デュエルマスターズ │ 環境紹介 │ 【DM08】~【DM11】

by 安田 悠太郎

2020年4月23日、デュエプレで第3弾拡張パック「英雄の時空 ETERNAL RISING」が配信されました。

当日に実装が発表されたのは、ご存知《無双竜機ボルバルザーク》。

現役だった頃と比べると、強制敗北効果と破壊効果が削られ、だいぶ大人しいテキストになりました。

その甲斐あってか(?)第3弾配信当初のデュエプレ環境で名を馳せたのは、《無双竜機ボルバルザーク》ではなく……

これまたテキストを変更されている《ダイヤモンド・ブリザード》でした。

こうしたクリーチャーたちがアナログの世界に登場したのは、2004年のこと。当時の競技シーンは、どのような環境だったのでしょうか?

■DM-08「超神龍の復活」環境(2003年12月25日〜)

初めての全国大会終了後に発売されたDM-08では、《超神龍アブゾ・ドルバ》や《超竜バジュラ》、《幻想妖精カチュア》、《紅神龍ジャガルザー》が登場。

デュエプレにおける彼らは、第2弾となる「伝説の再誕」で実装されていますね。《超竜バジュラ》は構築済みにも収録されていたため、多くのプレイヤーがデッキに投入してみたのではないでしょうか。

アナログのカードと並べてみると、効果やコストが少しモダンになっています。

ほか、デュエプレではリメイクされていた《超神龍バイラス・ゲイル》も、DM-08で収録されています。

……ただし。

DM-08発売当時、まだ《アストラル・リーフ》は殿堂入りしておらず、現役でした。

そんな環境で、コストの重い進化ドラゴンたちが使われるはずもなく。ここで登場したドラゴンたちは、そのほとんどが埋もれてしまいました。

■DM-09「覇道帝国の絆」環境(2004年3月9日〜)

DM-09では、《光器ペトローバ》が登場。ほか、デュエプレに実装されている《呪縛の剣豪バロスト》、《マーチング・スプライト》もこのパックに収録されています。

見比べてみると、テキストだけではなくイラストの色合いも少し変わっていますね。

そしてDM-09発売の翌週、3月15日。デュエル・マスターズ史上初めての殿堂入りが施行され、以下のカードが1枚しか使えないようになりました。

《ストリーミング・シェイパー》
《エメラル》
《サイバー・ブレイン》
《ディープ・オペレーション》
《アストラル・リーフ》

見事なまでに青一色。ドローソースというドローソースが規制されています。

さて、この殿堂リスト+DM-09までのカードプールで、さっそく公式大会が開催されました。当時のデュエル・マスターズの公式大会は、エリア予選と日本一決定戦だけではなかったんですね。

2004年の春先に行われた公式大会の名称は「スプリングチャレンジバトル(SCB)」。日本一決定戦には結びつかないイベントで、現代の競技シーンで言えば、初期の超CSのような立ち位置です。

この環境で強烈な印象を残したのは、SCB関東で優勝した『アクアンブラック』でした。

《アクアン》で手札を稼ぎ、《スケルトン・バイス》で相手の手札を奪い、《機怪人形ガチャック》と《呪いの影シャドウ・ムーン》で盤面の主導権を握る。それが『アクアンブラック』です。

流石にデュエプレには《スケルトン・バイス》は収録されなかったものの、代わりに調整版の《デモニック・バイス》が実装されています……が、《アクアン》もナーフされてしまっていますし、同じデッキを組むのは難しそうですね。

この時期には『アクアンブラック』のほか、《光器ペトローバ》でガーディアンを強化して戦う『アクアンホワイト』もありました。

『アクアン』系以外で言えば、いわゆる『除去コントロール』もあるにはありました。

しかし、《アクアン》の稼ぐアドバンテージに追いつき対等に戦うためには《ロスト・ソウル》を撃ち込むことが最低条件という有様。

『化身コン』に代表される、《ヘル・スラッシュ》を使ったライブラリアウト系のアーキタイプも存在したものの、公式大会の「1試合10分」という過酷な条件に適応しきれず、上位入賞は困難でした。

(現在の公式大会は1試合20分ですが、当時はまだ10分でした)

