MTG │ 解説記事 │ 高橋優太【新環境のスタンダードの練習過程】
今回の記事では、カルドハイムリリース後に僕が行ったスタンダードの練習過程を記していきます。
※記事内のデッキリストは、MTGアリーナのインポートに対応しています。デッキリスト内最上部の【インポートデータ】で開かれたデッキリストをすべて選択してコピーし、MTGアリーナ内でインポートしてご利用ください。
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メタゲーム仮説
前回の記事で述べましたが、現在強いと感じるデッキはイゼットテンポとナヤアドベンチャーの2つでした。
《黄金架のドラゴン》は攻撃したターンに2マナアクションを取れるので、実質3マナで4/4飛行速攻を出すのに近い動きをします。
飛行速攻クリーチャーはプレインズウォーカーに対して強い性質があり、《黄金架のドラゴン》の影響により《怪物の代言者、ビビアン》は以前よりも評価ダウン。忠誠度4以下のプレインズウォーカーは返しのターンに落とされやすくなりました。
《霜噛み》《厚かましい借り手》で到達トークンを対処されて《黄金架のドラゴン》の攻撃で落ちるパターンが多すぎます。攻撃しながら2マナ出せる《黄金架のドラゴン》は非常に強力で、環境を定義していると言えます。
またグルールアドベンチャーに《スカルドの決戦》《巨人落とし》をタッチしたナヤアドベンチャーも攻守のバランスが良いです。
《黄金架のドラゴン》の影響でメイン《巨人落とし》も以前より腐りにくくなりました。《巨人落とし》は緑と赤が中心のスタンダードなら強くなるはず。
ここで上記の2つを倒せるデッキを考えます。
イゼットテンポは4/4以上のサイズを対処しにくいですし、赤や緑のデッキ対決ではクリーチャーのサイズ差がゲームの鍵になります。
今は巨大クリーチャーが強いから《貪るトロールの王》《巨大猿、コグラ》で勝とう!上記2つに強いデッキとして、緑単フードが良いという仮説を立てました。
■仮説:緑単フード
By高橋 優太【インポートデータ】 | |
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デッキリスト | |
15:《冠雪の森/Snow-Covered Forest》 3:《不詳の安息地/Faceless Haven》 4:《ギャレンブリグ城/Castle Garenbrig》 22 lands 4:《金のガチョウ/Gilded Goose》 |
3:《魔女のかまど/Witch’s Oven》 3:《パンくずの道標/Trail of Crumbs》 3:《グレートヘンジ/The Great Henge》 9 other spells 2:《鎖巣網のアラクニル/Chainweb Aracnir》 |
エルドレイン産の食物シナジーを重視した緑単フード。前環境から存在するデッキです。
《魔女のかまど》で《貪るトロールの王》を生贄に捧げることで実質殆どの除去を無効化し、《金のガチョウ》《パンくずの道標》により継続的なリソースを補給する、長期戦で強いデッキです。
緑単アグロではなく緑単フードを使おうと考えた理由は、盤面を作る力が強くて緑対決の長期戦に向いたデッキだからです。
しかし長期戦に強い分、守りに特化しており、序盤の攻撃力は低め。その分ライブラリーを削る青黒ローグや、高速《精霊龍、ウギン》するティムールランプといった、盤面とは異なる軸で攻めてくるデッキに少し弱い性質を持ちます。
カルドハイムからの新カードたち。
《老樹林のトロール》はサイズと除去耐性が良く、《魔女のかまど》で自分から生贄にできるため、マナ加速にもなります。
《吹雪の乱闘》は破壊不能を付与するため、緑対決で頻発する「相手の《恋煩いの野獣》を除去出来ない問題」を解決してくれます。
《不詳の安息地》はサイズ・起動コスト・アンタップインどれも優れており、デッキを単色にするメリットとも言える土地。
トリプルシンボルの《老樹林のトロール》を入れながら無色土地の《不詳の安息地》は強欲なマナベースに見えますが、この緑単フードは《絡みつく花面晶体》《カザンドゥのマンモス》の裏面含めて緑マナ27枚なので問題なく運用できます。
メインの《怪物の代言者、ビビアン》は《黄金架のドラゴン》に弱いですが、長期戦に強いのでサイドボードには採用すべきだと思います。
《仮面の蛮人》はビビアンの「-2」能力でサイドボードからサーチできるエンチャント・アーティファクト破壊枠。
前回の記事で、緑対決における《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》が強いかを考えていました。
《グレートヘンジ》を置き合うゲームなら、+1/+1カウンターの数で優位に立てますが、そもそも《グレートヘンジ》を置き合って並べあいするよりも、相手の《グレートヘンジ》を割るのが先決。
緑単フードの場合は6マナ域にライバルが多く、《貪るトロールの王》《巨大猿、コグラ》を押しのけてまで入るカードでは無いという印象。
