MTG │ 大会レポート │ 高橋優太【プロツアー『サンダー・ジャンクション』】

先週末は、アメリカのシアトルにて開催された「プロツアー・サンダージャンクション」に参加しました。


前日に参加手続きを済ませた後、夕食にタコスやサラダが振る舞われました。かなり美味しかった!


今回はプロツアーだけのイベントで、「MagicCon」の併催は無し。プロツアー会場に入ると、気持ちが昂ってきます!

さて、プロツアー初日はブースター・ドラフト3回戦と、スタンダード5回戦を行い、4勝4敗以上の成績で2日目へ進出。
2日目で10勝6敗以上の成績で次回のプロツアーの権利が付与されるため、上位入賞を目指します。

井川良彦さん、市川ユウキさん、井上徹さん、加茂里樹さん、佐藤レイさん、中村修平さん、原根健太さん、松浦拓海さん、森山真秀さんとチームを組んで練習を行いました。
以下その大会レポートです。

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■1stドラフト

「サンダージャンクションの無法者」のドラフトは、全体的にカードパワーが高い環境です。

パックに封入される「速報」枠には、過去の強力な除去カードが多く、確率は低いもののMTG史上最強プレインズウォーカーの《王冠泥棒、オーコ》が出る可能性もあります!プレイ・ブースターの性質上、1パックから複数枚のレアが出ることもあり、《気性の荒いタンブルワグともう1枚爆弾レアが出て悩むこともありました。

コモンの質も高く、4マナ4/4警戒でさらに強化能力付きの《巨大ビーバー》や、格闘では無く一方的にダメージを与える《鞍上からの投擲》など、過去のセットならアンコモンでもおかしくない性能のカードも多いです。どちらも有する緑は最強色で、人気が高いです。

全セットの「カルロフ邸殺人事件」が3マナ2/2が基準だったのに対して、3マナ3/3や4マナ4/4がゴロゴロいて、クリーチャーの平均値も大きい!

「レアが強い」「コモンの質が高い」これらが意味するのは、相手のレアやコモンの巨大クリーチャーに対処できる除去の価値がより高まるということです。

僕がプロツアー前に思い描いていたのは、白から入ってバントカラー(白青緑)を中心にピックして、赤は回避するという方針でした。

理由としては、白の確定除去の多さです。神秘の縛め》《法による束縛》は相手のクリーチャーに加えて、ビッグスコア枠の強力なアーティファクトにも対処できます。「速報」枠からは《未達への旅》《激情の報復》が出て、マルチカラーまで広げれば白緑の《庭園への埋設も強い除去です。

確定除去が多く、クリーチャーの質も良い白を高く評価していました。

それに対して赤は、クリーチャーが2/2や3/2中心で質が低く、2点火力や4点火力では相手の爆弾レアに対処できないことも多いので、なるべく避けるように決めていました。

バントカラー(白青緑)を中心にピックするパターンとしては、白から入って最強色の緑が出来るなら白緑。緑が空いてないなら、流れてきた青のカード次第で青白に舵を切るというもの。

青は単体では弱い色なため不人気で、《空の探検者、ジェム・ライトフット》《忌むべき者の世話人》《拘留の宝球などは強い割に流れて来やすい。これらが流れてきたら青白フラッシュを目指したり、タッチで使うことを検討します。

バントカラーのレアには強力なものが多いので、《王冠泥棒、オーコ》や《乱伐者、ボニー・ポール》を引いた場合に、色をタッチして採用できるのも魅力。

1パック目初手は《群れと話す者、ミリアム》。
弱めのパックで、他の候補が《巨大ビーバー》くらいだったので、まずは強い2マナ域をピック。


1パック目2手目は《未達への旅》。環境でも屈指の、軽くて強い除去です。


1パック目3手目は《開拓地の探求者》。初手がミリアムで乗騎デッキになりそうなので、白緑で特に強い2マナ域のこいつは美味しい。
その後は白単気味にピック。白メインで、補色を青にするか緑にするかは2パック目次第。


2パック目初手はクリーチャー呪文を唱えるたびに傭兵トークンを出す《熱心な先駆者、セルヴァラ》!
強力なレアを引いたので、ここで白緑に決定!


