MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【チャンピオンズカップファイナル シーズン2サイクル1】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末に開催されたチャンピオンズカップファイナル シーズン2サイクル1。今回はいつもとは少しメンツを変えて、井川・市川・宇都宮・小澤・川崎・熊谷・小原・中尾・平山の計9名で調整を行いました。
結果としてチームとしてはあまり振るいませんでしたが、見事モカくんこと中尾くんがトップ8入賞&初のPT権利獲得!!おめでとう!!!
【#マジックチャンピオンズカップ】ファイナル シーズン2ラウンド1(パイオニア)、初日全勝者1名のプロフィールおよびデッキリストを掲載しました。数々の強豪たちを相手に8回戦を黒星なく駆け抜けた、珠玉の構築をぜひご覧ください。 https://t.co/KIXOI820b7 #mtgjp pic.twitter.com/s33pzEX5XE
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) November 25, 2023
僕自身は2-3でまたしても敗退してしまいましたがデッキ自体の手応えは非常に良く、細かいリストの微調整こそあれど、もう一度出るとしてもきっと同じデッキを使ったことでしょう。それぐらい自信がありましたし、実際良いデッキだったと思っています。
ということで、調整過程と簡易レポートをお届けします。
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■パイオニア、激変!!!
昨年11月の常滑、今年6月の千葉と長い間環境に大きな変化のなかったパイオニアでしたが、『イクサラン:失われし洞窟』にて環境がガラリと変わりました!
《クイントリウス・カンド》を使用した発見コンボ、《地質鑑定士》を使用した発見コンボ、そして《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》を使用した探検コンボはどれも3-4キルできるコンボデッキであり、インスタント除去の乏しいデッキを一気にメタゲームの外に追いやりました。
打撃を受けたのがこの辺りのデッキです。
まさかここ1年間パイオニアの代表格だった緑単信心が使われなくなるだなんて、『イクサラン:失われし洞窟』発売前には想像もできなかった事態です。
発見コンボや《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》コンボに無力なため白単人間やグルール機体といった一直線なアグロデッキも数を減らし、そうなるとそれらをターゲットにしていたラクドスサクリファイスも減り…とメタゲームは流動。
最終的にチャンピオンズカップファイナルのメタゲーム予想としては
・発見コンボ
・ラクドスミッドレンジ
・イゼットフェニックス
・ボロス召集
の4つが強く、その下に青白コントロールが来るかなという感じの想定となりました。
★最強の発見コンボを作ろう!
世間で開発された2つの発見コンボのうち、特にチーム内の評価が高かったのは《地質鑑定士》型でした。
3キル4キル当たり前、禁止確定間違いなしのこのデッキ。《甦る死滅都市、ホガーク》や《王冠泥棒、オーコ》、《荒野の再生》を使っていたときと感覚は同じです。最初で最後のこの機会、使うしかないでしょう!
※余談になりますが、前週のPioneer Showcase Challenge開催時点でこの評価は固まっていました。《地質鑑定士》型のリストは隠したい=別デッキ使うか、ということでチーム内で本人以外は低評価だった《クイントリウス・カンド》型を使って大会に出たところ、trioskこと市川くんが見事優勝!(同様の理由でイゼットフェニックスを使った宇都宮くんもトップ8でした)
なので傍目には《クイントリウス・カンド》から《地質鑑定士》に乗り換えたように見えますが、元々《地質鑑定士》が本線でした。象に騙された人たち、ごめんね。。。
最速3ターン・キルと《クイントリウス・カンド》型の最速4ターン・キルより1ターン速く、除去されやすさ=コンボの妨害のしやすさよりもその速さによるプレッシャーの方が圧倒的に上回ります。
先手であっても3Tフルタップ《鏡割りの寓話》の返しに負ける可能性がありますし、後手であれば2ターン目に《勢団の銀行破り》や《税血の収穫者》をプレイしただけで負けることもあります。また、それを恐れて除去を構え続けると土地が伸びていき、結局《嘶くカルノサウルス》《奔流の機械巨人》のレンジに入ります。これは《クイントリウス・カンド》型には無い強みです。
《地質鑑定士》型の調整において、チーム内で重要視したのは《異界の進化》を打てるマナベースです。
コンボパーツなので4枚入っていますが、《地質鑑定士》《嘶くカルノサウルス》が「発見」スタックで除去されたとき、または通常ドローにて《異界の進化》が手札に貯まることがよくあります。その《異界の進化》を打てればまたコンボを開始することができるので、「緑緑」を出せるかどうかは勝率に直結するのです。
特にこれは発見コンボミラーマッチのときに非常に重要になります。お互いが《覆滅+複製》でコンボを止め合うので戦場に《地質鑑定士》や《嘶くカルノサウルス》が残りやすく、残ったそいつらを《異界の進化》することができれば有利にゲームを進めることができます。
《力線の束縛》が使えない —使おうと白入りもテストしましたが、あまりのマナベースの痛さ&タップインで挫折しました— 《地質鑑定士》型では《巨智、ケルーガ》のバリューが低いためこの相棒を採用していないリストも散見されましたが、それはただ損しているだけだと断言できます。
《地質鑑定士》型の発見コンボでは「コンボ始動時に横にクリーチャーがいるかどうか」がコンボ成功率に大きく関わってきますので、そのタダで手に入れることができる《巨智、ケルーガ》はとても優秀なのです。
