デュエルマスターズ │ 環境紹介 │ 【DM01】~【DM07】
by 安田 悠太郎
デュエル・マスターズが始まったのは、現在から約18年前、2002年5月30日のこと。
「デュエル・マスターズ15周年展」の開催はつい最近だったような気がしていましたが……時の経つのは早いものですね。
昨年の12月、ついにデュエル・マスターズ プレイス(デュエプレ) がリリースされました。2002年ごろのカードを中心にカードプールが組まれており、現代デュエマとは毛色の違う、古代のデュエル・マスターズを彷彿とさせるアプリです。
最新の技術で最古の時代を遊ぶ、というのはなんだか妙な感じですが、新旧にかかわらず面白ければ遊んじゃうのがプレイヤーの性。デュエプレは度重なるメンテを乗り越え、順調にユーザーを増やしているようです。
しかし最古の時代とは言っても、過去のパックのカードをそのまま収録しているわけではありません。例えば《サイバー・ブレイン》のような殿堂入りの経験を持つカードたちは、ほとんど実装されませんでした。
開発による“ 調整 ”の結果、デュエプレに採用されなかったオーバーパワーなカードたち。今回は、過去環境の振り返りを通して、彼らの活躍を紹介したいと思います。
■DM-01環境:大型クリーチャーの並べ合い
18年前にデュエル・マスターズの初めての商品として発売されたのは、DM-01「第1弾」、そしてDMS-01「デュエルマスターズスターターセット」の2種類です。
初心者向けとして売り出されたと思しきDMS-01には、必ずホイルカードが付属していました。
付属しているのは、以下のどちらか1枚。
《ガトリング・ワイバーン》と《トゲ刺しマンドラ》ですね。どうしてこの二択になってしまったのかわからないほど、カードパワーに差があります。
自分はインタビューを実施している都合上、当時、スターターを買った人からも話を聞く機会に何度か恵まれたのですが……「《ガトリング・ワイバーン》が強かった」「《トゲ刺しマンドラ》が弱かった」と語る人、かなり多かったです。
仕方のないことでしょう。DM-01のVRで唯一、W・ブレイカーを持つ《ガトリング・ワイバーン》と、VRの中でもっともコストが低い《トゲ刺しマンドラ》では勝負になりません。
流石に開発側も反省したのか、デュエプレの《トゲ刺しマンドラ》はベーシックカードに格下げされています。もちろん、《ガトリング・ワイバーン》はVRとして続投。これで安心してパックを買えますね!
(《ラプター・フィッシュ》?なんの話でしょう)
閑話休題。
DM-01の収録カード数は、計120種。デュエプレの220種と比べると、半分程度しかありません。
まだ進化クリーチャーもスピードアタッカーもないこの時代。上位プレイヤーたちは一体、どのようなデッキをビルドしていたのでしょうか?
純粋な少年たちが《ガトリング・ワイバーン》を投げつけあう一方で、理解が深いプレイヤーが使っていたのは《サイバー・ブレイン》や《デス・スモーク》などだったようです。
彼らの間では、「フィニッシャーを引き込み、場に残せば勝ち」「除去されてしまったら負け」というゲームが繰り広げられていたのでした。
使われていたフィニッシャーは、パワーの高い《光輪の精霊シャウナ》や、アンブロッカブルの《キング・オリオン》など。
特に、古いゲームにありがちな並べ合いの間隙を縫って攻撃できる《キング・オリオン》は重宝されたようです。
この時代、ブロッカーがそれなりに収録された(120種中の19種)都合上、早期決着を目指すビートダウンはとても不利な立ち位置にありました。
ほとんどのブロッカーは、同じコストのバニラクリーチャーよりも高いパワーを持つようにデザインされていたため、攻撃が通りづらいゲームだったんですね。
《光輪の精霊シャウナ》や《キング・オリオン》のような「6マナ以上のクリーチャー」は強めにデザインされており、ブロッカーを越えられました。その結果として大型の並べ合い、そして除去合戦になっていたのです。
■DM-02〜DM-05環境:進化クリーチャービートダウン
そんな大型クリーチャーの並べ合いに一石を投じたのが、コロコロコミックの付録である《機神装甲ヴァルボーグ》でした。デュエプレでも活躍しているので、きっと見覚えがあるでしょう。
進化元が必要とは言え、それまで6マナ以上のクリーチャーしか与えられていなかった「W・ブレイカー」を3マナで持つ破格のスペック。
DM-01で登場していた《不死身男爵ボーグ》や《喧嘩屋タイラー》から綺麗に繋がるデザインで、《ブラッディ・イヤリング》を超えるパワーが設定されています。
環境に現れた進化クリーチャーは《機神装甲ヴァルボーグ》だけではありません。
