先週末は、アメリカのラスベガスで「第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」に参加しました。(日本公式カバレージはこちら)
前回の第28回世界選手権と同じく、ラスベガスでの開催。だんだん地理も頭に入ってきました。今後もラスベガスで開催される可能性がありそうです。
今回の会場は1階と2階で2カ所の大規模なイベントホールで開催され、1階では「MagicCon: ラスベガス」、2階では「第29回世界選手権」「アーティストブース」などがあり、どちらも人で賑わっていました。
世界選手権の初日はブースター・ドラフト3回戦と、スタンダード4回戦を行い、4勝3敗以上の成績で2日目へ進出。2日目でも同じく7回戦を行い、10勝4敗以上の成績でトップ8に入賞なので、目指すは10勝!
市川ユウキさん、佐藤レイさん、松浦拓海さん、森山真秀さん、小笠原智明さん、鬼塚寛さん、京極匡将さん、平山怜さんとチームを組んで、9人で練習を行いました。
以下その大会レポートです。
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■1stドラフト
「エルドレインの森」のドラフトは、2ターン目から展開することが求められる、ゲームスピードの速い環境です。
一旦攻勢に回ると、「祝祭」「役割・トークン」の両方が展開と攻撃を後押しし続けて、「出来事」の付いたクリーチャーが《巨大化》系呪文として機能するので、受け手に回るのが難しい!
タフネスが高いだけのクリーチャーだと「出来事」で突破されやすく、1/3とか2/3のサイズは防御に向いていません。お互いにライフを削り合う、非常に攻撃的な環境です。
MTGアリーナでのドラフトと本番の8人ドラフトは、全く性質の異なるもので、自分のデッキをひたすら強くしていくアリーナに対して、8人ドラフトではカットが存在したり、弱いカードを上手く使うテクニックが求められます。
そのため今回はマジックオンラインを中心にして、8人ドラフト練習で、より実践の形式に近い形で練習。「除去の多い黒を優先してやる」「迷ったら2マナ域をピック」の2つを意識していました。
初手は《がぶりんご飴》。相手の強力なクリーチャーにも-5/-5で対応できる、このセットでの最強コモンです。
他の候補は《アガサの勇者》でしたが、なるべく黒をやりたいことと、《がぶりんご飴》はタッチ黒で使っても良いことの2点から、受けが広い《がぶりんご飴》をピック。
2手目はなんと《必滅の死霊》!全体除去付きの飛行で、文句なしの爆弾レアです。
上の人が《必滅の死霊》を流して何をピックしたのか気になりましたが、3回戦で対戦して確認したところ《ヒルダの冬の王冠》のFoilでした。無色で超強いレアなので納得。
3手目は《食事を終わらせるもの、ジンジャー卿》。弱めのパックだったので、まずは2マナ域を確保。食物を生贄にするとサイズアップして、どのデッキにも入る良い2マナ域です。
その後は黒単でピックしていましたが、《フェイの宮廷へ》《オビラの従者》が1周してきたことから、青黒を意識します。
《フェイの宮廷へ》は他の人の評価は低いですが、中盤にアドバンテージ差を広げるコントロールデッキ向けのカードで、ちゃんと序盤を動けるデッキなら強く使えます。
2パック目の初手は、おとぎ話枠の《苦花》!かつて苦楽を共にした《苦花》を世界選手権のドラフトで引けて、運命を感じずにはいられませんでした。
2ターン目に出せれば勝利に大きく近づく強力なレアなので、迷わずピック!
2パック目の2手目は《眠り呪いのフェアリー》で、その後青も黒も流れが良く、強力な青黒フェアリーが組めました。
除去あり、マナカーブ良し、レア5枚入りと、3-0を狙えるデッキでしたが、相手の《ネクロポーテンス》《執念の徳目》入りの青黒に敗北して、2勝1敗。
ちなみに、《ネクロポーテンス》は協約で生贄に捧げられるデッキなら強いので、早めに取っても問題ないです。
まさかドラフトで《ネクロポーテンス》vs《苦花》が起こるとは!
