MTG │解説記事 │ 井川良彦【禁止改定後環境考察】

こんにちは。Rush Prosの井川(@WanderingOnes)です。

2020年8月3日深夜。《大変動/Cataclysm》。

「2020年8月3日 禁止制限告知」

2020年8月3日 禁止制限告知|読み物|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

スタンダード、パイオニア、ヒストリック、そしてブロールの4フォーマットで禁止/一時停止が急遽発表&即時に発効されました!!

今回の記事では、僕自身が直近でプレイしているスタンダードとヒストリックの2フォーマットについて、禁止改定後の環境を考えていきたいと思います。

※ラッシュメディア記事内紹介のカードは
カード名のリンク、記事末尾の
バナーを
クリックで通販サイトへアクセスできます

通販サイト(https://www.cardrush-mtg.jp/)

■スタンダード

禁止になったのは《荒野の再生/Wilderness Reclamation》、《成長のらせん/Growth Spiral》、《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》、《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》の4枚。

最強デッキだったティムール/4色再生、その再生デッキには弱いもののアグロデッキを潰していた猫かまどコンボ、そしてマジックの楽しさであるインスタントタイミングを奪いゲームを不快なものにしていたテフェリーが禁止と、タイミングや禁止自体の是非はともかくとして、環境のバランスを考えると非常に納得のいく、スタンダードのローテーションまでの残り2ヶ月を楽しんでもらおうというWizardsの意図が伝わる禁止改定といえます。

これによりスタンダードのメタゲームが一新され、これまで再生やサクリファイスによって迫害されていたデッキたちが再び狼煙を上げることとなるでしょう。

その先鋒として真っ先に上げられるのが、ティムールアドベンチャーです。

ティムールアドベンチャー

Renato Spinelli「ティムールアドベンチャー」
Red Bull Untapped International Qualifier Ⅲ – Top64

ティムール再生とサクリファイスに不利なためメタ外まで追いやられていたこのデッキ。目の上のたんこぶだったその2つのデッキが退場したため、一気にトップメタに躍り出ることが容易に予想されます。

幸運のクローバー/Lucky Clover》《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》といった軽くてアドバンテージが稼げるカードもあるためコントロールに有利に戦えるのがティムールクローバーの魅力。

エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》や《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》に対して《幸運のクローバー/Lucky Clover》というカードが強く、対処しづらいこともその強さに拍車をかけています。

そしてコントロールに強いだけでなく、《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》というアグロデッキに強いパッケージを有しているため、赤単や緑単といったデッキにも五分以上に戦えます。

「出来事」という1枚で2枚分の働きをするカードで盤面を支えつつ、《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》《幸運のクローバー/Lucky Clover》、そして《僻境への脱出/Escape to the Wilds》でアドバンテージ差をつけて一気に勝利します。

基本的に「土地が27枚・クリーチャー&スペルが33枚」という構造で、そのスペルのうち30-31枚(クリーチャー24枚・《幸運のクローバー/Lucky Clover》4枚・《僻境への脱出/Escape to the Wilds》2-3枚)はほぼ確定スロットなので、フリースロットは2-3枚程度しかありません。

安定性重視の《冒険の衝動/Adventurous Impulse》、追加の妨害である《霊気の疾風/Aether Gust》、ロングゲームに強い《グレートヘンジ/The Great Henge》、ミラーを意識しての《萎れ/Wilt》など、この数枚のスロットが重要になります。また《願いのフェイ/Fae of Wishes》を使うためサイドボード15枚のうちの大部分をサーチ用の1枚挿しで構成されますが、何が必要で何が不要なのかしっかりと厳選する必要があるため、思考停止に陥らず1枚1枚しっかりと見定めましょう。

マルドゥウィノータ

Michael Jacob「マルドゥ・ウィノータ」
2020プレイヤーズツアーファイナル – トップ8

前環境の最後の大会、プレイヤーツアーファイナルで一躍大活躍し上位入賞を果たしたマルドゥウィノータ。

ティムール/4色再生の除去の薄さ・ミラーマッチへの意識の高さという大会独自のメタゲームを突いた名作という点では黒単と同じでしたが、爆発力の高さ、アグロデッキへの耐性などを考えるとこちらのほうが新環境にもマッチしていると考えられます。

デッキ名を冠している《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》だけでなく《敬慕されるロクソドン/Venerated Loxodon》が絡んだ場合の展開力・サイズは他のアグロデッキの追随を許しませんし、《無私の救助犬/Selfless Savior》《バスリの副官/Basri’s Lieutenant》といったカードのおかげで全体除去への耐性もある程度担保してあるのが強みです。

プレイヤーツアーファイナルの時点では《霊気の疾風/Aether Gust》全盛だったため《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》以外のクリーチャーはなるべく白と黒に寄せた構成になっていましたが、今後はメインボードの《霊気の疾風/Aether Gust》の枚数も控えめになることが予想されるため、クリーチャーのラインナップを変更することも考えられます。

特に3マナ域は《軍勢の戦親分/Legion Warboss》《災いの歌姫、ジュディス/Judith, the Scourge Diva》《軍勢の切先、タージク/Tajic, Legion’s Edge》といった優秀なクリーチャー陣が揃っていますので、メタゲームに合わせてうまく選択することがカギとなりそうです。

緑単アグロ

Andrew Cuneo「緑単アグロ」
2020プレイヤーズツアーファイナル

ティムール/4色再生の退場により《霊気の疾風/Aether Gust》の採用率が下がり、それにより得をするのが赤単・緑単・グルールといったこれまで割を食っていたアグロデッキ。

その中でも安定感があり、サイドボードまで見ても単色の割に幅広い戦い方ができる緑単アグロに注目しています。

1ターン目から動ける上に打点が高く、除去やプレインズウォーカーといったカードもあるため意外とバランスよく戦えるのがデッキの魅力。

恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》という緑単に強いカードが複数採用されているティムールアドベンチャーには苦戦を強いられそうではありますが、《水晶壊し/Gemrazer》や《アーク弓のレインジャー、ビビアン/Vivien, Arkbow Ranger》を駆使すれば有利な盤面を形成することもできるでしょう。

自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》を活用できるデッキは?

