MTG │ 大会レポート │ 井川良彦【MRL#5 -グルールアドベンチャーとジャンドフード-】
皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
10月から開催されているライバルズリーグもいよいよ佳境になってきました。
全7週のうち5週目となる今回から形式が変わり、「成績が近い者同士でマッチングするポッド制の導入、しかも初戦の相手は決定済み」「スタンダード・ヒストリックの2フォーマット」となり、より過酷に、より熾烈な戦いになりました。
今回の記事では、リーグで使用したデッキを選択した理由や反省をお届けしたいと思います。
※ラッシュメディア記事内紹介のカードは
カード名のリンク、記事末尾のバナーを
クリックで通販サイトへアクセスできます
通販サイト(https://www.cardrush-mtg.jp/)
■スタンダード
これまでは「この週における最適なデッキ」を「チーム全員で」模索してきたのですが、今回のルールがそれを許しませんでした。
新規ルール:「初戦の相手は決定済み」
これにより何が起こったかというと、
佐藤
:初戦がAndrea Menguchi。使用デッキはドゥームと予想。佐藤本人はアグロ系を好むが、相手がドゥームということで除去に強いデッキを使用したい。
原根
:初戦がEli Loveman。使用デッキはナヤクラリオンと予想。それに相性が良いスゥルタイ根本原理を使うことを最初から強く意識。
熊谷
:初戦がChristian Hauck。使用デッキはグルールアドベンチャーと予想。
※高橋、井川の対戦相手のデッキはそこまで明確に予想できず。
といった形で対戦相手のデッキがあらかじめ予想できるメンバーがおり、またシステム上その相手と複数回当たることも容易に予想されるため、「その相手に強いデッキを選ぶバリューが非常に高い=今回は各々が違うデッキを選択することになる可能性が高いだろう」ということがあらかじめ分かっていました。
なので、スタンダードの練習は情報共有や気になった(お互いに利のある)マッチアップを検証こそすれ、ベースとしては各自で行うという形になりました。
僕の最初の相手はフランスのTheo Moutier。これまで様々なデッキを使用しており、「メタ的に良さそうなデッキを選ぶ」ということ以外にこれといった目立った傾向はありません。
そこでリーグ全体でのスタンダードのメタゲームをある程度予想してみたところ、
・人数が多そう:スゥルタイ根本原理、ティムールアドベンチャー
・上2つに強いので使用者が増えそう:ローグ、サイクリング
・ティムールの増加により減るだろう:赤単
・ほぼいない、居ても1-2人レベル:ナヤ、白単
といった感じ。白単とティムール系を試して挫折した後、最終的には上記の想定メタゲームの上でポジションが良さそうなグルールアドベンチャーを使用することにしました。
グルールアドベンチャー【インポートデータ】 | |
---|---|
デッキリスト | |
4:《寓話の小道/Fabled Passage》 4:《山/Mountain》 4:《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》 8:《森/Forest》 1:《奔放の神殿/Temple of Abandon》 21 lands 4:《カザンドゥのマンモス/Kazandu Mammoth》
|
2:《アクロス戦争/The Akroan War》 4:《髑髏砕きの一撃/Shatterskull Smashing》 4:《エンバレスの宝剣/Embercleave》 1:《グレートヘンジ/The Great Henge》 1:《原初の力/Primal Might》 12 other spells 2:《アゴナスの雄牛/Ox of Agonas》 |
10月時点から存在しているデッキですので、デッキの解説自体は省略。選択理由だけ簡単に述べていきます。
《エンバレスの宝剣》デッキという点では赤単と同じですが、赤単と異なり自分も《恋煩いの野獣》《グレートヘンジ》を使えることから、ティムールと五分程度で戦うことができます。
《エッジウォールの亭主》《恋煩いの野獣》デッキという点ではティムールとも同じ性質がありますが、タップインランドが少ない点、また《山火事の精霊》《探索する獣》《エンバレスの宝剣》といった攻撃力の高いカードが採用できる点から、ティムールが苦手としているローグやサイクリングに対しても有利に戦うことができます。
対スゥルタイも、カウンターこそありませんが最序盤のプレッシャーやダメージの高さから押し付けやすく、五分強程度の相性は担保できています。
そして何より、グルールが衰退した大きな要因である《巨人落とし》デッキの凋落が大きいです。
ナヤフューリー、ナヤアドベンチャー、そして白単といったグルールが苦手としているデッキは、今のメタゲームで数を減らしており、マッチアップする回数が少ないと予想できました。
