MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【世界選手権レポート】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
マジック最高峰の大会、それが世界選手権。
マジックを始めて22年。初プロツアーから14年。過去の形式での世界選手権には出たことがありましたが、今の少人数制になってから初めての出場となります。
最初で最後の挑戦かもしれない。そういった万感の思いと期待を胸に、頂点を目指す日々を送りました。
今回の記事では、そんな世界選手権のレポートをお届けします。
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■ドラフト
ドラキチで練習。さらに別の日にはリミテッドの精鋭たちに集まってもらってドラフト練習。そしてデッキ提出後にはさらにBo3(トラディショナル)でのドラフト練習といった感じで、これまでになくドラフトの練習をしました。
個人的な色の強弱としては「青>白≧黒>>>緑>>>>>赤」。一般的には黒がもっと人気ですが、黒は人気ゆえに被りやすく、よほどいいポジションでない限りは白や青の方がやりたいな、と考えていました。青と白はサイドボード用のカードも強く、Bo3ならではの強みが発揮できます。
自分ルールとしては
・基本的に赤は避けるが、例外としてレアリティ高いカードを引いた/流れてきたときのみ赤をやる。その場合は赤黒も赤緑もOK。どちらも卓1であれば3-0できる。逆に赤をやるとしても赤白は最大値が低いのでやりたくない。
・青をメインカラーでピックできたなら、よほどでない限りセカンドカラーに黒は選ばない=青黒はやらない。
青も黒も点数が高く人気なため、レベルの高い卓で半端に青黒を目指すと事故りやすい。降霊/飛行ビートができる青白が一番バランスがよく、次に《風変わりな農夫》《影野獣の目撃》《蟻の隆盛》あたりが取れるなら青緑。
・マナカーブを意識してピックする。2-5ターン目まで毎ターン動けるデッキを構築すること。
といった感じです。
さて実際のドラフトはどうなったか見ていきましょう。
本番は初手が青のレア、かつ青白で最も上手く使えるカードである《上流階級の霊》。これは嬉しい!!
そこから青単気味にピックをし、4手目で流れてきた《吸血鬼の社交家》はスルー。さらに流れてきた《月の憤怒獣の切りつけ》を流して自分は《聖戦士の奇襲兵》をピックし、下に赤黒をやってもらう&自分の青(白)ポジションを主張します。
2パック目も初手こそトップレアの一角である《食肉鉤虐殺事件》をピックしますが、黒は上家がやっていそうなので期待はせず。2-3で《意気盛んな墓守り》が流れてきたので、そこで完全に青白を固定しました。
3パック目はパックの出が悪く、3-1で《臓物を引きずる者》こそ取れたものの、その後は大したカードが来ず、弱めなパックからギリギリデッキに入りそうなものをかき集め、なんとかデッキの形を仕上げました。
レア1枚、アンコモン2枚、コモン20枚と圧倒的なレアリティの低さ。ですがパックが弱かった=卓の他のメンバーもデッキがあまり強くないことが予想されます。
僕のデッキはレアリティこそ低いもののそれなりにまとまっており、2-1か1-2はできるだろうという見込みでした。
実際の成績も2-1。2-0対決は完敗でしたが、悔いなしです。
MTGアリーナのBo1ドラフトであれば2-3勝ぐらいしかできなそうなデッキでしたが、そんなデッキでも戦えるのが8人ドラフトの良いところですね。
■スタンダード
権利を持っている高橋・佐藤・井川の3人に加え、くまぴー(熊谷)、そしてコガモ(津村)の2人に協力をお願いし、計5人で調整を行いました。
今回僕とレイくんが最終的に選択したのは白単アグロ。緑単アグロとイゼットターンという2強の数が多かったため、目立ってはいませんでしたが、前の週から高い勝率を記録していたデッキです。
ベースとなったのはこちらのデッキ。
SCG Tour Online – Satellite #3 (6-0)/By Connor Flotten【インポートデータ】 | |
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デッキリスト | |
17 《冠雪の平地/Snow-Covered Plains》 1 《フロスト・ドラゴンの洞窟/Cave of the Frost Dragon》 4 《不詳の安息地/Faceless Haven》 22 lands 4 《石縛りの使い魔/Stonebinder’s Familiar》
