MTG │ 解説記事 │ 高橋優太【禁止改訂後の環境考察】
先日、大規模な禁止改定がありました。
・パイオニア
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》禁止
《時を解す者、テフェリー》禁止
《欄干のスパイ》禁止
《地底街の密告人》禁止
《荒野の再生》禁止
・ヒストリック
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》禁止
《創造の座、オムナス》禁止
・モダン
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》禁止
《ティボルトの計略》禁止
《猿人の指導霊》禁止
《死者の原野》禁止
《神秘の聖域》禁止
・レガシー
《アーカムの天測儀》禁止
《戦慄衆の秘儀術師》禁止
《王冠泥棒、オーコ》禁止
・ヴィンテージ
《夢の巣のルールス》解禁
続唱のルール変更
また、続唱/Cascadeのルールが変更されました。続唱によって唱える呪文は、続唱呪文の点数で見たマナ・コストより低い値でなければなりません。
これにより、モダンやレガシーを震撼させた「続唱ティボルト」はデッキごと消滅することになりました。わずか3マナで簡単に7マナのプレインズウォーカーを呼び出せるため、このルール変更は妥当と言える措置です。
今回の記事では、この禁止改定によって起こる変化を予想して行きます。
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■パイオニア
MOチャレンジの結果を見ても、「ティムール再生」「5色二ヴミゼット」「スパイ」が安定して上位入賞していました。
今回の禁止改定により、「ティムール再生」「スパイ」はデッキ自体が消滅。「5色二ヴミゼット」は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《時を解す者、テフェリー》を失いました。
「5色二ヴミゼット」は新たな武器として《白日の下に》収斂=2から《星界の騙し屋、ティボルト》が出来るようになっており、《嘘の神、ヴァルキー》を入れた形が『カルドハイム』加入後に活躍していました。
続唱と異なり、《白日の下に》《出現の根本原理》などのライブラリーから唱える呪文なら、《嘘の神、ヴァルキー》をサーチして《星界の騙し屋、ティボルト》として唱える事が出来ます。
失った《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《時を解す者、テフェリー》は痛くはあるものの、根幹である《ニヴ=ミゼット再誕》《白日の下に》は顕在です。
これからも生き残ることとなるでしょう。
■ヒストリック
これまでのヒストリックのメタゲームは「スゥルタイミッドレンジ」「ゴブリン」「ジャンドサクリファイス」の3強環境でした。
ウーロ禁止により「スゥルタイミッドレンジ」が消えたことで、スゥルタイに不利だったオーラ系デッキが台頭するかも知れません。
ただ、クリーチャーデッキが多い環境なら「ジャンドサクリファイス」が有利なフィールド。
しばらくは「ジャンドサクリファイス」を中心にメタゲームが回りそうです。
■モダン
モダンは大幅な禁止で、これまで主流だった《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《死者の原野》系コントロールは軒並み姿を消します。
《神秘の聖域》が禁止されたのは、ウーロで攻撃しながらの《謎めいた命令》とのループコンボが強力だったからです。相手の呪文を打ち消して《神秘の聖域》をバウンス、《神秘の聖域》を置きなおして《謎めいた命令》をデッキトップに回収して、ウーロの攻撃で《謎めいた命令》をドロー。簡単にゲームをロックすることが出来ます。
《稲妻》《流刑への道》を連打されてウーロを脱出。これだけで今までのアグロデッキは苦境に立たされていましたが、そんなウーロともおさらば。
《ティボルトの計略》は打ち消しや手札破壊に弱いですが、運が良ければ2ターン目に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱えられるため、「3ターンキル禁止」のモダンにそぐわないカードだったのだと思います。
《猿人の指導霊》は無条件で1マナ増やせる事が3ターンキルを成立させる材料でもあるので、今後のコンボデッキ抑制のための禁止に見えます。正直、続唱ティボルトの巻き添えになった感が強いです。
ウーロ禁止はアグロデッキの夜明けです。禁止で何も影響を受けなかったデッキを考えると、ラクドスシャドウ、ウーロに苦しめられていたバーン、5色人間。そして《純鋼の聖騎士》で《巨像の鎚》を高速装備するハンマータイム。その他にも部族デッキも沢山復活しそう。
アグロデッキが隆盛するなら無限ライフコンボを持つヘリオッドカンパニーも出てくるでしょうし、中速デッキが流行るなら緑単トロンの出番。そんな風にメタゲームが動くモダンが一番楽しい。
モダンはオーコ・ウーロ前の多種多様な環境に戻るのでは、と非常に期待しています。
■レガシー
継続的なライフ回復、3/3生成、汎用性の高い疑似除去。《王冠泥棒、オーコ》は紛れもなく、歴代最強のプレインズウォーカーです。
レガシーには早いターンに強力なアーティファクトや巨大クリーチャーを出す戦略がありますが、オーコは【+1】で汎用性の高い除去を使えるため、メインから無理なく対策できるのが最大の長所。
