MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【MRL#6 -サイクリングとグリクシスパクト-】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
先週末、ライバルズリーグ第6週が行われました。結果だけ先に書きますと、スタンダード3-3、ヒストリック4-2の計7-5。なんとか36位以内をキープしたことにより、来期もライバルズリーグ以上に残ることが確定しました!
今回の記事では、リーグで使用したデッキそれぞれの調整過程や理由などをお届けします。
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■前回リーグからの反省=調整メンバーの募集
前回(4月)のリーグでは、リーグ初の2フォーマット制にも関わらず従来チームの5人だけで調整。その結果大敗することとなりました。
同じようにやっては同じように負けるだけだろう。ということで自分たちの力不足を真摯に受け止め、チャンピオンシップと同様に調整メンバーを増員して、スタンダード担当とヒストリック担当に分かれて調整をすることに。
友人たちに声をかけた結果、次回チャンピオンシップの権利を持っている斉藤 徹・増田 勝仁の2名(ヒストリック担当)、そしてリーグと同週に予選を控えている小泉 祐真、宇都宮 匠、浦瀬 亮佑、津村 健志の4名(スタンダード担当)の計6名が今回のリーグ調整に参加してくれました。
今回の好成績は間違いなく手伝ってくれた彼らのおかげです。この場をお借りして改めて感謝を。ありがとう!
■スタンダード
今回の調整では、リーグメンバーの原根・熊谷と予選突破を目指す津村・小泉・宇都宮・浦瀬の計6名でスタンダードを担当。
前回のリーグと異なり「初戦の対戦相手が決まっている」というルールが撤廃されたので、個人ごとの対戦相手をそこまで気にせずフラットにデッキ選択をできるようになったのが大きなプラスです。
調整を経たあと、チームの総意として提示してもらったのがサイクリングとスゥルタイネストの2択でした。
両方回してみた結果、どちらも手応えは良く、かなり悩みました。最終的には「相性の悪いデッキが少なく、かつ最多勢力であるスゥルタイ根本原理に少し優位に立てる」と感じたサイクリングを選択することにしました。
サイクリング【インポートデータ】 | |
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デッキリスト | |
4:《ラウグリンのトライオーム/Raugrin Triome》 4:《河川滑りの小道/Riverglide Pathway》 4:《連門の小道/Hengegate Pathway》 4:《針縁の小道/Needleverge Pathway》 1:《サヴァイのトライオーム/Savai Triome》 1:《陽光昇りの小道/Brightclimb Pathway》 1:《清水の小道/Clearwater Pathway》 1:《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》 20 lands 4:《繁栄の狐/Flourishing Fox》
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4:《驚くべき発育/Startling Development》 4:《願い与えの加護/Boon of the Wish-Giver》 2:《血の希求/Go for Blood》 4:《天頂の閃光/Zenith Flare》 4:《記憶漏出/Memory Leak》 2:《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》 4:《型破りな協力/Improbable Alliance》 24 other spells 2:《ガラスの棺/Glass Casket》 |
サイドボードなどは比較的スタンダードな構築ですが、一点だけ工夫を施しています。
それが4枚採用された《記憶漏出》、そしてそれに合わせた黒絡みの両面土地の採用です。
「今の環境、基本地形って必要ですか?」
サイクリングに確定させて、さぁデッキ提出まであと数時間と迫っていたタイミングで、浦瀬くんがパっと発したこの一言によりデッキが進化!
元々は2枚入っていたもののほとんど黒マナが入っておらずプレイ頻度の低かった《記憶漏出》でしたが、基本地形をすべて黒絡みの両面土地に変更することによりプレイできる可能性が大幅アップ。同じく通常プレイの頻度が低かった《血の希求》を減らして《記憶漏出》を4枚採用することにより、スゥルタイ根本原理への耐性(特にカウンターの枚数が少ないメインボード)を、無理なく上げることができました。
デッキ公開後、サイクリングを選択したJavier Dovinguez、Luis Salvatto、Sebastian Pozzo、Matias Leverattoといった南米チームも同じアプローチのデッキ調整を行っていることを見て、正しさを確信したとともに浦瀬くんの発想力に感服しました。本人は全くサイクリングをプレイしていなかったとのことですが、だからこそ固定概念なくフラットな視点でデッキを見ることができたのだと思います。
本戦の結果
R1 スゥルタイ根本原理 ○×○
R2 サイクリング ×○×
R3 サイクリング ○○
R7 サイクリング ○○
R8 4Cヨーリオン ×○×
R9 赤単 ×○×
3-3。完全に集中力が切れていたのか、R9の赤単戦は凡ミス連打でマッチを落としてしまったのでもったいなかったですね。
スタンダードはアーキタイプの数が多い上にデッキの強さも均衡しているので、3-3できれば満足です。
■ヒストリック
一方のヒストリックは、リーグメンバーの高橋・佐藤・井川とサポートメンバーの斉藤・増田の計5名で調整を担当。
