk Giant》
ティムールアドベンチャーは出来事クリーチャーの可変性により最序盤に安定して動けますし、《幸運のクローバー/Lucky Clover》が絡めば圧倒的なアドバンテージとテンポを得ることができます。《幸運のクローバー/Lucky Clover》→《豆の木の巨人/Beanstalk Giant》→《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》or《厚かましい借り手/Brazen Borrower》は間違いなく環境最強の動きでしょう。
《僻境への脱出/Escape to the Wilds》
このデッキの最大の問題点は、管理するリソースが多く、さらにはあまりにも選択肢が多いのでプレイングがとてつもなく難しいことです。普通のデッキであれば5-6マナあるときの選択肢なんてせいぜい2択ぐらいですが、このデッキの場合は「1+1+1+3」「1+1+2+2」「5+1」「3+3」…など出来事の可変性がゆえに無限の選択肢が存在します。10マナあって、《僻境への脱出/Escape to the Wilds》で5枚めくれていて、手札が4枚あって、追放領域にも出来事クリーチャーがあって…と常に悩み苦しむことになります。
デッキパワーは文句ありませんが一朝一夕で回せるデッキではないので、もし実際にトーナメントで使う場合は十分に練習してから臨むことをオススメします。
■バントランプ
crokeyz:MTGAミシック2位
有名配信者であり、常にミシック上位を走っているcrokeyz(@crokeyz)。基本的に環境のマナ加速とパワーカードを詰め込んだ構成になることが多いバントランプですが、彼が今回作り上げたのは、メタゲームを読み切った独特な構成のデッキでした。
《秋の騎士/Knight of Autumn》
《創案の火/Fires of Invention》、《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》、《幸運のクローバー/Lucky Clover》、《エンバレスの宝剣/Embercleave》、《鍛冶で鍛えられしアナックス/Anax, Hardened in the Forge》、《荒野の再生/Wilderness Reclamation》。環境上位のデッキはほぼすべてメインにエンチャントやアーティファクトを採用しており、しかもそれがデッキの主軸となっています。
そこでcrokeyzはなんとメインに《秋の騎士/Knight of Autumn》を採用。普段ならサイドから採用されるこのカードをメインから採用することにより差を付けることを選んだようです。しかも《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》や《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》、《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》で再利用できるうえにドローも多いので、かなり高い確率で使い回すことができます。
今週末はティムールアドベンチャーが増えそう(というか増えている)なので、バントランプを使う方はメインに数枚《秋の騎士/Knight of Autumn》の採用を検討してみるといいでしょう。
《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》
テーロス還魂記の新戦力、《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》と《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》がどちらも墓地をリソースとするため、このプレインズウォーカーが注目されています。《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》の脱出コストを賄うだけでなく《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》をライブラリーから直接墓地に落とすこともできますし、《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》に至ってはお互いを延々と拾い続けられるため、両方を同時に対処しない限りはアドバンテージを取られ続けることとなります。
ミシック上位に赤単が少ないのか、このリストは「赤単へのガードを下げ、ミラーマッチなどを意識した構築」になっています。このままのリストをトーナメントに持ち込むのは少しリスキーだと思いますので、構築思想をしっかり理解しつつ自分が想定するメタゲームに合わせて調整しましょう。
■超尖った赤単
ショウノ タカノリ:PTQ大分 優勝
ここ最近の国内PTQで最も感銘を受けたのがこのデッキです。世界選手権でセス・マンスフィールドがトップ4入賞したのも記憶に新しい赤単ですが、その一般的な形とは全く違うデッキであり、同じ赤単でもここまでオリジナリティを出せるのか、そして勝てるのかと感動しました。《熱烈な勇者/Fervent Champion》も《鍛冶で鍛えられしアナックス/Anax, Hardened in the Forge》も入っていないなんて!!!
《心火/Heartfire》
スタンダード唯一の2マナ4点火力。もちろんクリーチャーを1体生け贄に捧げるというコストは決して軽いものではありませんが、その部分も《不気味な修練者/Grim Initiate》や《脚光の悪鬼/Footlight Fiend》といったサクりやすい1マナ域を採用することで解決しています。《エンバレスの宝剣/Embercleave》を採用せず《危険因子/Risk Factor》を採用していることからも、「本体を狙い続ける」という一貫した姿勢が見て取れます。
《初子さらい/Claim the Firstborn》
そしてなんとメインに《初子さらい/Claim the Firstborn》!《魔女のかまど/Witch’s Oven》が入ったラクドスサクリファイスには採用されていますし、赤単でもサイドにはたまに採用されているカードではありますが、メイン採用はかなり思い切っています。《心火/Heartfire》との組み合わせでの3マナ即死コンボは、予想の斜め上から何度も対戦相手を打ちのめしたこと想像に難くありません。
《心火/Heartfire》を引いていなくても、《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》や《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》、ミラーマッチでは《鍛冶で鍛えられしアナックス/Anax, Hardened in the Forge》など《初子さらい/Claim the Firstborn》した瞬間に勝ちそうな対象は多く存在します。これもまたメタゲームを読み切った、まさにデッキ構築の勝利といえるでしょう。
■まとめ
ということで今回は少し短めですが、個人的なオススメデッキ3つをご紹介しました。
青白コントロール、ジェスカイファイアーズ、赤単、ティムール再生、そしてジャンドサクリファイスとメタゲームが固まっていた世界選手権でしたが、それを受けて様々なデッキが登場してきているのは現環境がかなり良いバランスで成り立っている証左といえます。
果たして今週末に笑うのはどのデッキか。僕もミシックポイントを獲得すべく全力で頑張りますので、応援よろしくお願いします!
それでは、また次回の記事で!