デュエルマスターズ │ プレイヤーインタビュー │ おんそく選手

By 安田 悠太郎

昨年の冬ごろから、デュエル・マスターズ界に次々と誕生したプロプレイヤー。今回インタビューさせていただいたおんそく(@onsoku0503)もまた、その1人だ。

今年、GP8thで劇的な決勝戦を制し、優勝。その後に株式会社RUSHと契約し、プロとしての活動を始めた男は、いかにしてここまでやって来たのか。
彼の物語を聞いた。

プレイヤープロフィール

・年齢:25歳(1994年度生まれ)
・活動地域:大阪府→千葉県
・公式戦績:2017年度ジャッジ大会優勝、2017年度全国大会出場、2018年度全国大会出場、GP8th DAY1優勝
・所属:CardRushPros、したい会
・その他:通称” アイドル “

原点、それは悔しさ

「初めて見たとき、なんだこれ!!って思いましたね。裏返して2度びっくり。復帰したばかりで昔のカードしか知りませんでしたから……衝撃でした」

おんそくがそう振り返るのは、2010年に登場した超次元のカードたちだ。高校生になり、久々にデュエル・マスターズへ戻ってきた彼は驚いた。デッキ外にカードが置いてある。両面に絵が描いてある。自分の知っていたデュエル・マスターズから変わっていた。

 

おんそくは、友人の誘いをきっかけに復帰したプレイヤーだ。再びこのゲームを始めてからカードショップへ通うようになり、エリア予選にも出場した。
CSへの初参加は、大学生になってから。またまた友人の誘いに乗って、2013年のおやつCS中部大会に申し込んだ。初陣ながら予選抜けまであと1勝と迫るも、最終戦で惜敗。

「おやつCSは……最後、勝ったら予選を抜けていたんですけどね。
当時はハンデス系のデッキを使っていて、殴らずともライブラリアウトで勝てる予定だったんですよ。そうしたら相手に、残り2枚の山札から《サイバー・N・ワールド》を引き当てられた上、《セブンス・タワー》まで飛んできて負け。今でも思い出すなぁ……本当に悔しかった」

 

初出場で感じた悔しさ。競技シーンにおける、おんそくの原点だ。
そこから始まった彼の努力が実るのは約2年後、2015年9月22日。第4回兵庫のじぎくCSで、準優勝を果たす。
同じ年の11月29日には、第1回ラックス橿原CSで優勝を経験した。

2017年3月までのCS戦績を元にしたDM:Akashic Recordの生涯ランキングでは、22位につけた。8年近い期間を対象にしたランキングで上位に食い込んだ事実が、彼の実力を物語る。
もっとも、CSへの参加を始めたのは同年代の中でも遅いほうだ。

「Heaven’s Diceの◆斎藤くんや、マラかっちのVのもれくんなんかと話していると、昔のことをよく知っているなと感じるんです。彼らは同年代ですが、自分より以前からCSに参加しているので、古いこともよく知っていて。それで、自分は出場し始めるのが遅い方だったのかなと思いましたね」

関西から関東へ

競技プレイヤーとしてのキャリアを関西で始めたおんそくは現在、千葉県に住んでいる。
関東に来てから、調子はさらに上がった。2017年を皮切りに、今年まで3年連続で日本一決定戦への出場を決めている。
デュエル・マスターズでの最多全国大会出場数記録は、5回。かつて3度の日本一に輝いた” 絶対王者 “hiroが保持する記録だが、その更新も決して不可能とは言えないところまで来た。

「関東に来てから変わったことが、いくつかあります。1つは、知り合いが増えたこと。関西時代の知人とも連絡は取り合っているので、純粋に入って来る情報量が増えました。
東で良く調整相手になってくれているのは、あーくん、のすけかな。こちらに来たばかりの頃からお世話になっています。
中でも、あーくんとは関西時代から面識があったんですよね。彼、ドラフトのCSに出場するためだけに関西へ遠征して来たことがあったんです。それも、2回。今のあーくんもランキングのため、頻繁に西へ遠征していますが、相変わらずデュエル・マスターズが好きなんだなと感じます」

変わったことは、まだある。ヨーカンが主宰する調整チーム、したい会への加入だ。2ブロックでの勝利を目標とする集団である。

「2018年の中頃かな、5人目のメンバーとして加入させていただきました。ヨーカンさんとこっちゃーがビルダー役で、彼らの作ったデッキをチューニングしていましたね。おかげで、昨年の2ブロックのCSではかなりの勝ち星を稼げました。
それもあって、特にこっちゃーにはこれから勝って欲しいと思っています。彼、ここぞという時に必ず運が悪い方に振れるタイプで、なかなか勝てていなくて。同じデッキを使っているんだから、もっと勝っていいと思うんですけどね。彼がチーム全体の不幸を引き受けてくれているのかも?
まあ、こっちゃー含め全員が勝てるようになれば、言うことなしです」

GP8thで優勝を果たしたおんそく。その時のデッキのビルダーも、こっちゃーだった。

「GP8thで使った『印鑑パラス』もこっちゃーの作です。原案は別の人なんですけれど、彼が基盤を作ってくれて、みんなでチューニングして作り上げました」

 

TCGの魅力の1つとしてよく挙げられるものに、人との出会いがある。友人たちの活躍を嬉しそうに話し、彼らの勝利を願うおんそくは、デュエル・マスターズを満喫しているのだろう。

2019年、プロ契約

GP8th後に、おんそくはカードラッシュを経営する株式会社RUSHとの契約を発表。デュエル・マスターズのプロプレイヤーとして、CardRushProsへと加入した。
しかし、二つ返事で契約書にサインしたわけではない。彼はこの時、ある悩みを抱えていた。

