MTG │ デッキ解説 │ 井川良彦【パイオニア:ラクドス果敢】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
今回の記事では、先週末に開催された第15期パイオニア神挑戦者決定戦で使用した【ラクドス果敢】について、簡単に解説していきたいと思います。
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■【ラクドス果敢】とは?
このデッキは、《僧院の速槍》や《精鋭射手団の目立ちたがり》といった優秀な生物を展開して、それに《巨怪の怒り》、《タイタンの力》などを打ちながら殴る、かなりシンプルなデッキです。
『ブルームバロウ』で得た2種の「勇姿」クリーチャーの《心火の英雄》、《熾火心の挑戦者》が特に強力。スタンダードだけでなくパイオニアでも大活躍しています。
デッキのキルターンは非常に速く、相手がノーガードであれば3ターン・キルも頻発します!
その速度を実現してくれるのが《無感情の売剣》による《合同火葬》です。
パワーが8~10ぐらいになった《精鋭射手団の目立ちたがり》でアタック→投げ飛ばしても良いですし、《心火の英雄》であればパワー7しかなくても自身の死亡時誘発型能力と合わせて7×3の21点を叩き込むことができます!
まだこのデッキの動きを見たことがない人は、ぜひ第15期パイオニア神決定戦の試合を見てください。その強さにビックリしますよ。
似たようなデッキとして【ボロスヒロイック】がありましたので、少し比較してみましょう。
【ボロスヒロイック】が「クリーチャー」・「強化呪文」・「守る呪文」と3要素に分かれていた=マリガン率も高く手札破壊に弱かったのに比べて、【ラクドス果敢】は基本的に「クリーチャー」・「強化呪文」の2要素しかほぼ入っていないので、かなり安定して動きます。
クリーチャー数(《立身+出世》や《熊野と渇苛斬の対峙》も含めた数)も多く、単体除去1枚で崩れるといったケースも【ボロスヒロイック】に比べて少ない印象です。
また、最速3キルというラインこそ同じですが、【ラクドス果敢】は純粋なアグロデッキとしての性能が高く、速攻クリーチャーも多いので相手からしても対処しづらい構成に仕上がっています。
以上から総合すると、【ラクドス果敢】は【ボロスヒロイック】のほぼ上位互換と言っても差し支えないでしょう。
※2024/09/18撮影。goldfishより。20%を超えるのは中々凄い。
Magic Onlineで使われ始めてから、見た目に反した圧倒的な強さ(個人の意見です)とデッキの安さにより、一気にトップメタに上り詰めています。
※晴れる屋より引用。慎也さんおめでとう!
この【ラクドス果敢】、第15期パイオニア神挑戦者決定戦でも使用人数が二番人気、成績も優勝&トップ16に優勝者合わせて4名と圧倒的。まさに今が旬のデッキといえるでしょう。
■使用したリストおよびカード採択について
僕が使ったのは以下のリスト。
第15期パイオニア神挑戦者決定戦 ラクドス果敢 | |
---|---|
デッキリスト | |
1:《山/Mountain》 4:《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》 2:《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》 4:《血の墓所/Blood Crypt》 4:《硫黄泉/Sulfurous Springs》 2:《バグベアの居住地/Den of the Bugbear》 2:《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》 1:《反逆のるつぼ、霜剣山/Sokenzan, Crucible of Defiance》 20 lands 4:《心火の英雄/Heartfire Hero》 |
2:《致命的な一押し/Fatal Push》 4:《巨怪の怒り/Monstrous Rage》 4:《タイタンの力/Titan’s Strength》 4:《祖先の怒り/Ancestral Anger》 3:《立身+出世/Claim+Fame》 4:《熊野と渇苛斬の対峙/Kumano Faces Kakkazan》 21 other spells 1:《湧き出る源、ジェガンサ/Jegantha, the Wellspring》 |