2パック目2手目は《逃走のまやかし》。上手く機能すれば、相手の除去をブリンクでかわしながら、相手の最大パワーのクリーチャーを除去出来ます。
その後は白の流れが良く、《プレーリードッグ》2枚や《忠実な馬、フォーチュン》も取れて、レアリティの高い白緑乗騎デッキが完成。


3-0も狙えそうなデッキでしたが、除去たくさんの赤黒(井川さん)に負けて2勝1敗。

■2ndドラフト


1パック目初手は《砂嵐の回収者》。単体で十分強く、トークンを多く出せるデッキなら強化能力が活きます。
他の候補は《精神の決闘者》でこちらも強いですが、《砂嵐の回収者》の方が少し上の性能だと考えてこちらをピック。


1パック目2手目は《密輸人の驚き》。パワー4以上を守りながらデッキの上4枚をめくる効果が良い働きをします。放題カードは後半でも強いので、他の人よりも高く評価しています。


他の候補が弱めのパックだったので、緑路線を固定するために《巨大ビーバー》をピック。


4手目で取れるのなら、白緑が空いている証でしょう。



2パック目以降も《集いのグリフなど白緑のクリーチャーの流れは良かったものの、除去はあまり取れず。仕方なく《牛の介入》が入っています。

デッキの見た目は1勝2敗してもおかしくないもので少し不安でしたが、実際は上手く回ってくれて2勝1敗。

■スタンダードのデッキ選択経緯

プロツアー前に、メタゲームはエスパーミッドレンジが最多で、次点でボロス召集、ティムールランプといった予想をして、自分でも主要なデッキを一通り回しました。
しかしエスパーミッドレンジは、プロツアーで相手が上手い前提だと同系対決で差をつけるのが難しい!

ボロス召集、ティムールランプはメイン戦は強いのですが、サイド後の対策カードに影響されやすい弱点を持っており、この3つのデッキは候補から除外。

環境がエスパー、ボロス召集、ティムールランプとなると、どのデッキも《切り崩し》《喉首狙いといったクリーチャー除去を多く採用してきます。
これらのクリーチャー除去を腐らせることが出来るなら、デッキ構築の段階である程度優位を築ける。そう考えて、アゾリウスコントロールを選びました。

アゾリウスコントロールはデッキの内容がパイオニアに近いこともあり使い慣れていて、新カードの《三歩先》は《謎めいた命令を彷彿とさせる性能。
3マナで打ち消し、もしくは5マナで打ち消し+2ドロー1ディスカードのモードが強く、1回「カウンター、ドロー」と言えるので、コントロール使いはハマること間違いなし!

■アゾリウスコントロール


【インポートデータ】

というわけで、アゾリウスコントロールを使用しました。
各種打ち消し呪文で序盤を凌ぎながら、《太陽降下で盤面をリセット。4マナを構えるターンには、《記憶の氾濫で手札補充or《放浪皇》で盤面干渉、もしくは打ち消し呪文と、相手に合わせて動いていきます。

7マナで《記憶の氾濫》をフラッシュバックして手札に《三歩先を抱えながら、最終的には《放浪皇》と《太陽降下》のトークン、不穏な投錨地》の攻撃で勝利するデッキです。

2マナの打ち消し呪文は7枚と厚めに取りました。
理由としては、現在のスタンダードは3マナのカードが特に強く、後攻だと2ターン目には必ず打ち消し呪文が手札に欲しいからです。2ターン目パスは絶対に避けたい!

特に《策謀の予見者、ラフィーン》や《婚礼の発表》は、ただのクリーチャー除去だと2マナでは対処しにくいので、打ち消すのが最もスマートな方法です。

自分が後攻の時に、《大洞窟のコウモリで2マナの打ち消し呪文を手札から抜かれて《策謀の予見者、ラフィーン》と繋げられるのが一番の負けパターンなので、コウモリで1枚抜かれても、2マナの打ち消しが1枚手札に残るくらいの枚数が欲しいと考えて、7枚にしました。

新加入の《幻影の干渉》は、例えば《大洞窟のコウモリ》《フェアリーの黒幕》が攻撃したときに、2/2飛行を出すモードで疑似的に除去として機能する点を評価しています。
2マナ要求の打ち消しとしても及第点。

