MTG │ 大会レポート │ 高橋優太【プロツアー・霊気走破】

こんにちは、高橋優太です。
先週末は、アメリカのシカゴにて開催された「プロツアー・霊気走破」に参加しました。

今回から海外チーム・コスモスに移籍(所属はカードラッシュのままで、チーム練習への参加です)。
プロツアーの1週間前からアパートを借りて、練習合宿を行います。

慣れない異国の地で1週間以上生活して、拙い英会話で、果たしてどうなる!?
期待と不安が両方入り混じりますが、それ以上に楽しみです!

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■チーム・コスモス紹介


Javier Domínguez(ハビエル)
スペイン出身。
2018年と2024年の世界選手権優勝。2024年の全てのイベントで、トップ10以上と言う凄まじい成績を叩き出した。
陽気で練習中いつも歌っている。日本語が少しだけわかる。


Anthony Lee(アンソニー)
オーストラリア出身で現在はカナダ在住。
チームのリーダーで、コミュニケーション力が高く人当たりが良く、多人数をまとめる力がある。僕含め、多くのメンバーがアンソニーに勧誘された。


Márcio A Carvalho(マルシオ)
ポルトガル出身。
世界有数のリミテッドの名手で、安いコンバットトリックを強く使うのが得意。


Willy Edel(ウィリー)
ブラジル出身。
2015年にマジック・プロツアー殿堂入り。ブラジルの公用語はポルトガル語なので、マルシオと仲が良い。


Sean Goddard(ショーン)
アイルランド出身。
コンボデッキが得意。英語ネイティブだからかゆっくり明確に話し、言葉遣いが綺麗。


Marco del Pivo(ピヴォ)
イタリア出身。
2024年に《衝撃の足音》デッキで勝ちまくった。ミッドレンジが得意。イタリア料理の次に日本料理が好き。


Christoffer Larsen(クリス)
デンマーク出身。
長年プロツアーの常連で、マジックの歴史の話が好き。本職はミシュランで働いたこともあるほどの料理人。


Alexander Hayne(へイン)
カナダ出身。
今回のプロツアーを最後に、マジックから少し離れると決めているが、コスモスに誘われて燃えている。


Thierry Ramboa(ティエリー)
フランス出身。
陽気でノリが良い。練習熱心でいつもDiscordサーバーに居た。


Bernardo Torres(べナス)
ポルトガル出身。
今回の合宿中に誕生日を迎えて、皆に祝われた。「HUNTER×HUNTER」が好き。


Adrián Iñigo Tastet(エイドリ)
スペイン出身。
気さくな好青年。練習のためにスタンダードのほぼ全てのデッキを用意してくれた。


Isaac Bullwinkle(アイザック)
アメリカ出身。
普段は音楽学校でピアノとチェロを学んでいる。ショーン同様に言葉遣いが綺麗。

■練習風景


4人で暮らせるアパートを、10日間借りて生活。大人数で借りると、一人あたり400ドル程度と割安。

練習中は規則正しく生活。朝9時に全員で集まって、スタンダードの何を練習するかを決定。
例えば直近の大会結果を見て、AデッキとBデッキとCデッキの相性はどうなのか。AデッキとBデッキの使用率はどれくらいになるか予想するなど。

それから紙やアリーナで練習開始。

お昼休憩を挟んだ後、ドラフトについて戦略を立てます。主にショーンが中心になって、17Lands上で勝率の高いカードについて議論します。

一見弱そうなカードでも勝率が57%を超えている場合、それはピック時の点数評価を変える必要があり、その色やアーキタイプについて詳しい人の意見が飛び交います。
意見を交換した後、実際にピック。全員のレベルが高く、見ているだけでも練習になります。

ドラフトを終えたら夕飯。シカゴの夜は寒く、外はなんとマイナス15度!