緑単フードのような守るデッキではなく、もっと《探索する獣》と一緒に速攻で攻撃するデッキの方が、《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》は向いていると思います。
しばらく緑単フードを回して、イゼットテンポやナヤアドベンチャーに対して良い勝率を出せていました。
しかし回していくうちに、不利と感じる2つのデッキが立ちはだかります。
■検証:ラクドスサクリファイス
By高橋 優太【インポートデータ】 | |
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デッキリスト | |
6:《沼/Swamp》 4:《山/Mountain》 4:《寓話の小道/Fabled Passage》 4:《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》 2:《ロークスワイン城/Castle Locthwain》 2:《悪意の神殿/Temple of Malice》 22 lands 4:《ぬかるみのトリトン/Mire Triton》 |
4:《初子さらい/Claim the Firstborn》 3:《村の儀式/Village Rites》 2:《無情な行動/Heartless Act》 4:《ティマレット、死者を呼び出す/Tymaret Calls the Dead》 3:《アクロス戦争/The Akroan War》 3:《髑髏砕きの一撃/Shatterskull Smashing》 19 other spells 1:《アゴナスの雄牛/Ox of Agonas》 |
相手のクリーチャーを《初子さらい》《アクロス戦争》で奪った後に《村の儀式》《悲哀の徘徊者》で生贄に捧げる、ラクドスサクリファイス。
クリーチャーのサイズ差で勝る緑単フードですが、コントロール奪取呪文の前にはサイズ差も無力。《魔女のかまど》で対応して生贄にしない限り、《初子さらい》《アクロス戦争》でいいように攻められます。
そして緑単で全く対処できなかったのが《イマースタームの捕食者》。横に《悲哀の徘徊者》がいる状態で出されると対処不能で、クリーチャー生贄であっという間に巨大なサイズに育ちます。
検証
:《イマースタームの捕食者》を全く対処できず《アクロス戦争》がキツイため、ラクドスサクリファイスには緑単フード側が不利。
■検証:ティムールランプ
By高橋 優太 【インポートデータ】 | |
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4:《ケトリアのトライオーム/Ketria Triome》 2:《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》 2:《河川滑りの小道/Riverglide Pathway》 4:《寓話の小道/Fabled Passage》 5:《冠雪の森/Snow-Covered Forest》 3:《冠雪の島/Snow-Covered Island》 2:《冠雪の山/Snow-Covered Mountain》 2:《世界樹/The World Tree》 24 lands 4:《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》 |
4:《耕作/Cultivate》 4:《発生の根本原理/Genesis Ultimatum》 3:《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》 2:《髑髏砕きの一撃/Shatterskull Smashing》 13 other spells 3:《神秘の論争/Mystical Dispute》 |
マナ加速から《発生の根本原理》《精霊龍、ウギン》による勝利を目指すデッキです。
緑単フードは盤面維持と長期戦を目指すデッキですが、せっかく並べた盤面も《精霊龍、ウギン》によりリセットされてされてしまうため、天敵とも言える不利な相手です。
カルドヘイムからの新カードは《星界の大蛇、コーマ》。
一度アップキープにトークンが出てしまえば、破壊除去や戦闘ダメージでは対処不能で、1体で盤面を掌握する強力なフィニッシャーです。
最初のアップキープの誘発にスタックで《無情な行動》するか、もしくは追放除去でしか対処できないため、緑単で《星界の大蛇、コーマ》を突破するのはほぼ不可能。
横に《峰の恐怖》がいれば、《星界の大蛇、コーマ》は毎ターン3点砲台にもなります。
また《世界樹》もマナベースを改善しています。よく《森》を引きすぎて《発生の根本原理》を撃てない事がありましたが、《世界樹》がマナフィルターの役割になります。
検証
:《精霊龍、ウギン》《星界の大蛇、コーマ》というゴールが強く、緑単フードはティムールランプに対して凄まじく不利!
