MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【チャンピオンズカップファイナル サイクル3レポート】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末に開催されたチャンピオンズカップファイナル サイクル3。7月のプロツアーバルセロナへの最後の戦いは、熊谷・小澤・井上・加茂・河野・小泉・村栄・齋藤・小原と総勢10名で一緒に調整しました。
結果としてチームとしてはあまり振るいませんでしたが、井上くんが唯一PTの権利を獲得!!おめでとう!!!
僕自身は5-4-1で敗退。今回はいつもにも増して自分で認識できるレベルのプレイミスが多かったので、運が悪かったというより単純に地力が低かった=下手だったなと思っています。
ということで、今回はチャンピオンズカップファイナル サイクル3の調整過程と簡易レポートをお届けします。
※ラッシュメディア記事内紹介のカードは
カード名のリンク、記事末尾のバナーを
クリックで通販サイトへアクセスできます
通販サイト(https://www.cardrush-mtg.jp/)
■ラクドス以外のデッキを模索しよう
当然ながらラクドスがトップメタなのは参加者全員の認識。有志によるエリア予選結果まとめからも明白。20%~30%のシェアを占めることは間違いありません。
そしてラクドスミラーは不毛で、すでに「《税血の収穫者》を抜く」というサイドボーディングが常識となっている今、基本的には「引いたもん勝ち」。かなりの運ゲーと言わざるをいえません。
また、集まったメンバーの大半がラクドスには既に一定以上の理解があるので、まずはラクドス以外のデッキに注力しました。
青白系はメンバーの中で僕ぐらいしか好きそうな人がいなかったので、僕が担当。
特に青白ロータスは目覚ましい結果を残していたので期待していたのですが、その期待は簡単に裏切られることに。事前の予想に反して、ラクドスに全然勝てなかったのです。
メインから確定カウンターを廃している都合上、最序盤はラクドスにやりたい放題され、《思考囲い》《勢団の銀行破り》《税血の収穫者》《鏡割りの寓話》などがバンバン通ります。そして巻き返すころにはライフが少なく、《黙示録、シェオルドレッド》《砕骨の巨人》といった飛び道具や、まったく触れないミシュラランドたちで残り数点を削られるという展開が多発。リーグで敗北を重ねた上でチーム内でも検証し、あまりの再現性の高さに没となりました。
元々の青白コントロールでキツかった白単にある程度戦えるようになったのは良かったですし、デッキの上ブレ度があがっているのでデッキパワー自体が上がっている点は手応え良かったです。ただしトップメタであるラクドスには普通の青白より弱いなと感じてしまい、使用することがリスキーに感じてしまいました。
構造的にラクドスに強く、トップスピードが早いため苦手な相性差も覆せそうな新星・ボロス召集。《炎樹族の使者》は要るのか、《威厳あるレオサウルス》はどうなんだなど、まだリストが固まっていない=改善の余地もありそうで、個人的にはかなり期待していました。
ですが当時のMagic Onlineではあまりにもメタられすぎていて、サイド後はあらゆる全体除去がバンバン飛んできました。除去が薄いアブザンパルヘリオンからも《一時的封鎖》をプレイされる始末。自身の安定性もお世辞にも高いとは言えず、回らないときはトコトン回りません。
加茂くんのチケットとレーティングを犠牲に、戦略的撤退。
直近で勝ってるデッキとしてこのデッキも候補に上がりました。ラクドスには五分~少し不利程度ですが、緑単信心やパルヘリオンといった相性いい相手には滅法強く、逆にイゼット系(フェニックス・独創力)や自分より早いアグロ(白単など)には滅法弱いというかなり分かりやすい立ち位置。《ゴバカーンへの侵攻》で《至高の評決》《サメ台風》に多少なりとも耐性が付いたのは明確な強化点ですね。
ただしラクドスに頑張れたとしても、かなり不利なイゼット、白単がどちらもそれなりな人数がいそうだと予想していたので個人的にはナシ。
今回のチーム調整で最も盛り上がったのは間違いなくこのデッキです。
「手が空いたんで、何か楽しそうなオモチャありませんか?」というチームメイトの言に、僕が提示したのはTwitterで見かけたボロスカラーの《復興の領事、ピア・ナラー》デッキ。疑似《表現の反復》がデッキに12枚と、新カードである《復興の領事、ピア・ナラー》を使い倒す気満々です。
正直パッと見はお世辞にも強そうには見えず、最初は面白半分だったのですが、実際に回してみると……あれ?強い???