このように、「不利なデッキが下位tierしかおらず」「上位tierにはどれも五分か五分以上ある」という見込みのもと、グルールアドベンチャーを選んだのでした。
本戦の結果
R1 ローグ ○××
R2 サイクリング ×○○
R3 ナヤクラリオン ××
R7 ナヤクラリオン ○××
R8 スゥルタイ根本原理 ○×○
R9 ローグ ○××
ローグには基本的に相性が良いのでせめて1-1はしたかったところですが、サイド後に不運な展開が続き2連敗。これが一番致命的でした。
更には不利なナヤクラリオンにも2回(同じ相手に)当たって2連敗し、トータル2-4と痛い負け越し。
デッキ選択自体は納得しています。ただローグに対してはもう1-2枚サイドを取ってよりガードを上げるべきだったかもしれません。
練習でかなり勝ち越していたがゆえに最適なサイド枚数を正しく把握できておらず=今のリストで大丈夫だと判断してしまい、結果として敗北に繋がってしまった可能性が高いです。
■ヒストリック
こちらはスタンダードと違って対戦相手が決まっているわけではないので、通常通りチームで調整。チャンピオンシップが終わってからそこまで時間がなく、しかもスタンダードと両方の練習をしなければ行けない状態。
チーム内で「ジャンドフードとオルゾフオーラの両方に勝てるデッキを探す。もしどちらかに勝てないのであればそのデッキは諦めてジャンドを使う。」ということをある程度の指針を定めてから調整を開始しました。
チャンピオンシップでAndrew Cuneoが使っていたディミーアコントロール。ジャンドフードに相性が悪く、オーラにもそこまで良くなかったので早々に断念。
《廃墟の地》を減らして《爆発域》を採用するアプローチは良かったです。
こちらはチャンピオンシップでJavier Dominguezたちが使っていたチームデッキ、サイクリング。クリーチャー・本体火力・そしてサイドのヘイトカードと様々な角度で対抗してくるため、ジャンドフードには結構強めのデッキ。だがオーラには構造的に勝てず。
ジャンドフードにはスケールで、オルゾフオーラには手札破壊+除去で勝とうという思想。だがオーラに勝つには初手のハードルが高く、ジャンドにも「《出現の根本原理》をプレイしても勝てない」事態が多々発生していたため断念。リーグでCFBが使っていた、コンボ型の根本原理はお見事でした。
「ジャンドとオルゾフオーラを倒すためのデッキ」としてチャンピオンシップに持ち込まれた除去コンことアブザンミッドレンジ。
オーラには高い勝率を誇ったものの、ジャンド側がプレイを見直したり、ミラー用に重いカードや《フェイに呪われた王、コルヴォルド》《古き神々への拘束》を増やしたところ勝率が低下。ジャンドで倒せないほどではない&他のデッキに構造が弱すぎるということでこちらも断念。
こうして次々と候補が去っていき、最終的にはジャンドフードを使うことに。ジャンドフードを使う以上、ミラーに強いジャンドを練り上げようとアレコレ考えた末、完成してしまったのがこちら。
ジャンドフード【インポートデータ】 | |
---|---|
デッキリスト | |
4《草むした墓/Overgrown Tomb》 4《血の墓所/Blood Crypt》 2《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 2《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》 2《闇孔の小道/Darkbore Pathway》 4《寓話の小道/Fabled Passage》 2《森/Forest》 2《沼/Swamp》 1《山/Mountain》 1《ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower》 1《ロークスワイン城/Castle Locthwain》 25 lands 4《金のガチョウ/Gilded Goose》
|
4《致命的な一押し/Fatal Push》 4《魔女のかまど/Witch’s Oven》 4《パンくずの道標/Trail of Crumbs》 1《狼柳の安息所/Wolfwillow Haven》 4《古き神々への拘束/Binding the Old Gods》 1《戦争の犠牲/Casualties of War》 1《ビビアン・リード/Vivien Reid》 19 other spells 4《思考囲い/Thoughtseize》 |
これが今年のリーグ1年間を通した僕らのワーストチームデッキ、ビビアンフードです。
名前だけは100点で、デッキとしてはただの劣化ジャンドでした。「テンプレの方がマシ」という改悪をしてしまった、そして実際にリーグで戦うまで気づけなかったのは情けない限りです。
デッキの特徴は以下。
ミラーマッチだけでなく、あらゆるマッチで強力なのが《フェイに呪われた王、コルヴォルド》。これを4枚にすることは真っ先に確定しました。