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2 《ポータブル・ホール/Portable Hole》 2 《スカイクレイブの大鎚/Maul of the Skyclaves》 4 other spells 1 《粗暴な聖戦士/Brutal Cathar》 |
元々白単やバント、白単タッチ青など色々試していたものの、どれも手応えは微妙。緑単への勝率の低さがネックになっていました。
ですが、このリストを使ってみたところ、緑単に五分程度の勝率を記録。さらにはイゼットターンにかなりの優位性が見いだせたので、この白単アグロをチーム内で調整し、よりイゼットターンに寄せたのが今回のリストです。
これは世界選手権の参加者からメタゲームを予想した結果、「緑単は少なめ・イゼットは多め」という予想が立ったので、それに合わせてチューニングしました。
世界選手権/By 井川 良彦【インポートデータ】 | |
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デッキリスト | |
19 《冠雪の平地/Snow-Covered Plains》 4 《不詳の安息地/Faceless Haven》 1 《フロスト・ドラゴンの洞窟/Cave of the Frost Dragon》 24 lands 4 《光輝王の野心家/Luminarch Aspirant》
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3 《運命的不在/Fateful Absence》 2 《スカイクレイブの大鎚/Maul of the Skyclaves》 2 《ポータブル・ホール/Portable Hole》 7 other spells 2 《静寂の呪い/Curse of Silence》 |
まず行ったのが、《輝かしい聖戦士、エーデリン》の増量。《安堵の火葬》《バーニング・ハンズ》といった火力で死なないタフネス4でありつつ、非常に打点が高いクロックとして活躍します。特にイゼットターンはブロッカーがほぼ皆無なので、一度動き出せば一瞬でゲームを終わらせる力を有しています。
《老樹林のトロール》擁する緑単にはあまり強いカードではありませんが、それでも先攻であれば無理やり押し切ることもあります。特に《スカイクレイブの大鎚》との相性は素晴らしく、1-2回の攻撃でゲームを決めてくれます。
そしてイゼットターンを意識する上で、これら3マナの除去クリーチャーをすべてサイドボードに落とすことにしました。
ただし《くすぶる卵》をメインに採用しているイゼットターンも一定数いると想定していたので、《ポータブル・ホール》《運命的不在》を少し増量することで除去の枚数は担保しています。
ちなみに似た働きをするこの2種類ですが、個人的には《スカイクレイブの亡霊》の方が強いカードだと感じています。
特に白単のミラーマッチでは除去られた時に相手に返却してしまう《粗暴な聖戦士》は信用できず、完全に除去できる&《ポータブル・ホール》にも触れる《スカイクレイブの亡霊》の方が優秀なので、サイドボードには《スカイクレイブの亡霊》を多めに採用しています。
サブミットのギリギリまで悩んだのが、1マナ域の枚数です。1ターン目から動けるというのが白単の強みであるのは間違いないのですが、とはいえ所詮は1マナ域、引きすぎると足を引っ張ることになります。
最終的には複数枚引いた時に腐りやすい&3マナの追放クリーチャーを減らしたことによりバリューが下がった《石縛りの使い魔》を1枚減らし、7枚体制になりました。
主に《家の焼き払い》のような全体除去対策。
ただし必ずしも全体除去のために温存する必要はありません。単体除去を避けるだけでも3マナクリーチャーとしては十分ですし、相手のライフによっては(特に複数枚引いているときは)相手のエンド時にポン出ししてクロックを増強することもあります。
白い《蛇皮のヴェール》。《消えゆく希望》や《パワー・ワード・キル》といったカードを避けることはできませんが、イゼットは基本的には火力が多いのでそれを回避するのが主な目的です。
タフネスが3上がるのは非常に頼もしく、《輝かしい聖戦士、エーデリン》や《傑士の神、レーデイン》を《家の焼き払い》から守ることができるのは《蛇皮のヴェール》にはできない芸当です。
またデッキ公開制であるため、このカードが入っているというだけで相手のコンバットが難しくなったり、余計にダメージを通してくれたりします。2マナパワー3生物がアタックしたとき、あなたは《くすぶる卵》でブロックできますか?