比較的新しいデッキなので、簡単にではありますが順に解説していきます。
・《僧院の速槍》、《心火の英雄》、《精鋭射手団の目立ちたがり》、《熾火心の挑戦者》
確定枠。この16枚はすべてのリストで4枚採用されていると思います。
無理やりオール・インせずとも、シンプルに展開していくだけで十分強力なので、基本的にはサイドアウトはしない枠ですね。相手の除去が少なく、かつ地上を止めてくる相手(例:【緑単信心】)には一番弱い《僧院の速槍》を1枚ぐらい減らしても良いかもしれません。
・《熊野と渇苛斬の対峙》
入っていないリストも散見されますが、4枚採用されていることが多い準スタメンカード。
《熊野と渇苛斬の対峙》スタートすると、相手の2点火力構え(例:【イゼットフェニックス】の《焦熱の衝動》)を無視しながらタフネス3のクリーチャーで殴れたりもしますし、シナジー関係なく純粋に強いカードなので個人的には採用派です。サイドアウトをしたこともないかと。
・《無感情の売剣》
このデッキの切り札・飛び道具的な存在ではありますが、リーサル時以外にも除去としてプレイしたり、ただの2マナクリーチャーとしてプレイしたりと選択肢の多いカードです。
ミラーマッチのサイド後では《熊野と渇苛斬の対峙》→コイツプレイで相手の《レッドキャップの乱闘》、《チャンドラの敗北》構えをスカすパターンもあるので覚えておきましょう。僕はこのプレイが思いつかなくて負けました。
除去が多い相手には1枚程度減らしたりしてましたが、合っているかは自信ナシ。悩んだら減らさないほうが良さそう。
・《巨怪の怒り》、《タイタンの力》
このデッキの影の主役。基本的にはクリーチャーから展開していって最後にスペルを打ちたいですが、手札の状況や1-2ターン後のリーサルを考えて早めに打ち始めることもあります。打点計算をしっかりすることが大事です。
減らしすぎるとデッキが機能しなくなるので、なるべく触りたくない枠。少なくとも《巨怪の怒り》がアウトされることはないでしょう。
・《祖先の怒り》、《弱者の力》
果敢誘発&打点をトランプルで通すための枠。基本的な打点は《祖先の怒り》の方が高いですが、【サクリファイス】戦などではインスタントでトランプルを付けられる《弱者の力》に軍配が上がります。
ここの選択は一長一短なので、メタだったり好みで良いんじゃないかなと今のところ考えています。僕はハツカネズミがいないときに打点が上がらないのを嫌って《祖先の怒り》にしました。
《致命的な一押し》や《思考囲い》などと差し替えでよくサイドアウトする枠でもあります。
・《立身+出世》
クリーチャー数の水増しでもあり、果敢を複数回誘発させられるナイスカード。除去られた《心火の英雄》や《精鋭射手団の目立ちたがり》を復活させつつ強化して、急角度でリーサルを決めることも多々。
表=《立身》がプレイできるかどうかが鍵なので除去の薄いデッキにはもちろん効果が低いですが、イゼットフェニックスやラクドスミッドレンジのような除去の多いデッキ相手には重宝します。メインとサイド合わせて3枚ぐらい欲しい。
・《致命的な一押し》
最初は除去がほぼ無いリストを回していましたが、あまりにもミラーマッチが運ゲー過ぎるのでメインに昇格させました。なんだかんだで除去は偉大。
ミラーマッチを強く意識するならメインから4枚もアリですが、除去を多く入れすぎると自分の動き=押し付けが弱くなってしまうので、個人的には3枚以下に抑えるべきかなと考えています。
デッキの構造上「紛争」はあまり達成できませんが、《熊野と渇苛斬の対峙》第3章での紛争達成はお忘れなく。
・《ラムナプの遺跡》
マナベースの強さはデッキの強さ。このカードの存在のおかげで、「リーサルはないが無理やりライフを削っておいてトップデッキお祈り」というプレイも可能です。こういうデッキにおいて、盤面以外で打点が出るカードは偉大。
ここからはサイドボード。
・《湧き出る源、ジェガンサ》
相手が除去を構えているときに回収しつつ、最終的にはちゃんと1枚分のリソースとなってくれる頼もしい相棒。
今後ダブルシンボルの新しいカードが出たら/見つかったら不採用になる可能性もありますが、現状のリストだと基本的に入れ得だと思ってもらって間違いないです。
《致命的な一押し》や《焦熱の衝動》、《塔の点火》といった軽量除去が当たらないので、打てずに手札に余っていた《巨怪の怒り》のプレイ先=ダメージ源として想像の倍ぐらい活躍してくれます。モダンでも大人気の《湧き出る源、ジェガンサ》を信じろ。
