MTG │ 解説記事 │ 井川良彦【スタンダード上位デッキ解説】

皆さんこんにちは。Rush Prosの井川(@WanderingOnes)です。

皆さんご存知の通り、2020年10月12日、新たに3枚のカードが禁止になりました。ついこの間禁止改定後の記事を書いたはずなのですが、まさかこんな短期間でさらに禁止が出るとは……予想はしていましたが、実際に出ると少し驚きますね。

禁止カードが乱発されるのはもちろん良いことではありません。購買意欲の減退につながりますし、マジック自体への不信感も募ることでしょう。

ですが禁止改定も悪いことだけではありません。

この1年近く、スタンダードは少し異常ともいえる状態でした。

世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》《創案の火/Fires of Invention》《荒野の再生/Wilderness Reclamation》《創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》といったマナを踏み倒したり爆発的に増やすカード、そして《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》《創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》といった手軽にライフをゲインできるカードが存在していたため、純粋なミッドレンジやビートダウンに生存権がなく、コンボ的な動きをするデッキたちが幅を利かす、ド派手すぎるフォーマットになってしまっていました。

今回の禁止改定により圧倒的過ぎる動きを実現していたカードがほぼ環境から消え、昔のような、ミッドレンジ帯でゲームができるスタンダードらしい環境が戻ってきたのです!

ということで、今回の記事では来週に迫ったゼンディカーチャンピオンシップ予選に向け、禁止改定後のスタンダードの上位デッキを取り上げていきたいと思います。

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■ラクドスミッドレンジ

Luca Moretti ラクドスミッドレンジ
2020/10/13 The Mythic Society Weekly 4-0

 

4 《マグマの媒介者/Magmatic Channeler
4 《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger
1 《ぬかるみのトリトン/Mire Triton
4 《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant
2 《残忍な騎士/Murderous Rider
3 《悪ふざけの名人、ランクル/Rankle, Master of Pranks
3 《血の長の渇き/Bloodchief’s Thirst
3 《無情な行動/Heartless Act
3 《苦悶の悔恨/Agonizing Remorse
2 《棘平原の危険/Spikefield Hazard // 棘平原の洞窟/Spikefield Cave
3 《髑髏砕きの一撃/Shatterskull Smashing // 鎚の山道、髑髏砕き/Shatterskull, the Hammer Pass
2 《ハグラの噛み殺し/Hagra Mauling // ハグラの群れ穴/Hagra Broodpit
4 《ティマレット、死者を呼び出す/Tymaret Calls the Dead
2 《死者を目覚めさせる者、リリアナ/Liliana, Waker of the Dead
6 《沼/Swamp
3 《山/Mountain
4 《寓話の小道/Fabled Passage
4 《悪意の神殿/Temple of Malice
2 《ロークスワイン城/Castle Locthwain
1 《サヴァイのトライオーム/Savai Triome

3 《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern
3 《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire
3 《絶滅の契機/Extinction Event
2 《アゴナスの雄牛/Ox of Agonas
2 《強迫/Duress
1 《エルズペスの悪夢/Elspeth’s Nightmare
1 《精神迷わせの秘本/Mazemind Tome


「《創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》以外には強い」と禁止改定前から言われていたラクドスミッドレンジ。目の上のたんこぶであった《創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》が禁止になってことによりトップメタになるであろうことはご想像の通りです。

このデッキは禁止改定直後のオンライン大会で見事4-0の好成績を残したリストです。

除去、手札破壊、優秀なクリーチャー陣、そして墓地を活用する《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》という純然たるミッドレンジ。

禁止改定前から存在していたこともあり完成度が高く、新環境のスタートラインがこのデッキであり、このデッキに勝てないデッキは存在意義を問われることでしょう。

「脱出」最強クリーチャーの《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》亡き後、もう一翼の「脱出」クリーチャーが大暴れしています。

ぬかるみのトリトン/Mire Triton》《ティマレット、死者を呼び出す/Tymaret Calls the Dead》《マグマの媒介者/Magmatic Channeler》といったカードで盤面を構築しつつ墓地を肥やし、最速で4ターン目には降臨しますし、ロングゲームにおいては何度も盤面に返ってくる不死身のクリーチャーとして活躍することとなります。

このカードがメインから4枚入っていることにより青黒ローグに高い耐性を持っており、環境から追いやってしまいそうな勢いです。ローグ好きの僕としては悲しい限り。

ラクドス(赤黒)というカラーコンビネーションは2色の両面土地がないためマナベースが脆弱です。そのくせ《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》は4ターン目に(赤)(赤)(黒)(黒)が必要であり、できればラグなしで出したいところ。

そんなワガママな要求にどう答えるか。このデッキでは土地の枚数を27枚と多めに採用することにより色マナカウントを増やし、なるべく土地を止めない/色マナ事故を起こさないように構築しています。