特に《異界の進化》をしっかり打てるマナベースを構築していれば、《巨智、ケルーガ》すらマスト除去になり、そうすると次の《嘶くカルノサウルス》への除去が足りない、ということが頻発します。
今回の調整において、早い段階から絶対に4枚!と決まっていたのがサイドの《シェフェトのオオトカゲ》。
一見地味なカードですが、構築制限上軽くてアドバンテージを稼げるカードが少なくなりがちな発見コンボにとっては貴重な1枚です。
サイドボード後のロングゲームを戦う上でこのランパン+1ドローが染みる展開は多く、特にお互いのコンボを警戒するためにドローゴーの展開になりやすいミラーマッチではこの《シェフェトのオオトカゲ》の有無がそのまま勝敗を左右することも珍しくありません。
《真っ白》《ヴェールのリリアナ》でリソースを削ってくるラクドスミッドレンジなんかにも、6マナまで伸ばす手段として重宝します。
前週のPioneer Showcase Challengeにて優勝の《クイントリウス・カンド》型、準優勝の《地質鑑定士》型が2人ともサイドに《思考のひずみ》を4枚採用していたので、青いデッキが《ナーセットの逆転》を2-3枚採用することは火を見るよりも明らか。
実際に練習してみても、《思考のひずみ》4枚がバレていると《思考のひずみ》を《ナーセットの逆転》されて、2枚目の《思考のひずみ》を失うだけでなく手札に貯まった《異界の進化》、墓地の《マグマ・オパス》を消されるなんて悲惨なことになりました。
ということで今回は「ズラし」として、僕らのチームでは《龍王ドロモカ》を採用。《ナーセットの逆転》が増える=《霊気の疾風》の採用枚数が増えることはない(緑単信心もほぼいない)という読みもありました。
青白ロータスにこそ《不連続性》されてしまいますが、普通の青白コントロールではこのカードを止めるのは難しく、10マナ貯めてから《龍王ドロモカ》→《地質鑑定士》での勝利も現実的です。
★使ったリストの紹介と簡易レポート
ということで前述の通り、僕たちが選んだのは《地質鑑定士》型の発見コンボ。
なんと今回は調整メンバー9名全員が75枚同じリストを使うことになりました!長いことチーム調整をやってますが、全員が同一のリストを使うのはもしかしたら初めてかも。
3枚と多めに採用した《魂の洞窟》、メインとサイドに少しずつ採用した《大狸》など、細かいところまでチームで話しあって作った今回のリスト。
かなりの自信作で、最低1人はトップ8、跳ねれば2-3人が権利獲得も行けるだろうという感触で望みました。
◎本戦の結果
Day1
R1 クイントリウス発見コンボ ○×○
R2 青白ロータス ×◯×
R3 地質鑑定士発見コンボ ○×○
R4 イゼット独創力 ×◯×
R5 イゼットフェニックス ××
発見コンボミラーマッチを2回制したものの、青白ロータス、イゼット独創力といった不利なデッキに順当に負けて2-3。ラクドスやボロス召集といった有利マッチに当たることなくトーナメントからドロップすることになりました。涙。
チームメイトたちも早い段階から青白コントロール系やスピリットなどの不利マッチに連続でマッチングする不運に見舞われ、敗退に次ぐ敗退。
ですが唯一連勝街道一直線だった中尾くんが10-1-1でスイスラウンドを1位通過!冒頭にも記載した通り、見事プロツアーの権利を獲得しました!!やったね!!
青白コントロール/ロータスが想定より多かったのは事実であり誤算ではありましたが、完全なメタゲーム予想は難しいもの。MOはじめ世界各地で大活躍しているイゼットフェニックスがあれだけ少ないのを予想できた人がどれだけいたでしょうか?
練習時点で青白コントロール/ロータスへの相性は懸念していましたが、デッキの構成上どうやってもそこまで大きく改善しないこと(相手が通常のドロー、適正なプレイであればどうやっても不利)、そして青白コントロール/ロータスがラクドスミッドレンジ・ボロス召集という他のトップメタに不利なのでそこに喰われるだろうという想定もありました。希望的観測とも言えますが。
なので、僕自身の成績はふるいませんでしたが、そこまでを加味してのデッキ選択・調整だったので後悔は特にありません。最高のメンバーと最高のデッキを使えて楽しかったです。
■終わりに
来週には禁止改定があり、パイオニアとモダンでの禁止改定が示唆されています。
《クイントリウス・カンド》型が強ければ《嘶くカルノサウルス》《クイントリウス・カンド》も禁止候補だったかもしれませんが、そちらは成績が振るわなかったこともあり、発見コンボとしては《地質鑑定士》だけにメスが入ると予想します。(元に戻るだけだとつまらないので、《大いなる創造者、カーン》や《鏡割りの寓話》も禁止してほしいところ)
https://twitter.com/mtgmetaio/status/1729118801680375819?s=20
週末に行われた3大会のデータを見ても、《地質鑑定士》型の発見コンボはそれなりに好成績を残していること、そして表上にある青くないデッキすべてに大きく有利が付いていることから、かなり不健全なデッキだと言えそうです。簡単に勝ちすぎ。
「デッキ構築制限があるものの、1枚だけでゲームに勝てる」というのは《ゴブリンの放火砲》や《欄干のスパイ》といったコンボデッキとほぼ同じ。スパイ(Oops, All Spells)がパイオニアで禁止にされている以上、《地質鑑定士》が大丈夫な道理もないでしょう。楽しかったよ、ありがとう《地質鑑定士》。
モダンの方はラクドス想起の何かが禁止されるでしょう。《悲嘆》や《オークの弓使い》あたりが候補でしょうか。
ただラクドスを弱くするだけだとバランス悪そうなので、どうせやるなら《一つの指輪》、《豆の木をのぼれ》、《暴力的な突発》といった一線級のカードをまとめて禁止してもいいんじゃないかなーとか思ってます。
果たしてどうなる禁止改定。今から楽しみですね。
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!