MTG │ デッキ解説 │ 井川良彦【グリクシスコントロール】

皆さんこんにちは。RushProsの井川(@WanderingOnes)です。

諸事情により少し遅くなってしまいましたが、今回は先日の日本選手権2019で使用した「グリクシスコントロール」について解説していきたいと思います。

僕自身はスタンダードラウンドを2Byeからの2-1と3試合のみで終えてしまったので少し寂しかったですが、同じデッキを使用したゆうやん(細川 侑也)は1Byeからの5-1。2人合わせて7-2とそれなりの好成績で終えることができました。

今のスタンダード環境は残りわずかですが、メインサイドともに特徴のあるリストになりましたし、構築過程や思考などが少しでも参考になれば幸いです。

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■なぜグリクシスコントロール?

今のスタンダードは「ケシスコンボ」一強と言える珍しい環境です。実際に日本選手権の結果もケシスコンボが見事下馬評通りトップ8に2人残り、その2人がワン・ツー・フィニッシュをするという快挙を成し遂げています。

日本選手権2019 優勝  小林 遼平 / ケシスコンボ

僕は従来のミシックチャンピオンシップ(旧プロツアー)で「トップメタのデッキをベストに仕上げる」ことに注力していることが多いので、今回もその通例に従ってケシスコンボの練習/調整に全力を注ぐのが間違いなく正解でした。

ですがいつも同じことばかりしていては成長がないなーと考え、今回は普段の調整から趣向を変えて「トップメタを倒すための構築」に集中してみることにしました。

ケシスコンボを倒すには

クリーチャーベースのコンボデッキであるケシスコンボは、対応力が高く長期戦にも耐えられるにも関わらず最速3ターンキルできるという、かなり万能といえるデッキです。

このデッキを倒すには、

(A):《万面相、ラザーヴ/Lazav, the Multifarious》《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》を対処する
(B):《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》を対処する
(C):《万面相、ラザーヴ/Lazav, the Multifarious》《精励する発掘者/Diligent Excavator》を突破しつつ《時を曲げる者、テフェリー/Teferi, Timebender》《ケイヤの誓い/Oath of Kaya》《ウルザの殲滅破/Urza’s Ruinous Blast》で壊滅しない

の条件をクリアしたあと、

(D):相手が態勢を整え直す前に倒す / リソースを削り切る

必要があります。

赤単や吸血鬼といった一直線なビートダウンでは(A)(B)をクリアできずに先にコンボを決められるか、(C)につまづき相手のライフを削り切れず敗北するパターンが多いです。

また半端なコントロールだと(A)(B)をクリアしても勝つまでに時間がかかりすぎ=(D)をクリアできず、結局《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》などをトップデッキされて逆転負けを喫することになります。

これらすべての条件を満たそうと特化したのが、今回使用したグリクシスコントロールなのです。

井川 良彦 / グリクシスコントロール

1《秘本綴じのリッチ/Tomebound Lich
4《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager
4《思考消去/Thought Erasure
2《軍団の最期/Legion’s End
2《暴君の嘲笑/Tyrant’s Scorn
2《アングラスの暴力/Angrath’s Rampage
1《豪奢+誤認/Bedeck+Bedazzle
4《魔性/Bedevil
2《漂流自我/Unmoored Ego
3《煤の儀式/Ritual of Soot
1《アズカンタの探索/Search for Azcanta
3《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils
4《龍神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Dragon-God
1《戦慄衆の将軍、リリアナ/Liliana, Dreadhorde General
2《沼/Swamp
4《湿った墓/Watery Grave
4《血の墓所/Blood Crypt
4《蒸気孔/Steam Vents
4《水没した地下墓地/Drowned Catacomb
4《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit
2《硫黄の滝/Sulfur Falls
1《天啓の神殿/Temple of Epiphany
1《陰鬱な僻地/Dismal Backwater

4《軍勢の戦親分/Legion Warboss
2《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander
2《強迫/Duress
2《否認/Negate
2《害悪な掌握/Noxious Grasp
2《夢を引き裂く者、アショク/Ashiok, Dream Render
1《永遠神の投入/Enter the God-Eternals

グリクシスコントロールの長所


思考消去/Thought Erasure》、各種単体除去に加え、《魔性/Bedevil》《龍神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Dragon-God》8枚体制のおかげで、ほかのコントロールデッキに比べて《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》をはじめとしたプレインズウォーカーに触りやすくなっています。これにより(A)(B)をクリアできています。コントロールデッキなのでそもそも(C)は無視して戦えます。

また、(D)のステージにおいて輝くのが、グリクシスコントロールの代名詞ともいえる8枚ものニコル・ボーラスです。

ケシスコンボは大型クリーチャーへの対処手段はほとんど入っていないので、《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager》のクロックで相手に時間制限をかけることが可能です。《時を曲げる者、テフェリー/Teferi, Timebender》でバウンスされても痛くないのが《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager》の強みでもありますね。

また、最近のケシスコンボはデッキを掘るため/ミラーマッチを対策するために《夢を引き裂く者、アショク/Ashiok, Dream Render》が搭載されているので、その《夢を引き裂く者、アショク/Ashiok, Dream Render》を《覚醒の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Arisen》で釣り上げ、相手の墓地を一掃して勝つパターンもあるのです!