なお基本的には+1/+3モードでプレイしますが、《ゼロ除算》をフィズらせて相手の《マスコット展示会》を防ぐケースもあるので、バウンスモードもお忘れなく。
こちらも主にイゼット系用。
除去がないハンドのときは1Tに《くすぶる卵》を宣言することが多いです。《精鋭呪文縛り》や《傑士の神、レーデイン》の追加のような感じで、《黄金架のドラゴン》《アールンドの天啓》を止めることがあれば、時には《翻弄する魔道士》のように全体除去を止めて殴り勝つこともあります。
デッキ公開でないと宣言しづらいカードなので、非公開制のラダーではオススメしません。
ほとんどの方はご存知ないかと思いますが、実はこっそりと英語公式でデッキテクが紹介されていますので、英語ではありますが興味のある方はこちらもご覧ください。
◎対戦結果
[予選ラウンド]
R1 スゥルタイ根本原理 ○××
R4 緑単アグロ(Paulo Vitor) ××
R5 イゼット天啓(Stanislav Cifka) ○○
R6 アゾリウステンポ(茂里 憲之) ×○×
R7 イゼットドラゴン(高橋 優太) ××
R8 グリクシス天啓(Jan Merkel) ×○×
R9 アゾリウステンポ(茂里 憲之) ○×○
R10 イゼット天啓(Stanislav Cifka) ○○
3-4。ドラフトラウンドの2-1と合わせて5-5で僕の世界選手権は幕を閉じました。
僕とレイくん、2人の当たったデッキと成績を見てみると、
vs 緑単 1-1
vs イゼットターン 4-0
vs アゾリウステンポ 1-1
vs グリクシスターン 0-3
vs イゼットドラゴン 0-2
vs ティムール 0-1
といった感じ。緑単には五分、そして意識したイゼットターンにしっかり勝ち切ることができた点は良かったと思います。
ただ今回想定外だったのがグリクシスターン。
《溺神の信奉者、リーア》《セレスタス/The Celestus》といったカードが辛く、またイゼットと違い《アールンドの天啓》に頼らずにコントロールしてくる(すべてサイドアウトできる)除去コンだったので厳しい相性でした。
対イゼットドラゴンはチーム内でもテストしており、結果としては五分程度。勝つこともあれば負けることもあります。
僕らは振るいませんでしたが、デッキの調整および選択には満足しています。緑単とイゼットターンの両方と戦えて、しかも意識されていない(ガードが低い)タイミングで白単を選ぶことができたのは良かったと思っています。
先週末の全体のマトリクスを見ても白単がベストデッキの1つであったことは間違いないので、もう少しプレイが良ければ、もう少し運が上向けば、そう、もう少し何かがあれば大勝もありえたでしょう。それぐらい良いデッキだったと自負しています。
■終わりに
僕自身は8位とトップ4入賞には至りませんでしたが、チームメイトであり同じRush Prosのあんちゃんが優勝してくれたのは本当に嬉しい!!!
そしてチームメイトであると同時に同じ大会に出ていたプレイヤー、良きライバルとして悔しさもあります。次は自分が勝ちたい!
という感じで、ライバルズリーグ1週目で最高のスタートを切った僕たちは、あんちゃんのワールド優勝という最高の形でシーズンを終えることができました。
昨年チーム調整を始めたときは、こんなに素晴らしい1年間を過ごせるとは夢にも思っていませんでした。一緒に調整した仲間たち、応援していただいた皆さん、本当にありがとうございました!
来年はプロリーグ最後の年になります。まだどういったシステムになるのかは知らされていませんが、世界で24人しかいないMPLの1人として、再び世界選手権の舞台に立てるよう頑張っていきたいと思います。
あんちゃん共々、我らRush Prosをこれからも応援よろしくお願いします!
そして今現在、あんちゃんの優勝記念セールを行っていますので、この機会に是非ご購入ください!!
それでは今回はここまで。次回の記事でお会いしましょう!