・オーコで良く鹿にされたリスト
※《霊気の薬瓶》
※《殴打頭蓋》
※《虚空の杯》
※《三なる宝球》
※《罠の橋》
※《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
※《甦る死滅都市、ホガーク》
※《引き裂かれし永劫、エムラクール》
※《暗黒の深部》(のマリット・レイジトークン)
《王冠泥棒、オーコ》を入れるだけで、これら全ての問題が解決していました。逆に言えば、これらの戦略全てがオーコ1枚で封じ込められていました。
アーティファクトも除去出来て、《実物提示教育》からの《引き裂かれし永劫、エムラクール》も鹿に変えて、マリット・レイジからの攻撃も食物の3点回復で耐えてから鹿に変える。どれだけオーコが強かったかがわかると思います。
オーコの禁止でまず台頭するのはデス&タックスでしょうか。《霊気の薬瓶》と装備品を主軸にしたデッキなので、オーコの禁止により良いポジションになりました。
また、《虚空の杯》《三なる宝球》擁する赤単プリズン系のデッキも復権しそうです。
レガシー環境を定義するカードの一つに《不毛の大地》があります。レガシーではフェッチランド+デュアルランドで簡単に多色化出来ますが、多色化し過ぎると特殊地形対策をモロに食らいます。
《アーカムの天測儀》はこれらの多色化否定戦略を1枚で無効化してきました。マナ変換能力により、氷雪基本地形ベースでありながら5色すべての強いカードを使う事ができ、色の概念をも崩壊させていました。
今回《アーカムの天測儀》が禁止されたことで、各デッキは再びマナベースを見直す事になります。5色デッキを組むことは簡単ではなくなり、《血染めの月》《基本に帰れ》などの特殊地形対策は前よりも強くなります。
今後は1ターン目の《血染めの月》でそのままゲーム勝利!なんて事も起こるでしょう。
《戦慄衆の秘儀術師》の強みは、1回でも攻撃したら《渦まく知識》《思案》《定業》の再利用でアドバンテージを取る事で、除去しなければどんどん手札が増えていきます。
《秘密を掘り下げる者》《タルモゴイフ》の場合は除去し損ねても2ターン程はダメージを受けられますが、《戦慄衆の秘儀術師》は即除去しなければいけない点が強み。
今後は《若き紅蓮術士》型に変わっていくと予想します。
また、最高の3マナ域であった《王冠泥棒、オーコ》の禁止により《真の名の宿敵》に注目しています。
《真の名の宿敵》やデス&タックスに強い《疫病を仕組むもの》もサイドボードで良く使われそうです。
サンプルリスト:グリクシスデルバー
By高橋 優太 | |
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デッキリスト | |
2《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》 2《霧深い雨林/Misty Rainforest》 3《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 2《汚染された三角州/Polluted Delta》 3《Underground Sea》 3《Volcanic Island》 4《不毛の大地/Wasteland》 19 lands 4《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》 |
4《渦まく知識/Brainstorm》 4《思案/Ponder》 2《定業/Preordain》 4《思考囲い/Thoughtseize》 4《稲妻/Lightning Bolt》 4《目くらまし/Daze》 2《否定の力/Force of Negation》 4《意志の力/Force of Will》 1《四肢切断/Dismember》 29 other spells 2《青霊破/Blue Elemental Blast》 |
■ヴィンテージ
「相棒」ルール変更前の《夢の巣のルールス》はヴィンテージを支配していました。
過去の「相棒」ルールでは3マナ払って手札に加えることなく、直接場に出せたので、1ターン目に《Black Lotus》から出てくると、そのまま毎ターン《Black Lotus》で3マナ加速。恐ろしい!
ヴィンテージでは強力なカードは禁止ではなく制限を受けますが、相棒を制限したとしてもサイドボードから確実にプレイされてしまうため、禁止という措置を受けていました。
それが3マナ払うなら大丈夫という事で、今回禁止解除!
低コストの強力な呪文が多いヴィンテージなら「デッキに入っている各パーマネント・カードが、それぞれ点数で見たマナ・コストが2以下」という条件を満たすことは容易です。
自分を対象に《思考停止》で切削して《Black Lotus》《死の国からの脱出》を墓地に。その後《夢の巣のルールス》から《死の国からの脱出》を墓地から唱えてそのままストームコンボ。
《死の国からの脱出》デッキで《夢の巣のルールス》は活躍しそうです。
■おわりに
今回の禁止改定では、メタゲーム上で長期間使用率の高いカードを禁止して、フォーマットの一新を図ったような印象を受けます。
最も大きな変化だったのはモダンとレガシーでしょう。どちらも環境が少し前の環境に戻りつつ、いくつかの新セットが加入したことで、デッキの種類が増えそう。
ケースに眠っていたデッキを引っ張り出すタイミングは今!
僕もライバルズリーグが落ち着いたら、モダンやレガシーの配信を積極的に行っていくつもりです。配信も見てね♪
それではまた。