1枚だけ《かき消し》が入っているのは、デッキリスト公開制で相手のプレイを簡単にしないためです。
例えば《喝破》のために3マナ残して呪文を唱えた時、《かき消し》の犠牲付きで4マナ要求だと相手の計算をずらすことが出来ます。《放浪皇》や《ミレックス》でトークンを用意して《かき消しを犠牲付きでプレイするのは、そこまで難しいことではありません。

2マナ要求の打ち消し、3マナ要求の打ち消し、さらに4マナ要求の打ち消し、全てをケアするのは相手視点だと難しいはずです。

冥途灯りの行進》は、特にボロス召集に対して効く除去です。

上機嫌の解体》が0マナのアーティファクト・トークンを対象にすることが多いので、《上機嫌の解体にスタックでX=0でプレイすると、対象不適正で《上機嫌の解体》を無効化出来ます。アーティファクト・エンチャント・クリーチャーと除去できる範囲が広いので、サイド後に《ウラブラスクの溶鉱炉》を出されても安心。

追放効果なのでエスパーミッドレンジの《敬虔な新米、デニックの裏面を気にせず除去出来て、ティムールランプに対しても《復活した精霊信者、ニッサの1回目の上陸誘発型能力にスタックで除去することでリソース確保を防ぎます。主要なデッキに対して良い働きをするので、《冥途灯りの行進は4枚で満足。

一時的封鎖》は相手によって強さが上下するカードで、例えばティムールランプや版図ランプに対しては、ほとんど無駄カードに近くなってしまいます。

しかしボロス召集や赤単といった高速アグロデッキに当たった時に、特に後攻だと《一時的封鎖が無いと間に合わないことが多いので、メイン2枚サイド2枚というバランスになっています。

失せろ》は汎用性の高い除去ではあるものの、デメリットも無視できないものとなっています。
地図トークンが+1/+1カウンター2個、もしくは土地2枚を与える効果はデメリットとして大きく、対ボロス召集では地図に《上機嫌の解体を使われることもあります。

正直なところ、《失せろは最もサイドアウト率の高いカードなのですが、0枚にするとプレインズウォーカーに触りにくくなったりなど、メインで出来ることが減ってしまうので、悩んで1枚採用。0枚もあり得ると思います。

マナベースには時間をかけて悩みました。三歩先》《一時的封鎖の両方を使うためには3ターン目には白白青青が必要なので、2色出る土地は可能な限り採用したい。

そして前述の通り、ボロス召集相手には後攻1ターン目に《冥途灯りの行進》X=0を構えたい。そうなると1ターン目にアンタップインの白マナも必要です。

平地》3枚と《皇国の地、永岩城》1枚は確定として、残りの配分が難しい。《金属海の沿岸は序盤3ターンは素晴らしいけれど、長いゲームをするこのデッキでは後半のタップインが響くタイミングも多い。それなら《金属海の沿岸》は最低限の2枚にして、アンタップインの2色カウントである《アダーカー荒原》を3枚に。

不穏な投錨地》は3枚に減らすか悩んだこともありましたが、2/3飛行が相手の《放浪皇》を落としやすかったり、地図によるドローの質向上がゲームの勝敗を変えたりと、活躍する機会が余りにも多かったので4枚確定。スタンダードのミシュラランドの中では、《不穏な投錨地が最も強いと感じています。

この《不穏な投錨地》の起動を軽くしたり、《廃墟の地を2ターン目に起動したりと、土地による行動回数を増やしてくれるのが《沈んだ城塞》。これも1-2枚で試したのですが、2枚引くとタップイン重複が敗因になったので、1枚引くくらいが丁度良いと考えて1枚に。

廃墟の地》《解体爆破場は相手のミシュラランドへの対抗策で、特にエスパーミッドレンジは基本地形が少ないので、複数回起動すると相手の基本地形が枯れることがあります。《廃墟の地》が4枚でない理由としては、青黒コントロールが使ってくる《死人に口無し》で《廃墟の地》を全て失わないようにするためです。