・《無謀な怒り》
メインに採用しているリストもあります。除去できる幅が広く有用なのですが、メインからこのカードを採用していた【ボロスヒロイック】に比べるとこれを打つための生物が少なく(単体だと果敢2種のみ)、また後手で捲るには《致命的な一押し》の方が確実なのでサイドにしました。
・《チャンドラの敗北》、《レッドキャップの乱闘》
どちらも主にミラーマッチ用のカードです。赤くて強いクリーチャーということで《波乱の悪魔》を対処するために【サクリファイス】相手に入れることも可能。
土地をサクる必要はありますが、【セレズニア天使】などに対してもプレイできる《レッドキャップの乱闘》に対して、1点打点が高いためミラーで安心感がある&《湧き出る源、ジェガンサ》を対処できる《チャンドラの敗北》。こちらもメタゲームに合わせてプレイすると良いでしょう。
ミラーはお互い除去りあった末に《湧き出る源、ジェガンサ》が出るゲーム展開もあるので、個人的には《チャンドラの敗北》派。
・《熱烈の神ハゾレト》、《ウラブラスクの溶鉱炉》
どちらも除去が多いデッキ相手のサイドボード。4マナと重いですが劇的であり即効性もある《熱烈の神ハゾレト》か、トップデッキしても弱いが早いターンに定着すると強く、果敢も誘発してくれる《ウラブラスクの溶鉱炉》。
僕はラクドスミッドレンジとイゼットフェニックスを強く意識したかったので《熱烈の神ハゾレト》を優先しました。《削剥》や《コラガンの命令》などで対処されないのが◎。流石に戦場にさえ出れば劇的な強さだったので、2枚目も視野です。
★その他、採用候補のカードについて
・《多様な鼠》
スタンダードでも大活躍のハツカネズミ。2マナとしても4マナとしても優秀ですし、二段攻撃・トランプルともにパンプスペルの多いこのデッキと相性が◎。
僕は現状《立身+出世》を優先していますが、クリーチャー枠として《立身+出世》を減らしてこのカードを採用するのもアリだと思います。
・《戦慄衆の秘儀術師》
逆にこちらはあまりオススメしません。
デッキの方向性が攻める方向に寄っているのに対して、このカードだけ少し違う方向を向いてしまっています。出したターンに何もしないのが大マイナス。
《巨怪の怒り》を使いまわしたりサイド後に《思考囲い》を再利用したりと活躍するシーンもありますが、ブレやすいカードであり、「ライフを攻める」ことに特化しているからこそ安定しているこのデッキとは親和性は高くないと思います。
・《槌手》
不安定なカードなので個人的にはあまり手に馴染みませんでしたが、【緑単信心】のような除去が薄くて肉厚のデッキや、《不屈の独創力》《異形化》のように《偉大なる統一者、アトラクサ》を出してくるデッキにはカウンターパンチ手段として強力です。
メタゲーム次第ではまた採用も一考できる一枚。
・《流動石の注入》
基本的には除去としてプレイしつつ、自身のクリーチャーにプレイすることにより打点にもなるという一枚。
ですが除去としての性能が低いので、わざわざサイドに取るのは微妙な気がしています。こういった効果が低くて腐りづらいカードは入れるならメインの方が良さそう。
・《岩面村》
「勇姿」を誘発させることができ、打点も上がるためフラッドをカバーしてくれる一枚。
ではあるのですが、《バグベアの居住地》や《ラムナプの遺跡》でもマナフラッドはカバーできますし、何より呪文のための色マナを供給してくれないので「1+1+1」のアクション(=一番リーサルに関わる部分)を阻害する可能性があるのが大マイナス。全くオススメしません。
■終わりに
ということで簡単ではありましたが、「今が旬なデッキ」ということで【ラクドス果敢】の簡単な解説でした。
デッキの構造上固定枠が多いデッキではありますが、その分どこで差を付けるか、メタに合わせてどう変えたかがダイレクトに勝率に響くでしょう。今後どういった方向でデッキが進化していくか楽しみです。
【ラクドス果敢】は基本的にはアドバンテージが取れないデッキですし、同じマナ域のカードが多い=選択肢が常に多く、ダメージ計算や除去への対処/クリーチャーの出し方が盤面によって変わる、プレイ難度が非常に高いデッキです。チャンピオンズカップファイナルや直前予選など、大きな大会での選択肢として考えているのであれば、一定期間の練習を強くオススメします!
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!