「実を言うと、今年はランキングを走ろうとは思っていなかったんです。2018年度の全国大会が終わったときから、決めていました。選手以外の関わり方……例えば、ジャッジなんかの比重を上げていこうかと考えていたんです」

おんそくは、関西のスガやあばばば、将輝星らとともに、2016年3月の第1期認定ジャッジ試験を受験。合格している。
この時点ではまだ、認定ジャッジ制度についてほとんど何も明らかになっていなかった。それでも当時、関西に住んでいた彼は、東京にあるタカラトミーの青砥オフィスまで行って資格を取得した。

「知人の中に、CS運営に携わっている方がいて。資格がないとああいうことが出来なくなるかも知れない、それは困るなと何となく思ったんです。
常にデュエル・マスターズの最前線で関わり続けたかったんですよね。だから、選択肢を狭めたくなかった。じゃあ取るしかないだろうと」

選手であり続けることに、こだわってはいない。実際、関東に来てから何度かCSのジャッジを経験している。

「選手一本で行く気持ちがあまり強くないことを正直にカードラッシュさんへお話し、それでもいいよと言って頂けたので、契約に至りました。だからと言ってプロとして契約したことを意識していないわけではなく、CSへの出場頻度は予定よりも増えました。
ラッシュメディアに掲載させていただいている記事も同じく、プロとしての立場を意識しています。競技シーンのトップ層ではなく、いわゆるミドル層に向けて、分かりやすいと言って頂けるものを目指して書いているんです」

プロとしての活動を通じて、思いも変わってきた。

「気が早いですけれど、来年も競技は頑張りたいなと思っています。応援してくださっている方の期待に応えられる選手になりたいですね。
今年、狙うのは三冠王。GP優勝は達成しましたから、ランキング1位、そして日本一決定戦優勝を目指します」

GP、ランキング、全国大会。あるシーズンの中で、3つ全ての頂点に立つことを俗に三冠王と呼ぶ。「日本一のおんそくさん!って言われたいですね」と冗談めかして語るが、雰囲気は真剣だ。
既に3年連続全国大会出場を達成している彼ならば、実力に不足はない。実現も不可能ではないだろう。今年の全国大会も、目が離せない戦いになりそうだ。

おんそくが考える「プロ」

ここ1年、デュエル・マスターズには新たなプロプレイヤーが次々に誕生している。「プロ」という言葉の定義はまだ明確でなく、人によって意味合いが異なることもある。
おんそくは、プロとして何を意識しているのだろうか。

「プロになってから、週1でツイキャスをしています。喋る内容は、その週に話題になったこと。ネガティブな話題や真剣な話題も取り入れますが、基本的にはポジティブな話かな。
実況をやってみたいと思っていて、練習の気持ちで続けています。反響を見つつ、評価が良ければYoutube進出も考えています。プラットフォームの関係で、そちらの方が見やすい、聞きやすいと言われるので」

言葉通り、10/6(日)に開催されたプロリーグでは実況を務めた。生中継ではなく会場内限定の放送であったものの、新たな一歩を既に踏み出している。

「GP9thは、実況の公募があれば応募しようと思っていました。他にも、ジャッジか選手かで悩みましたね。結局、プロとしては……と思い、選手で出場しましたが。
これからも、公式イベントには関わっていきたいと思っています。ただ、必ずしも選手である必要はないかなと」

デュエル・マスターズのプロ、という幅広いくくりでいえば、それに該当するのは決してプロプレイヤーだけではない。ジャッジも実況・解説もライターも、それぞれがプロとしての誇りを胸に、コンテンツに携わっている。
ジャッジやライターと交友があり、自身も認定ジャッジ資格を持つおんそくはそのことを知っている。だから、選手という形にはこだわらない。

「昔と比べて、今って公式がかなり動いてくれていますよね。競技的な面がどんどん整備されて来て、規模が大きくなって。プロリーグも今回は非公式ですが、将来的には公式が検討してくれればいいなと思っています。やっぱりタイトル戦という意味では、” 公式 ”という単語に重みがあるので」

公式のプッシュするイベントがもっと増えて欲しいと語るおんそく。そんな彼に「プロとは何か?」と聞いてみると、こんな答えが返って来た。

「プロプレイヤーとは、デュエルマスターズを愛していて、他のプレイヤーから憧れられるような存在だと考えています。僕自身、まだまだ完璧なプロではないですけれど、そんなことを意識しています。
きっとこれからもプロプレイヤーは増えていくでしょうけれど、心底デュエマを愛している方だと最高ですね!」

あとがき

2019年、GP8thで優勝を果たし、プロ契約も締結したおんそく選手。GPでの優勝によって3年連続となる全国大会出場も確定し、年々調子を上げているように見えた。
そんな彼から「プロ契約を受けるか迷っていた」という話が飛び出したのは衝撃だったが、よくよく聞いてみれば「デュエル・マスターズに貢献する為の方法選びで悩んでいた」とのこと。彼の生真面目さが垣間見えるエピソードだった。

また全国大会への出場回数記録は、本文にて紹介した通りhiro選手の5回が最高。次いであべけん選手の3回となっている。つまり、おんそく選手は歴代2位タイなのだ。
2002年から17年続くデュエル・マスターズ、その歴史に既に名を刻んでいると言える。

おんそく選手、ちなみに毎週木曜夜9時から「おんそくラジオ」としてツイキャス放送中(https://twitcasting.tv/onsoku0503)。過去の履歴も残っているので、ぜひ一度聞いてみて欲しい。彼の人柄が、きっと伝わるはずだ。

今年も、そして来年も、彼がデュエル・マスターズの最前線で戦い続けられるよう願っている。

※プレイヤー画像は “デュエル・マスターズ 公式サイト テキストカバレージ” より引用しました。

関連記事一覧