ミレックスはマナを構えてターン終了する青いデッキ対決で特に強く、特にティムールランプや版図ランプはライフ回復手段が多いので、通常ライフよりも毒カウンターの方が勝ちやすいです。コントロール対決では、相手に《廃墟の地された後に2枚目が欲しいタイミングが多かったので2枚に。

通常の感覚では土地28枚が多すぎるように思えますが、このデッキは《記憶の氾濫をフラッシュバックすることが前提のデッキなので、土地は7-8枚は欲しいです。
不穏な投錨地》や《ミレックス》など余ったマナの使い先もあり、土地を引きすぎるよりも土地を引かなすぎることの方が敗因になりやすいので、28枚がおススメです。

ティシャーナの潮縛り》はボロス召集、ティムールランプ、版図ランプなど多くのマッチアップでサイドインします。今のメタゲームならメイン採用するか悩みますが、メインは相手のクリーチャー除去を腐らせるデッキ構成なので、やっぱりサイドかな。

加護をもたらす戦乙女はライフを攻めてくるボロス召集や赤単への対策。《三歩先でコピーしても嬉しい!
金線の酒杯》は、ボロス召集相手に《一時的封鎖から更に追加で軽量全体除去が欲しかったので採用。

今回のメタゲームではいませんでしたが、バント毒性に対してアゾリウスは不利なので、その対策でもあります。

悩んで採用しなかったカード達。

行き届いた書庫》は、後攻1ターン目に《冥途灯りの行進》X=0を構える条件が満たせなかったため、他の青白土地を優先しました。

砂塵の憎悪》はアグロ相手に強いのですが、自分の《一時的封鎖》に巻き込まれてしまうのが気になって、《加護をもたらす戦乙女》を優先。

完成化した精神、ジェイスはゲームが長期戦になるコントロール対決や、ティムールランプ、版図ランプ相手にライブラリーアウトが狙えます。しかし強い相手が限定されていて、これよりはもっと幅広くサイドインできる《否認のようなカードの方が強いと考えて不採用に。

金属の徒党の種子鮫》は、コントロール対決やランプに対して、お互いマナを構えあうサイド後に軽く出せるの脅威なのが強い。しかしサメが強い相手はティシャーナも強くて、ティシャーナの方がより幅広くサイドイン出来るため、ティシャーナよりも優先する理由がありませんでした。

■大会結果

・初日
〇黒単ミッドレンジ
〇赤単アグロ
〇スゥルタイミッドレンジ
△4色レジェンズ《大スライム、スローグルク》
×4色レジェンズ《大スライム、スローグルク》

・2日目
〇エスパーミッドレンジ
△ディミーアミッドレンジ
〇ゴルガリミッドレンジ
〇オルゾフミッドレンジ
〇エスパーミッドレンジ

黒ミッドレンジの海を越えて、11勝3敗2引き分けでトップ8進出!

切り崩し》《喉首狙いを腐らせるという狙いが上手くいきました。

・3日目
〇4色レジェンズ《大スライム、スローグルク》
〇ボロス召集
×版図ランプ


最後に盟友の井川さんに負けて、残念ながら準優勝でした。

■おわりに


20代の頃から、ともにプロツアーを目指して切磋琢磨した井川さんとの決勝は、非常に感慨深いものがありました。まるで少年漫画のような展開。

ただ、悔しさもあります!最後の4ゲーム目は、ティシャーナのチャンプブロックがあればライフが4点多いのでまだ可能性があって、ベストなプレイが出来ていなかった!!!

この悔しさをバネに、今後のプロツアーや世界選手権でも猛練習して行きます!


大会後は森山ジャパンで祝勝会。
シアトルの「Palace Kitchen」と言うお店なのですが、出る料理が全て美味しかったです。シアトルを訪れる機会があればぜひ行ってみて下さい!

最終日は中村修平さんに連れられて、シアトルの市場を見るのとピロシキを食べに。ピロシキはパイの中に肉まんが入っている感じで、これも美味しかった!

マジックで世界を巡って、たまに美味しいものを食べる生活は本当に楽しい!
プロツアーが最高に楽しからこそ、練習する原動力になり、マジックをここまで続けて来れました。

競技マジックは最高に楽しい!チャンピオンズカップから、プロツアーを目指してほしい!

それではまた。


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