「絢爛」という使い勝手の悪いキーワード能力持ちの《批判家刺殺》《舞台照らし》をより使いやすく強力な《稲妻の一撃》《砕骨の巨人》《スカルドの決戦》に変えるなどデッキのアップデートを行い、一躍チームの有力候補に躍り出ました。
先週末までまったく使われていないデッキを使って勝つ。そんな未来図に胸が踊りました。
その他にも緑単信心、アブザンパルヘリオン、ラクドスサクリファイス、エニグマ、グルール機体など様々なデッキを一通り試しつつ、最終的には以下の通りになりました。
★最終的なデッキ選択
白単:2名(加茂、河野)
元々アグロデッキに造詣が深く、ラクドス以外のデッキを模索していた加茂くんと、それに乗った形で河野くんが選択。
ラクドスには微不利、パルヘリオンにはかなり不利ですが、他の雑多なデッキには結構有利に戦えます。苦手な相手であり、最近流行っているラクドスサクリファイスがどれだけのシェアを占めるかが気になるところ。(チーム内ではそこまで多くない読みでした)
アゾリウススピリット:1名(小原)
ラクドスミラーに辟易としており、かつリーグで勝ちまくっていたkomatta_manこと小原のみ選択。
青単スピリットと異なり《婚礼の発表》が使えるため、そこまでラクドスにも不利ではない(もちろん有利ではない)点、マッチングによってはかなり上ブレしやすい点も評価していました。実際に本戦ではラクドスに2戦2勝。流石!
ボロス果敢:1名(齋藤)
調整初期に惚れ込み、無限に回し続けた慎也さんのみボロス果敢を選択。
僕も最後まで使うか悩みました。デッキパワーもそれなりにある&楽しさはダントツ一番で、他の大会(プレミアム予選とか神挑戦者決定戦レベル)なら絶対このデッキを使おうと思っていたほど。ほぼオリジナルといっても良いデッキであったのも魅力の一つでした。
個人的にネックとなったのは、《碑出告が全てを貪る》への脆弱性でした。
基本的にはラクドスに五分~微有利程度の相性がありますが、《碑出告が全てを貪る》の枚数が増えれば増えるほど相性が悪化するというもの。ただの全体除去ならリカバリーが効きますが、このカードは1以下のパーマネントをすべて吹き飛ばすので、《岩への繋ぎ止め》も飛んでしまいます。《黙示録、シェオルドレッド》《墓地の侵入者》が帰ってきては堪ったもんではありません。もう少し《碑出告が全てを貪る》が少なければなぁと思いつつ使用を断念しました。
Pioneer ShowcaseChallenge優勝!
最高のデッキでした。一緒に調整したチーム仲間に感謝。魂の仕切りは弱いので変えたほうが良いです pic.twitter.com/ZDctNLeUEq
— こま (@komatta_man) June 25, 2023
後日談とはなりますが、チャンピオンズカップファイナルの直後のPioneer Showcase Challengeではkomatta_manがこのデッキのアップデート版を使い見事優勝!!うおおおおお!!!!
固まりつつあったパイオニアのメタゲームに新しい風を吹き込むことに成功しました。やったね。
ラクドスミッドレンジ:6名(熊谷、小澤、井上、村栄、小泉、井川)
色々試したものの、最終的にはラクドスに落ち着いたのが6名。ミラーマッチの不毛さ、対エニグマへの絶望感などはありつつも環境で最も強く安定したデッキであるという評価は最後まで変わりませんでした。
・《変わり谷》の有無
・《苦難の影》の有無
・土地は25 or 26
・《領事の旗艦、スカイソブリン》or《絶望招来》
など様々な選択肢があり、6名の細部もかなりバラけました(6名で完全一致なのは僕と小澤さんの2名のみ)。
どれも一長一短なため、その取捨選択は最終的に各人の趣味が出ましたが、それぞれの強み・弱みやその採択理由などについてはしっかり話し合えたので満足しています。
★使ったリストの簡単な解説
ということで僕が選んだのはラクドスミッドレンジ。
トップメタであるラクドス。既に見飽きている方も多いと思いますので、こだわった点だけポイント解説します。
環境的に白単人間、ボロス召集以外のほぼ全ての相手に有効です。
初手に1マナ手札破壊があるかどうかでプレイの簡単さや勝率が大きく変わると判断し、今シーズンはずっとメイン2枚のリストをプレイしています。
そして増やした《強迫》を補完してくれるのが《死の飢えのタイタン、クロクサ》。サイドボード後も極端に早いアグロ以外にはゲームのフィニッシャーとして機能してくれるため、とても重宝する1枚です。
《強迫》多め+《死の飢えのタイタン、クロクサ》の方が《変わり谷》型よりもデッキに一貫性がある&プレイが簡単なのでこちらの方が個人的に好きです。一時期は3-4枚のこともあった《墓地の侵入者》の枚数が2枚で固定化されつつあるのもプラスですね。簡単で強いは正義。