夕飯を終えたら再びスタンダードを練習し、だいたい22時-23時に練習終了。これを毎日繰り返して、スタンダードのデッキやドラフトの戦略を練り上げて行きました。ハードな練習ですが、これくらい練習したいとも思っていたので、僕にとっては生きがいと言える時間でした。

1週間ほど練習を続けて、ついに水曜日にデッキリスト提出。

デッキ提出してホッと一息ついた後、クリスから一言。

「8時からスペシャルディナーね。俺は料理人なんだ」

なんだって!?
大量調理に慣れているらしく、あっという間にチキンとポテトとパプリカ炒めが出来上がって行きます。


塩加減が絶妙で、とても美味しい!!!
(おかわりしたので、盛り付けが少し乱れています)

■スタンダードのメタゲーム

練習の早い段階から「グルールアグロ」「エスパー・ピクシー」「ドメイン」という既存のデッキ3つがかなり強く、本戦もこの3つが多いという予想でした。

「グルールアグロ」→デッキの安定性がNo.1で長期戦も戦えて、安全なデッキに見える。僕の感覚としては、エスパーに微不利。
「エスパー・ピクシー」→上手く回れば全てを粉砕する最強デッキ。しかしマナベースに大きな欠陥があり事故りやすいのと、エンチャントをうまく引けないと動かない。
「ドメイン」→最も長期戦に強く、カードアドバンテージで押しつぶす。ミッドレンジやカウンター中心のデッキでは勝てず、ドメインを倒すには早いクロックもしくはコンボ勝ちしないと行けない。しかしマナベースにタップインが多いため、序盤で遅れやすい。

この中で、強いプレイヤーがどの選択をするか考えた時に、アグロデッキに寄せたドメインが最も選ばれるのではないかと予想していました。
実際に、前週の直近のMOスタンダードショーケースチャレンジで、ショーンがアグロ寄せのドメインを使って優勝しています。

「グルールアグロ」「エスパー・ピクシー」の2つが多いのなら、環境のクリーチャー除去の枚数が増えるのは必然。逆に打ち消し呪文は、上位3つのデッキにあまり効かないため、コンボデッキにとって嬉しい環境が整って来ています。

それなら相手のクリーチャー除去が効きにくく、ドメインにとても相性が良い「全知コンボ」を使用しようと考えて、デッキを調整して行きました。

最初は《間の悪い爆発》のために赤をタッチしたバージョンを回したりしていましたが、2色の健全なマナベースでタップイン少な目が良いという助言により、青白2色に戻って調整。

主にショーンやピヴォと練習し、「グルールアグロ」「エスパー・ピクシー」にメインサイド共に五分の勝率があったため、「全知コンボ」を使用する事を決めました。
最終的には、僕、ショーン、ピヴォ、エイドリ、ウィリーの5人が使用。

■スタンダード使用デッキ「全知コンボ」

【アリーナインポート】

切削や手札から捨てるカードと組み合わせて《全知》を墓地に落として、《アブエロの覚醒》で《全知》を戦場に戻して勝利するコンボデッキです。

全知》を戦場に出せば、手札のあらゆる呪文がコスト0になるので、ここから《アルケヴィオスへの侵攻》を唱えればゲームに勝利します。
詳しい手順は以下の通り。

【コンボ手順】
①《アブエロの覚醒》で《全知》を戦場に戻す。《全知》は1/1飛行のクリーチャー。
②《アルケヴィオスへの侵攻》を唱えて、サイドボードから《機織りの季節》をサーチ。
③《機織りの季節》を、クリーチャーコピーとトークン以外を全バウンスで唱える。これによりクリーチャーである《全知》のコピートークンが生成され、《アルケヴィオスへの侵攻》が手札に。
④再び《アルケヴィオスへの侵攻》を唱えて、《機織りの季節》を墓地から回収して唱える。モードはトークン以外を全バウンスと2ドロー。全知のコピーが戦場にあるが、トークン以外を全バウンスなので《全知》コピートークンは戦場に残ったまま。
⑤④を繰り返して行き、2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》が見つかるまでドローし続ける。
⑥《アルケヴィオスへの侵攻》が2枚あることにより、1枚目で好きなインスタント・ソーサリーをサーチしつつ、2枚目で《機織りの季節》をサーチ。《機織りの季節》のトークン以外を全バウンスで《アルケヴィオスへの侵攻》2枚を手札に戻して、無限ループが可能になる。デッキ・墓地・サイドボード全てのインスタント・ソーサリーを無限にプレイできる状況になる。
⑦《門口の断絶》で無限に2/2トークンを生成し、除去と打ち消し呪文が無限に使えるようになる。相手のクリーチャーは全て《失せろ》して、呪文は全て《否認》するので、次のターンに無限の2/2トークンで攻撃して勝利。

