デュエルマスターズ │ 環境紹介 │ 【DM12】~【DM14】

by 安田 悠太郎

2020年6月25日、デュエプレで第4弾拡張パック「混沌の軍勢 REBELLION SYMPATHY」が配信されました。

実装された74枚中、46枚は聖拳編からの収録。

前回に続いて《剛撃戦攻ドルゲーザ》や《悪魔聖霊アウゼス》のような多色カードがフィーチャーされているほか、ウェーブストライカーも登場しています。

彼らがアナログの世界に登場した時代の競技シーンは、どのような環境だったのでしょうか?

■DM-12「魔封魂の融合」環境(2004年12月25日〜)

全国大会後に発売された聖拳編3弾では、《英霊王スターマン》や《暗黒王デス・フェニックス》などの、背景ストーリー上で「王」と呼ばれるクリーチャーたちが登場しました。

中でも漫画でザキラやトーイが使用した《暗黒王デス・フェニックス》は、現代でも人気がありますね。何度か再録もされています。

また《英霊王スターマン》は、背景ストーリーにおいて《超竜バジュラ》を倒しています。イラストの背景で倒れているのが、まさに《超竜バジュラ》ですね。

デュエプレに収録されるときが来たら、《超竜バジュラ》を倒せるような大幅な上方修正が入るかもしれません。

「王」以外にも、SRとして《緑神龍アーク・デラセルナ》が登場。デュエプレでは、第3弾「英雄の時空」に収録され、その際にマナ加速効果が追加されていました。

また、DM-12には《星雲の精霊キルスティン》に代表されるウェーブストライカーたちも収録されています。

なお、4弾「混沌の軍勢」で収録されたウェーブストライカー全てが、DM−12に入っていたわけではありません。《炎舞闘士サピエント・アーク》や《アドラス》などは、DM-11で既に登場していました。

聖拳編は多色カードのほか、ウェーブストライカーもテーマとしていたんですね。

さてDM-12環境、日本一決定戦が終わったあとということもあり、大型公式大会は開催されていません。

《星雲の精霊キルスティン》や《英霊王スターマン》たちが環境を動かすのは、DM-13発売後のことです。

■DM-13「龍炎鳳神誕」環境(2005年3月26日〜)

2005年3月15日、第2回殿堂入りが施行されます。そこで殿堂入りしたのは、《アクアン》だけでした。

日本一決定戦で結果を残した《無双竜機ボルバルザーク》は、発売されて間もなかったからか、規制をまぬがれます。

DM-13が発売されたのは、そのすぐ後のことです。

《悪魔聖霊アウゼス》に《剛撃戦攻ドルゲーザ》、《無双恐皇ガラムタ》など、デュエプレの4弾に収録されたカードの多くがDM-13で登場しました。

全てを挙げているとキリがないので、代表的なものを以下にピックアップします。

《悪魔聖霊アウゼス》、《剛撃戦攻ドルゲーザ》はそのままですが、他は大なり小なり修正が入っています。別物のようである意味、原点に忠実な《悪魔聖霊バルホルス》なんかはいいデザインですね。

しかし、競技環境に影響を与えたのは彼らではありません。

DM-13でもっとも大きな問題を引き起こしたのは、《炎槍と水剣の裁》です。

当時の環境において、このカードはパワー3000以下の小型クリーチャー、ひいては小型クリーチャーを横に並べるプレイを否定していました。

考えてもみてください。先攻を取って、《シビレアシダケ》→《青銅の鎧》→《炎槍と水剣の裁》と動けば、少なくとも2枚ドローできます。

相手がまったくクリーチャーを出さないことはないでしょうから、実際には3〜4枚のドローが期待できるでしょう。

次のターンには《ロスト・ソウル》を唱えて相手のリソースを消し飛ばし、事実上のゲームセットです。

そんな《炎槍と水剣の裁》を加えた環境で、公式大会のシーズンが始まります。

DM-13発売後、春先から各地で開催された公式大会、スプリング・チャレンジ・バトル(SCB)。

環境序盤ということも手伝って、そこには多様なアーキタイプが持ち込まれました。
(この時代はネットでの情報交換が今ほど活発でなく、環境の解明速度は現代と比べて大幅に遅かったのです。必然、デッキリストが固定されるまでには時間がかかりました)

例えば大阪で優勝した『ボルバルブルー』は、パワーの高い《無頼勇騎ゴンタ》や場に残らない《襲撃者エグゼドライブ》を採用する一方で、《炎槍と水剣の裁》は非採用。

また大阪には、《炎舞闘士サピエント・アーク》や《星雲の精霊キルスティン》に加え、《無双竜機ボルバルザーク》を搭載した『WSボルバル』を持ち込んだプレイヤーも存在しました。

他方、鈴鹿では《炎槍と水剣の裁》を採用した『除去コントロール』が優勝を果たします。

ライカル選手が持ち込んだこのデッキはクリーチャーを減らし、除去呪文と《ヘル・スラッシュ》を積んで山札切れを狙うデッキでした。

ほか、鈴鹿では『青白スターマン』が4位につけるなど、決して特定のデッキしか環境にいないゲームというわけではありませんでした。

隠れていた問題が顕在化したのは、その年のエリア予選であるジェネレート・リーグが始まってから。DM-14発売後のことです。

■DM-14「転生編第1弾」環境(2005年6月25日〜)