この土地は「入れ得」ではありません!少なくとも《変わり谷》and/or《絶望招来》を複数枚採用しているのでない限り、採用を控えたほうが良いと僕は考えています。
ラクドスは元々黒マナが多く採用されており、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》なしでも基本的にはほぼ事故ることはありません。基本的には単色土地でしかなく、同じ単色土地なら《見捨てられたぬかるみ、竹沼》のようなバリュー土地のほうが価値が高いです。
そして何より、「すべての土地を沼にする」効果は相手にも作用するため、プレイすること自体が相手の手助けになるケースがよくあります。
「相手がこれのおかげで黒マナが出るようになる/アクションがしやすくなる(vs《変わり谷》型のミラー、パルヘリオン、ネオフォームなど色拘束がキツイデッキ)」
「相手の《力線の束縛》が軽くなる(vsエニグマ系)」
「相手の《マナの合流点》がダメージを食らわなくなる(vsパルヘリオン、ネオフォーム)」
など。
どれも些細な問題とは済ませづらい、勝敗に関わるほどのデメリットです。本当に自分のデッキに必要なのか、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を採用する際はよく検討してみてください。
青白コントロール、緑単信心、エニグマ系、独創力などに効果的な1枚ですが、ミラーマッチでの強さについては懐疑的です。相手が《変わり谷》型だと除去としての効果の信頼性が大きく下がりますし、《勢団の銀行破り》を出された日には目も当てられません。シチュエーションを選ぶ、3マナの弱い除去という認識です。
直前に配信していたこともあり、いわゆるヤソ型(《変わり谷》多め)のラクドスが増えると予想し、僕自身は《ヴェールのリリアナ》をサイドのみの採用にしました。
代わりに増やしたのは2枚目の《戦慄掘り》。《黙示録、シェオルドレッド》を対処できるかどうかがミラーマッチの終着点になりやすいので、盤面依存である《ヴェールのリリアナ》より確定除去の方がミラーマッチにおいては強力だと思っています。
《強迫》をメイン2にもしているぐらいですから、なるべく1234と動きたい。そこで初手に複数枚来て困る《憑依された峰》をギリギリまで減らし、その分確実にアンタップインできる《硫黄泉》を増やしました。ダメランは痛いですが、最序盤の連続タップインはもっと痛いです。
土地の枚数に関しては、25と26で悩んだ末、サイドボードのスペースの兼ね合いなどもあり25に。経験上《変わり谷》なしの形であれば25でも大きく困ったことはなかったのですが、感覚的には25.5枚ぐらいが適正かなと思っていたので「土地26で61枚デッキ(26枚目の土地として《変わり谷》1枚)」にするか真剣に悩みました。
◎本戦の結果
R1 セレズニアエンジェル ×○○
R2 ジャンド異形化 ××
R3 ラクドスミッドレンジ ○○
R4 ラクドスミッドレンジ ○○
R5 青白ヨーリオン ×○○
R6 ティムール機体 ××
R7 アタルカレッド ID
R8 アブザンパルヘリオン ◯××
4-2で迎えたR7をIDして2日目を確定させて、残り5ラウンドで4-1を目指すことに。しかし初日最終戦を酷いミスで落としてガッカリ。パルヘリオン相手にメイン取れたにも関わらず、サイド後2ゲーム落とすのは愚の骨頂です。
これで2日目が4-0縛りとなります。
R9 緑単信心 ×◯◯
R10 ラクドスサクリファイス ××
R10で4敗目を喫してしまい終戦。これでプロツアーの目がなくなりドロップとなりました。残念。
(Melee上では5-5-1となっていますが、実際にはR11は対戦していません。ドロップ処理忘れでの不戦敗です。)
■終わりに
今回の敗退を受けてついにすべての招待がなくなったので、ゼロから再スタート。
まずは7月のプレミアム予選 or 8月のエリア予選を勝ち上がり、次回のチャンピオンズカップファイナルの権利獲得がまずは最初の目標となります。
そしてチャンピオンズカップファイナルの権利を取れたとしても、来シーズンはチャンピオンズカップファイナルでのプロツアー権利が上位18人→上位12人に縮小されることもあり、さらに厳しい戦いが待っています。
1シーズン3大会チャンピオンズカップファイナルに出てみて、日本における競技勢のレベルの高さも実感しました。みんなやりこんでるし、プレイも上手い!
それと同時に自分の下手さも痛感したので、改めて地に足着けて「1年に1回プロツアーに出る」ことを目標に、これからも地道に頑張りたいと思います。
■来シーズンの目標 まとめ
その1:チャンピオンズカップファイナルの権利を毎回獲得する
その2:1年に1回はプロツアーに出場する
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!