MTG │ デッキ紹介 │ 高橋優太【パイオニア コンボの冬】
2023年11月、パイオニアはコンボの冬となった。
新メカニズムの「発見」。
発見3だとしたら、マナ総量3以下であり土地でないカード1枚を公開するまで、あなたのライブラリーの一番上から1枚ずつ追放していきます。その後、そのカードをマナ・コストを支払わずに唱えるか、あなたの手札に加えるかを選びます。
挙動としては《断片無き工作員》《暴力的な突発》といった続唱に似ており、手札に加えられる点は続唱より強く、戦場に出た時の効果なので打ち消しに弱いことは続唱より弱め。
例えば発見3なら、それに合わせてデッキにマナ総量3以下のカードを限定する事によって、発見で公開されるカードを絞る事が出来ます。
《地質鑑定士》から発見3で《玻璃池のミミック》で大量のコピーを生成したり、《クイントリウス・カンド》から発見4で《灯の分身》で大量のコピーを生成したりと、コピーする能力と相性良し。大量のコピーを作った後は、速攻付与による攻撃や《クイントリウス・カンド》でのドレインで、20点以上のダメージを与えて勝利します。
続唱もそうでしたが、マジックにおいてマナコストを支払わずに唱える能力はコンボに使われて来た歴史アリ。正直、発見は強すぎた感があります。
今回は、その発見コンボを研究し、対策を考える記事です。
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■参考情報
先週末に開催された、マジックオンラインのパイオニアショーケースチャレンジの結果を参考にしています。
ショーケースチャレンジは、勝者にマジックオンラインチャンピオンシップの権利が付与されるため、普段の大会に比べて強いプレイヤーが集まる傾向があり、情報としての信頼度は高いです。
■《クイントリウス・カンド》コンボ(優勝)
パイオニアショーケースチャレンジ優勝 使用者:triosk |
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デッキリスト | |
1:《平地/Plains》 1:《島/Island》 2:《沼/Swamp》 2:《山/Mountain》 1:《森/Forest》 4:《草むした墓/Overgrown Tomb》 4:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 2:《インダサのトライオーム/Indatha Triome》 2:《ゼイゴスのトライオーム/Zagoth Triome》 2:《ケトリアのトライオーム/Ketria Triome》 2:《ラフィーンの塔/Raffine’s Tower》 2:《ザンダーの居室/Xander’s Lounge》 25 Lands 4:《灯の分身/Spark Double》 |
4:《クイントリウス・カンド/Quintorius Kand》 3:《徙家+忘妻/Consign+Oblivion》 4:《力線の束縛/Leyline Binding》 4:《執念の徳目/Virtue of Persistence》 4:《群れの渡り/Herd Migration》 19 other spells 1:《巨智、ケルーガ/Keruga, the Macrosage》 |
デッキ内のマナ総量4以下のカードを《灯の分身》《賢いなりすまし》のみに限定。これにより《クイントリウス・カンド》の「-3」能力の発見4の効果で、確定で《灯の分身》もしくは《賢いなりすまし》が公開されます。
《賢いなりすまし》の場合は、《クイントリウス・カンド》をコピーして、オリジナルが伝説ルールで墓地に行った後に再度「-3」能力で発見4をして繰り返し。《灯の分身》の場合は、《クイントリウス・カンド》の伝説でないコピーになるので、複数の《クイントリウス・カンド》が並んだ状態になります。
そうして《灯の分身》でコピーを増やす過程で、発見により追放領域から呪文を唱えるので、《クイントリウス・カンド》の誘発型能力で2点ドレイン。《灯の分身》のコピーが増えるごとに4点ドレイン、6点ドレインと増えて行きます。最終的にはコピーを並べて20点ドレインで勝利する、コンボデッキです。
《嘶くカルノサウルス》をプレイした場合、メインデッキのマナ総量5以下のカードが《クイントリウス・カンド》《灯の分身》《賢いなりすまし》なので、3つのうちどれかが出て、カルノサウルスコピーなら再度発見5をします。その後は同様に《クイントリウス・カンド》を増やして行って、20点ドレイン!
このコンボの凄い所は、カード1枚を出すだけで勝利してしまう事です。言うなれば、「5マナ:ゲームに勝利する」という効果に近い。
もちろんデッキに入れるマナ総量が制限されるデメリットはありますが、カード1枚だけで勝利するというのは、マジック史上でも本当に少ない!
