MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【プロツアー・モダンホライゾン3】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末に開催されたプロツアー『モダンホライゾン3』に参加してきました。
先に書いてしまいますが、結果は3-4-1で初日落ちと不甲斐ない結果に終わってしまいました。安定した成績を残せないところに、自分の弱さが表れているなと実感しています。
🏆Congratulations to Simon Nielsen, winner of Pro Tour Modern Horizons 3!🏆
After two incredible years – including winning Player of the Year and making the Top 8 in five out of six events – he finally secured his first ever Pro Tour victory.
Congratulations again, Simon! pic.twitter.com/etQyotNe8I
— PlayMTG (@PlayMTG) June 30, 2024
優勝はSimon Nielsen。直近6回のイベントで5回トップ8という異次元の好成績を叩き出しており、今回の優勝も「やっと」と言えるものです。凄すぎる!!!
ということで今回の記事では、プロツアーの調整過程と簡易レポートをお届けしたいと思います。
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★調整メンバーについて
前回から継続のメンバーに加えて、地域予選で権利を獲得した行弘さんと平山さん、これまでは別チームでの調整だった小坂さんが今回から参加して、全部で11名での調整となりました。
久しぶりのPT参戦となる行弘は特にリミテッドに注力して、練習でも好成績。本番でもドラフト6-0とその実力を如何なく発揮していました。流石!!!
★チーム調整:モダン、激変!
「モダンホライゾン3、あんまり強そうじゃないな」
「ドメインズーやヨーグモスなど、既存のデッキはまだまだ行けるかもね」
そう思っていた時期が僕にもありました。
蓋を開けてみると《力線の神童、ラル》《ルビーの大メダル》により一気にトップメタに返り咲いた新型ストーム、フェアデッキ対決を駆逐した《火の怒りのタイタン、フレージ》、プレビュー段階から話題に上がっていた《有翼の叡智、ナドゥ》コンボ、モダンとは思えない動きをしてくる《ネクロドミナンス》。。。。
そう、モダンは完全に破壊されたのです。
そのモダンに対して、チーム内では以下のように取り組みました。
■ボロスエネルギー・マルドゥエネルギー
チーム内で最序盤からエネルギーを愛していたのが行弘と平山。
プレリリースの段階からマルドゥエネルギーの原案を試しており、彼らのおかげで《魂の導き手》《猛り狂う猛竜》《ナカティルの最下層民、アジャニ》の強さを早くに知ることができました。
ボロスバージョンに着手したのは主に松浦と小坂。デッキパワー自体を感じるものの、メタゲームのポジションは悪く、特にナドゥコンボが厳しかったため、ボロス2色に限界を感じて《思考囲い》だけ足して最低限ガードを上げることに。
最終的には黒濃いめで《オークの弓使い》や《絶え間ない悪夢》まで入ったマルドゥを行弘が、ボロスに《思考囲い》だけ入れた黒薄めのマルドゥに松浦、小坂、原根、加茂の4名が使用することになりました。
■エルドラージ系
初期にMagic Onlineで勝っていたため、他に誰も好きな人いなそうだから回すべって流れで無色バージョンを井川、赤緑《裂け目の突破》バージョンを原根が着手。
無色バージョンはメインボードこそ良いもののサイド後があまりにも脆く、あらゆるデッキから《血染めの月》《海の先駆け》《減衰球》が飛んできてボッコボコ。すぐに断念しました。
《裂け目の突破》バージョンも結構な期間回していたものの、最終的にはデッキパワーの低さに断念。
■ナドゥコンボ
ナドゥコンボは初期から森山が担当。他にも最低限回したメンバーはいたものの、また一人また一人と去り、最終的には森山独力での調整となっていました。
様々なバージョンを試したものの、モダン東西戦で優勝した《樹上の草食獣》型の手応えが良かったため最終的にはそこに着地。
相性が悪いとされていたストームやジェスカイコントロール対策に《白鳥の歌》を多めに採用したリストとなりました。
■ストーム
好みでも得意でもないものの、みんな好きそうじゃなかったので井川がテスト。
最速2キル、安定3.3~3.5キル程度。メインだけなら今でも最強クラスのデッキだと思います。仕掛けるタイミング、カウンターデッキへの貯め方など見た目よりスキルの比重が高いデッキで、回せば回すほど勝てるようになって楽しかったです。
ハマりすぎて一時はこのデッキと心中しようかなとも思いましたが、ガードが上がっているタイミングで勝てるタイプのコンボデッキではないなと目が覚めて断念。最後はチームメイトの《呪文嵌め》大量のジェスカイコンにボコボコにされて捨てる決心が付きました。