アブエロの覚醒》で《全知》を戦場に戻す際、1/1飛行のクリーチャーになる事で除去される事を危惧すると思います。
このデッキはその状況をケアするのは難しくありません。1枚の除去なら《困惑の謎掛け》で打ち消して突破しますし、《アブエロの覚醒》で《全知》を戻した後、すぐに手札から《全知》をプレイすれば、その後のクリーチャー除去は気になりません。

ジョハンの一時凌ぎ》採用の理由は、アブエロの覚醒》後に手札から《全知》をプレイするパターンで無限コンボに入るためです。
1/1飛行の《全知》をクリーチャー除去されてしまうと、《機織りの季節》で《全知》をコピーできないという問題がありました。

1/1飛行の《全知》を出してから手札から《全知》をプレイ→スタックで1/1飛行の《全知》を除去されたとしても、ジョハンの一時凌ぎ》があれば《アルケヴィオスへの侵攻》をバウンスすることで、デッキを好きなだけドロー出来ます。
あとは手札を整えて、2枚目の《全知》を《航路の作成》で捨ててから《アブエロの覚醒》で戦場に戻して、その後《機織りの季節》経由の無限ループに入ります。ジョハンの一時凌ぎ》を入れないとクリーチャー除去をケアできるパターンが無くなるので、ここは必須の枠です。

門口の断絶》はエンチャント・アーティファクトを破壊しつつフィニッシャーにもなる便利な枠で、このカードの発見により余計なコンボパーツをサイドボードから削減出来ました。

既存の全知コンボには《肝冷やしの手》で《アルケヴィオスへの侵攻》を戻して2/2を大量に生成し、《英雄的援軍》で勝つパターンがありましたが、これは不必要なパーツです。
特に《肝冷やしの手》のパターンはデッキの枚数が10枚以下だと戦慄予示の枚数が足りずに勝ち切れないですし、無限コンボに入ってしまえば全て除去して全て打ち消せるので、《英雄的援軍》で速攻を付与する必要がありません。

ただしオンラインの場合は話が別です。MTGアリーナだと制限時間が足りずに無限コンボが出来ないので、オンラインで回す場合は《英雄的援軍》をサイドに入れる必要があります。

全知》を探すカード達。
ファラジの考古学者》はブロッカーとしてライフを守りつつ、《一時的封鎖》《アルケヴィオスへの侵攻》を手札に加えられるので4枚確定。
決定的瞬間》は3枚目の土地を見つけやすいのでこれも4枚確定。
錠前破りのいたずら屋》は《一時的封鎖》《アルケヴィオスへの侵攻》を手札に加えられないので、他の2マナ呪文より優先度は落ち、最もサイドアウト回数が多いです。手札に《全知》が来ることを考えると、《航路の作成》の枚数を優先した方が良いかも知れません。

実は《門口の断絶》を発見したのがデッキリスト提出の2時間前だったので、それまでは無限に入った後に《機織りの季節》のコピー先の勝ち手段として《錠前破りのいたずら屋》が必要と考えていました。本来は不要かも。

エファラの分散》はグルールの速度に追い付くための1マナバウンス。ドメインやエスパーピクシーには効果が薄いですが、それでも《全知》コンボ中に自分の《ファラジの考古学者》をバウンスして繋げて行く事が多かったので採用しました。

グルールとエスパーピクシーが多いと考えたため、両方に効く《一時的封鎖》は多めに採用。《一時的封鎖》で時間を稼いだ後、ドロー呪文でコンボを揃えて行きます。

食糧補充》は新セットの中でも最強クラスのカードで、既にレガシーやヴィンテージでも活躍しており、《時を越えた探索》の再来とすら言われています。このカードを使いたいからこそ、全知コンボを選びました。
後攻で3ターン目にプレイすると手札が8枚になるので、《全知》を捨てる事が頻発します。覚えておきましょう。

サイドボード後に墓地対策や《否認》などで対策されるデッキなので、相手の対策をずらす目的で《激浪の機械巨人》を採用しています。
アーティファクト・クリーチャーなので《アブエロの覚醒》で戦場に戻せるのもスマート!