コロコロ発売より少し後、7月25日にリリースされたDM-02「進化獣降臨」の進化クリーチャーたちもまた、ゲームに大きな影響を与えました。
デュエプレでもおなじみ、《クリスタル・パラディン》や《クリスタル・ランサー》、《大勇者「ふたつ牙」》といった面々です。
特に《クリスタル・ランサー》に代表されるアンコモン進化サイクルは、「入手しやすい」という特徴から重宝されました。
ネット上の掲示板では、当時からデッキ診断という文化があったのですが、そこでは「持っているならアンコモンの進化サイクルを入れよう」というアドバイスが頻出していたのです。安くて強いんだから、そりゃそうですよね。
(当時のデュエル・マスターズはまだホビーの一種で、「とりあえず強いカードを4枚ずつ買って始める」なんて遊び方をする人は少なかったのです)
《クリスタル・ランサー》だけでなく、《守護聖天ラルバ・ギア》や《大勇者「大地の猛攻」》もデッキへの採用に値するカードでした。
こうした進化クリーチャーが収録された結果、ゲームスピードが速くなりました。
召喚酔いに影響されない上、同じコスト帯のブロッカーを越えられるパワーを持ち、更におまけの効果もついてくるのですから、弱いはずがありません。
中でも《クリスタル・パラディン》に《クリスタル・ランサー》、そして《コーライル》を与えられた水文明は、突出した強さを誇りました。
その傾向は、以降も変わらず。
DM-03では《エメラル》と《アングラー・クラスター》、《ストリーミング・シェイパー》が追加され、青単t《ホーリー・スパーク》が組めるようになります。
DM-04では《マリン・フラワー》、そして《アストラル・リーフ》が登場。
DM-05では念願の青いS・トリガー、《アクア・サーファー》が収録されました。
DM-05の頃になると、環境に存在するアーキタイプは……
・《ストリーミング・シェイパー》と《アストラル・リーフ》による大量ドロー+展開が特徴の青単リーフtスパーク
・ビートダウンに振り切った青赤リーフヴァルボーグ
・《エメラル》に加えて《深緑の魔方陣》まで採用した青緑リーフ
の3つに集約されていました。どれも《アストラル・リーフ》が採用されているという点では、実質的に1つと言って良いのかもしれません。
2ターン目に場に出てくるパワー4000のクリーチャーを処理する方法はほとんどなく、実質的にトリガー頼みでした。
対抗馬となるアーキタイプは存在しなかったのか。そんな疑問を抱く方もいらっしゃるでしょう。
実際のところ、《アクアン》や《ハイドロ・ハリケーン》など、後に規制されるパワーカードたちは既に存在しました。
しかし、ブロッカーを全てバウンスする《クリスタル・パラディン》の存在がネックとなって《アストラル・リーフ》を止め切れず、活躍できなかったのです。
《アストラル・リーフ》を止めるためのカードがない。
環境を変えるためには、《アストラル・リーフ》を止めなければいけない。
そんな課題を抱えたまま、新たなブロックが始まります。
■DM-06環境:エリア予選もやっぱり《アストラル・リーフ》
2003年6月26日に発売されたDM-06「闘魂編 第1弾」から、新ブロックである闘魂編が始まりました。カードリストからは、「心機一転、《アストラル・リーフ》とは関係ないゲームをするぞ!」という開発陣の意気込み(?)が伺えます。
代表的な意気込みカードは、先攻1ターン目の《マリン・フラワー》に対処できる《火炎流星弾》、《アストラル・リーフ》を殴り返せる《エグゼズ・ワイバーン》でしょう。
特に《エグゼズ・ワイバーン》の追加は大きく、DM-02で追加された《ロスト・ソウル》や《バースト・ショット》を搭載した青黒赤除去コントロールが組めるようになりました。
また《恵みの化身》と《ヘル・スラッシュ》、《ミスティック・クリエーション》が収録されたことによって、何度も《ヘル・スラッシュ》を使いまわして相手のデッキ切れを狙う化身コンが誕生しました。
除去コンと化身コンは、《アストラル・リーフ》からの脱却に成功した新たなアーキタイプでした。未だ水文明のカードに依存はしていたものの、新たなブロックにふさわしい、新たなデュエル・マスターズが始まったと言えるでしょう。
DM-06発売後には、史上初めてのエリア予選である「インビンシブル・リーグ」が開幕。
《アストラル・リーフ》を使わないアーキタイプの奮戦が期待されたのですが……。
《アストラル・リーフ》系のデッキもまた、DM-06で《エレガント・ランプ》という新たな進化元を獲得していたのでした。
南は九州から北は北海道まで、全国各地で行われたエリア予選でしたが、オープンクラスは全てのエリアで《アストラル・リーフ》系のデッキが優勝。