荒野の再生/Wilderness Reclamation》《成長のらせん/Growth Spiral》こそ禁止されてしまいましたが、スタンダード最強カードの一角であった《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》は未だに健在です。

この《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》を一番うまく使えるデッキを探す旅に出るプレイヤーも多いでしょう。

成長のらせん/Growth Spiral》がなくなってしまったため軽いスペルが減ってしまい、少し脱出しづらくはなってしまいましたが、そのカードパワーに疑いようはありません。

自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》と相性の良い《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》は再評価されるでしょうし、ティムールエレメンタルのようなデッキの復権も考えられます。

トップメタになるであろうティムールアドベンチャーを意識するためには《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》《幸運のクローバー/Lucky Clover》の2種をしっかりと対処する必要があるので、《萎れ/Wilt》《ゴルガリの女王、ヴラスカ/Vraska, Golgari Queen》《戦争の犠牲/Casualties of War》を無理なく使え、《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》も搭載できるスゥルタイランプがその候補に上がりそうですね。

2マナ域を《思考消去/Thought Erasure》《無情な行動/Heartless Act》といった優秀なカードで埋められるのもグッド。

■ヒストリック

ヒストリックでは2枚のカードが一時停止になりました。スタンダードと同様に猛威を奮っていた《荒野の再生/Wilderness Reclamation》、そして高い使用率と不快感が許されなかった《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》です。

荒野の再生/Wilderness Reclamation》の退場により最も得をするのはゴブリンです。

メインからインスタントで打てる全体除去である《溶岩震/Magmaquake》があり、さらにサイドボード後には《炎の一掃/Flame Sweep》《霊気の疾風/Aether Gust》も追加されるため、必殺技である《上流階級のゴブリン、マクサス/Muxus, Goblin Grandee》で勝つことが難しく、かなり相性の悪いマッチアップでした。

「ゴブリン」

ゴブリンのデッキパワー自体は非常に高く、3-4キルをすることも珍しくないデッキなので、再びトップメタに躍り出る可能性が高いです。

また、《不屈の巡礼者、ゴロス/Golos, Tireless Pilgrim》を使用した形のバント《死者の原野/Field of the Dead》デッキも《荒野の再生/Wilderness Reclamation》の退場で有利になったデッキだと言えるでしょう。

「バント原野」

時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》を失ったのは痛手ですが、同じ《死者の原野/Field of the Dead》デッキでありながら相手だけ《発展+発破/Expansion+Explosion》という必殺技を持っていた原野再生には不利だったので、むしろポジションはよくなるかなと思います。

時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》は柔軟なカードで強力ではありましたがデッキの核という訳ではなく、今回のリストのようにサイドのみの採用のケースもあったため、他のカードでスロットを埋める形で継続できるでしょう。

白単/白青オーラは今回の禁止改定でプラスとマイナス、どちらの影響も受けています。

「白青オーラ」

再生という本来のターゲット=有利デッキがいなくなりましたが、一方で《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》という苦手なカードも同時に退場したこと、そして《静寂をもたらすもの/Hushbringer》というキラーカードが刺さる=相性が良いゴブリンのポジションも良くなるということで、現状のまま上位メタに居座ると予想されます。

その他のデッキを見てみると、時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》の退場により大きな痛手を受けたのが《隠された手、ケシス/Kethis, the Hidden Hand》コンボ、《死の国からの脱出/Underworld Breach》コンボの2つです。

どちらも《精励する発掘者/Diligent Excavator》《モックス・アンバー/Mox Amber》を使うため《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》の存在は偉大であり、このカードから仕掛けることでカウンターやインスタントタイミングの妨害を防いだり、相手のクリーチャーをバウンスして時間を稼いだりと複数の役割を果たしていました。

デッキの根幹自体は残りますが、デッキの大幅な弱体化が考えられるため使用率はかなり下がることになるはずです。

■まとめ

スタンダードは禁止カードも多く、激動が予想されます。トップメタであった再生、そして再生以外に強かったサクリファイスが軒並み禁止になったため、これまで余り勝てなかった多くのデッキにチャンスが生まれています。

今回取り上げたデッキ以外にも強力なデッキが眠っていると思いますので、ぜひ色々と試してみてください!

今週末のRedBull Untappedだけでいえば、素直に最も強力であろうティムールアドベンチャー、もしくはそれに強そうなスゥルタイランプのどちらかに絞って腕を磨くのが最も効率が良いと思います。

ヒストリックについてもアリーナオープンDay2(Bo3)で最も成功していた原野再生が脱落したため、メタゲームの変化が起こるでしょう。

特に原野再生に不利がついていたデッキがこれから勢力を伸ばすことが予想されるので、ゴブリンを始めとしたデッキたちの復権に期待です。

また8月中旬~下旬頃にはアモンケットリマスターズが追加されるので、そちらも楽しみですね。

そんな感じで今回の記事はここまで。熱中症にならないようしっかり水分を摂りつつ、マジックを楽しんでください!

記事内で紹介したカードはカードラッシュ通販店で販売中です
↓クリックで通販サイトへ↓

関連記事一覧