相手との友情コンボ、よく炸裂します

また、一度マウントを取ってからの《龍神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Dragon-God》は《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》の比ではありません。

[+1]能力はただドローするだけでなく、相手のリソースを毎ターン削っていくので、除去や手札破壊と組み合わせて確実に土地を削っていき、逆転の芽を完全に潰すことができます。この《龍神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Dragon-God》の[+1]を起動している瞬間がグリクシスコントロールを使っていて一番気持ちいい瞬間です(笑)

グリクシスコントロールの短所

日本選手権に向けてMTGアリーナで練習をしましたが、このグリクシスコントロール、メチャクチャ負けました。MTGアリーナを始めてから一番負けたといっても過言ではありません。

それは理由がはっきりしていて、下位Tierのデッキに弱くて勝ちきれないからでした。

今回のグリクシスコントロールはケシスコンボ、ボロスフェザー、エスパーコントロール、白黒吸血鬼、バントランプといった上位Tierだけを意識した構築にしたので、ほかのデッキに本当に弱い構成になっています。

赤単。負け。緑単。負け。青緑《模写/Quasiduplicate》ネクサス。負け。ティムールエレメンタル。負け。

といった感じで連勝できず。特に今回のメイン《漂流自我/Unmoored Ego》2枚という尖った構成だったのもありランクはまったく上がりませんでした。

グリクシスの天敵。見るだけで頭が痛くなります。

僕は今回「日本選手権の2Byeがある (Tier上位に当たりやすい)」「構築ラウンド数が少ない(ドラフトが多い)」という前提のもとこの構成を選びましたが、通常のトーナメントに出る場合はメインの《漂流自我/Unmoored Ego》を減らしたり、サイドに赤単対策になる《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》《永遠神の投入/Enter the God-Eternals》等といったカードを増量することをオススメします。

■その他、細かいデッキの調整の話

漂流自我/Unmoored Ego》をメインに2枚採用

リスクは高いものの、リターンは大きいと考え採用。ケシスコンボには《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》、スケープシフトには《死者の原野/Field of the Dead》を3Tに抜ければイージーウィンできますし、エスパーコントロールには《戦慄衆の指揮/Command the Dreadhorde》さえ抜ければメインは五分以上に戦えます(基本は少し不利です)。

除去の選択

今のスタンダードには2マナ除去が多数あるので、その配分をどうするかには時間をかけました。2マナ除去に求めるのは基本的に3マナ以下への対処なので、環境で使われているクリーチャーに合わせてチョイスする必要があります。

今回意識したのは、主にこの3種類。

 

(α):2マナ1/3たち (《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》、《万面相、ラザーヴ/Lazav, the Multifarious》、《精励する発掘者/Diligent Excavator》)
(β):《アダントの先兵/Adanto Vanguard
(γ):3マナ3/4レジェンド (《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》、《贖いし者、フェザー/Feather, the Redeemed》)

上記のように相手によって必要な除去が違う場合、同じ種類の除去を複数入れすぎると裏目が発生しやすいので、少しずつ散らして採用して「2枚とも腐る(打てない)」場面を減らすのが大事です。

今回のリストでは、

(α)・・・7枚 (2《軍団の最期/Legion’s End》、2《暴君の嘲笑/Tyrant’s Scorn》、2《アングラスの暴力/Angrath’s Rampage》、1《豪奢+誤認/Bedeck+Bedazzle》)
(β)・・・5枚 (2《軍団の最期/Legion’s End》、2《アングラスの暴力/Angrath’s Rampage》、1《豪奢+誤認/Bedeck+Bedazzle》)
(γ)・・・4枚 (2《暴君の嘲笑/Tyrant’s Scorn》、2《アングラスの暴力/Angrath’s Rampage》)

という配分にしました。(γ)=3マナ域には《魔性/Bedevil》や《煤の儀式/Ritual of Soot》での対応でも良いので少し枚数を抑えめにして、「2マナクリーチャー vs.2マナ除去」のときに裏目が発生しづらい枚数を優先した形です。

 