■ドラフト

・1stドラフト

1パック目の初手は《アフターバーナーの専門家》。単体で6/4までサイズアップして、相討ちしても消尽能力の起動で戻ってくる強力なレアです。
迷わずピックしますが、今回の緑は最強色で人気になる事が予想されるので、流れが悪かったら緑を諦める事も考慮します。

1パック目2手目は《墓所呼びの戦車》。5/5威迫が強く、青や赤の手札を捨ててドローするカードと組み合わせるとより良いです。
その後は黒のカードを中心にピックしますが、予想通り緑のカードは全く流れて来ません。

1パック目5手目に《砂丘滑り》、1パック目6手目に《去りし栄光、ザフール》と流れてきて、明らかに白黒が空いているのでピック。


除去が少ないのが懸念ですが、クリーチャーの質は高く、墓地回収で長期戦に強いデッキが出来ました。
最終戦でレアだらけの赤緑に除去が無いのが響いて、2勝1敗で終了。

・2ndドラフト

1パック目初手は《牙の守護者》。かなり強いアンコモンです。
これか《運送の魔道士》の2択でしたが、緑の方が強い色なので《牙の守護者》を選択。

1パック目2手目は《栄光荒野のオオヤマネコ》。
霊気走破のドラフトは緑が強く白が弱い環境ですが、それでも白は無視するほど弱いわけではなく、《栄光荒野のオオヤマネコ》のように強力なアンコモンが流れてくるなら白に入る理由になります。白緑もそんなに悪くない。

1パック目3手目は、またもや《墓所呼びの戦車》。
その後黒のコモンは流れて来ますが、緑のカードは全く見ないまま1パック目終了。最強色なだけあって、緑を出来る気配がない!
黒単気味にピックして、白か赤かどちらかを決めていく形でピック。

しかし今回も肝心の除去は全く取れず、1stドラフトよりもクリーチャーの質が劣る白黒に。


結果は1勝2敗。
サイドボードの3/3飛行速攻を上手く駆使すれば勝てたゲームが2回ほどあり、ミスで負けた自覚があります。

プロツアーのドラフトで3-0するにはレアや席の位置など運が絡みますが、1勝2敗で終わるか2勝1敗になるかはサイドボードやプレイングが大きく関わってくると自覚しています。
チームコスモスは素晴らしいドラフト練習環境が整っており、何回か繰り返して行けば僕のリミテッドの実力も確実に上がるはず!

■大会結果

・スタンダード初日
×エスパーピクシー
〇エスパーピクシー
〇エスパーピクシー
〇ジェスカイ眼魔
〇ドメイン
・スタンダード2日目
×ジェスカイ眼魔
〇ドメイン
×グルール
〇ゴルガリ
×エスパーピクシー

スタンダード6勝4敗
ドラフト3勝3敗

合計9勝7敗で、90位。

■おわりに


大会後は飲み会しつつドラフト!

初めての海外チームでの練習と、1週間の練習合宿。
期待も不安も両方ありましたが、せっかく楽しそうな勧誘を受けて、断ったら10年後に後悔しそうだったので、挑戦する事を決めました。

後悔と言うものは、行動した事より、行動しなかったことに対して起こるものです。
「あのとき、ああしていれば」の大半は、やらなかった事。

実際、練習する日々がとても楽しかった!
しかしプロである以上、楽しいだけではなく結果を出すのが最優先です。9勝7敗は正直イマイチ。
この経験を踏まえて、次回はもっと尽力するぞ!

それではまた。


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