DM-14からは、2005年のブロックである転生編がスタートしました。

このブロックには、2つのテーマがあります。1つ目は、「過去の人気クリーチャーのリメイク(=転生)」。

DM-14には、現在でもコレクションカードとして人気な《悪魔神ドルバロム》や《クリスタル・ツヴァイランサー》などが収録されています。

そして2つ目のテーマは、新カードタイプ「クロスギア」。

……ただし。見た目のインパクトが強いカードは収録されていたものの、これらが環境に影響を及ぼすことはありませんでした。

DM-14からTier1のデッキに採用されたのは、《地獄スクラッパー》や《幻緑の双月》などのノーマルカードたちです。

また、『赤単速攻』が本格的に組めるようになったのもDM-14からです。

このパックでは、新たな1コストクリーチャーである《螺神兵ボロック》や、《炎槍と水剣の裁》で破壊されない《放浪兵エルジージョ》が登場。

さらに、赤単なら《解体屋ピーカプ》の上位互換となる《タイラーのライター》も。

こうしたカードが追加されたことで、『赤単速攻』が環境へと参入しました。

そしてDM-14発売からおよそ2週間後、2005年7月15日。第3回殿堂入りが施行され、《無双竜機ボルバルザーク》と《スケルトン・バイス》が殿堂入り。

この環境で、2005年のエリア予選……ジェネレート・リーグ(GL)が始まります。

GLエリア予選環境は、《炎槍と水剣の裁》を中心に回っていました。

というのも《無双竜機ボルバルザーク》を殿堂入りさせてしまったため、『除去コン』の対抗馬となっていたビートダウン系の『ボルバル』が消滅。

ビートダウンに対する勝率の高さを利点としていた『青白スターマン』のようなデッキは《炎槍と水剣の裁》に耐えられず、姿を消してしまいます。

結果として『除去コン』だけが、環境に残ったのでした。

このころの『除去コン』は《無双竜機ボルバルザーク》だけでなく、《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》や《バザガジール・ドラゴン》など多彩なフィニッシャーを搭載。

更に当時、まだ4枚使えた《予言者マリエル》対策として《ガルクライフ・ドラゴン》を採用したり

ミラー対策として、《母なる大地》経由でマナから出す前提で《巡霊者キャバルト》を積むプレイヤーまで現れました。エリア予選終盤では、《焦土と開拓の天変》を採用するプレイヤーもいたそうです。

これらのデッキに共通していたのは、《炎槍と水剣の裁》、そして《ロスト・ソウル》。

もともと《ロスト・ソウル》を使った『除去コン』自体は2003年から一貫して存在したのですが、『青緑リーフ』や『ボルバルブルー』など強力なビートダウンの前に屈してきました。

そんな『除去コン』がビートダウンを否定する《炎槍と水剣の裁》を手に入れてしまったのが、2005年のデュエル・マスターズだったのです。

『除去コン』は、大きく分けて2種類。

環境の大勢を占めた《無双竜機ボルバルザーク》を採用して殴りきるタイプと、《ヘル・スラッシュ》を採用して山札切れを狙うタイプです。

その間隙を縫って『赤単速攻』が走り回り、《炎槍と水剣の裁》に焼かれたり焼かれなかったりしていました。

この環境のまま突入した日本一決定戦、結果はどうだったのでしょうか。

例年、冬に行われていた日本一決定戦ですが、2005年は8月に行われました。

オープンクラスの決勝では当然と言うべきか、『除去ボル』と呼ばれた黒入りの《無双竜機ボルバルザーク》のミラーマッチが発生。

片方のプレイヤーが《腐敗勇騎ガレック》で《緑神龍アーク・デラセルナ》を引き抜いてしまい、そして返しのターンで出て来た《紅神龍ジャガルザー》からのビートダウンを捌ききれず……という形で、決着がつきました。

このとき優勝したのはhiro選手。自身2度目となる日本一を達成された瞬間です。

デュエル・マスターズの歴史上、2度以上の日本一を経験しているのはhiro選手だけ。現代に残る大記録ですね。
(なお2006年、hiro選手は3度目の日本一を達成しています)

一方のレギュラークラスでは『赤単速攻』が優勝し、なんとか《無双竜機ボルバルザーク》のW日本一は避けられたものの……大会当日の会場内では、MtGの故事に引っ掛けて「ボルバルの黒い夏」「ブラックサマー」と環境を評する選手もいたそうです。

こんな所業が許されるはずもなく、翌2006年の3月15日に《無双竜機ボルバルザーク》はDM史上初のプレミアム殿堂入り。同じタイミングで《炎槍と水剣の裁》も殿堂入りします。

ついでに《ヘル・スラッシュ》と《ロスト・チャージャー》も殿堂入りし、山札切れを狙うアーキタイプも規制されました。

しかし、ここで終わらないのがデュエル・マスターズ。

《無双竜機ボルバルザーク》のプレミアム殿堂より遡ること約1ヶ月前、2006年のデュエル・マスターズを破壊することになるドラゴンが1体、世に送り出されていたのでした。

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