そういうわけで、《アストラル・リーフ》が去った後の環境も、相変わらず水文明が支配的なのでした。

■DMC-13 「コロコロ・ニュージェネレーション・パック」環境(2004年5月31日〜)

いわゆる再録パックで、スーパーレアとして《凶星王ダーク・ヒドラ》が登場します。

このクリーチャーの登場と《光器ペトローバ》によって、《アクアン》を軸にした種族デッキ、いわゆる『アクアンブラックホワイト』が組めるようになりました。

人気だった種族は、ガーディアンやイニシエート。いずれもブロッカーを並べるタイプの種族です。《機神装甲ヴァルボーグ》のようなビートダウンは、完全に押さえ込まれてしまいました。

この頃はカードアドバンテージが重視されており、「相手のリソースを枯らして勝つ」プレイスタイルが主流でした。

シールドをブレイクするのはほとんど勝利が確定してからで、リソースを枯渇させるために《ヘル・スラッシュ》が使われていたとか。

《アストラル・リーフ》のぶつけ合いから一転、そんな感じのゲームに変化していったのです。

■DM-10「覇道帝国の絆」環境(2004年6月26日〜)

夏、DM-10が発売されます。
このパックで《無双竜機ボルバルザーク》が登場したわけですが、当初からその強さが認められていたわけではありません。

理由はいくつかありますが、もっとも大きかったのは「SCBで結果を残したのは《アクアン》」という事実でしょう。

既に述べたように、当時は『アクアンブラックホワイト』の全盛期。火と自然の多色カードを出されたとして、それを軸にデッキを組もうとはなかなか思えなかったのです。

DM-10の発売当初、優良カードとして認識されていたのは、《電脳聖者エストール》や《電脳聖者タージマル》でした。

こうした「水を含む多色カード」は、マナ基盤を安定させながら《アクアン》のヒット率を上げることができたので、重宝されたんですね。

特にこの2枚は種族にイニシエートを持つこともあって、《凶星王ダーク・ヒドラ》との噛み合わせが良く、『アクアンホワイト』にはイニシエートが採用されるようになりました。

「水を含む多色カード」で言えば、ほかには《陽炎の守護者ブルー・メルキス》も注目されていたようです。

これら当時の注目カードがしっかりデュエプレにも実装されているところを見ると、開発チームにはプレイヤー出身の、DM歴の長い方がいらっしゃるのかもしれません。

さて、当時のエリア予選は夏に実施されていました。2004年のエリア予選の出場者は、DM-10までのカードプールで戦うことになります。

『アクアンブラックホワイト』だらけですから当然、ミラーマッチが多発します。

上位プレイヤーの間ではメタが進んでおり、同型対策のためにトリガーの比率を落とし、「《凶星王ダーク・ヒドラ》経由で拾える除去」こと《コーライル》や、追加のドローソースである《雷鳴の守護者ミスト・リエス》を採用する構築が生まれていました。

エリア予選の序盤では、順当に《アクアン》系のデッキが勝利していました。しかし同系戦を制する為にS・トリガーが減っていった隙を突き、中部エリア予選では『赤緑ボルバル』を持ち込んだろっぴー選手が優勝を飾ります。

それを受け、多くのプレイヤーは《無双竜機ボルバルザーク》を使うように……はならず、《アクアン》をチューニングして《無双竜機ボルバルザーク》に勝つ方向へシフトしました。

これまで同系戦ばかり見てデッキを構築していたけれど、ビートダウンとも戦えるように修正しようというわけです。

そんなわけで、最後の関東エリア予選でも相変わらず『アクアンブラックホワイト』が大勢を占めていました。

そこで準優勝を果たしたのが、K.BLUE選手の『青赤緑ボルバル』、通称『ボルバルブルー』です。

ベースとなった『赤緑ボルバル』に《アクア・サーファー》や《アクア・ハルカス》など水文明のカードを投入したデッキで、いわゆるシータカラーの純粋なビートダウンでした。

さて、決勝でこのデッキを破って優勝したのは、前年度の日本一である大日向選手の『白赤速攻』。……と書くと、当時からメタの一角を『白赤速攻』が占めていたように見えますが、そういうわけではありません。