■ディミーアマークタイド
高橋が根気強く調整。一時はボロスエネルギーとの相性差に折れそうになっていましたが、逆に言うと「ボロスエネルギー以外は比較的有利に立ち向かえる」ということで持ち込むに至りました。
こちらの詳細については、一昨日アップされた彼自身の記事をご覧ください。
■その他
上記以外にも、果敢や黒単ネクロなどある程度のデッキはチームの誰かが最低限は触りました。リビングエンドやエスパー御霊のような、『モダンホライゾン3』での強化が少なかったデッキはほぼ触っていなかったと思います。時間は有限なので、こういう割り切りもある程度は必要です。
そして最後になるのが、僕自身も選択したジェスカイコントロールです。
■ジェスカイコントロール
コントロール好きな井上を筆頭に、平山、井川、中村がテスト。《空の怒り》が環境最強の全体除去で、ボロスエネルギーやナドゥに対して圧倒的な強さを見せるため、このアーキタイプの研究に力が入りました。
基本的には《知りたがりの学徒、タミヨウ》《瞬唱の魔道士》《アノールの焔》が入ったウィザード型、《一つの指輪》を軸にしたリング型の2パターンでしたが、どちらも手応えはよくありませんでした。
ウィザード型はナドゥには強いものの単体除去が多いデッキに弱く、リング型はエネルギーなどには強いもののストームやナドゥなど《一つの指輪》の返しに決めてくるコンボデッキに弱かったのです。
そこで平山が目を付けたのが、スタンダードやパイオニアで最上級のドロースペルとして使われている《記憶の氾濫》。ナドゥやストームのようなコンボデッキに、そしてミラーマッチでは構え続けられる点が強力なカードです。
ボロスエネルギーのような攻撃的なミッドレンジには《一つの指輪》型より弱くなってしまいますが、エネルギーデッキがそもそもポジションが悪い&元々相性が良いので気にしすぎず、差を付けづらいミラーマッチにおいて強くなるのが非常に魅力的でした。
ただの2ドローでしかない《アノールの焔》、サイド後は《記憶への放逐》を乗り越えることが不可能な《一つの指輪》を横目に、悠々とプレイする《記憶の氾濫》のなんて気持ち良いものか!スタンダードで《喝破》に怯えていた日々が懐かしい。
後半はジェスカイコントロールに傾倒していた井上と平山、そして他の選択肢をどれも使いたくないといういわば消去法的に選んだ中村と井川の4名が最終的にこのデッキを使用することに決めました。
★使用したリストの解説
ということで、今回のデッキリストはこちら。
特徴的な部分だけ以下に記していきます。
先に述べた通り、このデッキの核であり今回このデッキを使う動機となったカードです。3枚で試していた時期もありましたが、結局はこのカードを引かないと勝たない(勝てない)ということもあり4枚に。スタンダードと同じですね。
フェアデッキ対決最強の《火の怒りのタイタン、フレージ》を使うのはもちろん、その《火の怒りのタイタン、フレージ》を活かすためにもマナベースに負担をかけてでも《栄光の闘技場》を採用しました。3色コントロールにおいて単色の土地はかなり厳選されるのですが、それだけの価値がこの土地にはありました。
ほぼすべてのパーマネントを対処でき、カウンターがあり、さらにカウンターできない呪文すら《極性の逆転》という回答があるため、ジェスカイコントロールのミラーマッチで差を付けることは困難。《記憶の氾濫》でリソースに差を付けたとしても、ゲームに勝てなければ意味がありません。
そんな中で白羽の矢が立ったのが《アーデンベイル城》。モダンのジェスカイコントロールは《廃墟の地》が採用されていないので、土地だけは唯一触られない=デッキリストで差を付けることができるポイントなのです!
《記憶の氾濫》の採用、そしてこの《アーデンベイル城》の発見のおかげで、「ジェスカイコントロールに強いジェスカイコントロール」という立ち位置を確立できました。
サイドボードの枠が1枚空いたので「どこに強くするか」ということで上位メタであろうナドゥ、そして直近の大会で成績を残していたマーフォークを意識して採用しました。
エネルギー対策として今大会で使われると確信していた《陽光浄化者》を対処できるのもGood。使い勝手良かったです。
★本戦の結果
・1stドラフト
前大会の優勝者ということでフィーチャードラフトでした。
こちらをご覧ください。
初手《不安定な護符》、2手目《反復された稲妻》、3手目《宴の打破者》(この順目で取れるのは嬉しい!)と赤を固めつつ、エネルギーを使う強いカード2枚が早い段階で取れているのでボロスにこだわらず、6手目には受けを広くできるようにジェスカイカラーのフェッチを確保。
さらに遅い順目で《謎の門のガーゴイル》が来たため、この段階で青白タッチ赤の完成形を強く意識します。
2パック目の初手は強アンコモンの《転移の福音者》!その後も青白タッチ赤を意識しながらエネルギー重視のピックを続行。
遅い順目で環境トップアンコモンの一角である《電気放出》が流れてくるという嬉しい誤算もありつつ、想定通り《謎の門のガーゴイル》が一周した段階で青白タッチ赤がほぼ確定しました。