レギュラークラスの優勝は、古い時代ということもあり全員のデッキは確認できなかったものの、ほとんどが《アストラル・リーフ》系でした。
(※オープンクラス……当時は年齢によってクラス分けがなされていた。オープンは年齢無制限)
「《アストラル・リーフ》VSそれ以外」の構図は、《アストラル・リーフ》に軍配が上がったというわけです。
デュエプレに収録されていないのも納得ですね。
もっとも、この結果に寄与したのは《アストラル・リーフ》の強さだけではありません。
当時の大会レギュレーションである「10分間、1本勝負」によって、コントロール側が不利だった事情も絡んでいます。
(※現在の試合時間は、1ゲームあたり20分)
まだ効果処理の煩雑なカードがなかったことを割り引いても、コントロールにとって10分は短すぎました。ちょっと大会に不慣れな相手と当たってしまったら、瞬く間にタイムアップです。
2ターン目から攻撃可能な《アストラル・リーフ》系のデッキは、大会のレギュレーションとも噛み合いが良かったのでした。
■DM-07環境:全国大会もやっぱり《アストラル・リーフ》
2003年度の全国大会が開催されたのは、DM-07「時空超獣の呪(インビンシブル・チャージ)」発売後のこと。SRがことごとく弱いことで有名な塩パックなので、悲しい思いをした読者の方がいらっしゃるやもしれません。
そんな塩パックですが、ゲームの質は変わりました。Rとして収録された《呪紋の化身》によって。
《呪紋の化身》以前のデュエル・マスターズにおいて、シールド内の《ホーリー・スパーク》に対処できるカードは存在しませんでした。
《エメラル》で《ホーリー・スパーク》を埋めれば、絶対に安全。あとは6打点を揃えて殴るだけ。そんなゲームだったのです。
《呪紋の化身》は、その「安全」を破壊しました。これによって、《ロスト・ソウル》の立ち位置が激変します。
当時の《ロスト・ソウル》には、
「手札を空にしても、最後は《ホーリー・スパーク》で止められ、相手の手札が増えた状態でターンを渡してしまう」
弱点がありました。
しかし《呪紋の化身》によって弱点が解消された結果、
「《アストラル・リーフ》で獲得した手札を使ってマナを加速し、素早く《ロスト・ソウル》を唱え、《呪紋の化身》で制圧する」デッキが生まれました。
青黒緑ターボロストです。
そして迎えた第1回の日本一決定戦。レギュラークラスに青黒緑ターボロストを持ち込んだhiro選手は、決勝で青赤リーフヴァルボーグを撃破。初代の日本一に輝きます。
オープンクラスでは青単t白リーフを持ち込んだ大日向選手が優勝。2003年環境は、《アストラル・リーフ》に始まり《アストラル・リーフ》に終わったのでした。
■そして、史上初の殿堂入りへ
そんな暴れまくる《アストラル・リーフ》、ひいては水文明のカードたちが放置されるはずもなく。
2004年3月15日。史上初めての殿堂入りが実施され、以下の5枚が殿堂入りしました。
ドローソースとして大活躍した《アストラル・リーフ》に《サイバー・ブレイン》、《ストリーミング・シェイパー》。防御の要として使われた《エメラル》。
そして、活躍したかのような顔でしれっと紛れ込んでいる《ディープ・オペレーション》。
……使われた形跡のない《ディープ・オペレーション》が殿堂入りした理由は、16年が経過した現在でも明らかになっていません。DM史上に残るミステリーです。
ともかく。
そんなこんなで初回から大量の規制カードを出してしまった水文明ですが、彼らは自重という言葉を知りません。《アストラル・リーフ》を失った彼らの次なるエースの名は《アクアン》。
《アクアン》は、春先の公式大会「スプリングチャレンジバトル」から早速暴れまわります。
2004年も水文明が中心のゲームになるのかと思いきや、夏に現れたのは史上最悪のドラゴン。2003年とは一味違うメタゲームが展開されていくのです。
次回、「《アクアン》VS《無双竜機ボルバルザーク》」。お楽しみに。
■補足:当時を懐かしみたい方のためのデッキリスト
昔のデュエル・マスターズに詳しい方のご厚意で、hiro選手が日本一に輝いた際の青黒緑ターボロストのリストを掲載できることになりました。
ネット上では未公開の貴重なリストです。良かったら、組んでみてくださいね。
青黒緑ターボロスト
2 x 《デーモン・ハンド》
4 x 《サイバー・ブレイン》
4 x 《シビレアシダケ》
3 x 《アクア・ハルカス》
2 x 《アクア・ガード》
2 x 《クリスタル・パラディン》
3 x 《ロスト・ソウル》
2 x 《深緑の魔方陣》
2 x 《エメラル》
4 x 《アストラル・リーフ》
4 x 《マリン・フラワー》
3 x 《アクア・サーファー》
2 x 《エレガント・ランプ》
3 x 《呪紋の化身》