対戦したK.BLUE選手ですら解説不能な、変わった構築のデッキだったそうです。
(記事の末尾にリストを掲載しておくので、良かったら組んで回してみてくださいね)

■DM-11「無限軍団の飛翔」環境(2004年9月18日〜)

《アクアン》に始まり《無双竜機ボルバルザーク》に終わったエリア予選。そこから日本一決定戦へ至るまでの間に、DM-11が発売されています。

代表的なカードは《聖皇エール・ソニアス》、《英知と追撃の宝剣》、《魂と記憶の盾》といった、強力だけれどデュエプレには未登場の面々と……それに加えて《ダイヤモンド・ブリザード》に《冒険妖精ポレゴン》。

 

こうして並べてみると実装当初の《ダイヤモンド・ブリザード》、上方修正どころの騒ぎではないですね。下方修正されてしまったのも納得です。

一応、アナログ側の効果でも『スノーフェアリー』の中核として使用されていましたが、令和の時代に復活させるには力不足と考えられたのでしょう。

さて、日本一決定戦はこのDM-11環境で開催されました。

『ボルバルブルー』のリストは既に知れ渡っていたものの、全員が《無双竜機ボルバルザーク》を選択したかといえば、そういうわけではありません。

《アクアン》を使い、《無双竜機ボルバルザーク》をメタる。そんな選択をした選手もいたのです。

日本一決定戦に出場した月心選手の『アクアンホワイト』が好例でしょう。彼の選択はイニシエートでもガーディアンでもなく、グラディエーターでした。

「選ばれない」効果を持ち高パワーな《聖皇エール・ソニアス》は、当時の環境では除去手段が限られており、場に出されてしまうと止めるのは困難でした。
デュエプレにグラディエーターともども実装されたら、往年の実力を発揮してくれるかもしれませんね。

そんな《アクアン》と《無双竜機ボルバルザーク》の対立構造を持っていた2004年の日本一決定戦ですが、決勝に辿り着いたのはろっぴー選手の『ボルバルブルー』と、大日向選手の『白赤速攻』でした。

そして、ろっぴー選手がみごと日本一に輝いた……というのはご存知の通りです。

《無双竜機ボルバルザーク》、決して登場当初から圧倒的な強さを誇っていたわけではなかったんですね。有力な対抗馬として《アクアン》が存在したため、1強環境にはならなかったのです。

のちに「ボルバルマスターズ」として知られる時代は、翌2005年のこと。強制敗北効果という問題こそあったものの、2004年の競技シーンは、それなりにメタが回っていたのでした。

こうして見るとデュエプレ、当時の状況を踏まえてよく調整されていますよね。《アストラル・リーフ》も《アクアン》も、《無双竜機ボルバルザーク》だって収録されているのに、ゲームが崩壊することなく続いています。

(《ダイヤモンド・ブリザード》はまあ……そういうこともありますよ)

次回、取り上げるのは2005年。《炎槍と水剣の裁》が吹き荒れるエリア予選を舞台に、またお会いしましょう。

■おまけ:当時のデッキリスト

当時を知る方から提供していただきました。古い環境に興味を持たれた方は、遊んでみてください。

『ボルバルブルー』(Ver.関東エリア予選2004 K.BLUE選手)


4 x シビレアシダケ
4 x ラブ・エルフィン
4 x アクア・ハルカス
4 x 青銅の鎧
3 x エナジー・ライト
4 x 母なる大地
1 x サイバー・ブレイン
3 x 灼熱波
2 x 無頼勇騎ウインドアックス
4 x アクア・サーファー
3 x ツインキャノン・ワイバーン
4 x 無双竜機ボルバルザーク

『白赤速攻』(Ver.関東エリア予選2004 大日向選手)


3 x 凶戦士ブレイズ・クロー
4 x 火炎流星弾
3 x スクランブル・ブースター
4 x 予言者クルト
3 x ピーカプのドライバー
4 x クック・ポロン
3 x 双光の使徒カリュート
3 x マグマ・ゲイザー
3 x 解体屋ピーカプ
3 x 襲撃者エグゼドライブ
4 x 時空の守護者ジル・ワーカ
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