また《パンくずの道標》《波乱の悪魔》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》といったミラーでのキーカードを対処でき、《パンくずの道標》で拾える除去である《古き神々への拘束》を4枚にすることもミラーでの勝率向上に繋がるだろうということで増量しています。これはOK。
《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》でジャンドをメタってくるデッキがそれなりにいることを考えて、《初子さらい》を0枚にしてメイン《致命的な一押し》4枚にしました。
《魔女のかまど》などいわゆる「サクリ台」が必要だった《初子さらい》は不安定なカードでもあったので、この変更もとても良かったと考えています。
さて、ここからが大問題。
デッキを歪めた原因その1。
ミラーでは弱いからサイドアウト→ならメインから抜こう、という誤った(偏った)思考により《悲哀の徘徊者》は0枚に。また後述する《戦争の犠牲》《ビビアン・リード》を採用するために《湧き出る源、ジェガンサ》も採用できず。
この結果、3マナでターンパスしやすく、かつフラッドに弱い構成になりました。「粘り強く戦える」というジャンドフードの利点を大きく損なう、大失策です。
また《悲哀の徘徊者》の採用を見送った結果、連鎖的にサイドボードから《ボーラスの城塞》を外すことに。これもスゥルタイ根本原理のような不利マッチに対する勝ち筋を無くす、やってはいけない変更でした。
デッキを歪めた原因その2。
《戦争の犠牲》は打てれば強いと思われがちですが、実際は《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を出した後でしか大した仕事をしない、いわゆるオーバーキルカード。
相手だけ《フェイに呪われた王、コルヴォルド》の状態であれば打てば耐えることはできますが、ゲームに勝つわけではなく、むしろ《フェイに呪われた王、コルヴォルド》の返しにプレイできない点が大きく響くこともあります。
《ビビアン・リード》は「《フェイに呪われた王、コルヴォルド》の返しに《古き神々への拘束》というアクションが弱いので、逆マウントを取りたい」「《フェイに呪われた王、コルヴォルド》が手札にないときに自分から仕掛けられるカードが欲しい」という思考で採用しましたが、相手だけ《波乱の悪魔》の場で出せなかったり、「+1」で5枚めくっても土地しか手札に入らなかったりと、お世辞にも活躍したとは言えませんでした。
本戦の結果
R4 ジャンドフード ××
R5 ジャンドフード ××
R6 アブザンミッドレンジ ×○×
R10 スゥルタイ根本原理 ×○×
R11 アブザンミッドレンジ ○××
R12 グルール ×○○
1-5。
ジャンドフード対決では相手だけ引いた《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を除去できずに2連敗。今回使ったジャンドフードは決して良いデッキではなかったですが、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》対決で負けない構成を意識しての「《フェイに呪われた王、コルヴォルド》4枚+《古き神々への拘束》2枚+《ビビアン・リード》2枚+《戦争の犠牲》2枚」だったので、この負け方はかなり堪えました。
その他も惜しい試合を僅差で落とし、最後のグルール戦だけトップデッキ連打で逆転勝利。
チーム4名で使用し、3-3(原根)、2-4(佐藤)、2-4(熊谷)、1-5(井川)。トータル8-16。さらに尖った構成(《戦争の犠牲》3枚)を使った高橋も1-5と、ヒストリックラウンドは惨敗に終わりました。これぞワーストデッキ。弱者には敗北を。
■終わりに
今週は使用したデッキが良くなかった上に、スクリュー/フラッド/ダブマリが多発するなど運もかなり悪く、その結果ティルトによりプレイも悪くなるというまさに最悪な状態。冷静に、常にパーフェクトなプレイができていればもう1勝はできたかもしれませんが、今の僕の実力ではこれが限界でした。
リーグが始まってから大敗した週がなかったため(大勝した週もありませんが)これまで真ん中前後の順位を維持してきましたが、今回の大敗により一気に危険水域まで順位が落ちました(25位→32位)。
現時点で年間で予定されている試合の5/7が終わり、ライバルズリーグからは脱落者も出始めています。次回のリーグでは残った40名のうち下位5名(=37位~41位)がさらに脱落するのですが、その点差は小さく、僕も次回のリーグで負け越すとそのラインに入ってしまう可能性が十分にあります。
次のリーグで負けると、ライバルズリーグからの脱落。
このプレッシャー、そしてストレスと戦いながらの1ヶ月となりそうです。今年の経験・成長を活かすためにも、なんとか踏みとどまれるよう頑張ります。
次回は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のプレビュー記事を予定しています。それでは!