コピー系以外でデッキ内にマナ総量4以下のカードが入れられないので、マナ総量6以上の除去たちで序盤を耐えます。
《力線の束縛》はもはやお馴染みになった万能除去。サイド後《減衰球》で発見を妨害されても《力線の束縛》があれば安心。
《徙家+忘妻》も触れる範囲が広く、《忘妻》で手札破壊する事も多いです。
《執念の徳目》は回復付きの除去。特にサイド後は相手の対策カードが増えるので、除去してから《執念の徳目》で戦うミッドレンジプランも出来ます。
5色デッキでマナ基盤を整えるカード達。《豆の木の巨人》の出来事はアンタップ状態で出るので、《平地》をサーチして《力線の束縛》を構える事が多いです。
《群れの渡り》は7マナでプレイしても強い。特にサイド後は相手の対策カードが増えるので、《執念の徳目》と同じく除去してから《群れの渡り》のミッドレンジプランもあります。
このデッキはコンボ偏重と言うよりはミッドレンジプランを重視しており、除去して時間を稼ぎ、対策されても《執念の徳目》《群れの渡り》で勝てるようになっているのが良いですね。
サイドボードもメインの動きを阻害しないように、マナ総量の多い分割カードが採用されています。
《豪奢+誤認》は、特に白アグロが出してくる《スレイベンの守護者、サリア》《エメリアのアルコン》への除去の追加。
《覆滅+複製》は、発見の誘発型能力を打ち消すためです。マナ総量が5なので《嘶くカルノサウルス》の発見5で公開されますが、その場合は《複製》で《嘶くカルノサウルス》をコピーすれば発見5でコンボが繋がって行きます。コンボパーツでありながら相手への妨害が出来るカード。
サイドボードにダブルシンボルのカードが多いので、それを念頭に《草むした墓》《踏み鳴らされる地》優先でマナベースが構成されています。2ターン目に《群れの渡り》捨てるか《執念の徳目》なのでショックランドは《草むした墓》優先なのに納得。
《思考のひずみ》は打ち消しを構えてくる相手にクリティカルヒットする手札破壊で、特にリスト非公開の大会では劇的に刺さった事が予想されます。
■《地質鑑定士》コンボ(2位)
パイオニアショーケースチャレンジ準優勝 使用者:JMM |
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デッキリスト | |
5:《山/Mountain》 4:《悪意の神殿/Temple of Malice》 4:《天啓の神殿/Temple of Epiphany》 4:《河川滑りの小道/Riverglide Pathway》 4:《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》 1:《反逆のるつぼ、霜剣山/Sokenzan, Crucible of Defiance》 2:《ザルファーの虚空/Zhalfirin Void》 24 Lands 4:《玻璃池のミミック/Glasspool Mimic》 |
4:《異界の進化/Eldritch Evolution》 4:《詭謀+奇策/Connive+Concoct 》 4:《豪奢+誤認/Bedeck+Bedazzle》 4:《創造の発露/Creative Outburst》 2:《精霊の傑作/Elemental Masterpiece》 4:《マグマ・オパス/Magma Opus》 22 other spells 2:《魂の洞窟/Cavern of Souls》 |
デッキ内のマナ総量3以下のカードを《玻璃池のミミック》《異界の進化》のみに限定。これにより《地質鑑定士》の発見3で、確定で《玻璃池のミミック》もしくは《異界の進化》が公開されます。
《玻璃池のミミック》の場合は、《地質鑑定士》をコピーして、再び発見3を連鎖。《異界の進化》の場合は、《地質鑑定士》を生贄に捧げて《嘶くカルノサウルス》をサーチして戦場に出し、発見5で《地質鑑定士》《玻璃池のミミック》《異界の進化》のどれかが公開されるので、発見が連鎖して行き、場にクリーチャーが大量に並んで行きます。
そうして場に大量の《地質鑑定士》《嘶くカルノサウルス》を並べたら、デッキに残った最後の《異界の進化》で《ドゥームスカールのタイタン》をサーチして戦場に出し、速攻付与で20点オーバーの特大ダメージ!