もちろん土地を多めに採用すると今度はフラッドのリスクが生じるのですが、そこで活躍するのが今回《ゼンディカーの夜明け》で登場したモードを持つ両面カードです。

土地でありながらスペルとしても運用できるためスクリュー/フラッドのリスクを低減しつつ、デッキ全体での除去の枚数も担保できるというスグレモノです。

テーロス還魂記》の英雄譚シリーズの中でも少しマイナーな1枚。これまではあまり使われていませんでしたが、小型クリーチャーの除去・手札破壊・墓地掃除の3つのアクションをこなしてくれる優秀なカードであり、リミテッドでは上位アンコモンでした。

ラクドスの流行により特に墓地掃除の部分が注目されており、主にミラーマッチでサイドインされます。

■緑単アグロ

Oliver Tiu 緑単アグロ
2020/10/14 ミシック1位

4 《群れのシャンブラー/Swarm Shambler
4 《石とぐろの海蛇/Stonecoil Serpent
4 《漁る軟泥/Scavenging Ooze
2 《ネシアンの角甲虫/Nessian Hornbeetle
4 《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast
2 《ガラクの先触れ/Garruk’s Harbinger
4 《カザンドゥのマンモス/Kazandu Mammoth
2 《解き放たれた者、ガラク/Garruk, Unleashed
3 《怪物の代言者、ビビアン/Vivien, Monsters’ Advocate
2 《原初の力/Primal Might
4 《強行突破/Ram Through
1 《カルニの待ち伏せ/Khalni Ambush // カルニの領域/Khalni Territory
1 《変わり樹の共生/Turntimber Symbiosis
2 《グレートヘンジ/The Great Henge
17 《森/Forest
2 《ギャレンブリグ城/Castle Garenbrig
2 《眷者の居留地/Bonders’ Enclave

3 《鎖巣網のアラクニル/Chainweb Aracnir
1 《巻き添え/Run Afoul
2 《ガラクの先触れ/Garruk’s Harbinger
2 《悪魔の職工/Fiend Artisan
4 《水晶壊し/Gemrazer
2 《オークヘイムの敵対者/Oakhame Adversary
1 《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern


ラクドスの流行を受け、漁る軟泥/Scavenging Ooze》を一番うまく使えるデッキとして台頭してきたのが緑単アグロです。

幸運のクローバー/Lucky Clover》の退場を受け、従来だとメインに4枚採用されていた《水晶壊し/Gemrazer》がサイドボードに移り、その代わりにプレインズウォーカーの枚数が増量されるなど、ミッドレンジ的な動きをより強化した形となっています。

創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》《幸運のクローバー/Lucky Clover》の退場により相対的に強くなったプレインズウォーカー。

スタンダードのローテーションにより強力だった《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》などのプレインズウォーカーはいなくなってしまいましたが、そんな中で光り輝くのがこの《怪物の代言者、ビビアン/Vivien, Monsters’ Advocate》です。

毎ターン3/3を量産することにより《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》率いるラクドス軍を止めることができますし、到達カウンターを選べば《悪ふざけの名人、ランクル/Rankle, Master of Pranks》《夜鷲のあさり屋/Nighthawk Scavenger》といった航空戦力さえもシャットアウトできます。

必要とあらば「-2」能力で《漁る軟泥/Scavenging Ooze》をサーチしてもいいですし、手札が空になっても常在型能力によりライブラリーのトップからクリーチャーを連打することもできるしと、まさに至れり尽くせり。

数々の禁止によってついに出番が回ってきた、強力なプレインズウォーカー。今後スタンダードを代表する1枚になると思います。

数々のアドバンテージ源がなくなったことにより、次のぶっ壊れカードとしてこの《グレートヘンジ/The Great Henge》に注目が集まるのも仕方ないかもしれません。

恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》《カザンドゥのマンモス/Kazandu Mammoth》という2種類の3マナ5/5相当のクリーチャーが存在しているおかげで最速4ターン目には設置でき、一度定着したが最後、無尽蔵にアドバンテージを稼ぐことができるのですから。

漁る軟泥/Scavenging Ooze》という墓地対策があり、仮に《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》が盤面に出たとしても重厚な布陣で受け止めることができ、《グレートヘンジ/The Great Henge》《怪物の代言者、ビビアン/Vivien, Monsters’ Advocate》によりアドバンテージで差をつけ物量差で圧倒できる。こういった多角的な要素により、緑単はラクドスキラーのポジションを確固たるものとしつつあります。

緑単の貴重な除去スペルである格闘呪文の採択にも環境の変化が表れています。

本体火力としても運用でき可変式のマナ・コストでプレイできるものの、ソーサリータイミングであることから除去呪文で無効化されやすく、さらには接死クリーチャーに対して打ちづらい《原初の力/Primal Might》が減量されています。

代わりにサイドボードからメインに昇格しているのが《強行突破/Ram Through》。

インスタントで構えられるため相手に合わせてプレイでき、格闘と違い一方的にダメージを与えるため接死クリーチャーも苦にしません。

トランプルを持っているとボーナスがあるので、《解き放たれた者、ガラク/Garruk, Unleashed》とも噛み合うことをお忘れなく!