調整序盤から2つのデッキの強さが際立ち、その他のデッキを圧倒しました。それはオラクルパクトとイゼットフェニックスです。
《汚れた契約》《タッサの神託者》のたった2枚と4マナでゲームに勝利するお手軽コンボデッキ。ほぼハイランダーデッキであるにも関わらず高い安定性を誇り、多数のカウンター/手札破壊によるバックアップで、容易にコンボを遂行することができます。
一番メジャーな《夢の巣のルールス》型以外にも、《覆いを割く者、ナーセット》《神秘を操る者、ジェイス》といった強力なカードを搭載したタイプ、赤を濃くした3色タイプなど、様々なバリエーションがあり、メタや個人の好みに合わせてチューニングできるのも、デッキの強みです。
このオラクルパクトに対して高い勝率を誇るデッキとしては、速さで圧倒するグルール、そして手札破壊やカウンターでコンボを妨害しながら殴るローグやラクドスアルカニストといったデッキが存在するのですが、これらのデッキの存在を許さないのがイゼットフェニックスです。
《スプライトのドラゴン》・《嵐翼の精体》・《弧光のフェニックス》・《弾けるドレイク》というそれぞれ異なる除去耐性を持つアタッカーたちを完全に対処するのは難しく、かつ豊富な除去と圧倒的なドローソースにより最序盤の攻防からロングゲームまで戦える。まさにフェアデッキ界の頂点と言えます。
このデッキの唯一の問題点は、オラクルパクトに対して圧倒的に相性が悪いこと。チーム内調整ではサイドに《窯の悪鬼》という専用カード(=軽くて強いアタッカー)をサイドに取ることで若干改善しましたが、それでもマッチ相性を改善するほどではなく、依然として不利を強いられました。
あらゆるデッキがこの2つのどちらか(もしくは両方)に粉々にされる中、唯一五分以上に戦えるデッキとして頭角を現したのがジェスカイコントロールでした。
ジェスカイコントロールには2パターンあり、「《奔流の機械巨人》+《マグマ・オパス》」型を使うとイゼットフェニックスへの勝率が上がる反面オラクルコンボに下がり、逆に「《サメ台風》+カウンター多め」型にするとオラクルコンボに上がりイゼットフェニックスに落ちると、どちらも一長一短です。
デッキの地力がオラクルパクト・イゼットフェニックスの2強ほどは高くないこともあり、あちらに寄せればこちらが立たず、といった形で繊細な調整を求められます。
オラクルパクトに弱いが、下位デッキすべてを圧倒するイゼットフェニックス。
明確に苦手な相手はいるが、イゼットフェニックスを含む上位デッキに強いオラクルコンボ。
調整によってはどちらにも戦えるが、裏目があり構築が難しいジェスカイコントロール。
この3択のうち、まず裏目が大きいジェスカイコントロールを断念。
最後の2択では、純粋に直接対決で弱く、他のプレイヤーもオラクルを使ってくるだろうということでイゼットフェニックスを諦め、チーム全員がオラクルパクトを使用することになりました。
ヒストリックの調整は「オラクル・イゼットフェニックス・ジェスカイ」の3強というのが比較的早い段階で判明したため、それぞれのマッチアップやミラーマッチを練習する時間をいつもより取ることに成功。そのおかげでこのオラクルパクトについてもリーグで戦える、バランスの良い構成に仕上げることができました。
もし今回のメタゲームを完全に把握できていたらメインの除去をもう少し減らしてサイドの《否認》《唱え損ね》をメインに昇格させるでしょうが、グルールやセレズニアカンパニーといったアグロデッキも多少はケアしなければならない都合上、これぐらいのバランスが現実的なラインでした。
他のオラクルパクトと違っていた大きな点は以下の2点。
まずは《願いのフェイ》の不採用。追加のチューターであり相手の《屍呆症》/《漂流自我》への対策も兼ねているのですが、チューターとしては重く、かつサイドボードの枠を2枚占有するのが厳しいです。
また、ミラーの《屍呆症》/《漂流自我》についても、わざわざ入れてもサーチできるほどの余裕はなく、かつ打っても勝ち確ではない=あまり意識するほどのものではない、というのが練習の結論だったので、対策という意味も特に不要。よって《願いのフェイ》は最終的に解雇となりました。
そして《ギラプールの希望》の採用。これは僕たちのチームのみが採用したテクニックでした。相手のカウンターを無視しながらコンボを決めることができるだけでなく、《夢の巣のルールス》と合わせれば相手を半ロック状態に追い込むこともできます。
ミラー以外でカウンターを打ってくるデッキ=ジェスカイコントロールにも入れたくなりますが、《サメ台風》で止められるのでアウト。ミラーマッチ専用カードとして採用されました。チーム独自のカードとしては勝利貢献度はかなり高め。
本戦の結果
R4 オラクルパクト ×○○
R5 イゼットフェニックス ×○○
R6 オラクルパクト ○○
R10 ジェスカイコントロール ○×○
R11 オラクルパクト ××
R12 オラクルパクト ○××
4-2。
チーム5名で使用し、4-2(高橋)、4-2(熊谷)、4-2(井川)、3-3(佐藤)、3-3(原根)。前回のジャンドフードの失敗から一転、今回はしっかりと正解デッキを、そして良い構成を選ぶことができた結果、全員が3-3以上・トータル18-12と好成績を収めることができました!
■終わりに
冒頭にも書いた通り、トータル7-5で暫定順位は26位。足切り(37位以下)を免れ、無事ライバルズリーグ残留が確定!前回のリーグで大敗してからの一ヶ月間は本当にストレスフルだったので、とりあえず肩の荷が下りたという感じです。安堵。
また僕だけではなくチームメイト全員のリーグ残留も決まりました。一緒に頑張ってきた調整チーム5人全員、1人も欠けることなく来年もプレイできることが本当に嬉しいですね。
ライバルズリーグ内の順位自体は26位と残留組の中では下位に位置していますが、6月のチャンピオンシップ、7月のリーグ、そしてガントレットとまだ下剋上の機会は残っています。せっかくのチャンスなので、引き続き研鑽して逆転MPL昇格を狙っていきたいと思います!
それではまた次回の記事でお会いしましょう!