■評価:緑単フード
《老樹林のトロール》自体は強いです。
しかし、4ターン目の《グレートヘンジ》に貢献しない、相手の《恋煩いの野獣》に対して攻撃出来ない、土地にもならない。
比較するとどうしても《恋煩いの野獣》《カザンドゥのマンモス》よりもプレイの優先順位が落ちてしまいます。
また、緑単であることで破壊不能クリーチャーを超えられない点も問題でした。
最初の仮説通り、緑単フードはイゼットテンポやナヤアドベンチャーにラダー対戦で良い成績でした。
しかし緑単が意識されると、《イマースタームの捕食者》《星界の大蛇、コーマ》《精霊龍、ウギン》が増えて、不利なフィールドになる事が予想できます。
ここで緑単フードから一旦離れ、思考をまとめる時間です。
破壊不能を対処出来て、クリーチャーで攻撃するプランに合ったカードないかなと思ってカードプール一覧を見ていると・・・
あった!途中でよく負けた、ラクドスサクリファイスからのアイディアです。
《アクロス戦争》で《星界の大蛇、コーマ》を奪ったら圧倒的に有利になりますし、ダメージを凌がれたとしても《アクロス戦争》3章誘発のスタックで《星界の大蛇、コーマ》自身をタップすれば対処できます。
緑対決でも《アクロス戦争》は強く、今こそグルールアドベンチャーに帰る時では?
■改善:グルールアドベンチャー
By高橋 優太 【インポートデータ】 | |
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9:《冠雪の森/Snow-Covered Forest》 4:《冠雪の山/Snow-Covered Mountain》 4:《寓話の小道/Fabled Passage》 4:《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》 1:《ノットヴォルドの眠り塚/Gnottvold Slumbermound》 22 lands 4:《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》 |
2:《アクロス戦争/The Akroan War》 2:《エンバレスの宝剣/Embercleave》 3:《グレートヘンジ/The Great Henge》 4:《髑髏砕きの一撃/Shatterskull Smashing》 11 other spells 3:《アゴナスの雄牛/Ox of Agonas》 |
ナヤアドベンチャーではなくグルール2色を考えた理由としては2つあります。
まずはマナベース問題。2色とも出る土地がなくトライオームもないため、《小道》シリーズだけでは、どうしても白赤赤緑緑という動きに弊害が出ます。
そしてもう一つ。《スカルドの決戦》《巨人落とし》という白のメリットよりも、《アクロス戦争》《黄金架のドラゴン》の性能の方が環境に合っているため、2色で十分に感じました。
破壊不能クリーチャーを乗り越えるダメージを与えたり、《精霊龍、ウギン》の前に勝つにはやっぱり伝家の宝刀。
緑単フードのテスト時に、サイドボードで感触が良かったのが《秘密を知るもの、トスキ》。
除去や打ち消しに比重を寄せた、青黒や青赤のコントロールデッキに対して、継続してアドバンテージを獲得し続けます。
1マナと言う軽さが良く、プレイヤーを対象に取っているため《黄金架のドラゴン》で宝物トークンも出ません。
生贄なので、破壊不能を持つ《イマースタームの捕食者》問題も解決。
■おわりに
趣向を変えて、今週1週間の僕の練習過程を記事にしました。
仮説→検証→評価→改善というやり方はカードゲームの練習でも役立つ方法なので、参考になれば幸いです。
それではまた。