■ゴルガリアドベンチャー

Kristof Prinz ゴルガリアドベンチャー
2020/10/15 ミシック9位

4 《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper
4 《穢れ沼の騎士/Foulmire Knight
4 《真夜中の騎士団/Order of Midnight
4 《漁る軟泥/Scavenging Ooze
4 《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast
4 《カザンドゥのマンモス/Kazandu Mammoth
4 《残忍な騎士/Murderous Rider
3 《悪ふざけの名人、ランクル/Rankle, Master of Pranks
1 《無情な行動/Heartless Act
1 《ハグラの噛み殺し/Hagra Mauling // ハグラの群れ穴/Hagra Broodpit
2 《アガディームの覚醒/Agadeem’s Awakening // 地下遺跡、アガディーム/Agadeem, the Undercrypt
1 《怪物の代言者、ビビアン/Vivien, Monsters’ Advocate
2 《グレートヘンジ/The Great Henge
6 《森/Forest
6 《沼/Swamp
4 《疾病の神殿/Temple of Malady
4 《寓話の小道/Fabled Passage
1 《インダサのトライオーム/Indatha Triome
1 《ロークスワイン城/Castle Locthwain

2 《鎖巣網のアラクニル/Chainweb Aracnir
2 《血の長の渇き/Bloodchief’s Thirst
3 《強迫/Duress
1 《取り除き/Eliminate
2 《無情な行動/Heartless Act
2 《スカイクレイブの影/Skyclave Shade
2 《水晶壊し/Gemrazer
1 《怪物の代言者、ビビアン/Vivien, Monsters’ Advocate


そして緑単が流行るとどうなるか。そう、「緑単に強い緑単」という構造を持ったゴルガリアドベンチャーが流行の兆しを見せているのです。

漁る軟泥/Scavenging Ooze》《グレートヘンジ/The Great Henge》《怪物の代言者、ビビアン/Vivien, Monsters’ Advocate》といった緑単の強いラインを維持しつつ、触りづらいシステムクリーチャーである《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》、確定除去である《残忍な騎士/Murderous Rider》《無情な行動/Heartless Act》といったカードを片方だけ使えるため、マッチを通して緑単に有利に戦えるのが最大の魅力といえるでしょう。

昨年の今頃に流行したゴルガリアドベンチャー。その中核となっているのがこれらのクリーチャー陣です。

他のアドベンチャーデッキに比べて《穢れ沼の騎士/Foulmire Knight》《真夜中の騎士団/Order of Midnight》といった軽量出来事クリーチャーが存在している分だけ《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》を最序盤に展開することが多くなっています。

穢れ沼の騎士/Foulmire Knight》は出来事を経由せずとも1/1接死というボディだけでもブロッカーとして価値があります。逆に《真夜中の騎士団/Order of Midnight》は《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》がいないときに出来事を経由せずにアタッカーとして出すケースは少ないです。

エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》や《漁る軟泥/Scavenging Ooze》といった価値の高いカードを回収して、しっかりとバリューを出しましょう。

 

黒緑も両面2色土地がないため、ラクドス同様、モードを持つ両面カードによって土地を増量してフラッド/スクリューを低減する形でデッキを構築。

そしてこのデッキでは両面カードの中でも最上位のパワーを持つ2種、《カザンドゥのマンモス/Kazandu Mammoth》《アガディームの覚醒/Agadeem’s Awakening》が採用されています。

アガディームの覚醒/Agadeem’s Awakening》はこのデッキにおいては最大で7マナ=4体リアニすることができますし、1・2・3の6マナだけでも十分なバリューを発揮してくれます。

グレートヘンジ/The Great Henge》があれば戻した数だけドローでき、《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》が復活することにより次なるバリューに繋がりますので、長期戦における優位をより確固たるものとしてくれる優秀な1枚です。

■まとめ

創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》《幸運のクローバー/Lucky Clover》(あとおまけで《僻境への脱出/Escape to the Wilds》)の禁止により、スタンダードは古き良きミッドレンジを主体とした、様々なデッキが活躍するフィールドに様変わりしました。

正直めっっっちゃ楽しいです。スタンダードはやはりこれぐらいのデッキパワーで十分だなーと実感します。

来週末に皆さんがゼンディカーチャンピオンシップ予選を戦っている同タイミングで、僕は初のライバルズリーグを戦うことになります。

アメリカ時間なので深夜1時スタートかつディレイありにはなりますが、全試合(2日で12試合)を配信する予定ですので、ご視聴いただければ幸いです!応援よろしくお願いします!

https://www.twitch.tv/wanderingones_

それでは今回はここまで。次回の記事はライバルズリーグの振り返り記事の予定です。好成績レポートをお届けできますように!

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