■スタンダード:エスパーミッドレンジ
【インポートデータ】
スタンダードでは、エスパー・ミッドレンジを使用。
もともと《鏡割りの寓話》《勢団の銀行破り》《絶望招来》が禁止される前からメタゲームに存在しており、《敬虔な新米、デニック》のよる回復、《策謀の予見者、ラフィーン》の謀議による手札の最適化と攻め、《黙示録、シェオルドレッド》と、非常に攻守のバランスに優れたデッキです。
《離反ダニ、スクレルヴ》《スレイベンの守護者、サリア》を入れて、より序盤から攻めていく構成のエスパー・レジェンズも存在しており、実際に使用候補デッキの一つでした。
ただ、《スレイベンの守護者、サリア》を4枚入れている都合でメインに除去や打ち消しを入れにくく、《スレイベンの守護者、サリア》と《婚礼の発表》との相性が悪い、サイド後に《一時的封鎖》でアグロ耐性を高めたいなどの理由から、エスパー・レジェンズではなくエスパー・ミッドレンジを選びました。
白の持つトークン生成ラインが強かったことも、エスパーミッドレンジを選択した理由。
《婚礼の発表》《放浪皇》が複数のトークンを生成しつながら場持ちが良く、クリーチャー除去だけでは対処できません。
《忠義の徳目》は、《かき消し》を構えながら動くのに最適で、クリーチャーの頭数が並んだら5マナでプレイして強固な盤面を作ります。
エスパーは《策謀の予見者、ラフィーン》《黙示録、シェオルドレッド》といった、除去しなければいけないクリーチャーが多いので、クリーチャー除去は優先して入れられる傾向にあります。そこでこのトークン生成ラインが活きてくるというわけです。
エスパー対策として除去を大量に入れてきても、トークン生成ラインでクリーチャー除去に強い場を作れる。そんな部分にも魅力を感じました。
事前のメタゲーム予想は、エスパー系、ランプ系、ゴルガリ、赤単など。打ち消し呪文の使えないゴルガリや赤単だと、ランプ系デッキの《怒りの大天使》や《偉大なる統一者、アトラクサ》が対処できず、練習ではどうしても不利が付きました。
マナ加速から大技を繰り出すランプ系デッキが多いと予想したので、それに対抗する《否認》《軽蔑的な一撃》を使える点も、エスパー・ミッドレンジを評価した理由の一つです。
《ゼンディカーへの侵攻》や《偉大なる統一者、アトラクサ》を打ち消すために《かき消し》は4枚。《復活したアーテイ》は追加の打ち消し呪文で、能力も打ち消せたり除去出来たりと便利ですが、相手に与える1ドローが意外と大きかったり、4マナが多いとデッキが重すぎるので1枚に。
《邪悪を打ち砕く》は、除去を《力線の束縛》や《骨化》に頼ったデッキに対して強く、タフネス4以上破壊もランプ系に対して良く効きます。
相手のエンチャント除去に対抗できるようにメイン採用するかも考えましたが、エスパー・レジェンズや赤単のことを考え、《切り崩し》2枚を優先しました。この辺りの除去の選択は、メタゲーム次第で変わる枠です。
《苦痛ある選定》はゴルガリの《苔森の戦慄騎士》を想定したのと、エスパー・レジェンズに対して《離反ダニ、スクレルヴ》を除去するカードが《切り崩し》4枚だけだと足りないと感じたからです。
《一時的封鎖》は赤単や白単などのアグロデッキに、引けば勝つほど劇的な効果があったので採用しました。
■大会結果
・ドラフト
〇黒緑食物
×青黒
〇白緑オーラ
・スタンダード
×エスパー・ミッドレンジ
×エスパー・ミッドレンジ
〇青黒フェアリー
×版図ランプ
ドラフト2-1、スタンダード1-3で、残念ながら初日落ち。
敗因としては、トップメタであるはずのエスパー・ミッドレンジに対するサイドボード後の練習が甘くて、《かき消し》を何枚残すかなどがフワフワした状態のまま戦ってしまったことです。単純に練り込みが足りていなかった。
最終戦はフィーチャーマッチで時間切れになり、3勝3敗1引き分けだと、両者とも2日目に進出できない状況。次のターンに負ける場だったので、葛藤はありましたが、投了して相手に勝ちを譲りました。
負けから得られた教訓としては、
「トップメタのデッキを使うならミラーマッチを甘く見るな」
「フィーチャーマッチは配信などで色々と時間がかかるから、プレイを早めに」
■ジャン=エマニュエル・ドゥプラさんの優勝
僕が優勝した2021年の世界選手権で、ドラフトで0-2してから対戦して負けたのがジャンさんで、その後2人とも勝ち続けて決勝戦で再び戦ったのもジャンさんです。
彼はインスタントや瞬速の使い方が圧倒的に上手く、観客を魅了する素晴らしいプレイを見せてくれます。大会のアベレージが高く、今まで何度も上位入賞を繰り返していましたが、今回悲願の優勝。
おめでとう!
■おわりに
今回2日目進出は出来ませんでしたが、自分が少しずつ成長したのを実感しています。
特にドラフトが顕著で、2021年の世界選手権で0-3してから、その後のプロツアーでは1回も0-3していません!1-2することはあるものの、デッキとしてはまとまっている場合が多く、明らかに失敗ドラフトが減りました。
これは僕にとっては大きな進歩で、苦手だったドラフトを、練習の効率化でだんだんカバーできるようになって来ています!しかし逆に、得意だったはずの構築で勝率が落ちているのも、マジックの難しい所。あちらを立てればこちらが立たず。
とはいえ、成長を実感できれば、たとえ負けたとしても次に向かって進むことが出来ます。今回も前進!
マジックは負けても再挑戦のチャンスが何度もあるので、プロツアーを生き甲斐にして今後も挑戦していきます!大会後は特にモチベーションが上がる!
それではまた。
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