このような軽量除去の選択は今回に限らずどんな環境でも生きると思うので、コントロールを調整する際には意識してみると良いでしょう。

秘本綴じのリッチ/Tomebound Lich》について

直前に採用したのがこのクリーチャー。M20リミテッドではとても強いですが、スタンダードでもいけるのか?と疑問に思う方も多いでしょう。

結論から申し上げますと、「そこそこ」な活躍でした。

グリクシスはエスパーと異なり《時を曲げる者、テフェリー/Teferi, Timebender》が使えない=軽いドローがないので土地が詰まりやすく、また3ターン目に自発的に動けるカードも《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》しかないのでパスターンになることも多いです。

その両方を改善すべく採用されたのが、この《秘本綴じのリッチ/Tomebound Lich》です。チーム曲者として情報共有している木原くん(木原 惇希)が提案してくれて、実際に試してみたところ手ごたえが悪くなかったので採用に至りました。実際、日本選手権でも対赤単でこのカードを《否認/Negate》で守り、コツコツ回復しながらフラッドを解消して勝ったゲームもありました。

ただこのカードにもいくつか問題点があり、

・《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》がいると戦場に出せない (誘発型能力がマストなので、手札を捨てるハメになる)

・接死があるのでブロッカーに向いているかと思いきや、対緑単でほぼ無力 (《鉄葉のチャンピオン/Steel Leaf Champion》、《蔦草牝馬/Vine Mare》、《変容するケラトプス/Shifting Ceratops》どれも止まらず…)

といった有様。なので重ね引いたときに自身を捨てられるとはいえ、2枚は引きたくないなという印象です。もし僕のリストを試してみる方がいる場合、このカードは別のカードに変えてもいいと思います。

フラッド&スクリューの解消という同じ理由で《アズカンタの探索/Search for Azcanta》も採用されているのですが、こちらも《夢を引き裂く者、アショク/Ashiok, Dream Render》の採用枚数増、《時を曲げる者、テフェリー/Teferi, Timebender》でバウンスされること、そして2枚目が弱いことなどを加味して1枚に抑えました。

サイドの《軍勢の戦親分/Legion Warboss》《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》について

エスパーやグリクシス、ネクサスといったマッチで有利に立つために採用。

また、ケシス戦でも先攻ではサイドインすることにしていました。ケシスは意外と盤面が弱く、またプレインズウォーカーを多用しているので、除去/手札破壊からの《軍勢の戦親分/Legion Warboss》だけで圧倒できるケースが頻発します。《煤の儀式/Ritual of Soot》と入れ替えでどうぞ。

意識されていないときは1枚で勝てるパワーがありますし、意識されていても損はしない(除去と1:1交換するだけ)上に自分だけ引いていれば優位に立てるので、コントロールデッキが使うアグレッシブ・サイドボードカードは大好きです。

「《スカラベの神/The Scarab God》みたいなカード欲しいっすね。そこそこ強い生物。」

ゆうやんの何気ない一言から、カードリストを眺めて採用したのがこのカード。

基本的にはエスパーコントロールを主軸に考えた採用です。《戦慄衆の指揮/Command the Dreadhorde》の効果を下げるにはライフを攻めるのが一番効果的ですし、《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》に対して強いのは1年前の赤黒ミッドレンジvs青白コントロールの時代から明白です。

相手がサイドインしてくるであろう《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》《敬虔な命令/Devout Decree》といったカードに強いのも加点要素。《軍勢の戦親分/Legion Warboss》《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager》と合わせて積極的に攻めていきましょう。

エスパー戦以外でも、緑単に対してのブロッカーとして、またバントランプが《夏の帳/Veil of Summer》《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》を構えているときに叩きつけてイニシアティブを握るカードとして、予想以上に活躍しました。

■おまけ、MPLの話

この一週間、レイくん(佐藤 レイ)から依頼を受けて、Magic Pro LeagueのRuby Devisionの調整に協力しました。冒頭の諸事情というのがコレです。

彼が予選ラウンドで使ったグリクシスコントロールは、日本選手権で使った上記のリストをベースに、僕とゆうやんのフィードバック、そしてレイくん自身がヤソ(八十岡 翔太)や原根君(原根 健太)からもらったアドバイスなども受けて微調整をしたもの。基本的に「赤単は無視。狭いフィールドを見据えてさらにメタを絞り込んだ」リストであり、対戦相手7人の傾向などを分析して予想した、MPLという特殊なメタゲームに合わせた構築といえます。

永遠神の投入/Enter the God-Eternals》も《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》もなく、メインに不要牌が多いので当然赤単には負けましたが、予選ラウンドは4-3、4位通過ということで最低限の力にはなれたかなとホッとしています。ボロ負けしなくて良かったー!(笑)

今回レイくんのMPLの調整を一緒にさせてもらって、世界トップレベルの意気込みや責任、一勝の重みを感じましたし、とてもいい経験・刺激になりました。

先日の発表で「ライバルズリーグ」の新たな創設なども発表され、個人的な目標が明確になりましたし、より高みを目指して研鑽していきたいと思います。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

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