3パック目は初手《乱動の地図作り》、2手目《魂火の使者》で良い流れだなと思っていたら、なんと4手目5手目と連続で《夢潮の鯨》が流れて来て一気に締まりました!《夢潮の鯨》は使うのが難しいカードではありますが、うまく使えると非常に強力なレアです。3マナ7/5というスタッツはもちろんのこと、増殖がエネルギーと相性が良く、《魂火の使者》の賛美カウンターを増やした日にはお祭りです。
その後はマナベースを確保したり、《謎の門のガーゴイル》が一周するかなと予想していたところにまさかの《静牢》一周で大喜びしながらフィニッシュ。
完成したデッキはこちら。
僕が自分で撮影したものの方がデッキの動きがわかりやすいと思うので、一応そちらも載せておきます。
最後は英雄譚の次のターンに鯨を二段攻撃&速攻で14点叩き込んで勝ち。2-1。
デッキ強かったから3-0したかったけど、練習負けまくってたこと考えると2-1で御の字です☺️ pic.twitter.com/wfQebQwYca— Yoshihiko Ikawa (@WanderingOnes) June 28, 2024
主力である2枚の《夢潮の鯨》を使うために4マナ域を採用せず、2+2の動きを意識したのが大きな特徴です。軽くて手数が多くなる分、足りなくなる手札を《乱動の地図作り》《不安定な護符》《不可能の一瞥》で補充したり、不要な土地を《大嵐の収穫者》《宴の打破者》で捨てることで質を高めて戦います。
またフェッチの多い3色であることを考慮して、ダブルシンボルを一番重い=5マナの《アジャニ、神祖を倒す》しか採用していないのも特徴ですね。赤いカードが少し多いようにも思えますが、赤い2マナのカードはあくまで4ターン目以降に出せればいいな/ツーアクションに使おうぐらいの感覚ですし、低マナ域の能動的なアクションは青白のカードだけでしっかり埋まっています。
マナベースもフェッチ込みで「白9:青8:赤6(+《太陽光変換器》)」とそこそこ充実しています。4ターン目にツーアクションするときに白白欲しくなりそうだったので、白を1枚多くしました。
R1 白黒 ◯◯
R2 青黒 ××
R3 赤黒 ◯◯
R2こそ2ゲームともマナスクリューに見舞われてしまい落としましたが、それ以外のゲームはデッキの持ち味を存分に生かして快勝!
前回の記事でも書いた通り、練習ではめちゃくちゃ負けていた『モダンホライゾン3』ドラフト。本番の、しかもフィーチャーという普段より緊張する場で、冷静にピック&プレイできて嬉しかったです。
・モダン
R4 リビングエンド ××
R5 バントナドゥ ×◯△
R6 ジェスカイウィザード ◯◯
R7 エスパー御霊 ××
R8 バントナドゥ ◯××
メインほぼ100負けと絶望的な相性であるリビングエンド・エスパー御霊に負けたのはしょうがない。構築段階でガードを下げていますし、フィールドにおける絶対数も少なかったので不運といえる範囲です。R5のナドゥ戦も、G1が熱戦の末敗北した結果、G3敗色濃厚なところで引き分けたので文句は言えません。
問題はR8。G3で残りライフあとわずか、だがこのターンを凌げればほぼ勝てるという盤面で、理解不能なプレイミスをして敗北しました。
詳細は省きますが、打てる除去を打たず、打たなくていいカウンターを打った結果、見えていた盤面のクリーチャーに殴られてライフがピッタリ0になったのです!僕以外のどのプレイヤーでも勝てていたゲームだったと思います。
ここ数年でもブッチギリで酷いミスなので、数年は忘れらないでしょう。
ということでドラフト2-1で折り返したものの、モダン1-3-1で初日落ちです。悲しい。
最終戦の最終ゲームまではそれなりに集中できていましたし、プレイも運もそこまで悪くなかっただけに、酷い終わり方をしてしまったのが残念です。
こういうポカミスをしている限りは、常勝しているSimon NielsenやJavier Dominguezのような超一流プレイヤーには到底追いつけないなと思いました。俺は弱い。
■終わりに
ということで前回の優勝から一転、今回は初日落ちで終わってしまいました。応援していただいた皆さんには申し訳ないですが、実力を考えると納得の敗北です。
チーム全体で見てもあまり好成績とはいえませんでしたし、特に今回は構築ラウンドでの敗北が目立ちました。正直ナドゥは僕たちが思っていたよりも多く、しかもナドゥ自体の強さ=完成度も2段階ぐらい違うなと感じました。環境トップのコンボデッキの強さを見誤っていたのですから、勝てるわけがありませんよね。
《甦る死滅都市、ホガーク》も《王冠泥棒、オーコ》もプロツアーで使ってきた自分ですが、今回《有翼の叡智、ナドゥ》を選べなかったことは生涯恥じることになるでしょう。
7月から9月にかけては、アリーナ予選やBMOなどに参加したりもしますが、僕のプロマジック的には10月末の世界選手権まで一休みとなります。その間はマジックの地力を上げつつも、旅行に行ったり他のゲームをやったりなど良い感じにリラックスして過ごす予定です。常に全力だと体も心も持たないので、ON/OFFを大事にね。
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!