手札に《玻璃池のミミック》《嘶くカルノサウルス》を引きすぎてしまうと、ライブラリーからのサーチ枚数が減って打点が足りないパターンがあるので、それをケアするために《暴走暴君、ガルタ》が1枚採用されています。《嘶くカルノサウルス》を生贄に捧げて《異界の進化》で《暴走暴君、ガルタ》をサーチして手札から出しますが、《地質鑑定士》は唱えていた場合の誘発なので、《暴走暴君、ガルタ》の効果で出しても発見が誘発しない事に注意して下さい。
マナ加速。手札から捨てて宝物を出せるので、《地質鑑定士》で最速3ターンキルを狙います。
稀に土地が伸びる後半で、《マグマ・オパス》や《創造の発露》を普通に唱える事もあり、これらを墓地から唱えられる《奔流の機械巨人》型も存在します。
《詭謀》は相手のコントロールを奪取して、《奇策》は手札から捨てた《嘶くカルノサウルス》を戦場に戻したり、打ち消された《地質鑑定士》を戻す、二の矢のコンボと言えます。
まだデッキとして生まれたばかりなので、荒い部分が少しあり、優勝デッキの《ザルファーの虚空》は《水晶の岩屋》の方が上位互換です。
《鏡殻のカニ》は実質3マナで使える打ち消し呪文で、クリーチャーなので相手の《思考のひずみ》に巻き込まれないメリットもあります。
■カードプールの見直し
発見コンボはまだ研究が始まったばかりのデッキです。いくつか案を挙げていきます。
デッキにマナ総量2以下のカードが採用できないので、《巨智、ケルーガ》は自然と相棒条件を達成できます。
2位の《地質鑑定士》型も《巨智、ケルーガ》を相棒に出来ますが、《力線の束縛》のように場に残るパーマネントが無いとケルーガでドローできないので、無条件で相棒にするほどではないかも。
分割カードはマナ総量が合計値なので、合計6以上なら《嘶くカルノサウルス》の発見を阻害せずに採用できます。カードプールにある分割を一通り見直しました。
《翦草+除根》は、《スレイベンの守護者、サリア》などで対策が進むようなら、発見側がサイドに取りそう。
《粉骨+砕身》は打ち消し呪文ですが、《鏡殻のカニ》の方が能力も打ち消せて、なおかつ《奇策》で捨てたカニをリアニメイトする事もあるので、カニの方が良いかも。
《昇華+消耗》は墓地対策、《貧窮+裕福》は-2/-2全体でもしかしたらサイドに入るかも。
《大義+名分》は《嘶くカルノサウルス》がヒットすれば良いですが、少しカードが弱め。
《発見+発散》は序盤の安定であり得るかも。
《発展+発破》は両方とも強いので、コントロール気味に組むのもあり。
《採取+最終》は、捨てた《嘶くカルノサウルス》《鏡殻のカニ》を回収したら面白いけど、少し重いか。
土地が伸びる後半で、《マグマ・オパス》や《創造の発露》を普通に唱える事もあり、これらを墓地から唱えられる《奔流の機械巨人》型も存在します。
《魂の洞窟》から《奔流の機械巨人》は巨人は打ち消されないですが、墓地から唱えた《マグマ・オパス》は普通に《呪文貫き》で打ち消されます。
発見コンボ対決はマナを構えてターン終了する展開が多いので、《サメ台風》《終局の始まり》《船砕きの怪物》のように相手のターン終了時に動けるカードがサイドに取られるかも。
■発見コンボへの対策
白は発見対策が厚め。
《スレイベンの守護者、サリア》がいれば《クイントリウス・カンド》《異界の進化》を唱える事を阻害出来ますし、《エメリアのアルコン》は1ターンに複数の呪文を唱えられなくさせて、《選定された平和の番人》は呪文を2マナ重くします。
《ドラニスの判事》なら手札以外から唱えられないので、発見を妨害。
《封じ込める僧侶》《トカートリの儀仗兵》は《地質鑑定士》を対策できますが、《クイントリウス・カンド》は対策できないので一長一短。
白の対策クリーチャーは軒並みタフネス3なので、ちょうど《嘶くカルノサウルス》《豪奢+誤認》で除去される範囲なのが惜しい。《弁論の幻霊》ならタフネス4なので良い候補かも知れませんが、それでも《力線の束縛》《徙家+忘妻》では対処されます。
《減衰球》で発見を妨害したり、《真髄の針》で《クイントリウス・カンド》を指定したりもありますが、どちらの場合も《嘶くカルノサウルス》を6マナで出されて普通に殴られるパターンがあります。
発見コンボはどちらもコピーするカードが入っているので、コピー元を除去するのも有効な対策です。
《地質鑑定士》《クイントリウス・カンド》の両方を考えると、クリーチャーとプレインズウォーカーに2点以上ダメージが入る、《塔の点火》《レッドキャップの乱闘》などが適任。
■おわりに
パイオニアはそれまでの環境が一新する程、大きく変わりました。
マナを構えていないと3ターンキルや4ターンキルをされる環境は、正直高速すぎる!
《嘶くカルノサウルス》のように6マナのカードは、本来打ち消し呪文に弱い性質がありますが、今回《魂の洞窟》が再録されたことにより打ち消しが下火になっている事も、発見コンボを後押ししています。
2020年のパイオニアで《真実を覆すもの》が環境を支配した事を思い出します。経験上こういったときは、対策するよりも使う側に回った方が良い事が多い。
僕も週末のチャンピオンズカップファイナルに向けて、発見デッキを研究して行くつもりです。
それではまた。